二十話 下剋上
なんか色々とありました。
寝ぼけてた状態でパソコン開いて、書いてた小説見て、全然よく分からなくなって今までに投稿したものを全部見るようになり…『あー、なんか絵描きたい』という意味不明なテンションになり、一回練習してみて、ああ、上手くならないー、ってなってテンションが落ちて……というのが一週間、二週間ありました。
スンマセン。
まあ、なんということでしょう。目の前で猫人の方が宣戦布告してらっしゃるではございませんか。
すごく迷惑なのでやめていただきたいのだが。
まあ、とにかく戦いたくないのだ。なのに、どうしてあんなに期待した目でこちらを見るんでしょうか、意味が分かりません。
「どうしてそんなに戦いたいんでらっしゃいますの?」
「さっきも言ったから、もう言わない」
「いや、言ってくださいな! なして!? ねえ、なして!?」
思わず、大声が。まあ、別にいいか。逃げれば万事解決だぁ! やったるぜぇ!
と、いうわけなのでやってみましょう。『身体強化』じゃぁ! さあ、始まったぞ、この5分間でどうにかしてやるぜぇ!
と思っていた時期が私にもござりやした。一秒も経たずに捕まりました、はい。
やっぱ猫人パねぇっすわ。龍人が入り込めたりなんぞはしなかったっすよ。どうしたもんかなぁ。
「逃げずに戦う」
「うぅー、はいはい。すいませんねぇ。てか、どこでやるんだよ。ここでやったりはしないよな?」
そう言うと、ついて来いとルナが歩き出した。
うっわ、メンドクセェ。場所まで変えるのかよ。
まあ、ついて行きますけどね。はいはい、ついて行きますとも。
さあ、やってきたのか? いや、ついてきたのか? ああ、ついてきたんだ。
うんうん、さて、と。
「帰りますね?」
「どうして?」
「めんどくさいから意外に理由があるとでもお思いですか、ルナさん?」
「いや、その帰結はおかしいから」
「テレン! 問題でぇす! この帰結がおかしい理由を10字以内で答えなさい!」
「とりあえずふざけるのやめようか、イフリート」
「あ、はい。ゴメンナサイ。てか、めんどくさいからもう始めようぜ」
「勝利条件は相手が参ったって言ったら」
「ああ、逃げ出せたりはしないのね!」
俺が言い終わると、即座にルナが目の前にまで迫ってきていた。いや、分かってはいたけど頭おかしんじゃないの、龍人以外の全種族。精神的にも、身体能力的にも。うん、頭おかしいわ。気づいたら、目の前に顔があるのはガチで頭おかしい。
まあ、別にいいか。絶対殴るだけだし。
ファ!? いや、見えないけど絶対なんか持ってるぞ、これはぁ! どうしよう、避ける? いや、避けられなくね?
はい、降参です! 認められない、だと!? 声出してる暇がねぇ!
まあ、いいか。どうせ、怪我の一つや二つはすると思っていたからな。
いや、まあ。でもあの勢いはアウトだろうが。
回避できなかったのだが、まあ、ちょっと切り傷ができるだろうとしか思っていなかった。
そう、この話し方はあれである。
はい、思っていた時期が私にもございました。
なんか持ってるのは分かってたんでございます。見えなかったけどさ。握ってる仕草してたもん。でもね、刃の長さとかまるで気にしてなかったの。多分技能でどうにかしたナイフだと思ってたんだ。
まるで違いました。めっちゃ長かったです。もう剣でした。腕が切断されました。
痛い、めっちゃ痛い。頭おかしいよね、なんであんなに痛いの?
「あがあああ! 痛い、めっちゃ痛い!」
「ちゃんと戦わないと死ぬ」
「ああ、クッソ!」
とにかくこのままじゃまずい!
『身体強化』使用!
これならぎりぎり回避できるか?
ルナの攻撃を回避しようと試みる。
可能だった。よし、これなら戦える!
