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七十九話 なんかすごいらしい

『バレンタイン特別エピソード!』みたいのやりたいんですけど、今はさすがに無理ですね。

 できて来年。三章は今度こそ一、二章よりも短いはずなので、四章、の途中を想定しています。

 失踪しなかったら、来年の楽しみの0.01パーセントくらいにしてもいいかもしれないです。

うーん、思いっきり引っ張られてるな。

 景色が流れている。俺、なんで見知らぬ少女にこんなことされてるんだ。


「貴様、主様から離れろ!」

「久しぶりのお客さんをそうやすやすと手放すもんですか!」


うわぁ、身軽だぁ。

 俺を連れている、というか引っ張ってる状態で、まさか屋根の上までジャンプするとは。俺じゃあ無理だな。

 ルファー、ルナ、リエルも後ろから走ってきている。多分手加減はしつつ。本気で追ってきてるなら、絶対追いつくだろ。

 ルナは恐らく、トーナメントに向けて、少しは体力を温存していると見た。

 ルファーはちょっとふざけてるんじゃないかな。あいつ、後で話し合わないとダメらしいな。

 リエルは………まだあいつの最高速度を見てないから分からんが、おそらくあれが最高速度だと思う。一番頑張ってるなー。

 街の中で鬼ごっことかいう子供の頃、誰もが一度は夢見るだろう状況を体験しつつ、気づけば丘が目の前だ。

 ちなみに、どんな経路でここまで来たのかは、俺の龍人としてのステータスでは認識できなかった。


「はい、とりあえずここで一旦降りてね」

「うわっ、いってぇ!」


くそっ、背中が全体的に痛い。背負っていた剣がめり込んだ。

 急に地面に叩きつけるんじゃねぇ。『自己再生』で傷は治るが、痛くないわけじゃないんだぞ!


「主様、大丈夫ですか!?」

「まあ、大丈夫」

「さて、お客さん。この丘の上で待ってるから、早く来てね」


そう言うと、少女は一気に丘を登っていく。

 これは…………店に入りたければ、自分で登ってこいと、そういうことか?

 さすがにサービスが悪いんじゃないかな?


「おい、ルファー」

「はい」

「俺乗せて、あいつよりも先に丘の上まで行け」

「分かりました」

「悪い二人とも。自分たちの力でどうにかなるか?」

「当たり前」

「大丈夫です」

「じゃあ、先に行ってる。ルファー、お願い」


頼むと、ルファーは俺が背中に張り付いた状態でしゃがみ、そして一気にジャンプした。

 振り落とそうになるのに耐えていると、もう着いた。

 自分で頼んでおいてあれだが、ちょっと早すぎて引いた。

 さて、あの少女が到着するまで待つか。

 少し待つと、少女が登ってきた。


「早く来てね、ねぇ」

「早すぎでしょ!」


まあ、俺の力じゃないけどね。従魔の力だから、実質俺の力みたいなことあるけどね。

 とりあえずその不親切なサービスはどうにかしろ。


「えっ、お客さん。すごいですね」

「すごいのは、俺じゃなくこいつ。そして店まで案内してくれ」

「はーい、こっちです」


丘の上には、ポツンと店が一軒あった。

 普通の家みたいな気がするが、案内してくれてるし、鍜治屋なんだろうな。

 中に入ると同時に、少女が大声を出した。びっくりさせるな。


「お兄ちゃん! 久しぶりのお客さんだよ!」

「何!? おい、妹よ。いくら客が来ないからって、幻覚を見るんじゃな…………い」


呆れ顔で店の奥から出てきた男が、俺を見て固まる。

 大丈夫か、こいつ。

 さっきの少女の言動から、少女の兄だと分かるが。

 兄妹で鍜治屋やってるのか、すごいな。

 それにしても、動かないぞこいつ。おい、一応客の前だぞ。接客! 接客しろ!


「あのー、すいません。ちょっと、何か反応してください」

「はっ! ごめんなさい。でも、いくら金を積まれても、あいつの言うこと聞いちゃいけませんよ」

「積まれてねぇよ! ここが一番良い鍜治屋だって聞いたから来たんだよ! お前の妹には強引に連れてこられはしたけど!」

「そんなことしないよ!」


うるせぇ、本当のことじゃねぇか!

 そして兄の方は客が来なさすぎて、そう言う思考回路になってしまっているようだ。

 俺にはよく分からんが。


「……………………………本当か?」

「本当だよ!」

「そうか……………そうかぁ! よくやった、妹よ!」

「うん!」

「俺はブラクだ。よろしく頼む、久しぶりのお客さん」

「私はスミスよ」

「えぇっと、これ俺も自己紹介しないとダメか?」

「「ダメ」」


チッ、こいつら急に息合わせやがって。

 でも、さすがにフードまで外さなくてもいいだろう。


「あっ、もちろんフードも外してね」


……………そうだね、フラグだったね今のは!

