二十二話 お願いします
……………書き溜めが書き溜めじゃないので…………ちょっと書いてきます。
投…稿? なにそれおいしいの?
嘘です、ちゃんと書き終わったら投稿します。
うん? なんか思考停止してね? おーい、大丈夫か、これは?
む、なんか気絶してんだけど。大丈夫じゃなかったんだけど。仕方ない、ちょっと待ってるか。
「おい、さっきの続き聞かせろ。グリモワール。ん? こいつ、よくもまぁ懲りずに寝られるもんだなぁ。よし、起こして殺すか」
『わー! さーせんさーせん!』
チッ、小賢しい真似しおって。本当に潰すぞ。これ以上変なことをしないように念のために睨んでおいた。これでどうにかなるといいんだが、なんとかならない気がするなぁ。
とりあえずグリモワールの話は聞けそうにないし、というかふざけて話しそうにないし他に暇つぶしするようなものあったっけなぁ。
ローブは羽織ってるけど、今は特にできることないし、変身して変にムルサさん困らせるわけにはいかないんだよな。というか今まで使った中ではあんまり意識してなかったが、『炎天龍』使った後って割と魔力切れでダルい時間が長い。そのせいであんまりローブの変身機能を使う気になれない。この感覚も慣れるんだろうか?
今分かるようなことでもないけどな。
「はっ!? わ、私は言った何を!?」
「あ、起きた。なんか『弟子にしてくれ』って言ったら……え?」
なんかまた、フリーズしてんだけど。どの単語がいけなかったんだ? 俺、何したよ?
というか一体どこに嫌なところがあったよ。別にいいだろ、かっこいい登場人物と言えば、基本弟子がいるだろうが。そういうもんだよ。いいじゃんか、別に。あっ、龍人なのがいけないのか? やっぱり最弱の種族じゃダメですよねぇ。
また起きた。今度は大丈夫だろうな?
「すいません、今変な単語が聞こえまして」
「弟子にしてくれ」
今度は倒れたんだが。いやいや、一体何がいけないっていうんだ!? 確かにあんた、冒険者だよ。命かけてるだけに変なとこで手抜いてちゃいけないんだろうから、休みはダメなのかと思っていたがもう関係なくね? これ、単に拒絶されてるだけじゃね? ああ、悲しい。俺、この世界でも否定されるんだな。
どこに、弟子にしちゃいけない理由があるよ。
「何がいけないんだ、グリモワール?」
『種族?』
「やっぱりそれかなぁ」
しゃがんで、ため息をひとつ。
やっぱり落ち込むなぁ。そういうのは慣れてないんだよなぁ。
ああ、ようやく起きた。今度はちょっと待ってから行ってみるか。次、また倒れられたら俺はムルサさんに飛び蹴りでもかましてやろうかと思っている。怒られても気にしないぞ俺は。
「………弟子にしてください」
「そろそろ状況を把握しないとダメみたいですね」
「はい、そろそろお願いしたいですね。殴りたくなるので」
「はぁ、まさか守るべき方に、弟子にして欲しいと請われるとは思っていませんでした。とりあえず見送りというのは?」
「なしで」
ダメに決まってるでしょうが。あんたのチャンスはもう使われてるんですよ。気絶しまくったせいで使われてるんですよぉ! と、いうわけでにっこりと言ってやった。
自業自得よ、俺のせいじゃないです。絶対に。そろそろ認めて欲しい。
「分かりました。あなたを弟子にします」
無言でガッツポーズ。
「ただし!」
なんか続いてたし。
急に大声出されるとは思ってなかった、ビビった。
「少しついてきてもらいたいんです。ちょっと他にも頼みごとされてましてね。そっちも済ませたいんですよ」
「ああ、全然どうぞ」
あら、多忙。そういえば冒険者の本業の方はいいのか? 本業の方はマルサさんに任せてる系か? いや、それいいのか? リア充に何ぞなったことはないが、なんかそれはダメな気がする。
とりあえずついていくことにした。
うーん、別に計ったわけじゃないんだがなぁ。どうしてルナのところに来てんだろうか。全くもって意味が分からない。そういや最近会ってなかったな。
「おっす、久しぶり」
うん? 反応がない、だと!? 俺、なんか変なことしたっけ? 最近会ってなかったから特に心当たりなし。というかそのくらい分かっているようなら、俺はきっと、もっと学校のクラスに馴染めていたはずである。
……………この話やめよう。もう異世界だからな! 何たって。
でも、ルナが頼み込んだことって何だろうか? あいつが頼みそうなこと………レベル上げ手伝え?
