九十五話 能力値測定
あの後、すぐに3年生と思わしき人たちに、幾つかの団体に分かれて別々に案内された。
校庭? すごい広いけど。他の団体はどこに行っているのだろうか。
不思議に思っていると、案内してくれた3年生……3年生であってるよな? この世界の高校3年生の身長が分からないから、確証は持てないが、とりあえず案内してくれた人が、団体の全員が見えるような位置に立って、
「これから魔王様が言っていた通り、能力値の測定を行う。僕がこの団体を仕切らせてもらう3年生だ。よろしく頼む。最初に魔法適正属性と適正率を調べるから、二列に並んでくれ。二人ずつ調べていく」
3年生であっていた。
そう思いながら、言われた通りに二列に並ぶ。
「お、おい、お前魔法に自信あるのか? なんでそんな堂々としてるんだよ」
「………………」
俺の後ろに並ぶ必要はどこにもないだろう、陽キャよ。
俺が今堂々としているように見えるのは、結果が分かっているからだ。
ちなみに今陽キャに答えなかったのは、普通に話したくなかったのと、冷静になるとやっぱり話せなかったからだ。
俺は魔法が使えない。つまり適正率が無いのだろう。別に緊張する要素は無い。ただ、問題はその結果が出た時の、他の人からの視線だな。
俺は情けないことに、無様な結果を見た時の他人の冷ややかな視線に耐えられる気がしない。
さて、どうしたものか。
結果が出た瞬間に顔を背けるとか、そういうことをすればいいのだろうか。
でも、そうしても視線が消えない可能性もある。そのあとの行動も考えた方が良いかもしれないな。
走って距離をとる? でも俺のステータスで走ったところで取れる距離はたかが知れてるし…………うーん、あとは………、
「次!」
堂々とするのは無理だしなぁ。
それができないから逃げの手を考えてるわけだし。
「………次!」
気配を限界まで消して、こっそり離れるか?
あー、いいかもしれない。
「つ・ぎ!」
ああ、俺か!
考えてたから聞いてなかった。
急いで、呼んできた人のところへ行く。
この人も見た感じ、3年生かな?
「この水晶に手をかざして魔力を流せ」
簡単だな。でも、魔法適正属性と適正率って技能で分かるんじゃないのか? 人手が足りなかったとか?
まあいいか。
言われた通り、目の前にある水晶玉に手をかざして魔力を流す。
特に水晶玉に変化は見られない。もしかしたら水晶玉の変化はないのかもしれないが、多分魔法が使えないからだろうな。
「なるほど………分かった。もう行っていいぞ」
なにやら憐れみの表情で見られた。
なるほど、やっぱり結果は良くなかったか。
後ろで他の人たちがざわつき出してるもん。
俺は考えていた通りに顔を背け、ゆっくりとその場を後にした。
このまま何事もなく……と思っていたのに。
「お前、なんだあの結果! 自信あったんじゃなかったのか?」
この陽キャ、本当面倒臭い!
俺以外に話すやついくらでもいるだろ! というか結果が不味いと分かってるんだったら、むしろ話しかけないだろ普通!? 俺の精神状況を考えろや!
と大声で言えたらどれだけ良いか。
「確かこういう時は…………はっ、そうだ! あとは任せろ、仇は俺が討つ!」
なんの仇だ。
まあ、頑張ってくれ。なにやら緊張はなくなったらしいし。
番が終わったら、列の最後尾に戻ればいいらしいので、こそこそと最後尾に戻った。
すると今度は隣の列だった奴に話しかけられた。
「おいお前、結果見たぜ。魔法使えないみたいじゃねぇか! どうしてこの学園に入れたんだ、教えてくれよぉ!?」
あーー、また面倒臭い奴だぁ。しかも異世界転生もののテンプレだぁ。馬鹿にされて、ここで何か言おうものなら、いちゃもんつけて戦わないといけないやつだぁ。
だが、俺はその挑発に乗るほどの度胸もコミュ力も持ち合わせていない。
つまり俺のとる行動は………無視。
「…………………」
「おいおい、無視ですかぁ? あっ、分かった。人には言えないような方法で入ったのか、そうだろ? となると金か? うん、金だなぁ」
理事長である魔王様が金だけで動くとは俺には到底思えないのだが。
まだあの魔王様をほとんど把握できていないが、正直それこそ無理だと思う。
さっきのこいつの言い方的に、魔法が使えないとこの学園に入れないらしいが、金を積んだだけで入れるようなところでもないだろ。
だってあの魔王様が理事長だろ?
