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二十一話 ご褒美作り

と、意気込んだものの、そこまでしっかりと調べたわけじゃない。

 地球にいた時に、ふと、なぜに猫はマタタビで酔ったようになるのか、が気になったからだ。まあ、知らない人にゲームに誘われて、ちゃんとは見れなかったが。

 思い出せ。とにかく思い出さないと何もできない。確か……マタタビ酒は絶対マタタビ必要だよな。

 ん? ん? おい、ちょっと待て。ちょい待ちちょい待ち。俺なんて言った? マタタビ必要って言ったな、俺は。

 ああ、おわた。どうしよう。この世界にないかな。仕方ない、あいつに聞くか。


「おい、そこの惰眠を貪っている魔道神具、ちょっと貴様の知識を貸せや!」

『ふぁぁい! ふぁい!? なんでございますか!』

「聞いてないのか? 潰すぞ? 潰されたいの? 圧死がお望み? いいよ、いつでもやってやるよ? 殺ってやるよ?」

『さーせん。それで何が知りたいんですか?』

「マタタビってのがないか知りたい」

『マタタビ? とは何ですか?』

「あー、お前のがダルいからいいや」


とりあえずステータス確認。

 むむむむむ、開く開く開く開く。


個体名:イフリート

称号:転生者 神の加護 殺人者

種族:龍人

序列:最下位

技能:『??』『死への執着』『血への渇望』『身体強化』

固有技能:『自己再生』

魔人技能:『憤怒』『怠惰』『強欲』

神技能:『???』

身体能力:皆無

体力:無限


お、あったあった。これだよ。魔人技能の『強欲』。一応もう一度効果見ておくか。

 願ったものを魔力を消費して手元に転移させる、という効果らしい。ただ、魔力は重さに比例するらしくめっちゃ重いものだとめっちゃ魔力も消費するっぽい。なるほど、便利だな。俺にはぴったりだ。『自己再生』でどうにでもなるし。機転のきくようなら敵の武器とか奪えるかもしれない。

 えー、ちょっと待ってぇ。それカッコよくね? できたらやってみようっと。とりあえず今はこの見るからに種族が魔人にしか使えなさそうなこの技能をどうにかしなければ。


「果たしてこの技能は使えるのか、俺に? できそうもないんだけど」

『諦めるのはお前に会わない気が済んだけど?』

「分かってる。でも生まれもったもんはどうにもならないって、俺この身を持って知ってるんだけど? むしろ体現してるんだけど?」

『とりあえずやればできるんじゃないか?』

「まあ、やってはみるけどさ」


そういえば『強欲』の技能は名前にしては感情とかそういうのじゃなく、それを実現するための効果だな。

 まあ、別にいいけど。これもイメージでどうにかできるのだろうか? イメージでできると信じて、マタタビの実の形とか色とかを思い出せ。一度は写真を見てるだろう。

 あれだよ、あれ。思い出せた、と思う。多分。

 そして手のひらを上にして突き出し、技能の名前を口にした。


「『強欲』発動」

(…………………)


すると、手のひらが光り出した。

 なんだこれは!? なんだ、飛◯石か!? ラ◯◯タか!? というか目がぁ! 目がぁぁぁぁぁ!

 眩しい。めっさ眩しい。毎度のようにこれが起こるとか敵の武器奪うもクソもないよね、はい、先ほどの案、没シュートになりまぁす。

 まあいい。目を開けると手の上には俺がネットで見たマタタビの実があった。


「おお、使えるんだ。すごいな。なんだろう、満足感というかなんというかが俺を満たしているぞ」

『ほら、なんやかんやでできたじゃないか』

「たまにはお前もちゃんとしたこと言うんだな。わずかに見直した可能性がないわけじゃない、かもしれない」

『それもう見直したのか、自分で分かってもいないってことですよね? そうですよね?』

「いや、まあそうとも言うな。気にするな、最近大して活躍できてなくてもいつか活躍の場は来るさ」

『違う、そうじゃない。そういうのが欲しかったんじゃない』


じゃあ、何が欲しかったのか。というか、別にいらないだろう。いやぁ、さすがは魔道神具のグリモワールさん。思考が僕なんぞとはわけが違いますよね!

