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四話 魔法と魔術

いったい何があったんだ?俺はルナの教え通り、ひねり出す感じで魔力の放出を試みただけだ。

それなのに教えた本人から殺意を向けられている。とにかく弁解を、誤解を解かなければ、俺の居場所は確実に無くなる。嫌だ、居場所だけはなんとしてでも。


「ま、待ってくれ!俺は教わった通り、魔力の放出をしようとしていただけだ!悪意あってのことじゃない!本当だ!」

「………それなら、悪意がないのなら今から教える魔力の放出を止める方法で魔力の放出を止めて」

「も、もちろんだ!その方法ってのは!?」


急かすように言う。しばしの沈黙。俺にとって、この時間は地獄に等しい。結果、たっぷり30秒ほど沈黙を取った後にルナが口を開いた。


「引きずり込むイメージ。それで魔力の放出は止まる」

「分かった。二度目になるが、悪意はない」


とにかく早く魔力の放出を止めなければ。ルナが教えたくれた通り引きずり込むイメージを実践する。すると、何かが体の中に入る感覚があった。当然、と呼ぶのも変だがそれに伴いルナ達の殺気も消え始める。良かった、ちゃんと成功したようだ。

そのことを確認したルナ達はまず最初に何をしたのかといえば最初に謝ってきた。


「申し訳ありませんでした。私たちはイフリート様を守るべきはずの立場にあるにも関わらず、あのようなことを…」

「い、いや、大丈夫だから!むしろ無知にも程がある俺を親切にしてくれてるお前らに、俺が謝りたいぐらいんだよ!迷惑かけてすいません!それよりさ、なんですごい殺気だったんだ?俺は本当にルナに教えてもらった通りにひねり出すイメージで魔力を放出しようとしただけだぞ?全く実感なかったけど」


理由が分からないと、次から気をつけることができないからな。

その答えはルナが呟くように言った。


「びっくりしただけ…」

「へ!?それだけ!?」

「…それだけ」

「ぐ、具体的には?どこにびっくりしたんだ!?」

「それについては説明する必要があります」

「頼む!」

「ええ、おほん!いいですか?イフリート様の生前の世界ではどうなっているのか、もしくは根本的に魔力がないのかもしれませんが、この世界では魔力は戦闘に使う以外にも魔道具を使用する際、迷宮に入る際、また相手を威圧する際に使用します。威圧に使用する際、ほとんどは不意打ちです。いわゆる先制攻撃として使用されます。先ほどのイフリート様の不意の魔力の放出は威圧と同じような効果を発揮します。故に驚いてしまった。あえて付け足すのならイフリート様の魔力は普通の生き物のそれに比べ、濃く、そして多いのです」


人によってそんな違いがあるのか。さすがは異世界、奥が深い!これは楽しみ甲斐がある。


「人によって違いがあるのか?魔力って」

「イフリート様がどう解釈しているかは分かりませんが、多分若干の誤解があるかと思います。人によって魔力の量などに違いが出るのは生きるものには確実に備わっている魔力を入れるための器の形によるものです。

 器が内容量が多ければその分、量が多くなります。器に凹凸がありますが、それは人によって変わります。そこで個人を特定するのです。魔力自体に大した個人差はありません。イフリート様は違うようですが」

「なるほどなるほど」

「まあ、魔力については今はそのくらいで大丈夫でしょう。魔力放出の際は、これからは気をつけてくださいね」

「いやー、本当に申し訳ない。でも、全く実感がなかったのはなんでなんだろうか?」


ひねり出すイメージした後、特に変わんなかったんだけどなぁ。


「もしかしたらイフリート様は魔法適性が薄いのかもしれませんな、ですが適性が低いからと言って魔法が使えないわけではないのでご安心を」

「ごめん、さっきから知らない単語が出まくって頭がこんがらがりそう。魔法適性とはなんですか?」

「魔法がどれだけ使えるのかを表すものです。それも確認しておかないといけないですね。できるものを呼んでくるので、その間にルナ、説明を頼む」

「了解ー」


そう言って、爺は立ち去り、ルナが説明のため、前に出る。


「なんの魔法が使えるのかは二つの項目によって異なる。

 一つ目は魔法適性属性、これは自分が使える魔法の属性を表すもの。これの結果によってどの属性の魔法が使えるのか、またどの属性の魔法が使えないのかを把握することができる。

