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五話 歴史を学ぶ

「こちらです。ここが書庫、というよりは荷物置き場ですかね。書物以外にも色々入ってるので邪魔でしたらお呼びつけください」

「ああ、ありがとう。お疲れ様ー」


爺さんと別れた後に建物内に入ってみると、思ったより中は大きい蔵みたいだった。中に入って書物の置いてある場所の前で止まると、マントをとりあえず脱ぐ。座れる場所を確保すると、とりあえず文字が全く分からないため、子供のための教科書みたいな本を取って、文字を覚えようと試してみる。

10数分後。


「よし、大体覚えたな。結構時間掛かったな。形が意味不明だったからな。仕方ないと言えば仕方ないけど」


よし、気を取り直して、この世界で重要そうなものだけを集めて座って読み出す。すると、最初から重要そうなものを発見した。


「んん?これは…」


ステータスを開いたときに必ず目にする技能の項目が載っていた。夢中で読み進めると、技能について結構分かった。

長かったので結構端折って要約すると、

技能は主に5つに分かれていて、

誰でも獲得が可能な異能力『技能』

他に類を見ず、他の誰にも獲得ができない異能力『固有技能』

そしてここから先は種族上位の3種族のみにしか獲得ができないものだ。

序列3位、王族と共に国を治める魔王種のみに獲得が可能な『魔王技能』

序列2位、竜種、いわゆるドラゴンの上位個体、龍種のみに獲得が可能な『龍技能』

序列1位、強すぎるな能力を持ち、龍種すらも圧倒する。また天界に住む神種のみに獲得が可能な『神技能』

ここで疑問が一つ生じる。


「なんで俺、神技能持ってんの?」


神種にしか獲得が不可能なんじゃないの?

うーん……ハッ!俺、確か称号に『神の加護』ってあったはずだ!

神の加護について調べるか。立ち上がって本棚を向こうとすると髪が目にかかった。

そういえば走ってる時も時々目にかかって面倒くさかったな。仕方ない。まとめるか。

ここ、荷物置き場らしいから紐ぐらいならあるんじゃないかな。本探す前に紐の方を探すか。辺りを見回しながら、蔵の中にあった箱の中身をあさっていく。


結構時間かかった。思ったより暗いんだよ、ここ。だから、紐探すついでにろうそくも見つけておいた。これで、あとは火を……火を?

あっ、火をつけるものがねぇ!

と思った時期が俺にもありました。。

しっかり考えてあります。魔術で点火できるはず。『炎天龍』みたいなデカすぎるのじゃないから、すぐに終わると思う。

うん、2分くらいで終わった。よかったよかった。これで本探しに集中できる。っと、その前に髪を後ろで結んでおく。

さてと。どこにあるのかな。でも、『神の加護』なんて想像だけどほとんど持ってる奴いないと思うんだよね。だから、あるとしたら、このあた…


「り、っと」


おお、やっぱり棚の相当上の方にあったな。やっぱり使われにくいものはての出されにくいところにあるよね。俺も取りにくかったけどな。とにかく本を開いて『神の加護』についての記述を探す。題名が『神種について』だったと思うから大丈夫だとは思うんだけど。

でも、やっぱりあった。よかったよ。


「ほうほう、なるほどね」


つまり『神の加護』ってのは神種から他種族に技能を授けた際に与えられる称号らしい。

俺の場合はなんなんだろう?えーともう一回ステータス見るか。むむむむ。開く開く開く。おお、開いた開いた。


個体名:イフリート

称号:転生者 神の加護

種族:龍人

序列:最下位

技能:『??』

固有技能:『自己再生』

神技能:『???』

身体能力:体力以外皆無

体力:無限


はい、いつ見てもふざけたステータスですね。でも、これどうやったら神の加護で授けられた技能なのか分かるんだろう?

