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五十八話 ボス戦

目の前に現れた、というか見つけた金属の扉。

 ゲームで見たことあるような、その扉は完全にボス部屋のそれだった。

 困った。いくらなんでもごり押ししすぎたかもしれない。

 こんなに早く到達して大丈夫な場所だったの、ここ? まあ、仕方ないか。


「ルナ、この先危険だ。ちょっと作戦会議してから行こう」

「そんなに危険な気はしないけど。この扉も頑丈そうだけど、押せば開きそうだし。ほら」


そんなことを言って、ルナが扉を開けた。

 そして飛び出す濃い気配と、おそらくボスであろう魔獣の咆哮。


「うおおぉぉぉぉぉぉおおおおぉぉぉぉッッッッッ!!」

「ごめんなさい、間違えました」


女子の体とは思えない力で、一度開いた扉を閉めた。

 一瞬震えたが、すぐに深呼吸で気持ちを落ち着かせていた。


「な、危険って言っただろ?」

「うん…………入らないと下に行けない?」

「ああ、たぶん他に行き方ないんじゃねぇの?」

「…………………………分かった」


だいぶ間を空けてから、ルナの目が変わった。

 なんていうか、本人は真剣に何かするつもりなんだろうが、それが俺の損にしかならない気がしている。いや、本当に申し訳ないが、止めたい。


「お、おい、ルナ………」

「突撃してくる」


ダッ!(走る音) バァァン!(扉を勢い良く開ける音) うおおおおぉぉぉぉおおぉぉッッッ!!(ボスの声)

 リズム良く、音がして、一瞬理解するのを脳が拒んだ。

 おい、嘘だろ!? ルナのやつ、単身でボス部屋乗り込んでいきやがったぞ!

 俺も全速力で、ルナを追いかける。

 ボス部屋はドーム状の空間だった。中央にはどこか色合いがおかしい獅子型の魔獣がいた。うーん、全体的に赤い。俺と被ってるよ。俺は自分の体の色にまだ納得したわけじゃないが。

 そして魔獣は目だけが、異常に明るい黄色だった。

 さらに付属してルナが……………ルナが!?

 思わず綺麗な二度見しちまったじゃねぇか! もう戦闘始まってんのかよ!

 だが、今のところはルナの方が優勢らしい。

 それを見ると、俺は後ろからいつものように魔術で援護することにした。

 どうにも魔獣は相当素早いようだ。俺では追い切れるか分からない。ふっ、目で追うのがやっとだぜ。

 嘘です、言ってみたかっただけです。

 えっ、本当に見えないんだけど。どんなステータスしてるの。しかも、ルナもそれについていってるみたいなんですけど。

 くそ、これ狙いが定まらねぇな。ちょっと、変化球みたいな感じで魔術を当てにいってみるか。


「『鬼火』」


『鬼火』を六つ用意すると、魔力感知で少しでも魔獣の動きを把握する。

 そして、その進行方向上に、『鬼火』を配置。

 これで据え置き型魔術の完成だ。

 チッ、さすがに避けてくるか。その後もどうにかして当てようと、進行方向を読み、着地地点などに『鬼火』を仕掛けるが、命中しない。


「ルナ! 俺が魔術配置した場所にその魔獣誘導できるか!?」

「任せて」


うわ、かっこいい。あいつ、男の方が良かったんじゃないの? なんか他にヒロイン用意してさ、最強系の小説書けるんじゃない?

