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三十八話 情報収集

友好条約を結んだ後、リルファーを止めに行くと、謝りたくなるような地形の変化が起きていて、リルファーを殴りたくなった。

 まあ、殴りたかった、のだが、頼んでいたのは俺だし、リルファーなりに俺のところへ行かせまいとした結果なので、今回は目を瞑ることにした。


「主様、結局どうなったのですか?」

「ここにいる種族と友好条約を結ぶことになった」

「おお! ここの種族、私も知らない種族でしたので、情報が手に入るのはありがたいです」


リルファーでも知らない種族、か。

 リルファーが生まれる前から生きていた、もしくはリルファーが知ることができないほど高度な隠蔽技術があったおかげで今までバレなかったってことか?

 さて、と。これからどうするか。ここで情報を得るのもいいが、ルナ達が心配していそうだし、一度村に戻る…………いや、もうちょっとここにいるか。

 どうせ、森に入る前から気になっていることもあることだし、それが分かるか、キリがいいところまで楽しんだら帰ろう。

 とりあえず、さっきからリルファーのせいで警戒を解けない森人の人たちに、お偉いさんとの交渉の結果を教えてやるか。


「あー、あなた方の偉い人と話し合って、俺と『森人』とで有効条約を結ぶことになりました。ですので、そんなに警戒しないでくださると……」

「主様、別にそこまで腰を低くする必要はないのでは?」

「うっさい、静かにしてろ」


俺はちゃんと言ったはずなのだが、森人は、嘘だ、とかあんな小さいやつが? とか、失礼なこと言いやがって、信じようとはしない。

 どうしようか考えていると、森人の一人が俺の方へ近寄ってきた。何を言うのかと思ったら、


「お前、何歳だ?」

「はっ?」


急に年齢聞いてくるとか失礼だな。

 どうせ体の大きさと、言葉の丁寧さがかけ離れてたから、不思議がっただけだろ。

 俺は女じゃないが、そうやって年齢聞かれるのは嫌いだ。


「15歳だ。なんか文句でもあるのか」

「い、いや、そういうわけじゃなくてだな。友好条約、ってのを一人で取り付けたっていうのは、体の大きさの割に、って思ってな。純粋に気になっただけなんだが……」

「…………なんで嘘つくのかは別で聞くとして。一人で取り付けたっていうよりかは、お偉いさん達が、俺がこの森の中に入ってきた時からそのつもりで話を持ちかけてきた。別に難しいことは言っていない」


嘘をついた、っていうのに反応して、なんか言いそうだったが、俺が言葉を続けたのでやめてくれたらしい。いい奴だな。

 まあ、それは置いておいて。相手が嘘をついたっていうのに便乗して、俺も嘘をついたが、まああいつらのメンツも保たれるし別に大丈夫だろ。実際、そこまで事実をねじ曲げたわけでもない。

 っと、聞きたいことは聞けたからか、どこかへ行こうとするので、少し引き止めて聞きたいことだけ聞く。


「この森の中の施設で、情報を知れる場所ってどこだ?」

「そ、うだな。この道を辿っていけば、お前が堂々と入っていった建物と同じくらい大きな建物がある。そこに書物が大量にあるはずだ。友好条約を結んだなら、言えば入れてくれるはずだ」

「なるほど。助かった、ありがとう」


良いことを聞いたな。つまり、あの紙を見せれば、それで通してくれるわけだ。

 これを見越した上で、紙はいらないと、くれたのかもしれない。

 そういえば、後ろからさっき話しかけてきた奴の声が聞こえてくるんだが、何話してるんだろう。

 ま、いっか。

 そういうわけで目的地は道を辿っていけば見つかるとのことなので、ほぼ無心で、未だに狼姿のリルファーにまたがって、移動することにした。








 そうして着いたのは、言われた通りの大きな建物だった。神殿みたいな造りの建物だった。

 入り口を通ると、うん、当たり前だけど、明らかに村の倉庫よりも大量の本が置いてあった。

 やっぱり俺だけ色が赤だから、すぐ引き止められたが、紙見せたら案外簡単に入れさせてもらった。

 ふっ、見せた時の管理人さんみたいな人の顔が忘れられないぜ。すげぇ嫌そうな顔をしてたし。

 ちなみに建物内に入る前にリルファーはルファーになった。


「主様、どこから漁りますか?」

「そうだな、とりあえず俺も適当に探しに行くから、お前も好きな本、探しに行け」


これだけ広いんだ。なんとなくで歩いても、そう簡単に遭遇することはないだろう。

 了承して、ルファーと別れる。

 んでもって、俺が読みたい本は、どこだろう? 異様に広いせいでどこにあるのか見当もつかない。

 よし、ぶらぶら行こう。

 読みたい本としては、村の倉庫になかった本、というのは少々アバウトなので、できれば日常生活に関する本、強いては通貨などについてか。あと、できれば食についても調べておきたい。

