落下
短いですが、どうにか年内にあげる事が出来ました。
今年は、色々な人に読んでいただき誠にありがとうございました。
拙い文ですが、来年も頑張って更新していくのでどうぞよろしくお願い致します。
木々の間から漏れる日の光に照らされながら、俺は干し肉を齧っている。こういう保存食を食べるのは初めての事だが、味が異様に濃いクッソ硬いビーフジャーキーといった印象だ。
「んぐぐ……!!」
干し肉を噛んでから、全力で引っ張って千切る。
とてもじゃないが、コレを普通に食べようとするのは俺には無理だった。というか、ムキムキのマッチョとかなら出来るかもしれないが、普通の人には無理だと思う。
「はむはむ……」
「……」
ちなみに、隣に座って俺と同じ干し肉を食べている桜花は普通に食べている。もしかしたら、俺が食べている干し肉と違うんじゃないか? とも思ったが、同じところで買った物だからそれはなかった。
(まぁ、桜花は人間じゃないしな……)
全力で干し肉を噛み千切りながら空を見上げると、丁度太陽が俺達の頭上に来ていた。時間としては正午辺りだろう。
俺たちは現在、エスティア王国から内陸に進んだところにある森の入り口で昼食を食べている。森の正式名称は地図には書いてあったがこの世界の文字など読めるはずもないのでわからないままだ。
ただ、この森を抜けて山脈をいくつか抜けると龍剣山があるらしい。地図上で見ても途方もない距離なので、いざ歩いていこうと考えるとどれだけの時間がかかるのか……。
「パパ、大丈夫?」
「ん……? あぁ、ちょっと考え事をしていただけだ」
どうやら、干し肉片手に動きを止めていた俺を心配したらしい桜花に笑いかける。
ふと、よくよく考えてみたら魔刀は食事を必要としないんじゃなかったっけ? 何か、俺が干し肉を食べようとしたら人型になって欲しそうにしてたからあげたんだけど……。
「なぁ、桜花は食事とかして平気なのか?」
「んー……わかんないけど、お腹は空くよ?」
「腹減るのか……」
何か、俺がシエル姫から聞いた魔刀と桜花は結構ズレている気がする。凍華もお茶を飲むくらいはしていた気がするが、いかんせん目の前で食事をしようとしたことがないためにわからない。
こんなことになるんだったら、もっとよく聞いておくんだった……。
「さて、腹ごしらえもしたしそろそろ行きますかね」
「んっ」
一口台になった干し肉を口の中に入れて、桜花を刀状態にしてシエル姫から貰った剣帯に差してマントを羽織る。
日も高くなった事で若干の暑さはあるが、森の中からはひんやりとした空気が流れてきているからマントを羽織った方が丁度いいだろう。
《パパ、行こう?》
返事代わりに柄を撫でて、俺は森の中へと足を進めた。
さて、人間は高い所から落ちると頭が必ず下になって落下するという話を一度くらいは聞いたことがないだろうか?
実際に頭から落ちるにはその人物が意識を失っているという前提が必要であり、意識がある状態ならば人間はどの態勢からでも落ちる事が可能ではある……理論的にだが。
《パパ、コレ大丈夫?》
「……」
《どんどん速度が速くなってる気がするけど……》
桜花も心配しているので、そろそろ現実と向き合おう。
現在、俺と桜花は真っ逆さまに暗闇へと落ちている。こうなった経緯としては、森を歩いていたらいきなり足元が崩れたのだ。
決して、ドジって穴に落ちたとかそういう類の物ではない。コレだけは真実を伝えたかった。
で、だ。この状況でどうにか頭から落ちるのは阻止しようとして空中でもがいていたのが数分前。どうにか頭から落ちる態勢から抜け出してはいるものの未だに地面は見えない。
(結構速度乗ってるし、このまま行ったら普通に足からとかでも死ぬんじゃね?)
普通に考えて、このまま行けば俺は地面に激突して潰れたトマトよろしく赤い絨毯をその辺に撒き散らす事になるだろう。
それだけは避けたいと思いながら周りを見る。暗闇の中でも桜花との契約で修復された目はキッチリと周囲の光景を映し出してくれるものの、どうにか出来るような物は見えなかった。
「これは……詰んだかなぁ」
《パパ、諦めないで!》
「そうは言っても……せめて、何か勢いを削ぐ方法とかがあれば……ん?」
ふと、元の世界で好んで読んだ小説とかで使われる方法を思い出す。
正直、アレでどうにかなるような気がしないが何もやらないよりはマシだろう。
「桜花、ちょっと手伝ってくれ」
《ん? うんっ!》
手足を振って壁際まで寄り、桜花を抜いて一気に壁へと突き刺す。
瞬間、右腕へと凄まじい不可が襲い掛かりガクンと身体が揺れる。
「ぐぉぉ……!!」
《パパ、頑張って!!》
ミチミチと嫌な音を右腕から聞きながらも、決して桜花を手放すまいと力を入れる。
そもそも、コレって地面が見える前から始めても意味がなくない? と思い始めた辺りで幸か不幸か地面が見えて――
「あ、コレ、ヤバいやつだ」
――俺は地面へと衝突して土煙を上げた。
読んでいただき、ありがとうございます!
皆さま、良いお年を。