不思議に思ってステータスの技能の欄を凝視していると固有技能を見たところで『自己再生』の欄に詳しい記述が出現する。

おお、すごいな。こんな機能あるんだ。どれどれ?


固有技能:『自己再生』

     効果…欠損した部位、消費したパラメータを自動で瞬時に再生、回復させ元にもどす。

        常時発動 神の加護


鑑定なんて、人の能力が見れるチート能力なんてなかったんや。

あ、でもおっさんと一緒にいたちみっこが『鑑定士』とか言ってたな。あるにはあるのか。

というか、これのおかげでおっさんに腕切られた時に再生したんだな。て言うか、これかな?『神の加護』で授けられた技能は。

他の技能も試してはみたけど、やっぱり『?』だけで表記された技能は詳しい記述は出てこないようだ。しかもこれが技能について記述されたさっきの本の中に載ってないんだよ。


「まあ、これについては町に出たらあっさり分かった、みたいなのがあってもおかしくないだろうから今は置いておくか。今はとにかくここにある知識をすべて記憶することだな」


念のため蔵にあった窓から外を覗くと大体正午くらいだと思われる時間だった。皆さん、昼食を取っていらっしゃる。俺は腹減ってないからいいんだけどね。強がりじゃないからね?

嘘です、寂しいです。ちょっとだけ。トホホ、ここでもボッチじゃん、俺。

いや、気にしないぞ!気にしたら負けだ。


そのあと頑張って半分くらい本を読み終わったところで、ルナがなぜか呼びに来た。どうしたのだろうか?


「おお、ルナじゃん。どったの?」

「ご飯。お昼とってなかったでしょ?もう夜」


まじすか。時間って経つの早いね。


「ごめんごめん。夢中になってて。もう夜か。分かった。すぐ行くよ」


そう言うとろうそくの火を消すとマントをなんとなく持って、ルナについていく。

村の調理場は家に1つずつあるそうだが、何か祝うことがあるとキャンプ場の調理場みたいな場所で作って、そのままそこに設備してある机や椅子を使って食べるそう。今はどうやら祝うことがあるらしくそこで調理していた。それにしてもすごい人の数である。死んだ時の修学旅行の集合した時みたいだ。ずっと家の中にいたからこういうのはちょっとウキウキする。


「おお、イフリート様。荷物置き場にずっと籠もって入られたので少し心配しましたぞ」

「悪いね。大丈夫大丈夫。あ、あそこにあったろうそく使っちゃったけど大丈夫だった?あと紐も」

「ああ、あそこにあるのは大体もう使わないものなので大丈夫ですよ」


よかった。というか、何か。視線がすごいんだけど。聞き耳立ててみるか。立ててみると…


「おい、あれ今日来た龍人様だよな?男?女?どっちだ?」

「あらあら、可愛らしい龍人様ですこと」

「綺麗だなぁ」

「まあ、あなた!何言ってるの!」


何かいろいろ騒がれてた。何だよ、可愛いって。俺、男!女じゃないです!

まあ、自分の顔見た時、「これ誰だよ!?」とはなったけど。やっぱり美形は罪なんだよ。なんでイケメンはあんなに騒がれてて、大丈夫なのか分からない。俺ならショック死すると思う。今は大丈夫だけど。女に見えるのは髪結んだからかな?

まあ、その話は置いておいて席に座る。料理が来る間にも、読んだ本の情報を整理する。歴史の方を優先してたから、他の情報は分かんないけど。


この世界が出来たのは時間軸が同じなら生前の世界が誕生する二百年くらい前。最初に誕生した序列1位、神種が遊戯で他の種族を作り、さらに下界、つまり俺らが今立っている地上を作り配置した。

