十九話 頑張れ、俺
どうも、新仮面ライダーの次話が楽しみすぎて、サブタイトルが思いつかない人です。ただ…三連休ということで舞い上がっています。日曜日が終わっても休めると思うと…! もう目覚まし時計には振り回されない………多分。
あ、あとアニメも好きです。今までの話の前書き、書き直すのメンドくさいので書いときます。
ふう〜、始めてから割と立ったと思うのだがどうにも感覚が掴めない。もういっそ魔力を放出してから戻して感覚を思い出すか。それもいいかもしれないな。
……でもなぁ、またびっくりされるのもなー。それは嫌だな。また殺気立った目で見られるのは本当に嫌なのだ。どうにかして驚かせずに魔力を放出できないだろうか。確か俺の魔力は濃いんだったっけな。なら薄くしたりはできないだろうか。
やろうと思えばできる気がする。それができなきゃ異世界じゃない! というわけで俺はこれより魔力を薄める、という行為をしてみようと思います。ただ、薄めると言っても操作にイメージが必要な魔力を薄めるというのは難しい、気がするのだ。
未だにイメージを仕方が分からないのだから、右も左も分からないのと同義だ。無知とは怖いもんである。
まあ、とにかくイメージだ。どんなイメージをすればいいだろうか。えっ、どうして分からないんだって? バカヤロー、だから右も左も分からないと言っておいただろうが!
とにかくイメージは魔力を出す管をとてつもなく小さい穴を残して完全に塞いでしまう。さらに出てくる量も調節して微量しか出てこないようにする。これは本当にイメージなのだろうか、という疑問は沸くだろうがしっかりとイメージです、正真正銘のイメージですので安心してくださいな。
あとはこれを実践するだけだ。とにかく押し出すイメージだ。イメージだ、さっき決めたイメージを頭の中でしっかりと考えておけばきっとどうにかなる。そんな気がする。
とりあえず魔力を放出したが、やはり前回と同じく全くもって実感がない。今度も周りを見てみると、今回もまた特にびっくりしている様子はない。つまりは気配に関しては失敗したが、魔力を薄めることには成功したようだ。良かった良かった。
ん? もしかしてこの魔力広げられるんじゃないのか? これもまたイメージをどうすればいいのかは分からないが。情けないって? 言うな! うるさいほっとけや!
とにかく感じたのは放出中のこの魔力を広げることができる、かもしれないということだけだ。広げる、ならば叩いてみるか! えっ? 金属じゃねぇよって? 分かんないだろうがぁ! さっきからうるさいんですよ。
多分ではあるが、放出した魔力は俺を中心に円状に広がっている。なら、上から見た図をイメージして、俺自身を上からぶっ叩くイメージだ。とにかく叩きまくる。
魔力の放出は自分の外に出した分だけ、魔力を消費する。だが、俺には『自己再生』という万能な固有技能がある。そのおかげで魔力の消費に関しては気にしなくてもいい。ならば叩きまくれば俺の集中力が続く限り、どこまででも俺の魔力を広げることができる。
よし、行けるところまで行ってやるぜぇ! というわけでイメージを固めて広げまくる。
「街まで届くかな?」
おおっと。ワクワクして思わず声が出てしまった。落ち着け、俺。例え魔力の残量を気にしなくてもいいとしても俺の集中力が切れれば、そこで魔力の広がりは現在放出中の範囲である俺の半径30センチ弱にまで狭まる。
それにしても本当にイメージでどうにかなる異世界である。イメージでどうにかなるのなら俺はこの世界に生まれれば持ち前の妄想力で成り上りルート一直線だったいうのに。もったいない。やはり神は俺に理不尽である。
とにかく上から見た図を想像、そしてさらに自分を叩くんだ! いや、俺は別に自傷趣味があるわけじゃないぜ? 大丈夫大丈夫。オーケー? よーし、オーケーね。
とりあえず一度叩くイメージをしてみると、先ほどまでは感じられなかった場所を感じることができた。なるほど、俺から放出されている魔力が何かに触れると、音みたいに俺に伝達されるようだ。
これは便利。もしかしたら冒険者も使っているかもしれない。さて、と。さらに広げられるはずだ。もっと広げてあわよくばあの街にまで!
