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第三章 エピローグ 表彰式

ルナは数分してから戻ってきた。なんとなく目元が腫れている気がするが、それについて聞いちゃいけないことは分かった。


『3位までの選手が揃いましたので、表彰を行います。3位までの選手は来てください』


ちなみに、今トーナメント会場にいるのはほとんど観客だけだ。参加していた人のほとんどが決勝戦が終わった段階でいなくなり、一人、二人まだいるくらいだった。

 まあ、自分が勝ってないものの表彰見るのは嫌だろうな。

 とりあえず言われた通りに会場の中央、戦っていた場所に降りる。こうなると分かっていたら、一旦席に戻ったりしなかったのに。

 目の前には解説らしき人と、『強欲』の魔王様。

 まさか魔王様が表彰するのか? いや、立場的にはこれ以上ないほど適任なんだけど、俺としてはこんなトーナメントに参加させてくれた魔王様に表彰されるのは嫌なんだが。


「第3位、『龍人』イフリート君。まずは君からだ」


目の前まで来い、と暗に言われた気がして、魔王様の前まで移動する。

 すると魔王様は、どこからか銅メダルを取り出し、俺の首にかけてくる。


「第3位、おめでとう。これからもよろしく頼む」

「あぁ、はい」


笑顔を出してはいるが、威圧感は大いにあった。変なことを言おうものなら面倒なことになっていただろう。

 元いた位置まで戻ると、今度はルナが呼ばれた。


「次は第2位、『猫人』ルナ君」


ルナが魔王様の前まで行き、またもやどこからともなく銀メダルを取り出し、首にかけながら、


「第2位、おめでとう。君はまだ未完成で、まだ強くなれる。自分の戦い方を模索していきなさい」


こう言っていた。

 ルナにどう響いたのかは分からないが、少なくともマイナスの効果は無かっただろう。戻ってきたルナの目は敗北を引きずるようなものではなかったから。


「最後に第1位。『魔王種』オムニヴァー・グラトニー」


オムニヴァーが魔王様の前に立つ。

 だが、今度はメダルが出てこない。


「君にメダルはいらないだろう。序列を考えれば勝って当然なのだから」

「お前な、言い方を考えろよ」

「だが、それを覆した者が、ここの二人いる」


そう言いながら、魔王様が俺とルナの方に視線を送ってくる。

 えっ、なに? ここで話をこっちに振ってくるの?


「彼らは将来確実に我が国の戦力となるだろう。さて、そこで私から一つ、彼らに序列を覆した報酬を与えたい」


報酬? 金か? 金なのか?

 俺としては金が一番ありがたい。鱗でも売れば金はいくらでも手に入るのだろうが、あれを緊急時以外で使うのは避けたいんだよなぁ。アーノルドたちを買った時は除くとして。

 そういうわけで持ち金が少ないのが現状なのだ。できればあんまり人に目をつけられないくらいが理想だが、多すぎて困るわけでもないからな。

 俺がワクワクしていると、魔王様が報酬の内容を言った。


「彼らには来年から、我が国が誇る教育機関、グリードル学園高等部で学んでもらう」


きょーいくきかん? がくえん? こーとーぶ?

 なに、てことはつまり、俺とルナを学校にぶちこむと?

 俺が固まっているが、魔王様は気にせず続けた。


「年齢は高等部であっているな?」

「はい」


俺が答えられないので、ルナが答えてくれた。


「ならばなんの問題はなかろう。この国最高の学び舎だ。ルナ君、あそこでならきっと君の戦い方を見つけられるだろう」

「!」


なにやらルナはあっち側に懐柔されたようだ。

 いや、魅力的な報酬ではあるよ、俺以外にはね!?

 なんで学校が嫌で前世では不登校だったのに、転生したら学校行かなくちゃいけないんだ! 俺は学校と学校にいる人間が大の苦手なんだ!

 しかも、異世界の学校ときたら、あれだろ? よく分からない理由で貴族様か、強い奴に絡まれてキレられて、決闘みたいなことしなくちゃいけないんだろ?

 絶対嫌だね! 無理無理無理無理無理!