なるほど、こいつは俺を怒らせたいだけなのか。
だが、先の俺の行動で分かっただろう。というか分かってたよな。そうだ、俺がするのは無視一択だ。煽る相手を間違えたな、今この状況で俺ほど面倒臭い奴はいないだろう。
「どのくらい積んだら入れるのか、参考までに教えてくれよぉ」
俺が知るわけないだろ。
金で入学できるなら、俺は金で退学するわ。俺の代わりに誰かを入学させてくれ。
そしてこいつも飽きないな。俺は全く相手にしないし、相手にできないぞ。いくら君が煽ろうと、俺は君と話せないから。
「100万? 200万?」
えっ、そんな高いの?
俺、学校なんて行きたくない人だったから、どのくらい金払えば学校入れるのかなんて知らなかったよ。
へー、そんな高いんだ。それだけ払って入学した後に、学費も払わないといけないんだろ。親も大変だな。
そして早く、俺に話しても無駄だと分かってほしい。
正直ネット小説の主人公くらい強がってはいるが、君に話しかけられてる間、内心ガクガクだから。
むしろテンパりすぎて、ここまでスラスラと頭の中で色々と浮かぶだけなので。
「あれ、もしかして桁が違った? ごめんごめん……」
「…………………」
「なぁ、謝ってんだろ………なんか言えよ、無能野郎!」
気の短い方だったのかぁ!?
やばい、殴られる! 俺のステータスじゃ対応できない。
入学にあたって、『自己再生』の再生速度を制限すると決めて、今も守っているため、殴られたら今までよりも痛いのが続く。
ちなみに再生速度を制限するのは、傷が即時再生するのを見られて、気味悪がられて悪目立ちするのを防ぐためだ。
なんて考えてる間にもう拳が目の前ぇ!
「おい、仮にも同じ学び舎の仲間だ。殴りかかるのはやめておけ」
寸前で拳が止められた。仮面に当たる風を感じた。怖。
なにやら渋い声が聞こえたが、一体どんな奴が………恐る恐る閉じていた目を開けると、そこにはメガネ3年生と同じぐらいの身長のガタイのいいイケメンがいた。
煽ってたやつの腕をガッチリと掴んでいた。
俺を煽ってた奴は、全力で力を入れているようだが全く動いていない。
イケメンのステータスが煽り野郎と差がありすぎるのか。
「くそ! くそ! 放せぇ!」
「なら放そう」
思いっきり後ろに力を入れた状態で腕を放されたせいで、後ろに倒れた。
割と注目されてたようで、列で順番を待つ奴やもう終わった奴らが、煽り野郎が倒れている姿を見て笑いをこらえていた。
羞恥に襲われたようで、煽り野郎は顔を真っ赤にしながら立ち上がると、イケメンを恨めしそうに見て、すぐに顔を真っ青にした。
なんだこいつ、忙しい奴だな。
「お、お前……その顔、まさか入学試験トップのクラウス・エドガーか!?」
「む、いかにも俺がクラウス・エドガーだが」
「く、くそ!」
そう言って、煽り野郎が逃げて行った。なんで逃げるんだ。
そして、この団体を仕切るとか言ってた3年生に追いつかれ、怒られてから列に戻ってきた。
すごい恥ずかしそうだった。同情せざるをえない。俺のせいで申し訳ない。
「仮面の君。怪我はないか?」
ああ、申し訳ない。クラウスさんとやら。
俺には残念ながら君と話すだけのコミュ力を今絞りだせない…………申し訳ないが、首を振ることで返答とさせてくれ。
俺は首を横に振った。
「そうか、それは良かった。だがいくら何でも無反応は危ないのではないかね。彼のステータスも中々のものだ。この学園に入学しているのだから」
まあ、リルファーの速度に若干慣れた気がする(自慢ではない)ので、見ることはできたが。
クラウスさん、あなたは勘違いしている。というか俺の種族を聞いたらすぐに気づくと思うが。
俺のステータスでは対応はできないのだ。見ることはできたと言っても、見えただけ。動くことはできなかった。
「まあ、いらないことだったのなら謝るがね。君、トーナメントで『強欲』の魔王と戦った『龍人』だろう? 見ていたよ。素晴らしい戦いだった」
トーナメント見てたか。
「君と3年間、同じ場所に通えるのだから、ここに来た甲斐があったというものだ」
「おーい、俺3年生に褒められたよぉ! なーんだ、3年生って怖い人ばっかりじゃなかったんだな………って、うわ!」
うわー、面倒臭いのが一人増えたぁ。
このクラウスさんもなんかずっと一人で喋ってるから、なんとなく面倒臭いのが伺える。
そこに陽キャまで加わったら、俺が耐えられなくなる気がする。
「お前、なんで入学試験トップのクラウス・エドガーと話してるんだよ!?」
あのね、なんで君は俺とクラウスさんが話してると思ったんだい?
