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買い物をしよう①

 さて、着替えるために一旦佐々木には部屋の外に出てもらった。

 桜花は何故か俺の傍を離れたがらなかったので、そのままにしている。まぁ、親子だから別に着替えを見られた所で何かがあるわけでもないしいいが。

「日本でよく見るYシャツだよな……」

 箱から取り出した服は、日本でよく着ていた服とよく似た素材で出来た黒地のYシャツと同じく黒字のストレートパンツ。

 袖を通してみても、着心地に違和感はない。

 ただ、両方とも少しだけ大きい。

「ベルトは……制服のを使えばいいか」

 ボロボロになった制服から、辛うじてまだその機能を失っていないベルトを取り出してストレートパンツに装着する。

「どうだ?」

 きちんと着れているか確認するために、傍に居た桜花に聞いてみる。

「んっ」

 満面の笑顔で頷いている所からして、おかしく着ているとか似合っていないとかでは無さそうで安心する。

 金が入った袋から金貨と銀貨を数枚取り出してポケットに入れる。流石にこのまま持って行くのはスリとかにあったら悲しいから予防だ。

 ついでに凍華は俺が着ていた病人服で包んで、同じく病人服を着ていた時に付けていた紐を使って左腰から吊るす。

 病人服のお陰でボリュームも若干だけ出て、一見日本刀には見えないからコレが原因で絡まれる等の厄介ごとは回避できるだろう。

「よし、行こうか」

「んっ!」

 右手を桜花に差し出して、手を繋ぐ。

 城下町までの道はわからないが、所々で人に聞けば辿り着く事ができるだろう。

 桜花と手を繋ぎながら部屋から出ると、そこには佐々木が待っていた。

「あれ? 佐々木、どうしたんだ?」

 てっきり、昨日の事に対しての件が佐々木の要件だと思っていたが、部屋の前で待っている所を見るとどうやら違うみたいだ。

「一ノ瀬君、買い物に行くんだよね?」

「まぁ、そうだな。色々と必要な物もあるし」

「じゃあ、付いていってもいい……? 実は、城下町とか見たことなくて……そ、それにほら! 一ノ瀬君の主治医は私だし! 買い物中に何かあったら大変でしょ!?」

 少しだけ頬を赤くしながら俺に捲し立てる佐々木に少しだけ気圧されてしまう。

 まぁ、確かに買い物中に俺に何があるかわからないし、そういう時に佐々木が居てくれたら助けになるだろうから、理にかなっていると言える。

「まぁ、別にいいけど。てか、佐々木とかは普通に買い物に行ってるもんだと思ってたよ」

 実際、佐々木が今身に着けている服は学校の制服ではない。

 正確にはスカートは学校指定の物だが、上着は間違いなく制服ではないのだ。

「あぁ、コレはお城から支給された物なんだよ。確か騎士団の制服だったかな……? 結構可愛いと思うんだけど、変かな?」

 どう? とその場でクルリと回ってこちらを見てくる佐々木に俺はいいんじゃね? と適当に答える。

 これまで美咲としか異性の関わりがほぼなかった俺としては、いきなり服装の感想など聞かれても困るだけなのだ。

「何だか、適当な気がする……」

「気のせいだろ。それよりも、早く行こうぜ」

 勘の良い佐々木を流しながら、俺は桜花と一緒に廊下を歩き出す。

「あ、待ってよー!」

 それを佐々木が小走りで追って来るのだった。



「へぇ~、ここが城下町かぁ……」

 佐々木がどこか感慨深そうに呟く。

 城下町へは移動中に偶然会ったシエル姫の手によって割と簡単に出る事が出来た。

 聞いた話だと、召喚者はそうほいほいと城下町へと出る事は出来ないらしい。何だか監禁されているみたいで嫌な話だ。

「あんまり、はしゃがないでくれよ」

「わかってるよ……!」

 桜花とはぐれないように手を繋ぎながら佐々木に注意すると、佐々木は少しだけ頬を膨らませながら答える。

 まぁ、佐々木にああ言った俺だが初めての異世界での町という事もあって少しだけ心躍っている。絶対にからかわれるから表面上には出さないが。

「さて、どこから行く?」

 佐々木が俺にも見えるように小さな地図を取り出す。

 シエル姫に会った時に目当ての店がある場所を聞いた際に貰った地図なのだが、俺は片腕しかないしその片腕は桜花と繋いでしまっているので佐々木に持ってもらっていたのだ。

「ここから近いのだと……武具屋か。そこから行こう」

「わかった!」

 先を歩く佐々木に付いて歩くのだが、ちゃんと道が合っているのか不安になるレベルで路地裏から路地裏へと入って行く。

 流石に、道が合っているのか確認しようかと思って口を開こうとした瞬間、佐々木は立ち止まって目の前にある一軒の民家を指さす。

「ここみたい」

「いや、どう見ても民家なんだが……」

「いや、でも……地図的にはここなんだけよ! まぁ、入ってみればわかるよね」

 俺が止めるよりも早く、佐々木は民家の扉を叩く。

「ごめんくださーい!」

 反応が無い。

 やはり、違うのかと思って来た道を引き返そうとするが、佐々木はめげずに戸を叩き続ける。

「……」


 ガチャリ


 佐々木を止めようとした時、不意に民家の扉が開きそこから桜花くらいの小さな女の子が顔を覗かせた。

「……お客さん?」

「まぁ……ここは、武具屋なのか?」

「……」

 俺が聞くと、女の子が頷いて扉を開けたまま店の中に入って行く。

「「……」」

 佐々木と顔を見合わせてから、とりあえず民家へと入ってみるとそこは完全に武具屋だった。

 壁一面には所狭しと色々な種類の武器が飾られており、設置された棚にも同様に武器や防具が置かれている。

「本当に武具屋だったとはなぁ……」

 店内を見回しながら、俺は感想を呟くのだった。

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