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四十一話 探索

その後、少しのんびりしていると風球の中で少女が起きた。

 ようやくお目覚め、なのだが、さすがに起きたら壁があって身動きが取れないのはびっくりするよな。

 うん、そこまでちゃんと考えてなかったな。とりあえず風急は解除して少女を出す。

 が、これまた急に解除したせいで、少女が地面とキスした。うん、ごめん。そこまでちゃんと考えてなかった。


「いったぁ。あれ、私どうしてこんなところに?」

「いやー、安直に魔術使ったのはいけなかったな」

「ええ、そうですね」

「!? 誰!?」

「あっ、えぇと………森人の皆さんと友好条約を結ばせてもらってる龍人だ。イフリートって言うんですけど」


まだ戸惑っているようで、状況が読み込めてないようだ。名乗ったんだけどな。


「本当なんだけどな。あんたが魔獣と戦って瀕死になっていたのを見つけて、魔獣を倒してから治療した。意識は一応あったはずなんだけどな」

「……………そういえば、確かに」

「よかった、覚えてた。そういうわけで、俺はあんたを保護したわけです。今まで様子見してたわけですけど、特に痛むところとかは?」

「特に、ないですけど」

「そうか、ちゃんと発動してくれたか」


『譲渡』はしっかり発動してくれたようだ。『自己再生』の劣化版とはいえ、さすがに外傷全てを治すことくらいはできるみたいだ。うん、『自己再生』に続いて『譲渡』も汎用性の高い技能だった。

 よし、とりあえず安否は確認し終わったし、少女とは別れよう。別にそこまで親しみたいわけでもないし。


「まあ、ちゃんと傷も治ってるわけだし、俺らはこれ以上関わらないようにするよ。それでは!」

「あっ、ちょっと……待ってください!」

「ん? なんか用ですか?」


ここはもうすぐに分かれるパターンだろ。どうして止めるんだ、理解に苦しむぞ。別にカッコよくいきたいわけではないが、ここは別れるべきだろ。

 まあ、聞くだけ聞いてやるが。


「お礼だけでも言わせてください!」

「いや、別にいいから。人が死ぬのを見たくないだけだ」

「主様、煩わしいようなら私が……」

「いやいや、お前、目がマジなんだよ。お前がマジでやったら森吹っ飛ぶだろ」

「やめたほうがいいと思うぞ」

「あの……お礼を……」

「だからいいって。そういうのはいいから、次からは無謀に突っ込むんじゃないぞ?」

「……べ、別に無謀に突っ込んだわけでは……」

「主様にあれだけ迷惑をかけておいて、無謀ではないとはどういうことだ」

「はいはい、ルファー。喧嘩吹っかけるのやめろ。あんたももういいな?」

「ダメです! さすがに命の恩人に何もしないなんてことはさせられません!」

「ああー、分かった。俺はこの森にはまだ出入りするつもりだから、気が向いたら恩は返してもらう。それでいいだろ?」

「う、分かりました。じゃあ、また今度お願いします」

「いつか返してもらうから、そういうことでよろしく」


うむ、変な約束を取り付けられてしまった。

 別にそういうことがしたくて助けたわけじゃないんだけどなぁ。まあ、どうしてもって言うなら仕方ないから恩は返してもらおう。

 さて、と、このあとどうしよう。

 とりあえず少女とは別れて、何をするかを考える。


「なんかしたいことあるか、ルファー?」


そういや、一体いつルファーになったんだ? 気づかなかったな。

 まあ、気にしないでおこう。気にしない方がいいだろう。


「したいこと、ですか? 特にはありませんけど、適当にぶらつきでもしますか?」

「ぶらつく程、ここ何かあるのか?」

「分からないけど、とりあえずそれを含めて探しに行きませんか?」

「まあ、そうだな。じゃあ、行くか」


なるほど、それはそうだな。

 ここにどんな場所があるかは確かに気になる。

 なぜかルファーが嬉しそうだが、まあそれも気にしないでおこう。

 どこらへんから探索してみるか。

 さっき、緊急事態があったとは思えないのんびりさで森の中を歩くことにした。

 まあ、そんなこと言っても、どこへ向かうかなんて決めていない。どうしたものか。


「ルファー、ちょっと行く方向決めて……………あれ、ルファー? え、なんでリルの方になってるの?」

「分かりませんか? 分かりませんでしょうね、それでいいです」

「なんで不機嫌なんだ。おう、分かんねぇよ」

「まあ、いいです。大丈夫です、向かう方向はあっちでお願いします」

「よし、行こう!」


そういうわけでリルの指差した方向へ向かう。

 歩いていくと、何人かの森人に会う。なんか知らんが、会う人全員が忙しそうだった。なんだろう、これから大きなイベントでもあるのだろうか?