あの人が一方的に話しかけてきただけだろうが。俺一切言葉を発してねぇよ。
こいつやっぱりバカだ、嫌になる!
「えぇと、君は……?」
ほら、クラウスさん困ってるよ! 急にテンション高い奴が入ってきて困ってるよ!
「俺はフィンレー。フィンレー・ホワードだ。こいつとは…………あれ、そういえばどういう関係?」
俺が聞きたいんだけど。むしろなんで俺に聞くの? 強いて言うなら、入学式前に一緒に迷っただけだよ。
「フィンレー君か。よろしく頼むよ」
「お、おお。こちらこそ」
「フィンレー君は、彼がどういう人か知らないのかい?」
「ん? なんかしたのか? まさかお前、犯罪者だったり?」
まあ、確かに何かしら犯罪を犯してそうなほど不審な格好ではあるけども。
さすがに犯罪を犯してないです。
「ははは、違うよ。彼はトーナメントであの『魔王種』と戦い善戦した『龍人』なんだ」
「……………………え?」
何この人言いふらしてるの!?
いや、俺は喋りたくないから肯定も否定もしないけどさ。
見ろ、フィンレーと名乗ってた陽キャが固まってるぞ!
「彼の戦いぶりは、それはもうすごいものだった。君は見ていなかったのかい? およそ『龍人』とは思えない攻撃を幾度となく放っていた」
何やら一人で語っている。本人が目の前にいるのに、そういうこと言うのはどうかと思うんだけど。ちょっと引くのと同時に恥ずかしいから。
過剰評価だと思うんだけどなぁ。
とりあえずこの一人語りを止めようと思って、クラウスさんの口元を塞ごうとするが、身長差が………。
だが、クラウスさんは気づいてくれたようで、
「おっとすまない。あまり大声で言われたくはないようだ」
俺は勢いよく首を縦に振る。
「そうか、謙虚なんだな君は」
「な、なあ。お前本当に『魔王種』と戦ったのか?」
驚いたようにそう言ってくるフィンレーに頷きで返した。
まあ、それだけ珍しいって事なんだろう。本来なら戦えないような立場だもんな、『魔王種』って。
「本当なのか。すごいなお前」
感心されてしまった。
ストレートに褒めてくるあたり、こいつやっぱり陽キャなんだぁ、と思った。
そのあとも他愛ない話をした。もちろん俺は相槌だけだが。
そうして待っている間に全員の魔法適正属性、適正率の調査が終わったらしい。
「次に魔法の威力を調べる。そのままついてきてくれ」
魔法の威力なんて調べて一体どうするんだ?
また言われた通りについていくと、この場所の端の方に来た。的らしきものが見える。あれに向かって撃つのだろうか。
「よし、そこで止まってくれ。今度は四列だ。全員、全力の魔法を放つように。倒れてもすぐに医務室に運ぶ用意がある。安心して撃ってくれ。的も特殊な素材でできているためまず壊れないだろう」
確かに的は四つあるな。
俺は適当にやり過ごすとして、クラウスさんみたいにすごいやつなら的壊しそうだけどな。
どうやらクラウスさんも同じことを思っていたようで、
「あの」
「ん? なんだ?」
「的が壊れないように加減した方がいいでしょうか?」
「いや、的は予備がある。壊しても構わない」
「いえ、そういうことではなくて」
えっ、違うの?