魔術を使おうにも思考する時間が少ない。それを補うためには奥の手を使う以外ないのだが。
奥の手を使うと色々とめんどくさいので使いたくない。とりあえず『身体強化』は解除。残り時間は約4分。ほとんど使っちゃいなかったな。
とにかく奥の手は使いたくない。疲れるから。じゃあ、どうするか? そりゃもう、『自己再生』使って、相手が降参するまで待てばいいだけ! ほらね、簡単でしょ!? えっ? 簡単だよね? いやまあ、こういう治せる能力持ってないとダメだけど、実際俺持ってるから万事大丈夫だ! よし、ならば俺のすることは一つだけだ! とにかく待機! そしたらルナの方が折れてくれる、はず! 折れてくれなかったら俺が泣く!
さて、この戦略とも呼べない戦略を使用するにあたって俺にできる行動は一つだけだ。襲い来る激痛をただただ耐える。これが割とキツイ。つか一番キツイ。さっきも言ったが激痛である。普通に頭おかしくなるで?
まあ、よかろう。そう見せかけて、魔術でも構築して隙でも見せたら魔術ぶっ放してやるぜ、ウェーイ。なんということでしょう、たいして乗り気でもなかったのに思いっきり楽しんじゃってるんだけど。まっ、別にいいか。そういうこともあるだろうさ。
はあ、にしても本当に痛いんだが。ルナさんや、もう少し攻撃の手を緩めてはもらえんかね? 緩めてもらえるともう少し集中できるんですけど? えっ、ダメ? じゃあ、いいや。
耐えるの飽きたんだけど。ちょっと普通に肉弾戦したいな。
でもなぁ、あの人、見えない剣持ってるもんなぁ。あれは絶対チート。見えないのはアウトだよ。八割だぞ!? 80パーセントだぞ!? まあ、そういうわけなのでチートと戦います。
とりあえず『身体強化』発動。ちょうど攻撃してきたところに炎属性の魔術をブッパした。ぎりぎり構築できた。炎魔術の発動の勢いを利用して距離を開けて回避した。ルナが移動するまでにも時間が掛かる。その隙に自分の口の中を噛んで出血し、そのまま飲み込む。『血への渇望』も発動。ルナは見た限り、くそ強い。ステがクソの俺にはとにかく数が必要だ。地力じゃ絶対勝てない。身体能力強化の技能が必要なのだ。多く、とにかく多く。今は二つ。他に強化系の技能はあったか? いや、全くない。最近ゲットした魔人技能はいける、か? 試してる余裕がない。確実性がないし、無理だな。
さっきに比べて明らかに攻撃の速度が変わった。絶対警戒されてんな。さすがに身体能力強化の技能の重ね掛けはダメだよねぇ。
てか、ルナは体力切れないんだろうか? 俺は『自己再生』のおかげで体力回復するけど。てか、ステータス見る限り、無限て表記してあるんだけど。もうこっちもバグだよね。まあ、いいか。
いやー、まずいですねぇ。このままだと負けちゃいそうですねぇ。使いたくないけど、奥の手使うか。とにかく厨二病っぽく遊んでみよう! いや、本物の厨二病が何かは知らないけどね! 俺の本気を見せてやる!
よーし、じゃあ、やりますか。
とにかく今の俺に足りないのは、情報だ。あいつの技能はなんだ? 剣はどうして見えない? 観察しろ。どこかにヒントくらいはあるはずだ。魔力による気配感知なら何か掴めるか?
