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【本編完結】君のために繰り返す~前世から続く物語を終わらせます~  作者: 夜桜詩乃
第九章 未来へのメッセージ
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彼らは出会う➁

予約投稿の時間が明日になっていたためにこの時間に更新です。

すいません……。

 森を抜ける直前、まさに視界が広がった瞬間に地面を大きく蹴って前方に密集している兵士達を飛び越える。


「よかった……」


 チラリと下を確認すると、兵士達に守られるようにして立つユキの姿を確認出来た。

 長男と次男が震えて座り込んでいる中で、震えながらも二本の脚で立っている姿に関心した。やはり、ガンダルの子供なんだな、と。


白華しろか!」

『はーい』


 白華の鍔の上に付いている刃物に親指を押し付け、とりあえずは亡霊騎士を処理して軍を撤退させようと判断した所で前方から凄まじい魔力の圧が叩きつけられた。

 さっきと唯一違うところは……ソレが向かって来ているという所か。


「――ッ!?」


 着地場所を探していた視線を急いで前方に向けて見れば、黒騎士ヤツは目の前まで迫っていた。


 衝撃――回る視界の中で背中が異常な痛みに襲われる。

 土煙が立ち込める視界の中でようやく地面に叩きつけられたんだと理解した時には、ほぼ直感で地面を転がっていた。


 二度目の衝撃が地面を揺らした。

 さっきまで転がっていた場所に、黒騎士が土煙を全て吹き飛ばしながら大剣を突き刺して立っている。あと少し、俺の反応が遅ければ串刺しになっていた。


「……」

《……》


 急いで立ち上がり、距離を少しだけ取って白華を構えると、黒騎士もゆっくりと立ち上がって俺の方を見る。

 全身真っ黒な鎧に右肩に掛けた赤いボロボロのマント。フルフェイスの奥からは、ソレが目なのか赤い点が点滅しながら俺を見つめていた。


「あぁ……」


 そして、俺は正しく理解した。

 この黒騎士は間違いなく、俺よりも強い。それこそ、今まで戦って来た中で言ったら【剣聖】と同じくらいだろう。


《……》


 黒騎士が大剣を構える。

 その構えは堂々としており、力強さを感じて肌を焼くほどだった。


装填セット


 どっしりと構える黒騎士に対してジリジリと間合いを詰めながら、残り二回となった魔法を準備する。

 恐らく――というか、確実に素の俺が黒騎士に攻撃を当てた所でダメージはおろか、その甲冑に傷一つ付ける事は出来ないだろう。

 ならば、俺に残された手札は残り二回の魔法で倒しきる――コレしかなかった。


発射インパクトッ」


 魔法を発動して一歩踏み込む。

 白華の間合いまで五歩という所で踏み込んだ速度は、魔法も相まって正に神速だった。後は、残りの四歩で勢いを確保すれば速度を伴った斬撃を叩きこめると判断していたが、ソレは浅知恵だったと理解させられた(・・・・・・・)