絶対違うな。不良のレッテルを貼り付けてしまっている。どこぞの◯太郎さんだ。
さて、もう一回ちゃんと考えるか。さすがにふざけすぎだな。何だろうか、ルナの頼みそうなこと……こと……うん、ないな。最近全く会ってないし、一切興味もないし。美少女とかよく分からん。まあ、web小説とかはよく読んでたが。ハーレムて何がいいの? いやいや、脱線してるから。
何が言いたいのかと言われれば、女子の気持ちを読むとか無理も無理、できる奴チーターじゃね? ということだ。ましてや数人も! 頭がおかしいとしか思えないです。僕には到底無理ですね、はぁい。
いいや、なんかもうめんどくさいし。俺にはもう無理ということで。
というか気づいたら、なんか話し始めてるし。
「君の要望はしっかりと聞いている。君はそれで本当にいいのか?」
「大丈夫」
「いくら村長の孫とはいえ、手加減する気はありませんよ?」
「大丈夫」
「どうしてそこまで強さに執着するのですか?」
ん? 強さ?
ちょっと待て、ごめんちょっと待って。なんか落ちが見えてきた気がするんだけど。見えてきたんだけど。
「勝ちたい奴がいる」
おお、なんか少年漫画みたいだな。頑張れ!
ほとんど即答だったことも効いたのか、諦めたようにため息をついた後にムルサさんが言い放った。
「分かりました。あなたのことを弟子にしましょう」
「へ? え、ごめんなさい、へ?」
落ちは見えてたけど、なんでそうなった。だいぶ強いでしょ、ルナ。なのにどうしてだよぉ! 俺が何したっていうんだよ! いや、明らかな悪意を感じるんだけど。本当に俺には心当たりがないぞ!
でも、そんなことはルナは気にしてないんだよなぁ。満足したように一度首を縦にふると、
「よろしくお願いします」
そう言ってきおった。いやいやいや、俺もいるから。それを言わないムルサさんもムルサさんだと思うが。むしろあえて言ってないのか? 性格が悪いな。うーん、もうメンドクセェよ。というか、居づらいよ、俺が。
そこで何かに気づいたように一度、ポンと手を打ってから俺の方を見た。
おいゴラ、俺のこと忘れてただろ。ムルサさん、俺のこと完全に忘れてただろ!
「そういえばイフリート様も弟子入りしたいそうなのでさせます」
おい、今『そういえば』って言ったよな、言ったよな!? 俺はもう脇役か? いや、もとから脇役だけれども。もう主人公だよね、ルナ。天才のくせに努力を怠らないとか、本当に主人公だよ。
「さあ、そこで最初に修行と称して少し前にやっていた決闘? をやってもらいます」
「ん? え、なんで?」
「あれ? 私は子供の頃に師匠とは弟子たちを戦わせる、と教わったはずなんですが」
おい、ルナ、首肯すんな。ムルサさんもそれはなんていう題名の漫画ですか?
あんたら、ふざけてんのか? これ以上はいけないですぞ?
えー、本当にやるのかよ。ムルサさんは腕組んで、なんか頷きまくってるし、ルナは準備体操始めてるんだけど。はあ、別にこんなことしたいがために弟子になったわけじゃないんだけどなぁ。実戦形式とか聞いてないんだけど。
分かったよ! やりゃあいいんだろ! というわけで頑張りますとも。ただめんどくs…ゴッホンゴホン! なのでラジオ体操します。
「まあ、嘘ですけどね」
二人ほど派手にずっこけたと言っておく。
ただ俺はずっこけながらガッツポーズしたとも言っておく。
だが、そうなると一体何をするというのか。修行するのは当たり前だと思うが、ならば一体何をするのか。
「とりあえず今回は微量の魔力で相手の力量を知ってもらいます」
「いや、割と知っているつもりなんですけど…」
「より詳しく、です。自分の何倍か、勘で多少は分かりますが、絶対に勝てない相手というのは魔力の感覚で案外分かります。お二人とも冒険者になるのなら、これは絶対に覚えておいてください」
「んで、やり方は?」
「まずは二人とも私が今から魔力を少し外に放出するので感知してみてください」
まあ、それくらいならどうにかできそう。きっと天才のルナにも普通にできるだろう。
というわけで、ムルサさんはもう魔力を放出しているようだった。
俺は、というか他に方法を知らないからだが、薄く魔力を放出して円状に広げる。おお、あった。明らかに感知されない気満々の魔力放出具合だと思う。あんまり出てない。感じ方からしてムルサさんの体の周り1センチをギリギリ覆っているくらいのはずだ。
これで大丈夫なのか。『自己再生』あるとはいえ、魔力無限と変わらない俺は、割と適当に探すことができる。冒険者ってこれできればどうにかなる職業なのか、という点において大丈夫なのだろうか。別に俺がおかしいはずじゃないんだけどなぁ。
なんとなく横を見る。普通にルナも分かっているようだった。顔がドヤ顔だったので一目で分かった。分かりやっす。
「感知はできたようですね。それでは、次に自分の魔力を今、私の放出している魔力と同じ量、濃さに調節してください」
それ……むずくね? 俺、できるかね? なんかできなさそう。
とりあえずギリギリ1センチ、体を覆うイメージで魔力を放出。
できたら、これをなんかどうにかして保ちつつ、魔力を放出してムルサさんの放出している魔力との違いを探す。なんとなくだが、違和感は分かる。直感…的な?