 まあ、あいつは放っておこう。俺とは普通に次元が違うからな。

 ふーむ、そういえばマタタビの実持ったままだったな。

 これをどうにかして酒にしたいんだが。とりあえず調理方法思い出しつつ、移動するか。一応ちゃんと袋に入れておくか。

 む、袋がない。もう一回、『強欲』で袋お取り寄せするか? いや、魔力消費するし。いいか。ローブの中に忍ばせておこう。

 でも匂いどうにかならないかな。確か匂いでも酔ったようになるんだっけか。これ、どうしよう。調理場借りたいんだけどな。

 ……………まあ、いっか。爺さんなら精神力でどうにかなるだろう。どうにかしてくれるだろうさ。どうにかできなくても頑張ればどうにかできる説。

 できなかったらマタタビそこらへんに投げ捨てよう。ジャスタウェイしよう。

 気づけば、村の中心だった。ここなら多分、村長だし爺さんいるでしょ。

 おお、いたいた。


「おーい、そーーーんちょーー!」

「ん? イフリート様、どうしまし…た?」

「あっ、ちょっとヤク持ってきてるんですけど、気にしないでください。それでちょいと料理場を借りたいんですけどいいですか?」

「………分かりました。使って…ください」

「ふむ、確か効果はそんなに持続しないんだったな。なら…」


俺は懐からマタタビを一つだけ取り出した!

 村長、だけじゃないかもしれないが欲しそうにこっちを見ている!

 俺はマタタビを強化なしで精一杯投げた!

 皆さんは全力疾走で駆け出した!

 なんだろう、楽しい。これは…楽しいでございますねぇ。また今度遊ぼう。いや、ダメだと思うけど。


「使っていいらしいならやってみようっと」

『お前、さすがにそれはないだろう。お世話になっているやつになんてことすんだ。アホじゃないの? いや、アホなのは知っているけどさ』

「はっはっは、殺されたいのか、そうかそうか殺してやるよ」

『ストップ、待とうか。ちょっと現在進行形で待とうか。ストッピングしようか』

「…アホらしいからやめとこう。とりあえずいくぞ」

『了解だ』


遊んでただけなのに。皆さんで遊んでただけなのにどうして怒られるんですか、ちょっと意味が分からない。

 まあ、いい。とりあえず調理場行こう。





 来たよ、調理場。疲れたよ。近づいてくる猫人の方々の悉くが俺の方見てきてマタタビ見せたらそっちに目が行くんだよ。もう猫じゃらしやん、とか思いながらも投げつけておいたよ。あれは感情で魔法が発動する人だったら文字どおりに草が生えるよ、とか思いながら見てたよ。

 そして途中で飽きたよ。だって皆さん、反応が同じなんだもん。そりゃ飽きまするよ。

 さて、と。もう作るか。マタタビ酒。確かレシピは………レシピ、は……レシ、ピ…は……ちくしょぉ! ちょっとでも思い出さないと何もできない。

 仕方ない。頑張って思い出してやるか。

 えぇと、確か。

 花が付いているからこすり落とすんだっけ。あっ、これ花ついてなかった。

 じゃあいいや。次は確か………水洗い? の後乾かすんだっけ?

 うん、とりあえず水洗いしよう。水だしてわりかし適当に洗って、その後乾かしておいた。

 その間に思い出そうと試みる。

 うーん、うーん、うーん。あっ、そうだそうだ。乾かしたマタタビを蓋付きのガラス瓶に入れて……焼酎だ。

 どうしよう、ガラス瓶も焼酎もなくない? また『強欲』でどうにかする? いや、でもなー、さっき『強欲』使った後、割とダルくなったからなぁ。あんまり乱発はしたくない。

 だが使う。使わないと色々とめんどくさくなるかもしれないからだ!


「と、いうわけで『強欲』発動」

(…………………)


また手が光り出す。これやっぱりラ◯◯タだよ。

 最初に出すのはガラス瓶。だって焼酎先に出して液体だけだったら、手にドバァってなるじゃんいやだよ、それは。

 なのでガラス瓶を最初に出す。そして出来るようならガラス瓶の中に焼酎を入れてやる。まあ、できなくてもできるまで試せばどうにかなるだろう。俺の気分がすぐれなくなるだけだ。

 え、割とデメリット大きくね? また魔力切れで倒れたくはないぞ。あれ、でも確か『自己再生』で魔力回復するんじゃ? えっ、ならなんであの時倒れたの? 体が慣れてなかったとか?