 二つ目は魔法適性率、これで自分の魔法適性属性の魔法がどの程度使えるのかが決まる。例は聞いたことがないけど、魔法適性属性はしっかりあるけど魔法適性率が無かったせいで魔法が使えない、何てこともあり得るらしい。多分そんなことはないと思うけど」


やや、そんなことも起こり得るのか。怖いなぁ。ていうか、今ルナが言ったことってフラグなんじゃ…?まあ、いっか。今の俺にはフラグは関係ない!


しばらくすると、爺さんが霊媒師みたいな印象を持たせる女の人を連れてきた。どうやらこの人が魔法適性を調べてくれる人らしい。この人も猫人なのだろうか。猫耳天国ではないか、ここ。

その後、霊媒師さんは俺が想像していたような水晶置いたりなどはしないで手を俺の方に向ける。そして数秒すると手を下ろした。


「分かりましたか?」

「はい、イフリート様でしたか?」


急に話しかけられたので、驚いたがとりあえず返事をする。


「は、はい。イフリートです!」

「先に謝っておきますが私の技能は不完全な為、魔法適性属性しか分からないのです。それを承知でお聞きください」

「了解です」

「イフリート様、あなたの魔法適性属性は純粋な赤、つまり炎の魔法以外に使うことができません」


純粋、いい響きだ!もしかしてすごいのかな!?純粋、って。

と思っていたが、そうでもないようだ。爺さん達の顔が曇った。えぇ、何なの?何が悪いの?


「何が悪いの?どういうこと?」

「ルナが説明したと思うのですが、魔法適性属性というのは属性が使えることを示すと同時に他の属性を使用することはできないということを示すのです」


ああ、そういえば言ってた。ルナ先生言ってた。つまり…


「イフリート様の魔法適性属性は純粋な赤、つまりは炎。他の魔法は使うことができません」

「マジかよ。なんかの手段で他の魔法も使えるようになったりは…」

「無理ですね。そのような手段は発見できていません」

「さいですか。むー、このままでは異世界満喫ライフが少しずつ遠のくぞ。ねえねえ、魔法の他に不思議な力を使う方法はないの?」


なかったら、俺泣くわ。ガチめに泣くわ。泣くったら泣く。

だが、そんな心配は必要なかったようだ。爺さんは自慢げにこちらを向くと、


「さすがはイフリート様。その通りです。魔法の他にあの様な力を使う方法はあります。魔術です」

「えっ?魔術?魔術って魔法の違う言い方だと思ってたんだけど。ていうかそうじゃないの?」

「その知識はイフリート様の生前の世界のものですよね?残念ながらその様なことはありません。魔術と魔法はまったく違います。それについてもお話しするので今はともかく魔法についてお話しします」

「うーっす!オナシャースッ!」


そう言うと、スッと霊媒師さん風の猫人さんは下がっていった。なんか幽霊みたい。代わりに爺さんは前に出てきた。


「それでは説明を。魔法とは別世界から術者の必要とする物を魔力を媒体にしてこの世界に召喚する行為です。イフリート様なら炎を別世界から魔力を消費して召喚することになりますね。

 ええ、炎魔法の初歩といえば『炎球』ですかね。『炎球』と言っていただければ魔力を自動的に消費して発動するはずです」

「やってやるぜぇ!」


はっはっは、これですごい才能とかを発揮してやるぜ!手を前に突き出し、唱える。


「『炎球』!」

「…………」


あんれー?何も出ないんだけど。炎のほの字すらないんだけど。これ失敗なの?それとも何か他の原因があるの?