多いか少ないか、今回の場合は俺が意識せずに放出した魔力よりもだいぶ少なかった。
なので少しずつ、魔力の放出量を下げていく。む、調節は案外難しいもんだな。下手に少なくすると魔力の放出自体をやめてしまう。ギリギリを維持。本当に難しい。分からないから笑ってるだろうけどさぁ! あれだよ? 糸を針に通す的な感じのウザさがあるよ。すごくウザい。引きこもり中に一回、裁縫したことあったけど糸通せなくてイライラしたよ。
いや、本当にそんな感じなんだよ。一度放出を止めてしまったので、もう一度魔力を放出する。今度はさっきよりも放出量を少なくした。そして、今度は魔力の濃度を薄くした時のような感覚で少しずつ、ミリ単位でスライスしていくような感じで魔力を減らしていく。
魔力感知は続けているので、まあ大変だが、脳への負担はそうでもないので案外大丈夫だな。
だいぶ放出量を抑えたんだが、感知した感じ若干違うな。感覚的にしか分からないんだが。んんんんー、なんだろうなぁ。何がいけないんだろうなぁ。
すごく違和感が……あっ、そういえば! 魔力感知のために魔力の濃度を薄くしたままだったか。もしかして魔力放出の方の魔力も薄いのにしてる? 試しにやってみるか、今のところ他に思いついたこともないし。
ん? もしかして今まで脳への負担がそれほどなかったのって、使っていた魔力同一種類だったから? そうだったとしたらめんどくさいことになるぞ。鼻血とか出して、変な勘違いはされたくないぞ。
まあ、その時はその時で! 意識して片方、というか放出している方の魔力を一気に濃くしてみる。
忘れてました。そういえば俺の魔力めっちゃ人のことびっくりさせるくらい濃いんだった。お二人とも異常にびっくりさせてしまった。でも、まあこの前の明らかに敵意を向けられるくらいは濃くはないんだし、大丈夫か。そこらへんは案外考えなしでも出来るもんだ。絶対自惚れたりしないぞ。俺は天才ではない。
うん、だいぶ近づいたな。あとは若干薄くしていけば、それでどうにかなるはずだ。もうだいたい合ってるはずだし。
ついさっきまでやったことをやるだけだし、簡単だろ。
実際、すぐに終わった。
思ったよりも時間掛かったな。合計時間的に。俺が時間かけてたうちにルナ、もう終わらせてるし。
「イフリート様も終わりましたか?」
「あい、終わりました。案外時間掛かったな。ルナ、もう終わってるし」
「私、優秀」
あら、ドヤ顔。まあ、天才さんなら当たり前だよな。
そういうわけで俺が遅いのも当たり前だ。うんうん。
「いや、それでもだいぶ短い時間でできているのですごいですけどね」
「本当ならどのくらい出来るのか分からないけど明らかに俺、今フォローされてるよね」
ああ、俺だいぶがんばったんだけどなぁ? うむ、これ以上はいけないな。
さて、と。これで今回は終わりかな? 体感時間的には一時間弱くらいあった気がするんだが、本当の時間的には十数分だったという不思議。
はあ、やっぱり土地見に行くか。なんかもうすることないわけだし。いや、きっと土地があれば、家を建てようとして暇な時間などなくなるはずなんだ、多分、きっと。
そういうわけでこれ以上暇にならないために僕は土地を見に行きます。
「お先に失礼します。ちょっと村長に会いに行かせていただきます」
「ああ、はい。どうぞ。いってらっしゃい」
うんうん、帰ろー。
『血への渇望』発動させて、後ろからの視線が痛かったので全力でダッシュさせていただきました。
ムルサさん達といろいろやってた場所からだいぶ離れた位置まで来て、ようやく村長を見つけることに成功した。一体どこにいるんだ。ここまでにいったいどれだけ時間をかけたと思っているだ。数分かかりました。
まあ、いい。村長も俺のこと見てるから気付いてるだろ。
「おぉーい、村長ー。すげぇ遅くなりましたけど、土地、見に来ましたよ!」
「イフリート様! 先ほどは申し訳ありませんでした!」
「ん?」
どういうことだ? 何言ってんだ、村長。ちょっと俺には何を言っていらっしゃるのか分からないんだけど。