物は試しだな。攻撃を回避しつつ、魔力を限界まで薄めて放出する。
………ほとんど収穫がなかった。感じられたのは剣がそこにある、ということだけだった。はっきり言おう。知ってるよ。分かってるよ、さっき切られてんだよ。
だが、別に実体がないわけではない、ということだろう。じゃあ、何だ? 見えない、視覚では知覚できない。ってことは光が反射してない? そりゃどういうことだ? そういう特殊な素材? でもこの前収納してあったルナの使っていたナイフなどを見た限り、何の変哲もないただのナイフだった。しかも今回使っているのはナイフではない。長剣だ、多分。光を反射させない特殊な素材は絶対高い。そんなものをたくさん作っているのか? 偏見だが、そんなことは絶対ない。希少なもんをそんなホイホイ使うかってんだ。
まあ、そういうわけだ。つまりは特殊な素材を使っているわけではない。ならば、残りは一つ。技能だ。見えなくする技能だろうか? まあ、いい。
とにかく実体がなくなるわけではない。実体を操作する、みたいな技能だったら、攻撃するときだけ実体出すとかだったらチートすぎて泣きますわ。よしよし、チートがあるはずがない。実体があるなら我々の勝ちだ。
回避してて分かったが、即座に傷治るから別に気にする必要ないな。ちょっと痛いだけだ。よーし、行くか。
突撃じゃぁ! あっ、戻った。とにかくルナに勝つ。あいつは確か今、捕虜にしてる女の方の冒険者と見た感じ、互角に戦っていた。そして女冒険者の方が明らかに、俺と戦った男の方よりも強かった。というか俺は男の方にも負けていた。勝てたのは俺じゃない。分からないが、あれは俺じゃない何かだった。
いや、それはどうでもいい。とにかく俺はルナに劣っているのだ。いや、当たり前だが。序列からして劣ってるけど。だが、序列に関しては俺は最下位にも関わらず、冒険者達を倒すことができた。じゃあ、序列は絶対じゃない。勝ってやるさ。ここで勝てなきゃ、序列1位ぶん殴るとかぜってぇ無理だ。
『身体強化』発動させてから、およそ3分。残りは1分。この1分で勝負を決める。ん? 3分? あっ、思いっきり『血への渇望』切れてんじゃん。なるほど、それでめっちゃ動きが鈍くなってたのか。どうりで痛いと思った。まあ、いっか。
とにかく技能の重ね掛けが出来なければ、俺はルナに勝てる気がしない。勝つためには『身体強化』が切れるまでのこの1分間。
「行くぞ、ルナァ!」
「!」
拳を振り抜く。避けられる、と思った。掠ったのだ。ただ掠っただけ。でも掠ったのだ。へっへ、これはやってやれないことはないかもしれないぞ。
殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る! たまに当たる! これでも足りない!? ならまだぁ! もっとだ、もっと手数を増やせば!
俺には何もできない。いや、何もできないほどに低い身体能力がある。それは技能でどうにかできるものじゃない。ならば、小細工でどうにかするっきゃないだろうが! あいつは天才だ、ルナは天才だ。俺はそんな大層なもんじゃない。天才ならコミュ障なんかにゃなってねぇ、天才なら引きこもりになんてなってねぇ、天才なら……天才なら……言い出したらいくつでも出てくる。
まあ、何を言いたいかと言えば、羨ましいのだ。自分にはないものを持ってる奴を見れば、羨ましいよな? それだ。えっ、羨ましいよね?
ちょっと不安になったがともかく! 王道だけど、天才負かしてもいいよな?
いいのなら、俺は大声で叫ぼう。理不尽をはねのけるために声を大にして一言だけ言おう。
「下剋上だぁぁっ!」
「!?」
驚いたように一度体を震わせたが、それでも臆せずやってきた。それでいい、天才がそんなことしちゃダメだぞ、コンチキショー!
でもなぁ、それじゃダメなわけですよ。知ってるか、天才? 日本にはなぁ、強者を倒すための技ってのがあるんだぞ! そう、その名も『合気道』じゃい! いや、やったことないけどな! 見たことすらない! 人間、気合いでしょ? 気合いでどうにかならなかったらそれはもう人間には無理です! 俺には無理です!
そういうわけでやってみます。できなかったら負けます。
ルナが俺に攻撃が届くところまで近づいた。つまり、俺の攻撃も届くということだ。ふっふっふ、じゃあ、やってみるか!