 今となっては、ウェブにあげることも叶わないが。

 なんてことを考えていると、ルナが俺が配置しておいた魔術の場所まで誘導してくれたようで、魔獣に『鬼火』が命中した。


「うぐるるるぁぁ!」


効いてる、かな。

 そして、そのまま続けることで、用意しておいた『鬼火』が全て魔獣に当たった。

 ルナのおかげだ。


「あとはもう援護射撃でもしてるから、好きに決めちゃってくれ!」

「分かった、倒す!」


今までの攻撃で分かった。こいつ、想像以上に打たれ弱い。スピードが速い分、そういうところでバランスを取っているのか知らないが、どうにも『鬼火』六つで、案外ダメージになっている。最初よりも確実にスピードが遅くなっている。

 リルファーには効かなかったのに。そう考えると、あいつ本当に強かったんだな、と思うと同時に、リルファーがいれば、あんなやつ秒殺なんだろうな、と思ってしまう。

 いや、別にルナが弱いわけではない。リルファーが強すぎるんだ。


「イフリート! そっち行った!」

「えっ? うわ!」


気づけば、目の前に魔獣がいた。

 驚くからやめろ。『血への渇望』を使って、回避する。もちろんギリギリである。皮一枚くらいは切れたかもしれない。だが、俺にとってはかすり傷である。

 ごめん、誰にとっても皮一枚切れただけならかすり傷だよね。

 とりあえず回避したわけだが、諦めずにまだ追撃してくるので、さすがに避けられなかった。

 けど、こんな時のために獲得した技能があるのだ!

 『衝撃吸収』ぅ、じゃない。あんなゴミ技能ではない。というか爪で切ろうとしてくるのに、衝撃を吸収しても傷できるだろうが!

 じゃなくて!


「『身体硬化』!」


魔力を全身に込め、体を硬くする。以上。だけど、だからこそ強いと思った。

 シンプルな能力ほど強かったりするよね。何より俺の、ステータス故の貧弱さをカバーできる効果の技能なのだ。まさしく俺が求めていた技能だった。副産物でカスを獲得してしまったが。

 『自己再生』のおかげで一瞬で回復する魔力を、次から次へと込めれば、それだけ俺の体は硬くなる。実質時間をかければ、どこまででも硬化できるわけだ。

 さすがに今は時間が足りないが、それでも十分な硬度は得られただろう。

 魔獣は自慢の爪で俺に攻撃しようとして、あまりの硬さに爪を折った。


「ぐおぉぉぉお!?」


え、おい、嘘でしょ!? どんだけ硬いのあいつ!? という声が聞こえるようだ。ふっふっふ、そうだろうそうだろう。

 魔獣は武器を失ったことで、戦闘力が大幅に下がったことだろう。


「ルナ、やれ!」

「じゃあね」


ルナは『色彩操作』でうまく近づき、後ろから首をズバッと切断した。

 見事です。

 魔獣はピクリとも動かなくなった。うん、これでボス戦クリアかな?

 強力な魔獣を倒せた達成感は特になかった。もしかしなくても、リルファーとかいうチート級の魔獣をほぼまぐれとはいえ、倒しているからだろう。

 なんて考えていると、魔獣の死体が消えた。

 そして、今まではなかった扉が現れていた。さすがはダンジョン。こういったゲームっぽいことはお得意のようだ。


「行ってみよう。多分階段あるだろ」

「うん、思ってたより簡単だった」


そう言ってやるな。

 お前が弱いって言ってたやつ、もし俺に『自己再生』がなかったら、秒で殺されるぞ。

 いや、『自己再生』がない生活なんて想像したくもないけど。多分転んだだけで死ぬよ、俺?


「あ、階段。イフリート、下に行けるよ?」

「えっ、あ、うん。行くか」


こうして、想像していた以上にあっさりと、初めてのボス戦が幕を閉じた。

 正直、もうちょっと活躍しても良かったと思っている。俺がしたことといえば、『鬼火』で少しのダメージを与え、そして、一瞬気をひいたくらいだ。

 まあ、この下にさらに何階層もあるだろうし、次か、次の次くらいに活躍すればいいか。

 見慣れつつある階段を下りながら、そんなことを考えていた。



    ↓



 現在地下六層目。

 できれば、さらに下へと向かって行きたいんだが、ダンジョンに入ってから計測していた時間が、そろそろ6時間になる。お粗末な脳内時計で申し訳ないが、まあ、そこまで実際の時間とは変わらないだろう。