そして戦うための手段として知能と技能を送った。それから今までの間に序列、力関係が決まった、らしい。

そこには神種の中のダークサイドの魔神種もいて負けじと技能を持つ獣を配置した。しかし魔力を注入しすぎたせいでただの獣ではなく魔獣となってしまった。

魔獣を危険と判断した神種は魔獣を閉じ込め、世に出さないための迷路をつくった。そして魔獣を早く殲滅してもらうために財宝を配置した。

それは現在では、迷宮、ダンジョンと呼ばれ当然のごとく冒険者に攻略される対象となった。

それが原因で神種と魔神は仲が悪いとか。


と言うことらしい。魔獣は今も魔神によって作られてるらしいから、ダンジョンの外にも出るらしいんだけどね。まあ、ルナが呼びに来るまでに読めた本の内容はこんな感じである。

にしても、ダンジョンか。ゲームとかやってた俺からすればなんとも心惹かれることだね。いやー、いつか行ってみたいなぁ。でも、おっさんが広めてそうだし、今日もやばい魔法打っちゃったしね。あんまり無茶は言えないな。


「イフリート様!おお、ようやく気づかれましたか!」

「え、あ、ああ。悪い悪い。荷物置き場の本の内容を整理してたら…ちょっと」

「もう並びましたよ、料理」

「おお、うまそう!なっ!この世界には米があるのか!?」


ネット小説とかだと米がないってのはあるから、この世界でもないのかと思ってたけどあったのか!


「いえいえ、ありますよ?お米。でも貴重なんですよね」

「えっ?いいのか!そんな貴重なもの!?」

「大丈夫ですよ。これは備蓄しておいて祝い事の時だけ食べるんです。米の元になる稲はダンジョンの内部の宝箱からたまに出るんですよ。この村の中にも冒険者が結構な人数いるので、よく、なのかは正直微妙なところですが手に入るんですよ」

「やっぱり冒険者…憧れるなー」


すると、筋骨隆々な男の二人組の猫人が現れて、俺の前に立って話し始めた。


「いえいえ、憧れるような職業ではないですよ。命をかけてダンジョンに潜っておいて、収穫はあんまりないんですから。ああ、紹介が遅れました。冒険者をやっております、ムルサ・キャルトと申します。こちらは私の双子の兄弟のマルサ・キャルトです。以後お見知り置きを」

「へえー、そんな感じなの?でも、宝箱とかの中からいいもん出たりするんでしょ?」

「そんなことはありませんよ。まあ、少しはなくもないですがあったとしてもほとんどは村のために換金するので自分たちのために使えるものはないですね」

「な、なかなかブラックなお仕事で。でも、行ってみたいなー。なあなあ、どうやったら冒険者になれるんだ?」

「イフリート様はダンジョンに並々ならぬ好奇心をお持ちのようですね。うーん、村長、教えて大丈夫ですか?」


多分マルサさん(見分けつかない)は爺さんに許可を求める。てか、村長て。

爺さん、村長だったんだ。すごーい。

はい、スンマセン。棒読みです。

そんな思考はいざ知らず、爺さんは顎に手を当てて十分考えた後に答えた。


「大丈夫だろう。イフリート様はいつか必ず町に出るはずだ。その時のための予備知識として持っておいて損はないだろう」

「了解しました。それでは。冒険者として活躍するためには町にある冒険者ギルドに登録する必要があります。それにも条件がありまして二人組かそれ以上のチームを作っていることですね。ギルドからの依頼は基本、数人単位なので、団体行動ができないようは奴は冒険者にはなれないってことでしょうね」

「ふーん。なあなあ、ソロっていないの?」

「いやー、そんなことしても死ぬだけだと思いますよ?ギルドから出る依頼はダンジョンの調査の他にもダンジョン外にいる魔獣の殲滅などもあります。ダンジョンの外にいる魔獣は基本多いし、生息範囲も広いので、殲滅となるとソロだと死ぬ可能性が高いですね。そんなことするのは目立ちがり屋か自惚れてるやつだけですよ」


