選択1
お久しぶりです。
色々とあって更新が遅れてしまいましたが、よろしくお願いします。
窓から差し込む月の光に照らされて白銀の髪はキラキラと輝き、一糸纏わぬその白い肌は更に透明感を増す。
暗闇の中でその目は戦闘中の俺みたいに紅く染まっており、その表情は妖艶な笑みに彩られていた。
俺が起きた事に気付いたのか、白華は笑みを深めた。
「ユウ」
成長した白華が俺の名前を呼ぶ。
声も幼い印象を残しながらもしっかりと成長しており、その声は耳をくすぐり脳の奥を溶かすほどに甘い。
「白華……」
「見て、ユウ。私こんなに大きくなったよ? 力も前よりももっともっと強くなった。これからは今まで以上にユウの力になれるよ」
「なにを……」
「もう、ユウには私以外いらないよね? だって、私一人居ればユウの邪魔をする敵は全部殺せるんだから。鈍を何本も持ってても意味なんてないもん。あっ、もしかしてその腕とか目の事を気にしてる? そうだよね……対価として持っていかれた物だったら元々あった物だから返ってくるってわかるけど、修復された物は戻るか不安だよね……でも、安心して、ユウ。今の私なら全部修復できるから」
白華は一気に捲し立てるように言葉を紡ぐ。
その顔は笑顔なのに、眼だけはどこか据わっていてジッと俺の顔に目線が固定していて動かない。
「何が……言いたい……」
「ん~? 本当はわかってる癖に、そういうの言わせたがるんだ?」
確かに予想は出来る。
だが、それが合っているとは言い切れない。いや、むしろ間違っていてほしいとさえ思う。
「でも、いいよ。私はユウが望むことなら何でもしてあげたいし、ソレを望むならちゃんと言うね?」
白華が小さく息を吸い込む。
まるで、告白する前の人間みたいにどこか緊張したような雰囲気を出し、自らの気持ちを抑え込むように胸に手を置いて、ゆっくりと息を吸う。
「ユウ、私以外のみんな殺しちゃおう? 鈍なんて何本も持ってても意味ないし、私一人居ればそれで十分でしょ?」
そっと右手が差し出される。
その手を取ってしまえば後戻りする事は出来ないと本能的に理解できる。きっと、文字通り全てを斬るまで俺は止まれないだろう。
だから、その手を取る事は――
「ユウはもう人間じゃないんだよ?」
「――ッ」
「だって、そうでしょ? 心臓を貫かれて生きてる人間なんて居ないよ? そんなの、人間じゃないよ――ただの化け物じゃん」
カチリと脳内で何かにヒビが入った音がした。
あの一件以来考えないように止めていた思考がゆっくりと動き出す。
「私はユウよりも長く生きているから言えるけれど、人間っていう生き物は自分たちと明らかに違う生き物は否定したがるの。例えば、人よりも強い力を持っているとか、他の人にはない何か不思議な能力を持っていたり……そういう人は最初の内は崇拝されたり頼りにされたりするけど、最終的には誰からも拒絶される運命なんだよ」
きっと、ユウもそうなる。
白華の言葉は説得力があった。
ふと、追跡者に言われた言葉を思い出した。
『魔刀は全員悲惨な最期を迎えているんだよ』
白華もきっと、俺が想像できないような悲惨な最期を迎えているんだろう。
「ほら、手を取って? ユウの事を受け入れられるのは私しかいないよ」
そう言ってニッコリと笑う白華は誰もが振り向くほどに綺麗だった。きっと、俺が今まで生きてきて見て来たどの笑顔よりも純粋で……どの笑顔よりも深かった。
俺は魔刀達が経験したように人々に否定されるだろう。どれだけの功績を立てて、物語の主人公のように世界を救ったとしても否定されて裏切られて最期にはどこかで事切れるという確信があった。
「そうか……そうだったよな……」
前世である純がそうだったじゃないか。
強すぎる力は、否定されるしかないんだ。
選ぶべき道は決まった。