 考えても仕方ないし、まあいいや。

 『強欲』は最初にゲットした時に感じたように割と便利な技能だ。焼酎、ガラス瓶の中に入るといいんだけどなあ。これもイメージでどうにかなるもんなのだろうか。ならなかったら俺の手にダバァなんで嫌です。

 イメージイメージイメージ。よし、大丈夫かな。


「『強欲』発動」


手が光り、ガラス瓶の下の方から液体が溜まっていった。見たことがないから分からないがきっと焼酎だろう。

 おい、そこのお前。そうお前だ。未成年だろ、てか引きこもりだから食卓にもろくに顔を出していないのだろう、とそう思っているお前だ。失礼な! しっかりと顔出してるわ、食卓は。うん、食卓は。

 食卓は顔出してたけど、他はそんなでしたはい。ごめんなさい。

 ローブの裾を引っ張られていた、気づいたら。

 そしてまぁ、こんなところであんなとこ引っ張るのはあの人しかいませんよね。

 皆さんご存知、ムーヤさん。でもいつものように元気ハツラツな感じじゃないな。どしたんだ?


「どしたんですか? 先輩元気ないっすけど」

「あ、あぶぁぁあああああ」


いや、なになに? あぶぁぁあああああって何よ。力溜めてんの? 俺、殺されんの?

 まあ、さすがになんかあんだろうな。


「何が起きたんだよ。さすがに気になるんだけど」

「そ、そそそそんちょが! なんかそんちょがぁ! 変なことなってるぅ!」

「変なこと………あっ」


ごめんなさい、それ僕のせいですね。

 あれぇ? 確か効果はそんなに持続しないはずなんだけどなぁ? あれれぇ、オッカシィゾォ?

 棒読みになっちゃったぜ、てへ! とりあえず酔いまくった村長たちが子供を恐怖のどん底に叩き落している、と。そゆこと。

 ん? でもここにもマタタビあるぞ? 何でムーヤ特に影響ないんだ? ………いや、確か個体差があんだっけか。じゃあ、そういうことだろう。ムーヤはお酒に強い、と。


「んで、村長が怖いからここに来た、と。いやぁ、でも俺にどうしろと? 原因は俺だけど解決法は放っとくしかないんですけど」

「あびゅぁ、こあ…こ、わ」


いや、もうさすがに何言ってるか分かんない。

 あー、もう一度言ってくれないだろうか。てか、俺に何をしろと? 放置しておけばどうにかなるんだよ、じゃあ放置しとこうぜ! ってことになるからなぁ。

 うぅう、怖いけど仕方ない。とりあえず皆さんが元に戻るまで近くにいてやるしかないよなぁ。

 戻ろう、マタタビ酒に。これの次が…フタして6ヶ月から1年くらい? 保存するんだったはず。

 え、ちょっと待て。6ヶ月から1年? それはさすがに長すぎるんだけど。あんなに啖呵切っておいてさすがにそこまで長いのはダメだと思うんだけど。

 いや、きっとなんかあるはずだ。どうして保存するんだ? というか保存する必要があるのだろうか? ちょっと他の作り方も思い出すか。

 ………あっ、他にあるかも。とりあえずもう少しマタタビをローブの懐から取り出す。一回湯通しして、もう一度乾燥させる。えっ? さっきの乾燥中のマタタビどうすんのって? ちょっと猫人の方々に献上する。

 完全に乾燥するまでは時間が掛かる。さっき『強欲』でお取り寄せしたガラス瓶(in焼酎)に後で入れておこう。その間どうしようか。いや、さすがにここで筋トレするのは…ちょっと。

 ムーヤに『あ、こいつやばいやつだわ。殺すか』ってなると困るのでやめておきましょう。

 いやぁ、本格的に暇ですねぇ。どうしたもんかなぁ。ちょっと魔術使うか。炎の。

 イメージして…炎炎。というか火だな。弱火。炙る感じで。ずっと魔術使ってるのはさすがに修行になるだろう。

 あっ、出た。もう出てたよ。さすがに若干慣れてきたな。マタタビの近くに当てるようにして炙っていく。なんだろうか、火遊びなんて子供っぽい遊び、一体どれだけ久しぶりなことだろうか。鬼ごっことか同年代のやつが楽しそうにやっているのを眺めたことしかしなかった。