そんなもんか。ソロは実力者の証みたいな感覚があったんだけど、ただのバカなんですね。ソロ、ボロクソだね。


「じゃあさじゃあさ。俺はどのくらい腕の立つ奴になったら町に出て、冒険者になれるんだ?」

「イフリート様が、ですが?うーん」


飯を食べる、まさにそのタイミングで聞いてしまったので、食いながら考えさせるように仕向けてしまったようで申し訳ない。顎を動かしながら考えるマルサさんだが、チラチラと俺を見た後に口に入っていたものを飲み込んでから答えた。


「とりあえずは、その隠そうとしても隠しきれない気配から消すべきですかね。町で襲った相手が冒険者で、話を少なからず聞いているなら、分かっていると思いますが冒険者はステータスを公言しません。自分の能力を隠蔽するために徹底します。そのための第一歩として自分から出る気配を消すんです。

 しかし、イフリート様は龍人です。つまりは龍種の血を引いていることになります。それは龍種の普段隠しているはずの膨大な気配を余さず受け継いでいます。制御できないほどの気配を受け取った相手がどうなるだろうか?答えは簡単です。それを全面に放出します。それを制御できるほどの卓越した技量を持たないと…町に出ることはできないかと」

「むむむ、大変だな。頑張るしかないんならやるけど」


今度はムルサさんが出てきて、


「その意気です!頑張ってください!」

「こらこら。急かすでない。イフリート様、自分のペースでよろしいですからね?」

「分かってる。大丈夫大丈夫、無理はしないから」


そんな感じで夕食は賑やかだった。引きこもりだった俺としては、なんと言えばいいのか分からないけど嬉しかった。食卓に並んだ飯を大人数で囲むのがこんなに楽しいとは。しっかり飯も美味しかったしね。

そんな時間もすぐに終わり、片づけに移った。俺も手伝おうかと思ったが、爺さんとかムルサさんたちに止められた。

曰く、怪我されたら大変らしい。

手伝いたかったんだけどね。

今、何してるのかと言うと蔵にいるわけではなくルナと一緒に村の中から外を眺めながら歩いている。ゲームとかでそういう展開が来たら、『早く告れよ!』とか思うけどいざ自分がやるとなると緊張するもんだ。まあ、告白するつもりがサラサラないんだけどね。まだ知り合って1日だし。

村のまわりには柵があって今の俺ならギリギリ(多分)飛び越えられない高さだった。いや、それでもハードルの下から2段目くらいの高さなんだけどね。自分の身体能力の低さを目の前にして悲しくなる。門もあって、結構しっかりしていた。

と思っていると、


「そろそろ心配される。めんどくさいからここら辺でお開きに」

「おお、分かった。あっ、俺、今日は荷物置き場で寝るって爺さんに言っておいて」

「了解、おやすみなさい」

「うん、おやすみ」


という会話があって、蔵に戻る。といっても、ここに来てもすることと言えば本を読み漁ることなんだけどね。ろうそくに火をつけ、明かりを確保すると読み途中の本を見つけて読みだす。


そんな感じで1日を終える。それは生前の俺が夜にしたことと大して変わらなかった。


窓からさす光で目を覚ます。手で探って、パソコンの電源を入れようとする。だが、手は空を切るばかり。パソコンの本体に届かない。目を開けて、パソコンの安否を確認しようとすると、見知らぬ天井が目に入る。


「ん、んん?うおっ、どこだ、ここ!?ん?ああ、転生したんだった」


これも慣れないとな。どうやら本を読んでいる間に寝てしまったようだ。寝ている間に紐も解けていた。もう一度結びながら、耳をすます。理由は他の人が起きているか知りたかったから。なんだが外が騒がしいのだ。


「なんか怖いからドアからちょっとだけ顔出すか」


ゆっくりそーっと外を覗くと猫人の皆さんが集まっていた。ちょうど昨日の夜、ルナと別れた門から少し離れたところだった。そして門のところには…………おっさんと同じ雰囲気を、同じオーラを纏ったように感じる……。


つまりは冒険者が立っていた。

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