「忙しそうだな。なんかあるのか?」

「あ? ああ、ちょっとな。感謝祭があるんだ」

「感謝、祭。ほぉ、ここは色々感謝されそうな物あるもんな」


森の外周に合わせてある青い、結界みたいなものや………………えぇと、なんか色々。

 まあ、とりあえず祭か。俺は祭なんて行ったことないからな。ボッチが行っていい行事ではないだろう。

 だが、今回は俺一人ではない! なので、今回はしっかりと祭を楽しませてもらおう。


「おい、リル! その感謝祭とやらには出るぞ!」

「え、はい」


なんだ、そのうっすい反応は! だめだろ、楽しまなきゃ損だぞ!

 …………はっ!? ま、まさかリルは俺と会う前に祭には出ているのか!?

 そうかもしれない、というか反応が薄い理由はそれ以外考えられない。

 この、この……


「裏切り者がぁ!」

「うぇ!? なんですか、急に!?」

「お前、どうせ俺より楽しんだんだろう!」

「だから何言ってるんですか!?」

「もういい! 行くぞ!」


これ以上、不毛な争いで俺自身のキャパシティを削るわけにはいかない。

 よし、行こう行こう。祭か。そんなものはなかった。少なくとも俺の脳内からは消え失せた。

 さて、なんか屋台らしき骨組みが出来あがっているが、そんなものは見ていない。

 その道を進むと、建物があった。


「なんだこの建物?」

「なんでしょうね」


一瞬ただの木に見えたな。

 それほど木と一体化したような、もう家が木に似ているのではなく、木が家に似ているんだな。


「リル、ここ入っててみよう」

「勝手に入っていんですか?」

「安心しろ、後からどうとでも理由はでっち上げてやる」


というか、そんなこと心配してる暇があったら、あの面白そうな建物が一体どういう役割のもんなのかを考えることを優先しろよ。久しぶりに見たぞ、あんな面白そうなもの。

 えっ、祭? そんなもの知らない。

 さて、そういう感じで建物の中に入ってみると、なんですかこれは。

 えっ、これ、は………家かな? 普通だと想像していた壁には歯車が敷き詰められた? かな、機械仕掛けになっていた。

 仕組み的には開閉式かな。

 しかも建物内部の中心に、真ん中だけくり抜かれ、穴のある丸太が置いてある。

 穴の中を覗いてみたが、ある程度の深さからは見えないな。明かりが届いていないのか?


「主様、帰りましょうよ。なんかここ薄気味悪いですよ」

「おいおい、リル。極狼ともあろう奴が何を言っている? ここで引いたらお前はもう魔獣ではないぞ」

「うぐっ、まあ、分かりましたけど」

「さて、と。この穴の中はどうなってるのかなぁ」


好奇心が抑えきれずに、穴の中に手を突っ込む。

 すると、ガクッと膝が折れる。

 ん? なんだこりゃ。襲ってきた感覚としては、魔力を使いすぎて『自己再生』による魔力回復を待っている時の気だるい感覚か。

 どうして急にこんなことに………『自己再生』ですぐに魔力自体は戻るから大丈夫といえば大丈夫だが、不意打ちはちょっと。


「とりあえずこれは後で調べるなり、なんなりしてみるか」

「主様! 終わりましたか帰りましょう!?」

「うん、そうだな。帰ろう」


できるだけの調査はしておきたかったが、あんまりここに長居して森人の人に見つかって、もしこの場所がすげぇ重要な所だったら、どのくらい怒られるか分からない。それは嫌だな。