 うん、嫌な話はこれくらいにしておこう。だって、だって…怖いんだもん、チキショー。未だにたまに膝が笑いまくるもん。

 とにかく忘れて、今は炙ることに集中するのだ。職人になりたい、的な。

 ちょっと待って。テンションが若干上がってる。

 まあ、それもそうだ。だってさ…ムーヤがずっとくっついてんだもん。怖くてテンションも上がるわ。いや、あっちも怖いから俺にくっついてんだろうけどさ。さすがにもうそろそろ俺が子供が、というか今までに苦手意識を持った年齢の人が苦手ということを理解してもらいたい。

 お願いしますよ。そろそろ気づけよ。ああ、ゴメンなさいゴメンなさい。こんな変なしゃべり方ではだめですよね。分かってますとも。

 うーむ、俺もそろそろ慣れるべきなのだろうが、年下。いやだなぁ、できれば慣れたくないなぁ。もうなんやかんやで10年程、この恐怖症続いてるわけですからもう体の一部と言っても過言ではございません。というか既に体の一部です。


「なあ、離れない? 離れてくんない?」

「む、むむむ無理」


まだ強いのか。それなら仕方ないと言えば仕方ないか。

 あ、まずい。魔術解けてる。魔術のことだけ考えるか? いや、ちょっと待て! これ魔術だけに集中してたらムーヤにキレられる気がする。なんとなくだが、これは女の勘の男バージョンか!? 俺にもすごい能力が備わったのか! やったぜ!

 とりあえずできるだけ意識を魔術に移して、でもムーヤが何か言ったら反応できるようにしておこう。

 そうしよう。というか魔術は割と慣れなんだな。把握してきたぞ。


「ん? 何?」


俺、別に何も言ってないのに、一人喋りだしたムーヤ。なんだ、俺みたいなやばいやつに喋りかけすぎたせいで、ムーヤも病んだのか? なんだ、その恐ろしい能力は! 男の勘(仮)と同じくしてそんな恐ろしい能力が備わってしまったのか!? いや、んなはずがない。そういや、ムーヤ、精霊いたなぁ。お話できるのかぁ、うわぁ、すごいなぁ。ぼっちが、すごく欲しそうだ。うん、死に物狂いでも欲しいんじゃないかな? ぼっちだけど俺は別にいらないや。なんか……さらに目立つ気がして仕方ない。

 と、いうか何を話してるのか気になる。たまに頷いてんだけど。あぁ、待ってやっぱり羨ましくなってきた。


「イフリート、精霊さんがなんか火の魔法が弱いって、やる気あるのかって怒ってる」

「いやいやいや、ちょっと待って。どゆこと?」

「だから、怒ってる…」


急に怒るなよ、精霊。キレしょうかよ、別にいいだろ、俺こういうのやったことないからさじ加減分からないんだもん。弱火がダメってことは何? 強火でやれってこと? 黒焦げにするつもりなの? ダメだよ、使うんだよ。

 使う用途は人それぞれだろうが。口出しするんじゃありませんよ。


「その精霊に言っといて。別に黒焦げにしたいから使ってるわけじゃないんだけど、と」

「あっ、聞こえてるからいいって」

「そういうのはもっと早く言っておいてって言っておいて。いや、聞こえてんだっけ。そういうのはもっと早く言って!」


めっちゃ虚しく木霊した俺の叫び。返せや、俺の心の叫びを。

 と、いうかちょっと気になるのだが、精霊って見ることができるのだろうか? いやいや、気になるだろうそれは。憧れだよ、精霊使いとかチートの代名詞でしょ? えっ、違う? 少なくとも俺はそう思ってるんだけど。

 あ、マタタビ。忘れてた。見た目はだいぶ変化していた。ネットの記事を思い出せ。うん、だいぶネットに載ってた写真に近づいたな。ネットに載っている記事がデマだったならマタタビ酒はできないだろうが、そこらへんはできなかった時に打開策を考えるとして、これの次はどうすんだっけ?