 転生して何も知らずに、街を歩いた時に聞いた『ルニー』という単位と、リンゴみたいな見た目をしていた『ルプ』という食べ物。そろそろなんだか知りたかったしな。

 知りたいと思ってはいるんだが、地球の図書館みたいに分類別に分けられているわけでもなさそうだし、されていてもどこからどこが何なのかが分からないので、探すのは骨が折れそうだ。いや、下手をすると物理的に。

 何て考えているうちに、本棚の一つ目の端から端まで探したらしい。

 …………………一階だけで、あと数十回はやらないといけない。この建物は数階建て。今日中に終わる気がしない。そもそも一階にあるのかすら分からない。

 あの管理人みたいな人に頼もうか。でも、怖いしなぁ。ちょっと吹きかけたし、それを仇で返されるのも嫌だし。

 まあ、いい。自力で探そう。

 そういえばルファーの方はちゃんと探せているのだろうか。苦労してる気がする……けど、ルファーだしなぁ。案外勘とかで簡単に探し当てて、もう読みふけってたりしそうだな。こういうところで性能の差が。


「にしてもこれだけ多いと、森人はどうやって探してるんだ?」


既に配置を覚えている、っていう奴もいるかもしれないが、それは例外として。他の人たちはどうやって………もしかして何かしら法則がある?

 ちょっと試してみるか。

 最初に探した本棚の本の題名を、異世界の文字の読み方で、最初の文字を読み上げてみる。


「あ、い、う………」


おおっ! いいんじゃない!?


「か、ぬ、お、で、め、や……ちきしょぉ!」


全然違ったじゃねぇかよ。

 最初の方だけ喜ばせやがって、この本の並べ方した奴許さねぇ!

 地球の図書館みたいに、題名の最初の文字で、あいうえお順になっているわけじゃない。となると何だ? まさかさっき読み上げた文字の羅列がそのまま法則でした、なんてことはないだろうな。

 とりあえず一度休む…………いや、やっぱりもう少し考えるか。

 頭の文字が、あいうえお順な訳ではない。でも、文字が何かしらの順番なのはあってる気がするんだよなぁ。

 その線で考えるとなると、他には何が考えられる?


「あああ! 分かんねぇなぁ!」


何なんだ、法則は。

 分からず、思わず視線が下がる。そして気付いた。

 なる、ほど。やられた。というか、明らかにこれは初見殺しだろ。念のため、少し走って俺の考えがあっているかを確かめる。そして、どうやら正しいらしい。

 つまりは、最初の文字ではない。最後の文字が法則になっている。あ行からではなく、ら行からだ。しかもあ段からではなく、お段からだ。これは本当に、初見殺しだと思った俺の考えは、別に間違っていないはずだ。

 圧倒的に、題名から内容が判りにくい並べ方である。まあ、これがこの世界での本の並べ方なのだろう。


「……ん? あれ、もしかして法則が分かったところでそんなに役に立たない?」


あ、そうだ、本当だ。どうしよう。これ、今まで時間費やして、発覚した事実にしてはあまりに使えない。

 最終手段1に出るか、それとも最終手段2に出るか。どっちにしろ最終手段だ。

 …………………仕方ない。最終手段2で行こう。1はダメだ。

 ということで、ただでさえだだっ広いこの建物を、今度は無意味に、ではなく目的を持って歩くことになった。

 とりあえず、一階はもう用済みだ。いや、まだ用はあるかもしれないが、それでも後にならないと分からない。用済み(仮)ということになる。

 うーん、二階に上がっても、いるのか分からないな。くまなく探すしかないのか。面倒くさい。

 どうしてこんなに面倒くさくなったのか……………全部この建物が異様に広いせいだ。無駄なくらいに。

 はあ、もう地球でのマナーなんて守ってられないな。


「おーい、ルファー!」

「はい、なんですか?」

「グッジョブ! 悪いな、楽しんでただろうに」

「いえ、構いませんよ」


とりあえず想定していたより、相当速く到着してくれたので、大体の事情は説明した。

 多少の愚痴は言ったが、まあ、そのくらい真剣に探したんだと伝わればいいか。


「なるほど。それで必要な書物はなんなのでしょうか?」

「通貨と食料のことなんだけどさ」

「ふむ、それは多分一階にはなかったのではないかと」

「はっ? どういうことだ?」

「この建物内は、階ごとに置かれている書物の種類が違います」


え、どういうこと? 疑問しか出てこないんだけど。

 よし、一旦落ち着け。情報を整理するんだ。

 俺が欲しいのは通貨と食料に関する本。しかし、ルファーは一階、俺が探していた階にはそのどちらもないと言った。そして階ごとに置かれている本の種類が違う、という。

 つまり、一階には通貨とも食料とも違う種類の本が配置されている、ということか?

