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矛先

「さて、とりあえず自己紹介でもしますか?」

 目の前に座って居るドレスを来た少女が俺にニッコリと微笑む。

 現在、俺と桜花そして佐々木はテラスにある丸テーブルを囲んで座って居る。

 そんな俺たちをニコニコと笑って見ている少女。

「どうしてこうなった……」

「あ、あはは……」

 俺の言葉に佐々木は苦笑いを零している。

 そもそも、俺たちがここに居るのはあの後廊下を失意のままに歩いていたら、この少女に捕まったのだ。拒否しようとしたが、佐々木の慌てようからしてこの国の上層部に属する人だと判断してこうやって付いてきたのだ。

「では、私からしますね。私は、ここ、エスティアの第三王女であるシエル・フォン・エスティアです。初めまして、一ノ瀬 祐さん」

「どうも……てか、俺の名前知っていたんですね」

 正直、敬語は苦手だから色々とおかしい所があるが、シエル姫はどうやら気にしていないみたいだ。

 てか、俺の名前を知ってるなら別にこっちが自己紹介をする必要はないか?

「ええ。ミサキから聞いていますから。確か、ミサキとは【――】という関係なんでしたっけ?」

「っ……。あ、はい。そうです」

 俺と美咲の関係はやっぱり聞こえなかったが、聞こえないという事は正しいという事なんだろう。とりあえず、肯定しておく。

 肯定すると、シエル姫は満足そうに頷いた後に首を少しだけ捻って唸り始める。

「やっぱり、敬語はなれませんね。崩してもらっていいですよ」

「……」

 国の王族がそれでいいのか?

 判断を仰ぐためにチラリと佐々木の方を見ると、困ったように笑いながら小さく頷く。

 どうやら、シエル姫のコレは俺だけにした事ではないみたいだ。

「そうしてくれると助かる。それよりも……よく、あの時に俺の事がわかったな。会った事はなかったはずなんだけど……」

「ふふ……ミサキから貴方の特徴は聞いていましたから。それに、そんな恰好でユミを連れて歩いていれば私じゃなくてもすぐにわかると思いますよ?」

 言われて、自分の恰好を見るとあからさまに『私、病人です!』と言っているような脱ぎやすい簡易的な病人服を着ていた。

 なるほど。確かにコレならすぐにわかるだろう。

「なるほどな……。それで、何で俺たちをここに招待したんだ?」

「……貴方達とお茶をしたかったから……と言ったら?」

 クスクスと笑いながらこちらを見るその目は、明らかに試しているような色をしていた。

「……舐めないでほしい。それに、今は少々気が立っているんでね」

 スキルもステータスもレベルもないが、真っ直ぐと睨みつける。

「ふふ、すいません。でも、呼んだ理由は正にその苛立ちの原因ですよ。まぁ、貴方に興味があるのも間違いないので、お茶をしたかったというのも正しいですけどね」

「……美咲は、本当に魔王の嫁だったのか?」

「貴方はミサキが魔王の武器になる所をその目で見たはずでは?」

「それは、そうだが……」

「……信じたくないという気持ちもわかります。ですが、それは事実です」

 スッと細められたシエル姫の目が真っ直ぐに俺を貫く。

 そんな視線に耐えられず、俺は目を逸らすしかない。

「今回、魔王が襲撃を仕掛けて来たのはミサキ目当てで間違いないでしょう。そう考えると、現状のミサキに対する周りの態度は仕方がないものかもしれません……」

 シエル姫はそこまで言って、一度言葉を切った。

 そして、そのまま今度は細められていない目で真っ直ぐと俺を見つめる。

「ですけど、それは本人が望んだ事ではありませんし、ミサキはみなさんを助けたがっていました……それに、元はと言えば私達が皆さんを召喚しなければ、こんな事は起こらなかったはずです……」

「一つ、教えてほしい。美咲に関して吹聴してるのは、誰なんだ?」

 シエル姫は俺の言葉にそっと目を伏せる。

 その表情は一種の覚悟を決めるように引き締まり、唇は強く噛まれていた。だが、一分くらい経つと、シエル姫はそっと目を開き――

「私の姉……第二王位継承権を持っている、サシャ・フォン・エスティアです。」

 ――そう、答えた。

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