 焼酎inガラス瓶の中に突っ込む、んだったか。言い方悪いけど、多分これで合ってるはず。漬けて一週間。これでできる、はずだ。他の作り方は知らん。もしかしたらこれ以上に早く作り終わる作り方があるかもしれないんだけど、俺知ーらね。


「これでとりあえず後は放置か。帰ろ、帰ろ。てかそろそろ土地見せてもらわないと。……村長正気に戻ってくれてるとありがたいんだけどなぁ」


話を聞いてもらえない気がするなあ、酔っ払ったままなら。なんだけど、そうなんだけど…ムーヤが放してくれない。一体今までにどれくらいこのシチュエーションに出会ったんだろうか? さすがに勘弁してほしい。

 どうしてそんなに馴れ馴れしいのか。コミュ障の俺には到底理解ができませんね。これがコミュリケーション能力MAXの力か。いや、まだ知らない世界人だからどうにかなっているが、知っている世界、というか地球しかないが、の人がこの世界に来た日にゃ俺は軽く死ぬ未来が見えるぞ。というか、俺死にすぎだな。軽く死ぬってなんだ、言ってるの俺だけど意味が分からなさすぎるんだけど。


「ねえねえ、精霊さんが炎魔法なに使えるのって聞いてる。なに使えるの?」

「一つ言っていいか? 精霊はどうしてそんなに嫌味なのかな? かな!?」


ヤベェ、ラノベでありそうな台詞を言ってしまった。いや、でもこれは生きている間に言ってみたい台詞に入るかもしれない。まあ、そういうことにしておこう。

 というか、精霊さんは俺がさっきまで使ってたのを魔法だと思ってらっしゃるの? プッ、本当に魔法適正率上げるありがたいお方ですか? いやぁ、僕にはどうもそうは思えないですね。

 あっ、やべ。視線を感じる。まずい、心の中を読まれたのか? さーせん、さーせん。精霊ってすごいんですよね、俺も欲しいから落ち着け。とりあえず殺気出すのやめてくれ。

 心なしか目線が落ち着いたのを感じてから、喋りだす。


「まあ、それは置いておいて。またなんでそんなことを精霊さんはそんなことを言い出したの? へっ、どうせクソみたいな魔法しか使えないんだろ的なことだろ? 舐めるんじゃねぇ! 魔法自体が使えねぇよ!」


あ、待って待って。そんなに気の毒そうな目で見ないで。俺だってこれでも気を紛らわすためにやっとるんじゃ。もう、ヤダ。俺だってなんで魔法使えないのか分かんねぇんだよ。俺だって使えるなら魔法、使いたいよ。でもなんか初歩の魔法すら使えないんだぜ、俺の魔力に何がついてるよ!?

 まあ、いい。


「魔法が使えないので精霊の言うことは何一つできませんのですが、どうしたらいいでしょうか?」

「あっと、えぇと精霊さんが、魔法が使えないなら魔術はどうだ?って」

「ああ、そっちなら使えなくもない」


と、言うのも俺がちゃんと覚えている段階で魔術を使ったのは『炎天龍』だけな気がすんだよなぁ。というわけで種類はないが、それでも俺の『自己再生』の4番目くらいに生命線な技だからな。微妙だとは言うなかれ。俺だって申し訳ないとは思ってるんだよ。


「んで、俺が使える魔術を見せればいいと?」

「うんうん」


そんなに思いっきり頷かないでくれると。俺だって魔術発動させるまでに割と時間かかるんだけど。まあ、これでも慣れてきているけれどもさ。

 それでも8分以上は掛かるんだぜ? 難しい、面倒くさい、そういうわけなのでできればやりたくない。


「時間かかるからそこらへんは覚えておいてください」


イメージするのは炎の龍。デカイ龍だ。

 ……………………………………………………うし、大丈夫、かな。イメージは固まった。これで出来なかったら、俺はもう魔術を使うのやめよう。これでどうにかできないなら実戦で使えるわけないもん。

 と、いうわけで発動させるか。でも…大丈夫かな? 思いっきり魔術で壊しちゃったりしないよな?


「『炎天龍』」


ちゃんと言った通りに魔術が発動した。よかったよかった。しっかりと散るまで待って。そして機嫌が大丈夫かどうかを確認するためにムーヤの方を見た。

 見たまではいいだろう。どうしてだろう、ムーヤの顔が異様に険しんだけど。えっ、待ってどういうこと? 他にも魔術を見せろと、そういうことか? 割とダルいから止めときたいんだけど、魔術使うのは別にいいけど、あれ巨体に見合ってごっそり魔力持ってくんだよね。ゆっくり構築してるから『自己再生』のおかげで気にしないようになってるけど、魔力は確か体力の一部だ。HPとMPの統合値が体力だ。これ大丈夫じゃないだろ。

 話は脱線したが、魔術のこれ以上の使用はめんどくさいので嫌です、とそういうことだ。なので、今回はそれを察して、その顔を止めてもらっていいですか?