 クッソ、さすがに今のは鮮やかすぎる。


「分かったよ。ほら、これでいいな。イフリートだ」

「……………………」

「……………………」

「なんだよ?」

「「か、可愛い」」

「嬉しくないからやめろ」


こいつら、息ぴったりだな。


「俺の顔はいいから、これを売りたいんだが」

「むっ、剣か。どれどれ、見せてみろ………………………………は?」


やべ、なんかおかしかったみたいだな。

 一応助けを求める準備をしておこうと思い、ルファーを呼ぼうとすると、声を出さないように爆笑していた。

 なんだ、あいつもおかしくなったのか?

 なんて考えていると、真剣な感じを醸し出しながら、ブラクが聞いてきた。


「おい、これ誰が作った?」

「どうした急に」

「今すぐ答えろ。すごい重要なことだ」

「どしたのお兄ちゃん?」

「よく聞け妹よ。この剣、神器だ」

「……………………はぁ!?」

「お前、何言ってるんだ? 神器って神が作るから神器っていうんじゃ?」

「神器ってのは神が作った武器、もしくは神が作ったと思わせるほどの魔力の籠った武器のことを言うんだ。お前のこの剣は神器と言って差し支えない。もう一度聞く、誰が作った?」

「作ってはないけど、魔力を込めたのは俺だな。元から作ってある剣に」

「元はなんだ?」

「確か、ただの鉄の剣」


ブラクは固まった。

 大丈夫か、お前。


「いや、いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやっ! おかしいから! 普通の品質の鉄の剣が神器になるとか、どれだけ魔力込めればいいと思ってるんだ!」

「数日間魔力を纏わせ続けたらなったぞ」

「数日間魔力を使い続けるのがそもそも無理だから!」


そういえばそうだな。俺は『自己再生』があるから何日もずっと魔力を使えるわけだし。

 よく考えれば、そんなことできるのは『自己再生』みたいな技能を持っている奴だけだな。

 なんて思っていると、ブラクがさらに続けた。


「しかもこれ、効果もありえないんだが」

「どんな感じなの?」

「あっ、俺も気になる」

「お前、自分で魔力込めておいて効果知らねぇのかよ!」

「『鑑定士』は持っていない」


何度か試したんだが、『鑑定士』はどうしても手に入らなかった。

 リルファーに、取得した時の何してたのかを聞いたんだが、それを実践しても特に何も起こらなかった。嘘を言っているわけでもなかったし、俺に『鑑定士』の才能がないんだろ。


「じゃあ全部言ってやるか。

 『万物切断』、なんであれ斬れる。

 『永久不滅』、絶対に壊れない。

 『破壊再生』、破壊された時に再生する。何言ってるんだ、これ。壊れないって書いてあるじゃねぇか。

 『身体強化・累』、戦闘中、身体能力が強化され、強化の倍率は時間に比例して上がる。

 『魔法上達』、戦闘中、魔法の適性率が3倍になる。

 『形状変化』、剣の形状を変化させられる。

 『疲労回復』、戦闘中、疲労が回復する。

 『即死付与』、任意で、斬った相手に『即死』を付与する。

 『再生付与』、任意で、斬った相手に『再生』を付与する。

 『範囲支援』、戦闘中、範囲内にいる味方に支援魔法を自動で発動する。

 『鑑定士・超』、装備中、技能『鑑定士・超』を使用できる。

 『超集中』、戦闘中、使用者は集中力が倍になる。

 『斬撃無効』、使用者への斬撃による攻撃を無効化する。

 『魔法無効』、使用者への魔法による攻撃を無効化する。

 次で最後だな。………………………………」

「どうした? 何、字読めないのか?」

「そんなわけないだろ! 最後の効果……………『神殺し』」

「か、『神殺し』!? お兄ちゃん、それ本当!? 冗談じゃなくて!?」

「冗談は言えないだろ! 本当に付与されてるんだよ!」

「『神殺し』があると何かダメなのか?」

「バッカ、お前。なんで知らねぇんだよ!」

「教えてくれない? っていうか『神殺し』って称号じゃないの?」

「まあ、それもある。だが、どうにも勘違いしてるやつが多くてな。例えば『神殺し』は、『神種』を殺したやつに与えられる称号だと思ってるやつが割といる」

「あれ、違うのか? だからおかしいと思ってたんだが」


うーん、俺の知っている異世界の知識が瓦解していってる。

 あれぇ、『神殺し』って俺が思ってるので良かったはずでは?