「全力だと的の後ろの壁まで壊してしまいそうなので」
やべぇ、クラウスさんやべぇ。
「なるほど、だがこの学園の壁は魔王様自ら強化魔法を施して硬度を限界まで上げている。壊れる心配はない。全力でやってくれ」
「そういうことでしたか。すいませんでした」
へー、そんなに硬いのか、あの壁。俺にはただの壁にしか見えないんだけどな。
「ふむ、あの的は壊せるな。壁が壊れるか試してみたい。久しぶりに本気でいくか」
的を壊すことは確定なんだな。
すごい自信だ。
それに比べてフィンレー、あんたは。
「お、俺的壊せるかな……」
張り合ってるわけじゃないんだよなぁ。バカだから、的を壊すのがノルマだと思ってるだけなんだよなぁ。
とりあえず全力の魔法を的に当てるだけでいい、ということを伝えたいのだが身振り手振りでは伝えられない気がしたので、やめておいた。
そして、どうしてまた俺の後ろに並ぶんだ。
今度は四列なので順番が回ってくるのが早い。もう前から数えて3番目だ。今のうちに前の人の魔法の威力を見ておこう。
「『炎槍』!」
炎の槍が的を貫く。と思ったのだが、的は貫かれてもいなければ、焼けてもいなかった。
無傷となるとあの的の素材が気になる。そして、あれくらいでいいのか。よし、俺もあのくらいの威力の魔術にしよう。
魔法が使えないのはさっきので学園側も分かってると思うし、順番が来てから魔術の構築を始めよう。どうせ今の『自己再生』の再生速度じゃ並列思考も直列思考もするのがしんどいし。
前の人の順番も終わって、次俺の番となった時に、隣の列はクラウスさんが順番だった。
「お互いに頑張ろうじゃないか」
そうは言われても。
「あぁ、確か貴方は魔法が使えないんでしたね。魔術なら使えるでしょう。時間は気にせずに撃ちなさい」
測定する人が優しかった。
じゃあ、お言葉に甘えてクラウスさんの魔法の威力を見てから構築始めよう。
「先に行かせてもらう。『炎天龍』!」
魔法版の『炎天龍』がクラウスさんの手のひらから放たれた。
俺の『炎天龍』は東洋の龍だが、クラウスさんのは西洋の竜だった。
炎でできた体で直進。衝突、と同時に的が耐えきれず崩壊。竜はさらに直進し、壁に激突。大きな音がした。
あまりの大きさに耳を塞いだ。多分ほとんどの人がそうだと思う。少しの間砂埃が舞って、収まると壁に僅かなヒビがはいっていた。
あの威力の魔法で壊れない壁って、どんな硬度だよ。
「君の『炎天龍』には及ばないがね」
いやいやいやいや、どう考えても今の方が威力高いだろ。
俺のじゃ無理だよ。
できうる限りのスピードで首を横に振る。
「そうかい? 君は本当に謙虚だね」
買いかぶりすぎだ。
っとと、俺も魔術構築しないと。
イメージするのは炎の槍。見た目は割と適当に、威力も抑えて、と。
うん、これくらいだな。
「『炎槍』」
普通に放たれ、普通に的に当たり、若干的を揺らして霧散した。
うん、こんなもんだろ。
クラウスさんのほうをちらっと見ると、呆気にとられたようにこちらを見ていたが、すぐに平静を取り戻し、
「なるほど。本当の力はまだ見せないというわけか」
確かに時間をかければもっと威力の高い魔術を使うこともできるが、正直頭が疲れるのでやりたくない。
なので今のが俺の本当の力だと思ってもらっていいんだけどな。この人、どうにも俺を過大評価してるんだよなぁ。
魔法は使えないから分からないが、魔術と違ってイメージだけではどうにもならない才能的な部分もあるのだろう。俺としては確か属性最強の『◯天龍』の一つである『炎天龍』を使えるクラウスさんの方がすごいと思うが。
先ほどと同じように列の後ろに戻ると、クラウスさんがまた話しかけてきた。
「そういえば、君は魔法が使えないんだったよね?」
そうですが何か? 俺としては使いたかったんですけどね。
褒めた瞬間に、こっちの気にしてるところ抉ってくるじゃないか。
「ああ、別にバカにしているわけではなくてね。トーナメントでは、発動までに時間のかかる魔術をあれだけの威力、精度で即座に使えたんだ。すごいな、と思ってね」
まあ、言われれば確かにすごいことではあるんだろうけど。
俺は一回やれば感覚をなんとなく覚えてられるというのもあるが、一番に直列思考があったから、あの速さで魔術を構築できるのだ。
今の『自己再生』の再生速度だと、直列思考を使うのは難しいかな。
というわけで、クラウスさん、君が思っているような速度での魔術の発動はできないと思ってもらっていいですよ。
「でも、さっきの魔術の発動は時間がかかっていた。やはり、本当の力は隠しているようだね。いつか君を本気にさせて戦ってみたいよ」
と、クラウスさんが言うと同時に、前方で轟音がした。
耳を塞ぐ間もなく音が襲ってきて、俺の鼓膜は見事に破けた。ぐぉぉ、耳が………!