「精霊さんが…なんか黙ってる」

「いや、なんで? 俺、これ以外は使ったことないぞ?」


本当はあるけど、あんまり覚えていないからノーカンで。はい、ノーカンノーカン! でもなんで黙るんだ? 今評価してるんだろうか。ということはムーヤの持っている精霊は…というか精霊って持っているっていうの? まあいいか。ムーヤの持っている精霊は炎属性の精霊ってことか? あらまあ、そういうことなら俺の『炎天龍』もただの子供騙しですね。そういう要因で黙ってるんですね、分かりました。


「一体いつまで黙ってるんですかね、精霊。俺、そろそろ帰りたいんだけど」

「おーい、精霊さーん。起きてー」


起こそうとしているムーヤの声を聞きながら、男としてチートに興味を持った俺は、精霊を見られないかと目を凝らしてみたりしていた。

 無理そう、さすがに。ムーヤの近くに何かいるのかと思ったんだけど特に何も見えない。まあ、いつか見えんだろ。

 俺が変なことしている間に、精霊さんは起きたようだ。何か楽しそうに話してるぞ。いやー、良かった良かった。


「どおだった? イフリートの魔術は? ふん、ほん、ふん」

「いや、何言ってんだ」


ああ、この感じは。ダメだな、漫画とか、そういうもんだと痛い人として扱われるじゃねぇか。そういうやつだよ。俺はそんな変なやつになりたいわけではない。もっとも、欲しいとも思ってないんだけどさ。

 あっ、何か話が終わったみたい。やめたぞ、一人で話すのを。村に住まわせてもらっている人として変な風な生き方はしてもらいたくないな。ソースは俺である。

 というかさっきの言語は本当に理解できなかった。


「どうだって? 精霊は」

「何かすごい、すごい連呼してる」

「え、は? ……………あっ、すごいって言いまくってるのね」


俺としたことがまさか思考放棄してしまうとは思わなかった。やばいやばい、落ち着け。子供だからよく分かんないだけだ。もっと成長したら、きっと大丈夫だとも。大丈夫じゃなかったら俺、この村出て行こうかな。

 ウソウソ、そんなことしないよ。さすがにしません、本当です。でもなんですごいって連呼してんだ? 俺、これしか使えないし、一番最初に使った『炎天龍』よりイメージはだいぶ雑だったぞ? 俺ってもしかしてすごかったのか? いやいや、比較のしようがない。初級の魔法とは比べられないし、あの規模になれば使える人も限られる。そもそも魔術使いがいないだろって話だ。諦めよう。種類も寄せられるとは限らないし。

 と、思っていたら、なんかムーヤが…


「こんなの魔法じゃできないって精霊さんが!」


らしい。

 ………つまり時間は掛かるが、魔法使いよりは火力は出ると? 一瞬すごいとは思ったが、時間が掛かるってのは致命的じゃない? 何度も思うんだが。どうにか出来ないわけではない気がしないでもないが。

 うーん、とりあえず当たり障りなさそうな感じに返しといて帰ろう。


「おお、やったな。つまり俺はすごいんだな?」


激しく首肯。よし、これで大丈夫そう。

 と、いうわけで帰りまーす!

 俺は全力で駆け出した。(注、ムーヤを置いていったまま)







一安心した。やっぱり年下との会話は無理だな。俺の寿命が削られていく気がする。無理は控えよう。

 というわけで、倉庫まで戻ってくるまでに一応確認したがまるでマタタビの効果がまだ続いていたので近寄りがたく、やりたかったことも出来なさそうなので暇で、仕方なくグリモワールと話している。本当に仕方なく、だ。


「おい、なんかないのか?」

『それ、めっちゃ難易度高いの分かってる?』

「ああ、だからだ。お前の困った顔を見せてくれよ、なぁなぁ?」

『最悪だわ』


これが普通の友達との会話とかかもしれんな。でもこんな変な姿した友達は勘弁だわ。

 それにしてもマタタビの効果がどうしてあそこまで続くのだろうか? 猫はマタタビの効果は5分くらいだった気がするんだけどなぁ。異世界のものを食べたから効果が強まったのか、それとも猫人の皆さんが単にマタタビに弱いだけなのか、どっちなんだ?

