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買い物に行こう

 買い物に着ていく服を考えて居ると、再度病室が部屋の扉がノックされる。

 シエル姫が何か伝え忘れた事でもあるのだろうかと、扉に近づき開けるとそこに立っていたのは佐々木だった。

「佐々木? どうした?」

 こちらが声をかけても佐々木は顔を俯かせているだけで何も言わない。

 それを見て、俺は昨日のやり取りを思い出して途端に気まずくなる。

「あ~……」

 気まずい。

 一体、何と言ってこの空気を払拭すればいいんだ……? こういう時、美咲だったら甘い物とかで釣ってどうにかなったりするんだが……クソッ! 美咲以外の女性とももっと関わっておけばよかったか!? いや、そもそも俺に美咲以外の女友達居なかったから結局無理な事だった!

「あの、一ノ瀬君……」

「は、はいっ!?」

 しまった。考え事中にいきなり話しかけられたから変な声で返事をしてしまった。

「その……昨日はごめんね。私、色々と踏み込もうとしちゃって……」

「……いや、いいんだ。俺も悪かった。佐々木は色々と考えて言ってくれようとしてくれたのに」

 この感じだと、佐々木はあれからずっと考えて居たのだろう。

 コイツは、何かと気にするタイプのようだ。

「うん……ところで、何か悩んでいたみたいだけど、どうしたの?」

「む……」

 そういえば、佐々木はきちんとこの国に召喚されたんだよな?

 となると、お金の説明や城下町をちょっと歩いた事とかがあるかもしれない。

「実は、買い物に行こうと思ったんだが、金の使い方とかがわからなくてな」

「そうだったんだ。お金は持ってるの?」

 私はそんなに持ってないけど、と佐々木は恥ずかしそうに言う。

 確かに、人前で金がないと言うのはどことなく恥ずかしい事だとは思うが、この光景を他人に見られたらイチャついてるようにしか見えないだろう。

「さっき、シエル姫から報奨金を貰ったから金はそこそこあると思うんだが……」

 シエル姫から貰った金が入った袋を佐々木に見せる。

「そうなんだ。それじゃあ、お金の説明をした方がいい?」

「ああ、頼む」

 俺が言うと、佐々木は俺から袋を受け取りその中から数枚のメダルを取り出す。

「この世界は1円の概念がないの。10円・100円・1000円・10000円のメダルがあるだけなんだ。この銅貨が10円で銀貨が100円。白銀貨が1000円で金貨が10000円って言ってたよ」

「なるほど……」

 机に置かれた硬貨を一つずつ指さしながら佐々木は説明していく。

 これで、店で物の値段がいくらなのかわからないという状況は回避できそうだ。

「あとは、服だけか……」

「一ノ瀬君の制服、ボロボロだもんね」

 佐々木の言葉に頷きながら考えるも、異世界で俺が持っている服などない。

 やっぱり、シエル姫に頼むしかないのだろうか?

「パパ、パパ」

 と、いつの間にか俺の傍まで来ていた桜花が俺の服を引っ張る。

「ん、どうした?」

「ステータス、開いて?」

「……??」

 何故? という疑問があったが何か意味があるのだろうと思う事にして、ステータスを開く。


名前:一ノ瀬 祐


種族:人間


性別:男性


職種:刀剣士Lv.1


魂Lv:90


MP残量:0/45000


STR:500


DEX:500


VIT:500


INT:100


AGI:600


称号:異世界者、前世を思い出す者、魔刀の父


スキル:王女の加護、運命女神の加護、刀剣マスター、凍華の箱、魔刀の義眼


EXスキル:刀剣術


契約:凍華/桜花



「何か、ステも上がってるしスキルも増えてるな」

 ステータスが上がった理由はわからん。

 昨日は廊下を歩き回って、シエル姫と話をした後は寝ただけだし……。

 増えたスキルの【凍華の箱】と【魔刀の義眼】はきっと凍華・桜花と契約したから増えたスキルだろう。

「ふーむ……」

 俺が考えて居ると、こちらの様子を見ていた佐々木があっと声を上げる。

「一ノ瀬君、目……目が……!」

「え? あ、あぁ……」

 シエル姫も触れてこなかったから完全に気にしていなかったが、そういや俺は目が治っているんだったな……

「まぁ、色々あって治った」

「色々って……担当医師として気になるんだけど?」

 コイツ、俺の担当医師だったのか!

 まぁ、瀕死の俺を治療したのが佐々木だって話だったから妥当な所なのか?

「まぁ、気が向いたら話すよ」

 流石に、佐々木の事を完全に信用出来ていない現状で桜花の事や魔刀との契約について話すのは得策ではないだろう。

 情報がどういう風に漏れるかもわからないし、それがどういった影響を俺に及ぼすかもわからない。いや、俺だけだったらまだどうにでもなるかもしれないが、桜花がそれに巻き込まれてしまうのは俺としても望むところではない。

「むぅ……わかった」

 若干不貞腐れている感じだが、思ったよりもあっさりと佐々木は引いてくれた。

 ならば、俺は俺でやる事をやろうと思い【凍華の箱】を使いたいと強く思う。

「ん……?」

 すると、俺の目の前にあったテーブルの上に長方形の大きな箱が出現する。厚さと高さはさしてない。

「なにこれ?」

 佐々木も興味を示して箱を見る。

「ふーむ……カギでも掛かっているのか全然開く気配がないな」

 開けようとしても、ガッシリと固定されているようで開く気配はない。

 どうしたものかと考えて居ると、桜花が俺の服を引っ張って来るのでそちらに目を向けると、凍華を俺に差し出していた。

 桜花の意図はわからないが、別に受け取りを拒否する理由もないので受け取ると、箱の方からガチャリと鍵が外れる音がしたので思わずそちらに目を向けてしまう。

「え……? まさか、開いたのか?」

 箱に手を掛けてみると、先ほどまでの閉まり方が嘘のようにあっさりと開いたが中には何も入っていなかった。

 隠し底でもあるのかと思って手を突っ込んでみたが、やはり何もない。

「服でも入ってればよかったんだけどな……」

 落胆気味に言うのと同時に手に何かが触れる感触。

「ん……?」

 触れた物を掴みあげると、そこには黒いズボンとシャツがあった。

「まさか……求めた物を思い浮かべないと出てこないのか?」

 服をテーブルに置き、試しに凍華が出してくれた緑茶が欲しいと思って見ると木で出来た筒が出て来た。

「……茶葉だ」

 開けてみると、そこには緑茶の茶葉が入っていた。

「なるほどなぁ……結構便利に出来てるんだな。仕舞う時はどうすればいいんだろ?」

 試しに箱に緑茶が入った筒を入れてみると、一瞬で消える。

 これで、仕舞い方と出し方がわかった。

 プラスで服も手に入った。

「まぁ、何はともあれ……服が手に入ったから、買い物にいけるぞ!」

 色々あったが、異世界での初買い物に心を躍らせるのだった。

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