 とりあえず、6時間も行動すれば、人間誰しも疲れが出てくるもの。ボス戦がちょっと前だったのなら、なおさらだ。

 さすがに戦ってる最中に疲労で倒れられたら、俺一人でフォローするには辛いものがある。


「そんなわけで、少し休憩しよう」

「まだ、いける」

「それでもだ。俺はいくら動いても大丈夫だが、お前はそういうわけじゃないだろ?」

「むっ、確かに。ずるい、わたしも欲しい」

「ダメだよ、俺の生命線だぞ!」


階段から下りてすぐのところは、魔獣が寄ってこない。

 今までの階層で階段近くで止むを得ず戦闘する場合があったので、俺が試しに階段まで行ってみると、ルナが殺し損ねた魔獣も、階段からおよそ2メートル離れたあたりで、パッと止まった。

 つまり、そういうことだろう。階段はセーフエリアということだ。

 ここなら、比較的安全に休息を取ることができる。


「ルナ、ここにいろよ」

「どこか行くの?」

「ああ、ここから近いところは道を頭に入れておきたくて。大丈夫だ、魔獣にあったら魔術も使って、戻ってくる。軽く腹に何か入れて待っててくれ。すぐ戻ってくる」

「分かった」


俺は階段から離れた。

 当然だが、俺はダンジョンについてほとんど知らない。だからこその行動だった。

 だが、今思えば、これがいけなかった。

 ダンジョンという、神が作った魔獣の檻の危険性を知らなかったのだ。

 この先、俺はひたすら困ることになる。理由があるとすれば、それはダンジョンへの無知が原因だ。



  →



 少し歩いたが、あまりに魔獣が少ない。今までの階層では、魔力感知に割と引っかかるくらいにはいた印象なのだが、この階層では全くいない。

 どういうことだ?

 ボスを倒して、何か変わったってことか?

 思考を巡らせていた俺を、不意打ちのように殺気が襲う。

 思わず俺はその場から飛び退いた。

 何だ、今のは?


「コオオォォォ」

「!?」


気づけば、後ろに回られていた。

 振り返った時には、もう敵が武器を振りかぶっている。

 間に合わない! 『身体硬化』!

 技能で硬くなった俺の体と、敵の武器がぶつかる。

 硬度は互角といったところか。問題は俺のステータスだ。踏ん張りが利かないせいで、ゆっくりと押され、壁に押し付けられた。

 何だ、このまま圧殺する気か?

 と思っていたが、敵は剣を一度戻し、そして俺の目には止まらないスピードで横に薙いだ。


「か……はっ!」


冗談抜きで、横に10メートルは吹っ飛ぶ。

 何て馬鹿力だよ。『身体硬化』で体の硬度は上がってるのに、多分血が出てるぞ。まあ、『自己再生』で治るが。

 体勢を立て直しながら、唐突に現れたこともあって、よく見えなかった敵の姿を確認する。

 黒い鎧だ。だが、それを着ている人間の姿は見えず、代わりと呼んでいいのかは分からないが、胴体部分の鎧に大きな人魂のようなものがゆらゆらと揺れていた。俺がさっき吹っ飛ばされたのは、右腕が掴んでいる大剣か。いや、掴んでいるって表現するのかも怪しいんだが。

 ゲームで出てくるようなリビングアーマーというやつだ。それも力がとてつもなく強い。

 あれ、魔術が効くのだろうか。効かなかったら、俺にあのリビングアーマーを倒す手段はない。

 そして、おい。あれは魔獣というのか!? 獣じゃないだろ!