「なので撤収! 帰るぞ、リル!」

「わ、分かりました!」


木みたいな家から出ると、できる限りのスピードでそこから離れた。

 人影がないことを確認してから、一息ついた。


「よし、大丈夫そうだな」

「本当に………心臓に、悪、いので、やめてください」

「いやいや、別にそこまでヤバそうな感じではなかったが………何がそんなに嫌なんだ?」

「何と言いますか…………この場所であの場所がどういう意味を持つのかは分かりませんが、あそこは私は嫌いです」

「うん、そうか。何を言っているのやら、まるで分からん。要領を得ないことを言うのはやめろよ」

「すいませんでした。でもあそこは嫌いです!」

「おう、そうか。まあ、がんばれ」


はあ、子供みたいなこと言うなよ。大丈夫かよ、100年以上は生きてるんじゃなかったのかよ。あれか、知らない人は嫌いか。

 …………それはダメだろう。さすがに年長者の意地でも見せてくれよ。

 ま、まあ、それは置いておいて。

 あの場所、そこまでヤバそうな場所ではないと思ったんだけどな。特に危険な感じはしなかったけどな。考えられる可能性としては、魔力切れみたいな状態になった場所か。

 だが、それだけで怯えるほどヤワな存在ではないだろう。極狼という魔獣は。

 うーん、なんだろうな。あの機械仕掛けの壁は、ほぼ無関係だろうし。


「…………ぜんっぜん分からん!」


さすがに情報が少なすぎる。無理だな。

 よし、考察終了だ。これ以上はもうどう考えてもなんも出てこない。

 だが、答えは出ないものの、これで多少の疑念が、確信に変わった。

 完璧に、何か隠してやがる。だが、問題は何を隠しているかだ。この森に来て、1日弱しか経っていないのだ。情報量は圧倒的に足りない。確証には至らないだろう。

 やっぱり目標はあれに設定しておいてよかったな。あいつらが何を隠しているのか、気になる。


「それにしても、リル。ぶらつくと言ったのに、あんまり当初の目的果たせてなくて悪いな」

「…………そうです、全然果たせてません。というわけでまた今度、ちゃんとぶらついてください」

「うぐっ、まあ仕方ない。じゃあ、そういうわけで覚えておいて。その時は、街でやろうぜ」


うん、どうせなら華やかなところでやった方が、リルも機嫌が戻るだろうと思ったんだが、どうだろうか。

 これでどうにもならなかったら、どうしようもないな。お手上げお手上げ。


「………まあ、それでいいでしょう」

「よっし! そういうことで」


機嫌戻ったな。

 これでよし。一件落着だ。

 そして今の時間は大体昼か。

 腹……は特に減ってはいないが、何か食べたいな。『自己再生』はこういう時だけ不便。

 まあ、空腹を感じないだけでもちろん食べ物は食べられるし、満腹も感じないからいくらでも食えるんだけどな。うん、やっぱり『自己再生』便利。

 そんな俺はともかく、リルは腹減るだろうし、昼食にするか。まあ、この森の中に食い物屋があればだけどな。


「リル、ちょっとなんか食いに行こうぜ」

「あぁ、まあ、確かにお腹は空きました。でも、忘れてませんか、私の主食」

「お前の主食………………あっ、なるほど。別にお前は何か食いに行かなくてもここに飯があるのか」

「そうですよ。というわけで、私は別に何かを食べに行かなくてもいいんですよ?」

「おお、そうだな。だが、俺が食べたいから行くぞ!」


実際は食べなくてもいいが、それでも食べたいのが、人というものだ。

 そんなわけで、飲食店を探しに行こう。

 うーん、でも昨日から建物は色々と見たけど、飲食店はなかったな。ちゃんと見てなかったからかもしれないが。

 もういいや。森人の誰かに聞こう。


「おーい、そこの人! この森の中って飲食店あります?」

「……………えっ、あ、僕ですか?」

「そうそう。それで? あるの?」


声をかけたはいいものの、さすがに急すぎたか。すごい焦ってるな。

 他の人にもう一度声をかけた方がいいだろうか。いや、さすがにそれはかわいそうか。


「その質問、私が答えましょうか?」


不意に後ろから声をかけられた。

 振り向くと、そこにいたのは、小学6年生、まあ俺と同じくらいの大きさの少女が立っていた。

 どうした、急に。なんだ、道に迷って頭でもおかしくなったか?

 いや、目からしてそういうわけでもないようだ。


「おう、頼む」

「なら、今すぐ死んでください」

「は? 何言って…………」


それを言う前に俺の両の腕から感覚が消えた。

 見れば、そこには俺が感じた通り、そこに両腕はなかった。

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