 それ、俺が今までやっていたことの完全否定じゃねぇか。俺、意味ないことずっとしてたんだな。

 まあ、その後、ちゃんとルファーが解決方法、というか探す方法を教えてくれた。


「一階は、どちらかといえば童話や物語などが主です。二階からは、基本的に主様が探していた本などが多くある階ではないかと思われます」

「ほぉ、そんな感じになってたのか」


言われてみれば、確かに題名もそんな感じの、物語みたいなのが多かったな。

 やっぱり無駄だったのか。管理人には、物語系の本を必死に探していると思ったら、急に叫び、しかも二階に上がって、もう一回叫んだやばいやつだな。

 あとでどうにかして弁解しないと。ついでに謝っておくか。


「そして、二階からは、主様がいた一階と違い、題名ではなく、分類された時の基準となった単語の最後の文字で分類されています」

「分かりやすくなったな」


ということは、俺が読みたい通貨や食料の本は、分類的にはまんまか? 通貨なら『か』、食料なら『う』で探せばいいわけだ。

 よし、大体分かった。これでお目当ての本を見つけられる。長かったな。


「ありがとな、助かったよ。またあとで」

「はい、それでは」


よし、探すか。

 ルファーが言っていた通りに探すと、案外早く本を見つけることができた。

 これでようやく情報が読めると。時間かかりすぎだな。

 まあ、見つかったわけだし、読むか。










「なるほど」


自分でもほとんど意識せずに声が出た。

 何がなるほどなのかというと、使い物にならん。

 どう使い物にならないって、例えば通貨の本。これにルニーの単位がない。つまり、この本には俺がいつか行こうと思っている街で使われている単位についてまるで分からない、ということになる。

 あれだけ時間を使った意味がない。しかもルプに関しても一切書いてないんだけど。それっぽいのいくつか探して読んだけど、無かったし。

 もしかして、と考えてみたのだが、さすがにないとは思うんだが、森人って引きこもりすぎて情報が最新のじゃないんじゃないか?

 そうだとしたら、ここにいる意味がそもそもないんだけど。時間浪費したかな。まあ、一応他の知識は得られたといえば得られたが。

 とりあえずルファーのところ行こうかな。うん、そうしよう。

 なんて思っていたら、ルファーの方から来てくれた。


「主様、結局本は見つかりましたか?」

「おう、ありがとうな。見つかった…………けどそんなに必要っていうわけでもなかったかな」

「それは残念です」

「あははは、悪いな」


本当に残念そうな顔をするので、若干罪悪感はある、申し訳ない。

 まあ、あとで謝っておけばいいか。

 それにしても、ほとんど進展がなかったな。まるで使えなかったな、あの場所。本もよく分からない並べ方してたし。

 さて、これからどうしよう。一回村に帰るか、それともまだこの場所に留まって何かするか。どっちにしろ、俺は暇なので、決まってこれをしなきゃいけないわけではないが、今、何かしなきゃいけないわけでもないからな。夏休みみたいな、どうしようっていう下手な高揚感がある。

 まずいな、このままだと普通に満喫してしまう気がする。ただでさえ…………あ、あれ、そういえば魔弾木伐採するっていう、やることあったわ。うむ、忘れてた。

 そうなると、一度帰ることになるのか。よし、ルファーにも何か用事ややりたいこともあるかもしれないが、俺だけでも一度帰るとするか。


「おい、ルファー。俺は一度帰ろうと思っているんだが、お前はどうする?」

「主様が行くのなら、私も行きましょう」

「別に無理しなくてもいいぞ?」

「いえ、従魔として当然です」

「そ、そう」


そこまで真剣な顔で言わなくても。

 俺としてはルファーの意志も尊重したいんだが、そこまできっぱり言われるともう一度確認するのは、さすがにそれは忍びない。

 村に戻ってくれるって他ならぬルファーが言ってくれているわけだし、さっき考えていた通り一度村に戻ろう。

 それにしても、この場所は思ったよりも良いところだったな。最初と違って、森人の人たち案外優しかったし。情報が古いだけで、本とか異様に置いてあったし。

 …………だから、こんなことはないはずなんだ。俺が見ているものは幻覚であるべきなんだ。目の前にいる少女の目から光が消え失せているなんてこと、あるはずがない。

 声をかけようと思った。俺が見ている光景が、俺自身やルナの時と状況が似ていたから、何かしなければいけないと思った。

 だが、それをする前に少女はどこかへ歩いていく。


「……………」

「主様、どうかしましたか?」

「あ、いや別に。行くか」

「はい」


あの少女のことが気になりつつも、自分で言った手前、待たせることもできず、俺は一度ルファーを連れて、村に戻ることになったのだった。

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