 と、気を他のことに回してみたが、やはりひしひしと感じるこれを無視するのは、無理ってことか。

 圧倒的な気配。戦っても勝てないかもしれない、そう思わせる力が奴にあるという証拠。実際、俺はついさっきやつのパワーに吹っ飛ばされたばかりだ。

 ここまで、無理かも、と思ったのはリルファー以来か。

 だが、ルナがいる場所まで逃げる、という選択肢はありえない。

 なぜなら、ルナの居場所をこちらから晒すことになる。階段には近寄れない、という決まりがあるということは知っているが、それでもそのルールを突破してきそうな存在感だ。

 いくらルナでも勝てないかもしれない。信頼してないわけじゃないが、できれば危険なことは避けたい。


「くそ、逃げられても逆方向か」


まだ知らない道の方へ逃げるのも、できれば避けたいんだが、他に方法はない。

 下の階層へ行く、ということもできない。一度下に行ってしまったら、もう一度この階層に来る度胸が俺にあるかは正直五分五分だ。

 ここで確実に逃げ切る必要がある。

 だが、気づけば後ろにいたようなやつだ。特別な能力云々より前に、そもそもの移動速度が速いかもしれない。

 魔術も使って全力で逃げよう。

 鬼ごっこ開始だ。

 様子見している余裕はない。

 最初から魔術を放つ反動で、一気に加速する。

 すると、リビングアーマーは大剣を持ったまま、走ってきた。

 ステータスを抜きにした、魔術での加速に肉薄するほどのスピード。


「やっぱりとんでもないな!」


一瞬で、追いつかれたと言っても過言じゃない状況に陥った。

 それでも、もう一度魔術を発動させ、加速する。

 横道を見つけ、一瞬だけ入るフェイントをかけてから、魔術で強引に軌道を変え、今まで通りまっすぐ進む。

 それに引っかかる素振りも見せずに俺を追ってきた。

 こいつ、めんどくせぇ!

 このまままっすぐ進んでいったら、限界がある。どこかで曲がらないと。

 ちょうど横道をもう一つ見つけ、飛び込むように曲がる。

 げっ、魔獣がいる。噛み付いてこないことを祈りながら、上を飛び越える。

 リビングアーマーは魔獣を飛び越えるのに少し手こずっていた。どうしてかは知らないが、ここがチャンスだ。

 一気に加速して、置き去りにする。

 少しだけ速度を落として、追ってきているかを確かめる。

 結果は、追ってきていた。しかも大剣を構えている。


「おい、まさか…………!」


俺を吹っ飛ばした時と同じように剣を横に薙いだ。

 俺はそれをバク転の要領で避ける。もちろん魔術のアシスト付き。なかったら、できるわけないだろ。

 くそ、こいつ容赦ねぇ。そりゃそうだけど、機械的なのに変なところで感情が見られる。そこが不気味な理由なのだろうが。常に挙動がおかしい。

 さっきは忍者走りだったのに、置き去りにしたと思った直後は陸上の選手みたいな走り方だったのだ。

 怖すぎる。

 でも、そんなこと気にしていられない。距離を詰められている。

 魔術で加速する。が、まだ大剣の射程内。振り下ろされた大剣が俺の背中の肉をローブの布ごと抉った。


「いっっってぇぇぇっ!」


俺は更に魔術で加速。

 すると見せて、前で魔術を放ち、後ろに加速した。

 リビングアーマーの虚をつくことに成功した。

 背後を取れた。一撃くらい食らってから、逃げ切らせろ!


「イフリ……………ツカサ!」

「なっ、ルナ!? しまっ………がは!」


攻撃するのを躊躇ってしまった。射線上にルナがいるから被弾したら嫌だったからかもしれない。

 その隙を突かれて、一瞬の間に大剣は俺の腹に突き刺さっていた。リビングアーマーが大剣を持っているので、浮いている。

 しかも、腕や足が届かない。


「くっそ! ルナ、逃げろ!」


おそらく俺とリビングアーマーの鬼ごっこの音でも聞いて、駆けつけたんだろう。その優しさはありがたいが、今はやばい。

 幸いリビングアーマーは目がとても悪いのか、ルナには気づいていない。俺の方に気を引かせて、そのうちに逃がさないと。

 魔術を構築、発動!