「ありがたいお話ですが、僕は大丈…」

「ちなみに拒否権はない」

「どうしてだコンチクショウが!?」

「昨日話しただろう。君はこの国のものだと他国に強く見せつけなくてはいけない。それならこの国の機関に入れてしまうのが手っ取り早い。幸い君の年齢は来年で高等部一年生と同じだ。それなら学園に入学させよう、というわけだ」

「俺がどれだけ学校というものが嫌いなのかを丸一ヶ月語ってあげましょうか?」

「そしてもう一つ」


おい、俺の話を聞け。

 いかにして俺が学校を嫌いになったのか、学校の奴らに何をされたのか、その時俺が何を思ったのか、ひたすら重苦しい言葉で綴ってやろう。

 聞き終わる頃には余裕で一ヶ月経っているだろうから、ちょっと聞いていけ。


「エミリー王女の希望だ」

「え、なんで………?」

「君、エミリー王女の悩みを聞いただろう? 解決策のようなものまで用意したそうじゃないか。そのおかげで彼女はいたく君を気に入ってな。それで君を学校に入れたいそうだ」

「どういう理屈だっ!」

「いいのか? 王族の顔に泥を塗って。君はどうやら極力目立たない生活を望んでいるそうじゃないか。そんな恐れ多いことをすれば、一体どうなることやら」

「トーナメントに出場させて、しかも3位で、挙句学校まで入ったら、どっちにしろ目立つけどね!?」

「まあ、そこは誤差だ」


ダメだ、こいつどうやっても引くつもりがないようだ。

 俺に一体どうしろと言うんだ。

 あっ、そうだ! また不登校に!


「毎日通ってもらい、休む日には正当な理由がない限り必ず学校まで引きずってでも連れて行くことを約束しよう。逃亡しても無駄だ。我々にはどこにいようと君を見つけ出す手段がある」

「何一つ嬉しくない!」


しかも発言のどこにも嘘がない。

 こ、こいつ本気だ!

 ああ、これはもう、どれだけ嫌でも行くしかないのか………俺が諦めるしかないのか……嫌だけど!


「ちょ、ちょっと待ってください!」


観客席から声がした。

 この声は! 間違いない、リエルだ!

 もしかして、俺を助けるために交渉してくれるのだろうか!?


「わ、私も通いたいです!」

「ん? 君は確かイフリート君の………ふむ、しかし相応の理由がなければ入学させるわけには」

「『鑑定士』を私に使ってみてください!」


リエルに言われた通りに、魔王様は『鑑定士』を使ったようだ。

 そして驚愕する。


「『森人』………200年前に姿を消した伝説の種族か! まさか会えるとは。なるほど、では学園で保護及び監視という形でだが、入学を許可しよう」

「やった!」


リエルが喜んでいる。

 うん、君が学校に行きたかったのはよく分かった。けど、俺が求めてたのは助け舟なんだよ。


「さて、イフリート君。諦めてもらえるな? どうやらお友達全員が学校に通うようだし、不満は何もないと思うが?」

「ぐ、ぬぬぬぬぬぬぬ………わ」

「わ?」

「分かり………ました」

「よく言った。これにて報酬の話は終わりにしよう。イフリート君、ルナ君、リエル君の三人は来年からグリードル学園高等部に特別入学という形で入学してもらう」


 改めて言われると、気持ちが沈む。いくら来年まで時間があるとはいえ、それまでに覚悟を決めておけ、というのはいくら何でも無理だ。

 半年もないうちに覚悟が決まるなら、俺は中学を不登校になったりしない。


「それではこれでトーナメントを終了する。改めてトーナメント第3位までの彼らに盛大な拍手をしてくれ」


あぁ、拍手されてる。

 こうして強制的に参加させられたトーナメントが完全に終了したのであった。最後に心の底からいらない報酬を貰って。



   ↓



はっ!

 気づいたらもう家の前だ。

 学校に行くのが嫌すぎて、ここまで意識が飛ぶとは。誰が運んでくれたんだろう。

 と考えていると、リルファーの背の上に乗っているということに遅ればせながら気づいた。


「リルファー、ありがとう」

「主様、正気に戻りましたか! ついさっきまでよく分からないことをずっとブツブツ呟いてましたよ。大丈夫ですか?」

「全く大丈夫じゃないけど、どうにかする」


あれ、魔王に首にかけられた銅メダルが消えている。

 まさか無意識に捨てた?


「俺、銅メダルどうした?」

「トーナメント会場を後にする前に、魔王の前で燃やしてた。怒られる前に逃げ帰ってきた」

「ま、まじか。迷惑かけて申し訳ない」

「気にしない。イフリートがそれでいいなら」


ルナさん!

 あんた、何だよその包容力! 主人公かよ! 主人公か!