さらに、砂埃と風が襲ってきて、俺は吹き飛ばされそうになる。
それを察知したクラウスさんにローブを掴まれて、そうなることはなかった。
クラウスさんが何か俺に言っているようだが、まだ鼓膜が再生していない。
一時的に再生速度を上げて鼓膜を治してもいいのだが、ここで自分で決めたことを破ったら、これから先ズルズルと破っていってしまいそうなので、やめておこう。
それでもすぐに鼓膜は再生して、すぐに聞こえるようになる。
「ごい風圧だね! これほどの魔法を使える人が君以外にいるとは!」
最初のは『すごい』、かな?
確かにすごい威力だったな。クラウスさんよりも威力高かったんじゃないか? 一体誰が?
と思っていたが、少しして青い顔をして戻って来たフィンレーを見て、俺は全てを悟った。
「や、やっちまった。威力調整間違えたぁ」
お前かい。
いや、スゲェな。素直にそう思ってしまった。ただの馬鹿な陽キャじゃなかったんだな。
すごいと感じたのはクラウスさんも同じらしく、
「フィンレー君、すごい威力だったね! 何をそんなに悔やむことがあるんだい! 誇るべき一撃だったよ!」
「さっき、魔法適正属性と適正率の調査で褒められたって言っただろ? 適正属性はともかくとして、適正率がほぼ100パーセントだったんだ。だから、あんな威力になったんだけど、壁が壊れちまったんだ」
まぁ、そりゃ最後尾のここでも、余波がさっきのクラウスさんの魔法の音と風よりすごかったからな。壁が壊れたって言われても信じられるな。
「あの壁、クラウスでも壊せなかったんだろ? そんな硬度の壁を壊しちゃって弁償代どれくらいなんだろうか………」
「それは気にしなくてもいいんじゃないかな? 君の魔法の威力に耐えられなかったあの壁が悪いんだから。そこまで器の狭い学園でもないだろう」
そういう考え方か。なかなかワイルドですね。
そして、フィンレーは思っていたよりすごいやつだ、と。適正率ほぼ100パーセントとか。俺ゼロなのに。
才能の差が浮き彫りになった。
またもや他愛ない話で時間を潰していると、全員の順番が終わったようで、3年生が話し出した。
「これで魔法の威力も調べ終わった。次で最後だ。三人一組でチームを作ってくれ。そのチームで戦ってもらう」
三人一組でチームだと……? まずい、今日二度目のピンチだ。
俺にチーム作るだけのコミュ力はないぞ! 見ず知らずの人とコミュニケーションは不可能に近い! 助けてくれ!
そう思っていると、フィンレーが話しかけてきた。
「三人一組だってさ、一緒に組もうぜ」
あ、ありがとうフィンレー! お前ってやつは! 本当に良い奴だなぁ! バカって言ったの取り消します!
フィンレーという陽キャさえいれば、俺は何もしなくても三人目を連れて来てくれるだろう。任せた。
「あと一人は……………あっ、ちょうどいい。おーい、組もうぜ!」
誰かに話しかけた。
フィンレーが声をかけた方向を見ると、思いもよらない人が立っていた。
「あぁ、構わないとも」
「よし、これで勝ったも同然だな」
「仮にも入学試験トップだ。負けるわけにはいかないね。大船に乗ったつもりでいてくれ」
フィンレーが声をかけたのはクラウスさんだった。
こうして、大丈夫なのか心配になる三人組が組まれたのだった。