 急ぎすぎたせいで、小さな『炎球』になったが、それで十分だ。

 命中した。

 俺が後ろ側にいるせいか、顔部分の鎧だけが180度回転した。うわ、怖。

 一瞬、鎧の隙間から見える人魂のようなものが激しく揺れ、顔部分の鎧の向きが元に戻る。

 すると、今度は体ごと後ろへ向き出した。

 まあ、それはつまり俺の場所がリビングアーマーを軸に180度、点対称な感じで移動するってことになるんだが、この野郎、うまくダンジョンの壁に俺を勢いよくこすりつけながら、向き直りやがった。

 背中がひたすら痛い。

 そしてリビングアーマーは大剣を振りかぶった。

 地面に叩きつける気か。激痛が走るだろうが、好都合だ。この大剣とおさらばできる。

 リビングアーマーは剣を振るった。俺が想像していた以上の速度で。

 あまりのスピードに、俺は奴が大剣を振り切る前に、大剣からすっぽ抜けた。

 今まで感じたことが、あったかなかったか。リルファーの本気のスピードに勝ると劣らないスピードで俺は吹っ飛ばされていた。

 いや、待て。これ相当な高さから自由落下してるよりも早いぞ、多分。

 これで壁に叩きつけられでもしたら、壁にちょっと汚い花の絵が! なんて言ってる場合じゃないぞ。いくら『自己再生』でも再生するのか!?

 分からないから、とりあえず減速しないと。魔力感知で俺が吹っ飛んでいる先の地形を把握する。この先に開けた場所があるが、まだ距離はある。というか、魔力感知して分かったが、リビングアーマーが俺を追いかけてるんだけど!

 嘘でしょ、芸術になるかもしれない俺に、さらに死体蹴りしようっての!?


「冗談じゃないっての!」


魔術で減速を試みる。だが、減速しすぎるのはダメだ。現在絶賛疾走中のリビングアーマーに追いつかれてしまう。絶妙な加減が必要だ。

 あっ、やばい。これは止めなさすぎ。

 うっ、これはちょっと抑えすぎか。若干やつとの距離が狭まった。魔術で瞬間的に加速する。

 地味にめんどくせぇ。俺がこうしているのは、急に止まると衝撃で、足が爆発するのではないかと思ったからだ。壁に描かれた芸術になるよりかはマシかもしれないが、それでもすぐに迎撃にしろ、逃亡にしろ、一瞬だとしても足がボロボロなのはいただけない。

 と、いうわけで絶妙な加減の減速をしているわけなんだが、もう割とすぐそこにいたりする。


「うおっ、やべぇ!」


なんて言うかよ!

 あれ、今一部分でも口に出してた? ま、まあいいだろう。気にしない。

 ほとんど勢いを殺さず、それでいて壁に叩きつけられても耐えられるくらいのスピード、という神業めいたことを成し遂げていると思う。

 まあ、すぐそこにリビングアーマーがいるのだが、俺の完璧ではないにしても、全く使えないわけでもない計算によって導き出された答えによると、もう開けた場所だ。

 というか今になって考えてみれば、『身体硬化』で体を硬化させれば、普通に壁に着地できたな、着地と呼ぶかは知らないが。

 開けた場所に出た。その光景を目が写す暇もなく、壁に衝突し、『身体硬化』で硬化した俺の足がめり込んだ。ビリビリと衝撃が俺の体を走る。だが、耐えられるな。

 というか、嘘、こんなになる速度で移動してたの? 膝まですっぽりと頑丈そうなダンジョンの壁に埋まった自分の足を見て、ぞっとした。そして、その速度の勢いに耐えられる『身体硬化』の便利さに胸を張りそうになった。

 いや、今はリビングアーマーが先だ。

 足を見ていた視線を、リビングアーマーに、俺の今の体勢の都合上、真上に移す。

 その動作の間に俺の目に映ったのは、ダンジョンの地面、そして人間だった。

今年は夏バテなんてしない。

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