…………………あっ、マタタビのやつか。そういや、そんなこと俺したなぁ。いや、今日のことなんだけどさ。マタタビ酒作った達成感で忘れてたよ。うんうん、まあ、仕方ないな。俺、引きこもってる時、ほとんど達成感とかなかったし。
さて、いつになったら村長は、現世に戻ってくるんだ? 目の前で手を振ってみてるんだが、戻ってこない。
しかし、こんなことに心当たりがある俺はぼやいた。
「俺、相手の人が固まって暇になること多過ぎひん?」
しかも変な言葉で。
だって、実際そうなんだから仕方ない。そう、きっと。というわけで、どうにかして暇をつぶしたい。
いや、待て。それがおかしいんだ。そういう話を今、してたんだよ。
ていうか、何があって、村長は今黙りこくってるんだ? 俺、何したっけ? ちょっと沈黙してただけじゃない。
「早く見に行きたいんだがなぁ」
「あ、すみません。放心状態ってだいぶ続くもんですね」
「うん、そうだね」
だいぶ適当に返事したが、村長は特に気にした様子がなかった。良かった。嫌われたかと思った。
んなはずねぇだろ、って思われるかもしれないけど、人付き合いを遮断していたので仕方ない。
「じゃあ、行きましょうか」
「はい、お願いします」
そうして土地を見に行った。
程なくして、村長が見せたいところにまで着いた。
開けた場所だった。土地なんだから当たり前だが。
「ここが最初の土地ですね」
「ん、最初?」
「はい、まだいくつかあります」
おお! 他にもあるだと!? すげぇ。ここは天国か。
さすがに全部はもらえないだろう。一つしかもらえないのが普通だよ。それでもせめて見るだけなら、全種類みたいですね。
「ここは場所は開けているんですが、だいぶ風通しが悪くて。涼しくはありませんね」
「なるほど」
他にも色々あるかもしれないから保留。
保留。
………………保留。
…………………………………保留。
俺には決められませんでした。見た土地、全部保留です。だって、一応前世では調べてみたけど、実際にやってみるとほとんど分からないし。村長が言ってること分かんねぇし!
まあ、今の所、特にこういう風に作りたいっていうイメージもないし、適当に選んでもいいんだろうけど、それでもなんかこういうのは最初の印象が肝心だと思います。まる。
なんかね、一つもうこれ土地なのかな、ってのがあったんだけど。いや、俺の偏見がそう思わせてるだけかもしれないけどな。明らかに住ませようとしてない感じだった。木が生い茂ってました。なんということでしょう、匠助けてください。
うん、どれにするか真剣に悩んでこの有様だ。もうさっき否定したばっかりだけど適当に決めちゃおうかな。
じゃあ、一番住みにくそうなところってことで。あっ、なんだっけ。あれだ、ビフォーアフターな土地だ。あそこでいいや。
「二つ前に戻ってもらっていいですか?」
「ん? はい」
戸惑ったようだったが、それでもちゃんと連れてってもらえました。
おお、うん。木が生い茂っていて、大変よろしいです。
そういえば、と思い出したが、家を作るための材料って俺持ってないじゃん。そして多分、自分で調達した方が楽しいじゃん。
という適当な理由をつけつつ、だいぶ気に入ってたりしてたのでここで大丈夫です。
「ここにします」
「ここで大丈夫ですか? だいぶ荒れてますが」
「いや、そっちの方が楽しいかと」
笑顔でそう言った。
そのあと、色々とやり取りがあったが、俺はほとんど覚えていなかった。頭の中がもう家の構想でちょっと……。
だったので、気付いたら自分の土地見てニヤニヤしてました。気持ち悪いですよね、すいません。とりあえずここの木を一掃しなければ。てか、ニヤニヤしてたら村長消えたし。
魔術使うか。風の。ゆっくりしている余裕がないわけでもないけど、面倒くさいのでできる限り早く終わらせます。
うん、ほとんど魔術できたし、発動させるか。今までと違って広範囲に横薙ぎにする風の魔術だったので難しいかと思ったが、案外イメージしやすかった。
「『風断』」
名前は適当だ。
魔力でできた風が木を真っ二つにしている、はずだったんだがなぁ。どうして分からないんだけど。