おいちょと待て、やってまったんだけど。そうだよね、うん。天才ならこのくらいはできるよな! 合気道ができるとは思っていなかった。思いっきり攻撃をいなされ挙句工夫されて、倒されました。
なにこれ、もう俺何もできなくね? ルナとかもう魔王様じゃね? 強すぎだろ。いや、俺が弱すぎるのか。うわー、ここは遊園地ですかぁ? 景色が回ってるんですけどー。
じゃねぇだろぉがぁ! いやいや、俺、なに回されてんの? ルナは何で俺回してんの? なんかイラついてきたぞ。ダァァァ! うざったい! ぶっ潰すか。よし、そうしよう。えっ? そんな力ないだろうって? 知らん、どうにかなる!
(うーん、いいよいいよー。その程度の心構えはできてないと。理不尽に対して怒りと無謀な挑戦ができる程度はできないと俺は耐えられないからねぇ。仕方ない、本当なら相手が相手だけに止めておきたいけど力貸してやるか)
なんか聞こえた気がしたが、知らん! 投げ飛ばされそうになってるって? ならその回転利用して逆に投げ飛ばしてくれるわ! できないって? なんかできる気がするんだわ、これが!
今現在、俺の頭はだいたいルナの肩のあたりだ。他を見てる余裕はない。やってやる、できなきゃ『自己再生』で治るけど痛い。痛いのは嫌です。日本人ですから。というか引きこもりですので痛いのにはまるで慣れてないんですよ。と、いうわけで地面に転がる気などは毛頭ない。
ルナの肩を掴む。今の俺は現在進行形で回っている。掴んだ際に腕力さえあれば相手も道連れにできる、と思うのだ。別に武術やってたわけじゃないからどうも言えない。
でも、実際どうにかできた。ルナは完全に俺が回っていると思ったのか油断して、踏ん張りがまるできいていなかった。そのおかげで勢いをそのままに、ルナを回すことができた、はずだ。俺自身も回っているせいで方向感覚があまり無い。俺の目が回っているだけかもしれない。
それでもルナの目には映っていた。驚愕が。俺はそれを見て、笑った。一泡、吹かせてやったぞ………
「天才ッ!」
このままいけば、どちらも一回転するだけだ。だが、それではダメなのだ。俺はルナを負かしてやらないといけない。じゃあ、どうすればいいのかは誰にでも分かるだろう。
俺はルナよりも先に回された。ならば、ルナよりも先に着地するだろう。綺麗に着地とはいかなかったが、それでもルナよりも先に着地できたということは、つまりあいつに先制攻撃できるということだ。肩を掴んでいるから、そのまま地面に叩きつけた。現在、俺がルナに馬乗り状態だ。
このまま拘束いけるか? いや、無理だ。一瞬達成感のせいで硬直してしまった。あいつはその時にはもう動き出していた。クッソ、初動で遅れた。もともと素早さはあっちの方が上だ。技能で補えっているとはいえ、『身体強化』もそろそろ切れる。勝負のつけどころだ。
確かに初動では遅れた。だが、ルナからしてみれば俺なんぞの攻撃がクリーンヒットして動揺しているはずだ。その隙をつく。
えっ、ちょっと待て。いや、ちょっとじゃなくだいぶ待て。なんで全く動揺してないの? 格下に攻撃当てられたらそりゃ驚くよね? 驚くよね!? なんで驚いてないの? むしろ驚けよ。これ、今日何度目か分かんないけど言っていいよね? 頭おかしんじゃないの? いや、疑問系じゃダメだね。頭おかしいね、うん! まあ、よかろう。いや、別によかないけど。
ここである言葉がフラッシュバックいたしました。ええー、曰く俺は自分のことを低く見過ぎだそうです。おい、なんで今これ思い出したよ。えっ、なに別にこれ関係なくね?
……………あっ、おい、関係あるわ。多分だけどね。あ、あっ、あー、了解です。マジですか。そういうことですか。えー、いや、普通に頭おかしくね?