「『神殺し』ってのは、『神種』を殺したやつに与えられる称号じゃない。『神種』を殺すやつに与えられる称号だ」

「………………どういうこと?」

「『神種』は不死だ。そんな『神種』と、もし何であれ殺せる剣で斬った場合、矛盾が生じる。それを押し通るための力なんだよ、『神殺し』ってのは」


うーん、何となく原理が分かったような分からないような。

 とりあえず一定の条件下での超有利という覚え方でいいのだろうか。


「そういうわけで、この効果はとにかく珍しくて、しかもとんでもなく強力なんだ」

「つまり?」

「正直うちで買い取れるか分からない」

「そんなにすごいのか」


全く分からなかった。

 俺、やっぱり『鑑定士』取得した方がいいのかな?

 持ってる人は便利なんだろうなぁ。ルファーとかは持ってるだろうし。

 ん? 持ってるってことはこの効果も分かるのでは?


「おい、ルファー。お前もしかして分かってて俺にこれ持ってこさせた?」

「さて、プププ、何のことで、プププ、しょうか?」

「ふざけんなよ、テメェ!」


あいつとは後でちゃんとぶっ飛ばすとして。

 うーん、買い取ってもらえないのはさすがに困るかなぁ。

 買い取ってもらった金を使って、防具とかを買おうと思ってたのだが、そもそも買い取ってもらえないなら使う金がないんだよ。

 いざとなったら………………『強欲』を使って………………いや、さすがにダメか。


「別に安くてもいいから買い取ってもらいたいんだけど」

「馬鹿野郎! そんな半端なことできるか!」

「どうしても買い取ってもらいたいんだけど………」

「……………………………………じゃあ、こうしよう。うちの防具や武器は高品質だと自負してる。だから、俺が満足するまで防具や武器を持って行ってくれ」

「いや、お前が満足いくまでって。それはダメだろ。店がやばそうだ。だから、俺に必要なものだけでいいよ」

「そ、そんなんでいいのか、本当に!?」

「別に大丈夫だよ。暇つぶしでやったんだから、そこまで高くしてもらっても申し訳ない。それで、早速なんだけど、外れない仮面とかない?」


『ツカサ』として外に出るときに着けていた能面は、後ろで紐で結んでいたので激しい戦闘の時、『あっ、やべ、取れるかも』と思ったことが何度かあった。

 『ツカサ』の時はあのまま能面を使うつもりだが、普通に生活するときにまだ顔を見せるのに慣れるまでは仮面は着けると思うので、着けてる時は顔を見せたくない。だから外れない仮面が欲しい。


「外れない仮面か……………待ってろ、いいのがある」

「マジか」

「ふっふっふ、うちは凄いんだよ」

「本当にあるとは思ってなかった」

「あった、これだ。一回試してみろ」


受け取った仮面を顔に近づけると、仮面がひっついた。

 でもなんというか、完全に密着してるわけじゃないな。


「どういう仕組みなんだこれ」

「それは魔力に吸着する仮面だ。それだけじゃ顔の近くで浮いてる仮面だから、その辺は俺がしっかり調整した。ちょうどいい位置だろ。多分激しく動いても外れないはずだ」

「おぉ、それはありがたい! あとは……………」


そんな感じに防具を貰った。

 神器になった鉄の剣は、ブラクとスミスにすごいありがたがられながら、二人の店の看板商品になった。

 防具は基本的にステータスを上げる効果のついたものを貰った。といっても神器のように規格外の効果はない。ほんの小さな効果だが、普通はこれくらいらしい。

 3パーセントとか、そのくらい。

 そして、もう時間がやばい。

 ルナとリエルも防具選びの最中で合流したのだが、俺が防具選んでいる時間待たせてしまった。

 そのせいで本当にもうトーナメントまで時間がない。


「ルファー、もう一回乗せろ。ルナ、リエル、ルファーに乗るぞ」

「分かった」

「分かりました」

「えぇ、この二人も乗せるんですか? いやなんですけど」

「はーい、文句言わなーい」


有無を言わさない感じで、ルファーを狼に戻させる。そして俺とルナ、リエルが乗る。

 ギリギリ、かな。幸い、さっき看板を見た時にトーナメントがどこで行われるのかは分かってる。

 ルファーに場所の方向を教えて、


「手加減いらないから」

「了解しました」


加速が一気に行われる。

 ルナはともかく、リエル大丈夫かな。

 と思っていると、かすかに後ろから楽しそうな声が聞こえた。杞憂でした。

 ちゃんと新しい仮面も着けて、フードもかぶり、準備は万端だ。まあ、サボるつもりだけどね。

 同時にとんでもない衝撃が伝わってきた。

 な、なんだ、どうしたんだ?


「主様、着きましたよ」

「はっ、早すぎないか?」

「手加減しなくていいと言われたので」


そりゃそうなんだけどさ。

 周りを見ると、トーナメントに呼ばれた人っぽいのがたくさんいる。

 だ、だめだ。これはもうできるだけ目立たないように、なんてことは無理だ。


『ど、どうやらこれで参加者全員が揃ったようです! それではこれよりトーナメントを開始します!』

『神殺し』の説明が分からなかったら、そうコメントしていただけると。(露骨なコメント稼ぎ)

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