よく分からなかったが、魔術が弾かれたみたいだった。俺にはこっちの知識はほとんどない。こういう時は癪だがあいつに頼るほかないか。
「おい、グリモワール。この木、なんて木だ?」
『ああ、これは魔弾木だな』
「まだんき? あの、ちょっと漢字が分からないんだけど」
『魔力を弾く木と書いて魔弾木だ』
ああ、なるほど、そういうこと。俺は、ネット小説とか読んでて、とても不思議なんだがどうしてネット小説の主人公たちは人から聞いただけで漢字が分かるのか! 俺にはちょっと本当に漢字チンプンカンプンで。
というか俺、この前の腕立て中にやった時間の計算、間違えてたな。なんか、レベルというまさしく異世界要素に置き去りにされたことに対してのショックがすごすぎて思考回路が一時的におかしくなっていた。多分、もう大丈夫…のはず。今は面倒くさいからもう一回計算とかしないけどさ。
まあ、話は逸れたが、魔弾木。なるほど、そういう漢字か。
漢字通りの特性を持っているなら……だいぶ使えるぞ。
「おい、特性は文字の通りか?」
『ああ、それがどうした?』
「切ってもずっとか?」
『お前…何するつもりだ? まあ、多分そうだが』
チッ、そこに確証がないのは痛いな。仕方ない、確かめるか。といっても、それを確かめるまでには時間がかかるが。
とりあえず刃物…さすがにこんなところにはないか。村長がいればどうにでもなったんだが、あんまし頼るのもいけないか。
見た目的にここら一帯には魔弾木が生い茂っている。これ、全部切るために一体どれだけの時間がかかるのか。
「とりあえずやってみるしかないかぁ」
道具がないと、どうにもできないと思い、一度村に戻ることにした。
そして戻ってきたら、これだよ。今回も何かしら来るだろうなと思ってたけど、まさかのムーヤさん、集団で俺に突撃してくるとは思わなかった。子供の発想力には何とも驚かされます。
というか、ムーヤに便乗した子供達、俺がこの前遊ばされた皆さんじゃねぇか。何だよ、ムーヤ、友達できてんじゃねぇかよ。じゃあ、俺の役目しゅうりょー。
そして死にそうなんだが……俺、ただ刃物無いか見に来ただけなんだけど。いや、だいぶ危ないやつだな。
とりあえず子供らを引っぺがして、先に進みたいんだけど…無理です、僕には。というわけで引っ付いた子供らをそのままにして、『血への渇望』フル活用で引きずりながら移動している。
辺りを見回しながら、探しているわけなんだが、どうにも見つからない。いや、そりゃ探してる場所が家の外だからってのはあるけど。
んー、やっぱり木を切るなんてしないのかなぁ? 火なんて魔法でどうにかなるし…わざわざ切りに行く必要もないのか。
うーん、鍛冶屋行くか。あそこなら、武器系統は基本あそこで手に入るはず。
「おい、お前ら! 俺は危ないところ行くから…離れろ」
なぜか嫌だ、という声が殺到したが、それでも今回行くところは本当に危ないので、怖いのを承知でこうして頼んでるわけなんだが、なんで聞いてくれないんだ。鍛冶屋は火とか使ってるから本当に危ないんだけどな。
だが、この発言に関しては今まで微笑ましい光景を見るように、笑顔だった親御さんたちも、さすがに子供たちを引っぺがして説得していた。
この隙にこっそりと俺は逃げてたりする。
着くまでに時間がかかってしまった。どうして俺の邪魔をここまで徹底的にするのか。
とにかく今は当初の目的を果たそう。俺はマイホームが欲しいんだ。
「おう、小僧。久しぶり、か?」
「うーん、どうでしたっけ。どうでもいいですけど」
「ああ、そうだな。それで? 今回はどういう目的だ?」
「いや、木が切りたいんですが。それっぽいのが家の外に置いてなくて……」
「アホか。家の外に置いてあるわけないだろうが。危ねぇだろうが」
「まあ、おっしゃる通りなんですが」
そうだな、そうだよな。子供とかが普通に出歩いてるもんな。そりゃダメだよな。危ないもんな剣とか斧とか。
うーん、そうなると俺、ここで貰うだか、作ってもらうだかした斧か何かはどうすればいいのか。そこらへんに置いておくことが出来ないなら、どこに置こう?