えー、猫人が頭おかしいことがしっかりと分かりました。つまり、猫人の皆様は俺が、龍人が猫人の皆様に攻撃を当てられるなど普通だと思っていらっしゃるのだ。無理だよ、ステータス的に。多分猫人の皆様からしたら俺らを殺すなぞ赤子の手をひねるより楽だと思いますが? 一体何があったんだろうか。今度調べてみるか。何にしろ、今はあの躊躇のなさをどうにかしていかないとダメですね。
完璧に初動はこちらが遅れている。それを取り返すためには俺の利点をフルに活用していく必要がある。えっ? 俺の利点は何かって? 『自己再生』でとにかく治ることです! 自己紹介みたいになった。まあ、これをアピールすることはできるけどさ。俺の唯一の良さだけどさ。
もういい。悲しくなってきた。
俺の利点を最大限生かして、となるともう、あれしかないよね。
覚悟が決まりましたので、いっきまーす。とりあえず『血への渇望』を発動させるために口の中を噛み切って、血を飲み込む。強化した身体能力を使って攻撃を入れようとしているルナの腕を避ける。見えない剣を持っている可能性も考えたが、どうせ治るし、いいかと思ってしまった。だが、どうにも持っていない方の手で俺を攻撃しようとしたようだ。武器持ってる方で攻撃すればいいのに。
まあ、よかったよかった。これなら勝てるかも。顔面に一撃を入れるために動き始める。
それを見て、ルナも一度出した手を引っ込めると同時に、多分裏拳目的。どちらも動き始めた。ここからはもう純粋に速さで勝敗が決まる。
「アアアアァァァァァァ……ッッ!」
「!!」
あと少し、もう少しで手が届くというところで………なんということでしょう。止めの声が入りました。しかも二つも。
「「そこまで」」
俺は思わず手を止めた。
だが、ルナは違うらしい。この程度は戦闘の妨害にもならないらしい。思いっきり裏拳で殴られた。
「痛い。………めっちゃ痛い。なぜ、止められたのに殴るんですか?」
「そこに頭があったから」
「……どうしてそこまで物騒なんでしょうか。僕には理解できませぬ」
というか、誰だ。止めたのは。
近くを見回してみると、なんか草が所々についている女の人。ああ、捕虜の人だ。なんでこの人、こんなに自由に動き回っているのだ。あなた、もう捕虜じゃないよ。この村の住人だよ。
そして、ムルサさんがいるんだけど。多分です、多分。双子って顔似すぎてて、全然分からないんだけど。まあ、よかろう。別に良くないけど。
というわけで、この二人でした。だが、まあこういうのはもう少し早く言ってもらいたかった。だってさぁ、俺もう裏拳受けてんだもん。ルナが容赦ないんですもの。もう殴られてるんですもの。
「あの、おっそいんですけど。もっと早く言って欲しかったんですけど。今度からはタイミングが、もう少しタイミングを早くしていただけると。もうそんなに痛くないけど、殴られるのには抵抗があるんですよ」
「次からは気をつけます」
「いや、普通に避けるかと」
先に言ったのはムルサさん(仮)。
次に言ったのは、うーん、捕虜の人です。なんかこの人、名前知らないから呼び名がめんどくさい。一々決められないんだけど。
まあ、いいや。たいして気にもならないし。どうせ今までずっと後回しにしてたけど街に送るんだし。そういえば冒険者の人ぉ! 仕事してぇ!
