買い物をしよう③
路地裏から表通りへと帰ってくる事が出来た俺たちは、そのまま道具屋へと歩みを進めていた。
表通りは、活気に溢れており所々に出店が出ており様々な食べ物の匂いがあちこちから漂ってきて、朝から何も食べていない腹を刺激してくる。
それは佐々木も同じらしく、先程から食べ物を売っている出店の前を通るたびに横目でチラチラと見ている。自分から食べようとか言い出さないのは、女としてのプライドがあるからだろうか。
ならば、ここは俺が言いだすのが正しいだろう。
「なぁ、佐々木。腹減らないか?」
「えっ!? あ、そ、そうだね」
俺が考えていた事を理解したのか、頬を染めながら返事をする佐々木を横目に近くの出店を見る。
何かの肉を串に刺して焼いている出店らしいが、匂い的に美味しそうだし何よりも異世界の食べ物に興味もある。
「あそこにある店にしよう」
佐々木を連れて出店の前へと向かうと、額にタオルを巻いたおっさんが笑顔で接客してくれる。
「よぉ、べっぴんさんの嫁さんを連れてお出かけかい?」
「よ、よめっ!!」
佐々木がおっさんの声に反応するが俺はそれを適当に否定して、銀貨3枚で串焼きを三個買って一本ずつ佐々木と桜花に渡す。
「あ、ありがとう」
お礼に手で返事をしながら、串焼きにかぶりつく。口の中で広がる肉汁に目を見開きながら口を動かす。
「美味し~!」
「ん……」
佐々木と桜花もどうやら気にったようで、舌太鼓を打っている。
俺も二口目を食べようとしたところで、ふと俺は見られている感じがして辺りを見渡してしまう。
「……気のせいか?」
いや、確かに俺たちは見られていた。それがどこからかはわからないが、警戒しておくに越したことはないだろう。
それが一体、誰であろうと……俺の目的を妨害してくるのであれば、叩き潰すだけだ。
「さて、ここが道具屋か」
辿り着いた道具屋は魔王襲撃の時に被害を被ったのか、屋根が半壊していた。
「てか、コレ……経営してるのか?」
「看板は出てるから、やってるんじゃないかな?」
それもそうかと思いながら、店の扉を開ける。
中は棚が所狭しと置いてあり、何やら不思議な色の液体が入った瓶やら小物やらが置いてある。
カウンターにはやる気の無さそうな歳いった女性が頬杖をついてこちらを見ている。
「まぁ、買い物中に声を掛けてくる店員とかは苦手だし、コッチの方がありがたいな」
店内を回って必要な物を手早く集め、カウンターに向かっていると両手に商品を沢山抱えた佐々木と出くわす。
「佐々木も買う物があったのか」
見た所、包帯とガーゼ……あとは、謎の液体が入った瓶を数本か。佐々木が持っているという事は医療用品といったところだろうか?
「あ、うん。何かと使う時が来るだろうし、あって損はないでしょ?」
「まぁ、備えあれば患いなしって言うしな」
そうだねと笑って前を歩き始める佐々木。それを追いながらふと視界の端で見つけた物を俺は急遽買う物リストに加えて手に取った。
店での合計金額は1金と武器屋に比べて安く済んだ。
いやまぁ、武器と小物じゃ値段の差が出るのは当たり前なんだけどな。
「あ、そうだ。佐々木コレをやるよ……今日、買い物に付き合って貰ったお礼だ」
一旦買った小物を桜花に渡して、カウンターに向かう最中で見つけた肩掛けバックを佐々木に手渡す。何かしらの革で出来たそこそこの大きさのバックだ。
「え、い……いいの?」
「ああ。そういうの入れる物がないと不便だろ?」
「あっ……! そういえば、バック買うの忘れてた!!」
コイツ、意外と天然なんだな……。
「っ……!!」
ふと、先ほどと似た視線を感じた。
しかも今回は、悪寒がするほどに憎悪が籠った視線だ。
「……そろそろ、帰ろうか」
「あっ、そうだね!」
俺が渡したバックを大事そうに抱える佐々木を横目に見ながら、俺たちは帰り道を歩き出すのだった。
 