まあ、その時になったら考えるか。まず貰えるかも分からんし。
「と言うかここらの近くに木なんてあったか?」
「ああ、ちょっと遠い場所に土地をもらったんですよ。そこがなんか木が茂っている場所だったので、切ってしまおうかと」
「魔法で切ればいいじゃないか。どうして切らないんだ?」
「魔弾木とかいう魔法とかを弾く木でして。それのせいで全く魔術が使えず、物理に頼ってるわけなんですが」
「ほお、魔弾木か。そうかそうか………頑張れ」
ん? それはどういうことだ? どうしてそんなに哀れむような目でこっちを見てくるんだ?
あいつなんか隠してやがんな。覚えてろよ、グリモワール。しっかりと情報を吐かせてやるよ。
とりあえず、俺は木を切れるものが欲しいんだが。
「んん? そういう目をするな。分かっている。魔弾木を切るとなると割と硬度が必要だな。
となるとこの辺りか。好きなのを持ってけ。壊さず返せよ?」
「分かりました。でも、斧なんて使ったことないしどれがいいとかまるで分からないんですが、それは…」
「あぁん? それならこれはどうだ?」
言われた斧を手に取る。だが、俺のステータスではどうにも重かった。あんまり技能に頼るわけにはいかない。そういうわけでこれは却下したい。
と言うか、斧ってこんなに重かったのか。手に血管が浮き出ている。大分細いが。
「これ重すぎるんですが。振れる気がしないんですが」
「そういやお前、龍人だったな。あのクッソみたいなステータスじゃその程度も持てないか」
「事実ですけど、さすがに傷つきます」
『何言ってやがんだ。傷つかないだろう』
隣でなんか言ってる奴がいるが、関係ない。
後でどうせしばくんだ、覚悟しておけ。俺だってステータスの低さは気にしてるんだよ。
重い。これもう放そう。
ゴトン。だいぶ重そうな音したな。
なぜかその光景を見て、あんぐりと口を開けている男勝りさんがいた。
「おまっ! ばっか! 何してんだ、あれだいぶ高いぞ!?」
「ああ、だから重かったのか」
「平然としてるんじゃねぇよ!」
そんな怒るほど高いもんを落としたのか。それは申し訳ないことをしたかもしれない。
うーん、でも今そんなに高いものを何かに使えるほどの財力は俺にはないんだけどなぁ。
あ、でもあるわ。一応あるわ。あんまし使っちゃいけないとは思うけど、男勝りさんはこれからもお世話になると思うから、渡そう。
「じゃあ、すいません。これを」
そう言って、ステータスで出せる力を全力で出して、俺の今の体のいたるところにある赤い鱗の一つを引きちぎって渡した。
若干痛かったが、それでもあんまり痛くなかった。慣れてきているのだろうか? あんまり慣れたくない変化だ。
「おい、こんなもん俺に渡してどうする?」
「いや、代わりに?」
「別に金払わせるほど壊されてねぇよ。ほら、これでいいだろ? 一番軽いやつだ。だが、頑丈だから安心しろ」
おお、良かった。大丈夫だった。でも、この鱗どうしよう。なぜか僅かにあった弾力性は完全に消え、なんだろう、完全に石みたいだった。赤い石だった。
対処に困ったので、ローブのどこかに絡ませておいた。
「ありがとうございました。また今度来ると思います」
「おう、また今度来い」
そういうわけで、おニューの斧を手にし、意気揚々と魔弾木の森へと向かった。
さて、伐採するぞー!
おおきく振りかぶって、木の幹に斧を叩きつけた。めっちゃ軽くて使いやすかった。
バッッッッッキイィィィィィィンッッッ!!!
「いってぇぇぇ!」
大きく弾かれた。
『当たり前だ。魔弾木は、木の中では最硬だ』
「やっぱり隠してやがったな。でも、こんなに一つの木に時間かかりそうなら……」
終わるのか? とりあえず1年中には。