さて、と。とりあえず疑問をいくつか。一気に聞きます。
「とりあえずいくつか聞きたいのですが。
まず一つ目。どうしてここが分かったのか。
二つ目、ムルサさんは分かるけど、なぜあんたいるの? ねえ、捕虜だよね? いや、むしろ捕虜以外の何かなの? 待って、三つ目これにしようかな。
まあ、いいや。三つ目。どうしてあんたこんなに自由に動いてるんだ。
四つ目、どうしてあそこまで止めるのが遅かったのか。
この四つ。ほら、きびきび吐け。情報を吐け。特に、というより主にあんたが吐け!」
フゥー、全部言って疲れた。でも、全部言えたから良し。
さて、と。どうしよう。
最近物忘れがひどいんですよ。思いっきり質問してたの忘れてた。そのせいでムルサさんが口を開いたときにびっくりしてしまった。ゴメンなさい。
「答えますね。一つ目は、村長に一応見ておけと言われまして。
二つ目は……」
「いや、なんか監視がすごく緩かったのですぐに抜け出してしまいました。ゴメンなさい、捕虜です。私は捕虜です」
「それで三つ目まででいいや。四つ目は?」
「四つ目は、なんと言いますか……」
「なんと言いますか?」
「龍人様なら引き際くらいは分かっていると思っていたので、言わなかったのですが、さすがにまずいと思ったので、あそこで止めました」
「話は変わるんだけどさ、俺、ムーヤにさ、自分のことを低く見過ぎだと言われたんですよ」
「それは……いくら義妹になるとはいえ、そこは一度強く言っておかないといけませんね」
「いや、別にそこはいいんですよ。むしろありがとうと言いたいわけです。そこはいいんだけど、あんたらは俺の逆なんだよ。俺のこと、高く見過ぎなんだよ。
一体、何がどうなったらステータスくその俺が皆さんお強いのに攻撃当てられると思ってらっしゃるのだか、意味不明なんですが。そこらへんに関しては分かってもらいたい。
俺、転生者だって言ってるよね? 僕は一般ピープルなんです。そこらへんを理解した上で発言していただけると本当にありがたいです」
「えっ、でも龍人様ですよ? できますって。できなきゃダメですよ」
「いや、逆に励まさないでくんない? 今、俺がいろいろ言っとるんですよ?」
ええい、この人たちめんどくさい。どうしてこれほどまでに龍人のことを過大評価しているのか。というか、本当に気になるので調べよう。てか、今聞こう。
「というか、どうして猫人の皆さんは龍人の事そんな万能人みたいに思ってるんですか? そういえば聞いてなかったはずなんですけど」
「分かりました。それではお教えしましょう! 我々、猫人の龍人様への尊敬なども含めて!」
「………あ、やっぱり大丈夫です。ちゃんと都合があったときに村長に聞こう。そうしよう。それがいいだろう。と、いうわけなので行きますよ、捕虜の人。ムルサさんとマルサさんに街に届けに行ってもらわないと困るんですよ。あんた、そろそろ邪魔なんですよ」
「なんか辛辣じゃない?」
その言葉に俺は一度首を傾げた後に、首を横に振った。激しくとは言わないものの『自己再生』が使われない程度には必死に振った。
そして、おい、そこ。いつまで落ち込んでんだ、ムルサさん。あんた、どんだけ猫人の歴史語りたいんだよ。それとも、俺に拒否られたことがそんなにショックだったのか。意味が分からん。そういえば、尊敬がどうのって言ってたな。知ったこっちゃないけど。
そんなにショックならそもそも言わなければいいものを。どうして言うのだ。なんだろう、やっぱり猫人は頭おかしんだな。うん、そういうことにしておこう。
まあ、いいや。さすがにこのままにするのはちょっとダメだと思うので説明聞くか。
「あのさ、やっぱ聞きたいんだけど……」
我ながら、すごい手のひら返しになってしまった。まあ、別によくね? これ、俺のせいじゃねぇし。特に俺に問題なし。故に罪悪感など感じていない。
そんな失礼な思考を読んでいるわけでもなく、ムルサさんがあからさまに嬉しそうな顔をしていた。いや、おっさんに嬉しがられても、ちょっと気持ち悪いと言いますか、なんと言いますか。
さすがに言わないけどさ。
「よろしいのですか!」
「いいよ、もう。はいはい、早く始めてくださいな」
「はい! それでは!