「うっ……!?」

《……》


 俺が一歩踏み込み終わる頃には、既に黒騎士との距離は無かった。

 苦し紛れに白華を振るうが、それすら簡単に弾かれる。お返しとばかりに振られた大剣を受け止めようとするが――


「おっも……ッ!!」


 ――あまりの重さに拮抗する事さえ許されなかった。

 上から押さえつけられるように白華が地面へと叩きつけられ、体勢を崩された所に黒騎士の握り固められた左腕が振るわれた。

 全てを壊す、破壊の権化。理不尽の塊は性格に俺の顔面を狙っている。


「――チッ」


 顔を背ける事でどうにか拳を避けるが、掠っただけで皮膚が避けた。

 熱を帯びた痛みを感じながらも両足に力を込めて、下がるが黒騎士がソレを許すはずもなく俺と一緒に距離を詰めて来る。


「……っ」

《……》


 大剣が閃き、一撃一撃が即死だと判断できる威力の斬撃が無数に振るわれる。

 俺は、ソレらを防御するしかなかった。


 白華と大剣が互いを喰らおうと刃を噛みあい、火花を散らす視界の中で黒騎士は全力を出していないという事を察した。

 コイツが振るう剣からは余力をまだまだ感じたからだ。


「舐めるなっ!!」


 黒騎士の斬撃が途切れた所で攻勢に出ようとするが、やはり動き出しを潰される。


「っは――」


 そこで、魔法の効果が切れた。

 重くなる身体と元に戻る視界。ソレは一瞬の隙だったが、間違いなく俺の命を刈り取る致命的とも言える隙だった。


『舐めてるね……』


 白華の声が脳内に響く。

 理由は明白だった。黒騎士は隙があったにも関わらず攻めて来なかったのだ。

 ただ、黙ってその場に剣を構えて立つ姿からは何を考えているのかは理解できない。


「ははっ……」


 笑いが込み上げて来る。

 きっと、黒騎士からしたら俺などそこら辺の雑兵と変わりないのだろう。そのことが頭に来ないかと言われれば勿論頭に来るが、そんな事はどうでもよかった。

 ただ、考える時間が確保できそうだと思った。


「足りないんだ……」


 技術も力も何もかもが黒騎士に劣っている。

 ならば、ソレを補う必要がある。もしくは、どれか一つでも上回るしかない。


装填セット


 だが、活路を見つけるにしてもこの魔法だけは絶やす事は出来ない。

 素の俺では、黒騎士とまともに打ち合う事さえ許されないのだから。


「ふぅ……」


 白華を構えると、黒騎士の腕が僅かに上がった。

 やはり、俺が動き出すのを待っているようだ。


「思い出せ……」


 今まで戦って来た中で一番強かったのは剣聖だ。

 ならば、剣聖の戦い方を全て思い出せ。弱者は強者から戦い方を学ぶしかないのだから。


「そうだ……」


 ゆっくりと身体を前へと倒す。

 剣聖の戦い方を全て思い出し、その全てを自分へと当てはめていく。


「アイツは……引かなかった」


 剣と刀では戦い方が違う。

 だから、真似るんじゃなく応用する事こそが重要だ。


「アイツは……守らなかったッ!! 発射インパクトッ!!」


 前へと出る。

 低い姿勢からの攻撃を黒騎士は難なく受け止め、反撃のために大剣を僅かに傾けた。だが、その僅かな隙間を狙って再度白華を振るう。


 一手譲ればその先も全て譲る事になる。

 とっくに理解していたはずなのに、俺はいつの間にかその事を忘れてしまっていた。いつからか、死なないように戦って来た。

 だが、そんなのは甘えだ。

 俺が進むべき道は茨の道。死を恐れてはその手に何も握る事さえ出来ない。


 だから、前へ――!!


《……》

「ぐぅっ!!」


 黒騎士が笑ったと感じた後、速度が更に上がる。

 それに対応すれば、更に上がる。

 もはや、大剣で出せる速度ではない。だが、現に、俺へと振るわれている死神の鎌はその速度を出している。


 避け、斬り返し、弾き、斬り返す。

 互いに下がる事がない攻防。そこにお上品な剣技など無く、あるのは実戦で鍛え上げられた粗削りな……相手を葬る事だけを考えられた無骨な剣だけだった。

 

 何度、死を実感させられたかわからない。

 大剣を紙一重で避ける度に冷や汗が流れ落ち、拳が間近を通過する度に死んだと思った。

 だが、それでも前に出るのを辞めなかった。


「……ッ!」


 一撃に対して二撃返し、二撃に対して三撃返す。

 手数では俺が勝ったが、それでも傷は俺にだけ増えていく。どれだけの全力を出したとしても、目の前で大剣を振るう黒騎士に傷一つ与える事は出来なかった。


 永遠に思われる剣戟の中で、終わりは唐突にやってきた。


「……うっ!」


 魔法が終わったのだ。

 無理矢理、限界を超えさせていた身体は悲鳴を上げて動きを鈍らせる。


「しまっ――」


 そこに振るわれた大剣を何とか白華で防ぐも、全てが素に戻ってしまった俺に黒騎士の剣を受け止める事など出来なかった。

 故に、飛ばされ、何とか着地しても身体は限界を訴えて膝を付かせる。


『ユウッ!』


 白華の叫びを聞いて視線を向けてみれば、そこには大剣を振り上げる黒騎士の姿があった。

 避ける力なんて残っていない。

 白華を杖替わりにしてなければ、今頃倒れている身体で振り下ろされんとしている大剣に対応する事など出来るはずがない。


 だが、それでも、だ。


「ぐ……ぅっ……」


 諦める事は出来ない。

 こんな所で立ち止まれるのであれば、とっくの昔に俺は諦められている。ソレが出来ないから、こうしてこんな所まで来て戦っているのだ。


「動け……」


 衝動が全身を駆け巡り、理性さえも前に出ろと叫ぶ。

 本能が死を予告し、感情が大声を上げた。


「動けええええええええッ!!」


 大剣が振り下ろされる瞬間、叫んだ声に反応するように黄色の花弁が一枚視界を横切った。

沙織「裕って筋肉ムキムキじゃないよね」

裕「突然どうしたんだ?」

沙織「いや、ガンダルさんとかはムキムキだからわかるんだけど、裕って引き締まってはいるけどムキムキじゃないよね? なのに、走る速度とかが速いからなんでかなぁって」

白華「ソレは私が説明するよ!!」

裕&沙織「!?」

白華「何故、ユウが見た目に反して異常な力を発揮できるか! それは!!」

沙織「それは……!?」

白華「私と契約しているからだね!!」

沙織「えぇ!?」


裕「長くなりそうだから次回に続く、と……」


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