「あ、あのー、何にも出ないんですが?」

「お、おかしいですね。もう一度お願いできますか?」

「い、いや何回でもやるけど。勘なんだけど、これそれでどうにかなるようなもんじゃない気がする」

「そんな!諦めてはいけませんよ!」


そ、そうだよな!本人が諦めちゃダメだよな!もう一度だ!


「『炎球』」


やはり出ない。なんか虚しくなってきた。


「あのさ、とりあえず魔法は後にして魔術、教えてくんない?」

「わ、分かりました。魔法の適性率については町に出た時にでも調べましょう」


ありがとう、爺さん。空気読んでくれて。


「ええ、魔術は魔法と違い、別世界から召喚するわけではなくイメージすることで魔法のような威力を持つ現象を構築するのです。魔法とは魔力の使い方が違います。魔法は召喚する際に一気に魔力を消費します。しかし、魔術はイメージを元に少しずつ構築していくのでその分、魔力の消費は少しずつです」


なるほど。一気に取られるか、ゆっくり取られるかのどっちかなんだな。それにしてもイメージが必要とは…。大変そう。大丈夫かな?俺、このまま魔術も使えなかったら異世界要素がガクンと落ちるんだが。


「ああ〜、とりあえずやってみていいか?これも出来ないみたいなことはないと思うんだけど」

「ああ、はい。念のため、下がっておきますね」


とにかくイメージする。の前に聞きたいことがあったのでルナたちに聞く。


「なあ、魔法の最高位ってなんて名前なの?」

「ええと。魔法は炎、水、土、風、そのどれにも分類されない特異属性の5つに分類されます。特異属性以外は全て属性の名前の後に『天龍』と着きます」

「なるほどなるほど。ありがとう。今度こそイフリート、いっきまーす!」


イメージイメージ。術名はさっき教えてもらったやつでいいや。形は名前の通り龍でいいか。蛇みたいな方の龍。西洋風の龍じゃないよ。炎を纏ったやつだ。手を前に出し、術名を言う。


「『炎天龍』」


だが、出てきたのは手のひらサイズのちっこい赤い龍だった。龍は手のひらの上をくるくる回った後にポッと可愛らしく火を吹いてから消えていった。

これは……ムズイ。大変ムズイ。もっとイメージしないといけない、のだろうか。これは…俺も久しぶりに本気でイメージしないといけないようだな。頑張るかなー。

10分くらいたったのだろうか。そろそろイメージも固まってきたな。ならもう一度だ。もう一度やるしかないだろう。


「『炎天龍』」


すると、イメージした通り炎を纏った蛇のような龍が現れた。


『ウオオオオオオオオオオオオオォォォオオオオオオッ!!』

「こ、これは!?」

「生前の世界での龍がこんな感じだったもんだから。ついつい。あ、あははは」

「イフリート様?」


びくっ!えっ?爺さん怖いんだけど。


「は、はい!なんでしょうか!?」

「こ、これはさすがに…」

「分かってます!やりすぎましたぁ!」


うん、さすがにやりすぎたよな!そうだよな!柄にもなくムキになっちゃったんだよ!

でも、どうしよう。これのせいで居場所がバレたりしたら。いや、ないよな?あるわけないよな?


「とりあえず今日はここまでにしましょう。これ以上あんな威力の術を打たれたらバレかねない」

「あ、ああ。うん。本当にすいません」

「いえいえ、魔力の量を感じ取れなかった私の責任です。気になさらないでください」


罪悪感が残っとるんですよぉ!

よし、やっちゃったもんは仕方ない。切り替えよう。


「あんなことやった後で悪いんだけどさ、この世界の知識をできるだけ覚えておきたいんだ。書庫、みたいな場所あるかな?」

「書庫、ですか?ええ、ありますあります。ご案内しますね」


よかったよかった。今日の目標、無知脱出!以上!

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