買い物をしよう②
PV・ブクマが増えていてとても嬉しい作者です!
このような作品を読んでいただき、ありがとうございます!!
「あの、コレ……」
飾られている直剣を桜花と眺めていると、先ほどの女の子がコップを差し出してくる。
中には液体が入っている所からして、飲み物を持ってきてくれたらしい。
「あぁ、ありがとう」
コップを受け取り、お礼を言うと少女は少しだけ微笑む。
無表情だと思っていたが、どうやら感情を表に出すのが少しだけ下手なだけなようだ。
「今、パパを呼んで来ます……」
そう言ってまた奥に行く女の子を見送りながら、俺は買う物リストを脳内で思い浮かべる。
まず、凍華が使えなく桜花とも契約したとは言え使えるかどうかわからない現状なだけに武器は必要だろう。
だが、俺は刀剣術スキルのお陰で日本刀は使えるが、直剣などは上手く使えるという保証はないため出来れば日本刀が欲しい所だ。
あとは、色々と役に立つであろうナイフだろうか? あれば動物とかの解体にも使えるだろうしな。
「……」
防具はいらないだろう。あれば色々と助かる場面もあるとは思うが、俺自身の体力や筋肉量を考えたとしてもあまり重い物を装備するよりも軽い状態の方がポテンシャルを発揮できるはずだ。
そういえば、ワイヤーとかもほしいな。
道具屋でロープは買う予定だが、それよりももっと丈夫な紐が欲しい。
「おう、あんたが客か?」
「ん……?」
丁度何を買うべきか考え終えた時、背後からドスが聞いた声が聞こえてくる。
振り返ると、そこには大柄な筋肉質な身体をした中年の男が立っていた。
「ウチは一見さんお断りでな。悪いが、他の店を探して……」
目の前の男性はそこで言葉を切り、目を見開く。
「あんた……その腕、どうした」
「……戦いでちょっとな。別に、片腕がない人間なんて珍しくもないだろ?」
武器屋ならば尚更だ。
だが、店主と思わしき男性は俺を見つめている。
「いや、そうじゃねぇ……あんた、何と契りを交わした?」
「……何の事だ?」
店主の目を真っ直ぐと見つめて、聞き返す。
ここで変に目を逸らしたりしたら、それは店主の言葉を認めているという事になってしまう。ならば、この対応が一番だろう。
「……そうか。お前さんの左腕から妙な魔力を感じたんでつい気になっちまった。あぁ、そんな警戒しないでくれ。俺の目がちょいとばかし特殊なだけだ」
店主の言葉で俺の目が若干鋭くなったのを感じ取ったのか、後付けでそんな事を言って来る。
もしかしたら、魔眼とかそういう類なのかもしれない。
「それで、お前さんは何が欲しいんだ?」
一見さんお断りじゃなかったのか? とは聞かない。ここで変に突っ込んでやっぱり売らないとかになる方が俺にとってデメリットになる。
「刀とナイフ、あとは丈夫なワイヤーが欲しい」
俺が欲しい物を言うと、店主の目が鋭くなる。
「あんた、もしかしてたまに居る【裏切者】に憧れてるヤツか? それなら、やめておけ。刀ってのは専用のスキルがないと使えねぇ物なんだ」
あぁ、そういえばそうだった。
自分の軽率な発言を恨みながら、俺は言い訳を速攻で考える。
「いや、実際に使う訳じゃないんだ。ちょっとそういうのを集めるのが趣味でさ……家に飾ろうと思って」
「なるほどな……だが、ウチじゃ刀は扱ってねぇんだ。アレは製造が特殊すぎて専属の鍛冶師じゃねぇと作ることさえ出来ねぇ。ワイヤーとナイフならすぐに準備できるが、どうする?」
「そうか。なら、ワイヤーとナイフだけ買うよ」
俺の返事を聞いた店主は一回だけ頷いて、奥へと入りすぐに帰ってくる。
「コレはミスリルを少量混ぜて作ってあるワイヤーだ。その辺のワイヤーに比べてかなり丈夫だからあんたの要望に沿ってるだろう。んで、コッチが今ウチにある中で一番いいナイフだな」
そう言って渡されるワイヤーとナイフ。
ワイヤーはよく見る銀色のワイヤーだが、ナイフは刀身の丁度中心部を縦に横断するようにスリットが入っている特殊な形状をしていた。
「このナイフは?」
「ソレは、ソードブレイカーって種類のナイフだ。そのスリットに相手の刀身を挟んで折る事が出来るようになってんだ」
ほぉんと相槌を打ちながら、俺はナイフを軽く振ったりしてみる。
振った感じとしては、包丁を持っているような気分で違和感という物は感じないが、コレを戦闘で使うとなると、訓練は必要だろう。
「ん……?」
ナイフを振ってる時に気づいたのだが、光に若干かざしてみると黒い刀身が薄く紫に透けている事に気づく。
「コレ、何で出来てるんだ?」
「あぁ、ニホレウムって鉱石で作られてんだ。光にかざすと薄く透けるし、そのくせ丈夫ってんで色々な物に使われてんだ」
聞いたことない鉱石だ。
いやまぁ、異世界なんだから俺が知らない鉱石があってもおかしくないよな……。
「で、どうする? 買うのか?」
「ああ、買わせてもらうよ。いくらなんだ?」
ワイヤーも丈夫そうだし、ナイフに関しても文句はない。
他の店を見たことないから、この両方がどれだけいい品なのかわからないがシエル姫がおすすめしてくるぐらいだから、品質に関しては問題ないと考えて大丈夫だろう。
「そうだなぁ……7金貨でいいぞ」
7金貨……日本円にして7万。
チラリと壁に掛かっている武器の値段を確認すると、大体が数銀貨~2金貨くらいだ。
さて、コレは足元見られてぼったくられていると考えるべきなのか、それとも純粋にそれだけの価値があるくらいにいい物なのか……
店主の方を見てみても、こちらをジッと見ているだけでどちらなのか判別がつかない。
「パパ、パパ……」
と、そこで桜花が服の裾を引っ張って来る。
「どうした?」
「いい物だから、大丈夫」
桜花が満面の笑みで言ってから右手でサムズアップする。
「そうか。よし、7金貨で買うよ」
ナイフとワイヤーを桜花に一旦渡して、ポケットの中に入っていた貨幣から金貨を7枚取り出し、店主に差し出す。
こういう時、片腕がないと不便だな……
「ぷっ……ふははっ!!」
「……?」
店主が中々金貨を受け取らないと思ったら、いきなり笑い出す。
「いやぁ、娘に言われて買う事を決めるか! 気に入った! ナイフケースはおまけで付けてやるよ!」
俺の手から金貨7枚を受け取り、店主は奥に引っ込んでからその手にナイフケースを持って帰ってくる。
「コレは、ベルトに固定できるタイプだからあんたの片腕でも使いやすいと思うぜ」
「ああ、ありがとう」
受け取ったナイフケースをベルト・ループに括りつけ、そこに買ったナイフを差し込む。
ワイヤーは、とりあえずズボンのポケットに突っ込んだ。
「さて、買う物は買ったし俺たちは次に行くとするよ」
「おう。また何かあったらいつでもウチに来い」
そう言って店主は俺の背中をバシバシと叩く。結構痛いんだが……
「ああ、そうさせてもらうよ」
店主に返事をしてから、しげしげと剣を見ていた佐々木に声を掛けて一緒に店を出る。
「剣って、色んな種類があるんだね~」
「ああ……言われてみればそうだな」
佐々木の感想に対して返事をしながら、道具屋を目指して俺たちは歩き出した。
 