まず、始まりは50年前のある日のことでした。唐突に序列第2位『龍種』が現れたのです。大きく、そしてとても黒い龍だったとか。そしてその龍はこう言ったそうです」
『近いうちに我ら、『龍種』と『人種』の混合種が現れる。その種族は弱い。我ら、『龍種』の力は持っているにも関わらず、だ。その弱小極まりない種族の監視、もしくは世話を貴様ら、猫人に任せたいのだ』
「我々は疑問に思いました。そして不安になりました。そんな重要なものを我々のような弱者が、それも序列第2位のようなまさしく強者から頼まれた事柄を任せられてもいいのだろうか、と。
そして、幾ばくかの時間を頂戴しました。その時間を使い、村の住人全てによって審議し始めました。
ある者は、断れ、と言いました。そんな大役を任されるほどの実力は伴っていないと、そう言いたかったのでしょう。
しかし、またある者は受け入れるべきだと、そう言ってきました。今のうちに序列第2位に恩を売るのもいいのではないかと言いたいのでしょう。
それでも、やはり審議の決定権は村長にありました。村長は即座に決意しました」
「ほいほい、ちょいと質問。村長は今も昔もあの人?」
「はい、そうです」
「へぇ、お務めご苦労様ですねぇ。あの人」
「それでは話に戻りますか。
村長は即座に決意しました。これは乗るべきだと。そして1日と経たずに返事を出しました。了承を告げました。
それを見て、その黒い『龍種』は笑ったそうです。安心したように」
『そう言うと思ったよ。ありがとう、爺さん』
「そんなことを言って、『龍種』は去ったそうです。その意味は分からなかったそうですが、それでも確かに『龍人』は現れました。『龍種』の言うことに間違いはありませんでした。そして30年前に殲滅されてしまったのです。
と、こういうのが猫人の歴史です」
「なるほど…色々あるんですねぇ」
「黒い……龍」
なんか意味深にルナが言ってるが、気にしないどこう。こういうのは自分で解決させたほうがいい気がする。俺は関係ないだろうし。もう一度言おう。俺には関係ないだろうし。
いや、なんかそう思ってるんだけど、ルナがこっち見てて怖い。どういうこと俺なんか致したんですの? 何もしてないでございますことよ!?
いやいや、心当たりと言えばぶっ飛ばしたことしか……あっ、それですね。いや、全力でやってたとはいえ女の子でございますものね、そうですよねダメですよね。
平謝りすれば許してもらえるだろうか。いやぁ、ぶっ飛ばしちゃったからなぁ。
あっ、そうそうちょいと頼みがあるんだよねぇ。
「ムルサさん、ちょい待ち。ちょっと頼みたいことが…」
「はい、なんでしょうか?」
「今回のであまりに弱いなと実感いたしまして……」
「そんなことないですよ!? 十分頑張ってましたよ!? 弱くないですよ!?」
「慰めなくていいですよ。大丈夫ですよ。まあ、その弱小さを治したいわけです。そのためにやっぱり必要ですよね、と思ったんですよ。特訓的なあれを。と、いうわけでつけていただきたいんですが……」
「あ、いいですね。私でよければ大丈夫です」
あらまぁ、案外あっさりですぜ。いや、もうちょっと忙しいと思って断られるかと思ったけどやったぜ。
そしてそれを見てなぜか若干『やったぜ』という顔をしているルナさんがいるんですが、怖いんですが。やめようぜ、やめようぜ。あーらまぁ、怖い怖い。何が起きたんですの?
「私もやりたい!」
「あー、なんですと?」
「いや、だから私もその特訓する」
「お前、もう強いよね? ふっつーに強いよね? 強すぎたよね? 俺、めっちゃ頑張ったけど全然敵わなかったんだけど? 敵わなかったんだけど!?」
「なんと言うか、やっぱり、あれ……腕が、ね? 鈍っちゃう、から」
「何これ、もう帰りたい。ちょっと待って、今日これを思ったのが初めてじゃないんだけど!?」
「いや、本当に」
「……………」
「……………」
おい、ちょと待てなんだこの沈黙は。俺別に拒否ろうとか考えてないんだが。俺そんなこと思ってないんだけど?
まあ、いいよ。分かった分かった。ちゃんと、あっさり承諾してもらえなかった時の手段も言っておくか。
「あっ、そうそう。念のために報酬を言っておきますよ」
「い、いえいえ! 報酬なんてそんな!」
「まあまあ、もらっといてくださいなって」
「分かりました。それで一体報酬というのはなんでしょうか?」
「いやー、猫でしょ? 猫人でしょ? となればもうこれしかないでしょー」
「必ずお届けしますぜ。『マタタビ』を、ね」