 はぁ、それにしてもまさか異世界に来てまで学校に行くことになるとは。控えめに言って最悪である。こんなに不幸なことはない。

 まず間違いなく良いことはないだろう。


「イフリートさん、何でそんなに嫌なんですか? 私は二人と一緒に学校行くの楽しみなんですが!」

「私もちょっと楽しみ」

「うーん、学校には嫌な思い出しかないからな」


あんなことやこんなこと、ついでにそんなことも。

 学校という単語を聞いて最初に連想するのが、思い出すのも嫌な最悪な思い出だから。

 本当なら死んでも行きたくないのだが、魔王に向かって言っちゃったし、今さら撤回のしようがない。しかも不登校になろうと逃げようと、問答無用で連れてこられるらしいので、いわゆる詰みの状態が出来上がってしまっている。


「おい、いつまで家の前で喋っているのだ。中で話せばいいだろう」

「あぁ、ごめん」


アーノルドが出迎えて? くれた。

 確かに家の前なのに、入らずに話してたからな。

 学校に行くのは確定事項になってしまったわけだし、今更こうすればよかった、と考えても仕方ない。切り替えていこう。

 とりあえず家に入ると、ルナに、


「そう言えば、エミリー女王って誰?」


と聞かれた。

 ルナめ、突かれたくないところを突いてきた。

 エミリーのことを説明しようとすれば、必然的に俺が女装をさせられた、ということも言わなくてはいけない可能性が出てくるので、俺としては触れられなければそのままでいようと思っていたのだが。

 思い出さなくていいことは思い出さなくていいんだよ!


「えぇ、っと。魔王に連れてかれた時に、ちょっとあって」

「なんか相談も聞いた、みたいな話してたけど」

「ほとんど自慢だったよ」

「そうなの?」

「そうです、まあ特にこれといって変なことはなかったから」

「? なんで目がちょっと泳いでるの?」


あっ、この感じはやばい。

 今、ルナに不信感を持たれた。それに加え、今リビングにはリエルとルファーもいる。ここで変なことを言おうものなら、絶対に食いついてくる。

 こ、こういう時には一体どうすればいいのか、を俺は知らない。だが、助けが来るとは思えない。俺だけでどうにかする必要がある。


「イフリート? どうしたの?」

「い、いや、急に引っ張られたりしたから、ちょっと嫌な思い出がよぎっただけ」

「大丈夫? 学校に行くって決まってからイフリート元気ない」

「そうか? 俺はそれよりお前の方が心配なんだけど」

「ん、まあ負けたの悔しかったから」


よっしゃぁ! 話題を変えることに成功した!

 俺の話術のレベルが1上がった気がするぞ! 今日で一番テンション上がった気がする。


「だからこそ、強くなるために私は学校に行きたい。イフリートも一緒だったから嬉しかったんだけど、そこまで嫌だったのは残念」


シュンと落ち込んだ表情を見せるルナを見て、俺は後悔した。

 あっちの方が話術レベルが高かった! やはり俺では到底太刀打ちできない!


「…………どうにかして入学までに腹をくくります」


負けた。

 そういう意図があって言ったことなのかは分からないが、ルナの望む方に事が進んだ気がするので、俺は敗北したのと同じだ。ちょっと悔しい。

 まあ、言ってみて、やらなくちゃいけないんだ、と改めて思ったのでどうにかしてみようとは思った。


「イフリートさん、まだ話は終わってませんよね? エミリー王女と何があったのかを詳しく」

「私も気になります。主様、包み隠さず言ってください」


完璧に油断したタイミングでリエルとルファーが来た。

 一番面倒臭い時に、こいつら。


「なんにもなかったですぅ! はい、話終わり!」

「それで済むと思ってるんですか!? 絶対何か隠してますよね!?」

「主様、逃げないでください!」


俺は家を壊さないように調整して魔術を使って素早くリビングを出て、自分の部屋に逃げ込む。

 正直、行っても門まで来て体がすくむこともあるだろう。いざ授業ってなって、急にトラウマが蘇ることだってあるだろう。1日目を乗り切っても、2日目は行けない可能性もあるだろう。

 でも、頑張れる所までは行ってみようと思うのだ。ルナやリエルに、一緒に学校に行くのが楽しみ、って言われたから。

 前世とは仲間の有無が、決定的に違う。もしかしたらここでなら行けるかもしれない。

 転生してからの今までのことと比べてもブッチギリで嫌な出来事だろう。それでも……やれる所まで。

 深呼吸をしてから、一言呟く。


「俺は、学校に行く」


さあ、そのための準備をしよう。

三章はこれで終了です。予定としてはこれくらいだったので、予定通りです。初めてだ。

 そして四章は、来週からとします。

 『書いてあるんだろ! はよ出せ!』と思う方もいると思いますが、ご了承のほどお願いします。

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