 気になるが、誰にも聞けないのがキツい。グリモワールは異世界のことは知らないだろうし、だからと言って俺以外に異世界人の転生者、もしくは転移者なんているとは限らない。いないわけでもないと思うけどさ。どっちにしろ、絶賛引きこもり中(村の中に)の俺には確かめる手段なんてないんだが。あー、外出たい。出たいけど、転生者、というか強いて言えば俺を知っている人間、俺が知っている人間を見つけるのは怖いから出たいけど出たくない。

 まあ、異世界人のいるいないは街に出てから確かめるとしてやっぱり異世界行っても憧れるよね、少年漫画の王道展開。できれば今日中にやっておきたいんだけど、いつになったらマタタビ切れるんだ。禁止だな、とりあえずマタタビ酒出来るまでは。中毒になっても俺は知らない。俺のせいではきっとない。ちなみにマタタビ酒前のものは倉庫の中の日に当たる場所で放置中だ。いや、むしろ日に当たらない場所の方が少ないのだが。

 そろそろもう一度様子見に行くか。


『うーむ、そうだなぁ……』

「行くぞ、その話また今度聞く。てかもう聞かないかも」

『お前、死ねぇ!』


なんか所持物が騒いでいるが、気にしない方向で。というか気にしちゃいけない方向で。

 やっぱり倉庫からだと村まで割と距離あんな。いつものように口の中切るか。『血への渇望』発動しよう。技能様々だなぁ。龍人のデフォルトの身体能力じゃ、どうにも時間が掛かる。あっ、もちろん『自己再生』様の力もございますので、ご安心ください。はあ、それに比べてグリモワールはたまに役に立たなくもない気がしなくもないんだけど、そうでもない気がしなくもないからわざわざ言って恥かきたくないので言いません。

 なんて考えているうちに、気づけば村だった。早いな。やっぱり技能、便利。

 そして、いたいた。なんやかんやで割と村の中で会っているムルサさん。この人に頼みたかったのだ。


「おーい、ムルサさーん。ちょっと頼みごとがー…ぁ?」


あっれれぇ、おっかしいぞぉ? 明らかに調子がおかしいぞ? あっ、も、もしやまだマタタビが残っているのか!?


「い、イフリー、トさ……ま……?」

「そのノリはもういいんだ! ちょっと落ち着けやっ!」


申し訳ないが、手荒に行かせてもらった。『血への渇望』発動させて、一気にぶん殴った。衝撃でどうにかなると、俺は信じている。人間はテレビとは違うだろうが、それでも割とどうにかなると信じている。

 技能の制限にルールでも設けるか。どうせ、暇だし。さすがに不意打ちでドンは、冒険者のムルサさんでも効いてしまったようで、ノックアウト中であるため。

 どうしよっかなぁ、あんまり使わない『身体強化』は相手が本気で俺殺しに来る時だけでいいかなぁ。

 『血への渇望』は困ったとき全般で。

 『自己再生』は常時発動だからどうしようもなし。

 魔人技能? 知らんな。『強欲』は使えるが、魔力切れがやばそうなので、本当に必要なものがあったときに要検討して必要だったら、使おう。

 さてと、問題は『?』で書いてある技能だ。これ使えないんだが。てか、使おうと思っても使えないんだけど。詳細すら見れないんだけど。これはもう使えないよな。よし、保留。無理無理、俺には使えん。

 というか、ただの技能がなんか謎なのは別にいいんだけどさ…どうして神種にしか持ってないはずの神技能まで俺が持ってるんだ? いやいや、俺龍人なんですが。

 ああー、もう保留保留! よく分かんないのは全部保留で。

 あっ、なんだ。気づいたら地面にキスしてたムルサさんじゃないですか、起きたんですね。


「申し訳ない、地面に落ちていた実を拾ったらこんなことに。申し訳ない、本当なら止めなければいけなかったのですが」

「気にせんといてください」


悪いのだいたい俺なので。だが、言ったら面倒なので(主にムルサさんが)言わないでおこう。

 さてと、言うことだけ言って爺さんのところに行きたい。土地が、そろそろ土地を見に行かないと村長もさすがに痺れを切らす。これ以上はいけない。

 とりあえず切り出さなければ。


「ちょっとお話があってムルサさんに会いに来たんですけど…」

「ああ、なんでもどうぞ」


あらまあ、太っ腹ですこと。じゃあ、遠慮なく言わせてもらうぞ? 職業的な問題で最悪完全拒否されてもいいかなと思ったが、そういうこというなら俺は言わせてもらうぜ? 一度許可されたけどもう一度言わせてもらうぜ?


「弟子にしてくれ」

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