と、いうわけで魔力を広げて30年。いや、嘘だよ。そんなに長い時間魔力広げてたら、世界一周は軽いですよ。そういうわけで街に届くくらいまではどうにか魔力を広げることができた。
そしてよく分からないのだが、俺の他にもう一人、か二人ほど俺と同じように魔力を放出、その後広げているようなのだ。分からない、というのはどうにも俺よりも魔力を薄くしているせいかしっかりと感知できないんだよ。すごい人もいたもんだ。魔力量が圧倒的に多いだろう。いや、人なのかは分からないが。この世界、種族色々あるからな。
というか序列3位より下の種族にはちゃんとした序列があるのだろうか。種族がどのくらい数いるのかは分からないが、多すぎるくらいいるのでは? というのが俺の予想である。予想が正しければ、そこまで多い種族全てに序列があるとすれば二桁、下手すれば三桁にまで序列があることになってしまう。それは流石にないと思いたい。
おっと、話がずれてしまった。とにかくこの異様に薄い(と思う)魔力の持ち主はどんなヤツだろうか。こんなところまで魔力を広げるなんて相当暇な人だと思うのだが。
はあ、街に行けたらその人に会うこともできるんだろうが、俺は気配がなぁ。
………………ん? 気配? なんか忘れてるような気がするんだが。
あっ。そういえば俺、気配の消し方試してるんだった。どうして魔力なんぞを広げているんだ、俺は。はあ、さすがに今のはバカだわ。まあ、気を取り直すか。
とりあえず魔力の使い方のイメージを掴むことはできた。ならば、今度は気配だ。
多分ではあるが、暗殺者の言った通り魔力と気配の扱いはこの世界では同義にほとんど近い。むしろ近すぎて困るくらい。つまりは気配とほとんど同義である魔力と、消し方、戻し方は同じなのだ。
感覚的にも扱い的にも魔力と同じとはありがたいことだ。
やってみようじゃないか。とりあえず魔力の放出と範囲の拡大を中止する。俺の他に魔力をこの範囲まで広げられた二人と魔力的な意味でお別れするのは名残惜しいが。
別にいいか。思い入れもクソもないしな。えっ? さっきの感傷的な態度はなんだって? 俺、そんな態度とってました? いやー、まるで覚えてないですねぇ。
そういうわけなので気配を消そうと思います。
……思う、のだがたとえ気配も魔力と同じ扱いだとしても十分分かんねぇよ。これ以上理解を深めても訳分からんくなると思うんだけど。なのでとにかく気配がどんなもんかを確認したいです。
もう一度魔力を放出し、気配を察知できないかと試す。ほとんど体に魔力を纏わせる。もちろん薄くしてあります。そして1センチずつ広げる。それを続けていけばどうにかなるはずだ。ちゃんと理由もある。先ほどの魔力放出でどうにもある程度のところまで魔力を放出したところで違和感があったのだ。なんというか今まであったものがなくなったような、そんな感じだ。その違和感がどのあたりまであるのかを確認したいのだ。
俺の予想としては10センチもないと思っていたのだが、どうにもそれよりだいぶあるらしい。
約50センチ。未だに違和感はない。一体どこまで続いているのやら。
もう1メートルだ。そろそろ違和感があってもいいんじゃないだろうか。
そんなことを思いながらまた1センチ魔力の放出の範囲を広げた。そういえばすごく今更ではあるが、俺、魔力の扱い、割とできるんだな。全くダメかと思っていたがこれは俺の妄想ry……もとい想像力のおかげだろうか。頭の中で適当にキャラを動かすとかしてたからな。
それのせいだろう。
それはともかくようやく違和感の範囲を掴めたのだ。約1メートル、これが俺の(多分)気配の範囲だ。この1メートルをどうにかできれば俺は気配を消すことができるだろう。
しかしだ。どうしようか。魔力と同じというが魔力と同じように戻すことができるのだろうか? いや、集中すれば…もしかしてこの1メートルだけに集中してみれば、どうにかできるのでは?
やってやるぜぇ! と、いうわけで集中するので静かにします。
………………………。
……………………。
…………………。
………………。
……………。
…………。
………。
……。
…。
できた。うん、唐突にできた。ごめんなさい、できました。なんというか俺、天才かな? 天才じゃね? 天才です! どうも天才です!
あー、調子乗ってスンマセン。でもできたんで。俺、できたんで!
ん、ちょっと待て。この感覚はあくまで俺の主観であって、本当にできているかは分からない。ちょっと聞いてみるか。こういうのは他の人に聞くのが一番だ。
「あの…なんか変わってます?」
「いや! 変わったなんてもんじゃないですよ! 気配がほとんど完璧に消えています!」
「…………おっっっしゃぁぁぁ!」
これで…街に行ける目処が立ったぞぉ! てか、俺が一人で街に行くことができるならさっきのミーヤさんの質問はなかったことにしてもいいのでは? いや、でも、楽しそうだからするか。ふっふっふ!
それにしても最近、調子乗ってきたなぁ。おかしいぞ、俺はネトゲでも絶対に調子に乗らないことで有名だったのに。いや、チャットで話すくらいはしてたわボケ! ねえ、俺どんだけコミュ障ってことになってるんです? まあ、確かにコミュ障ではありますが、それは面と向かって話すときだけだから。
そういういえば臨時で組んだパーティでチャットしてたらフレンドでもない人に『グヘヘ、今度リアルで一緒に会わない? おじさん、お金たくさん持ってるんだぁ』って言われたことあったな。中二の時だったか。死ぬまでそうだったが、まるで声変わりしないんだよね。どうしてだろうか、俺は成長期を完全に逃したようだ。怖い怖い。俺もうこっちの世界来て正解でしたわ。
よし、気配を消したままもう一度、魔力放出を行う。言わずもがな薄くしております。大丈夫ですとも、安心してくださいな。そういえばグリモワール、あいつも魔法を使えるのだろうか? できたら俺の存在意義はないと思うんだけど。もう俺あいつ持ってるだけで最強じゃないですか、やだー! でも、グリモワール魔法神具やんけ? それくらいできないとダメじゃね?
まあ、魔法について言ったのは魔法が使えるということは魔力を使っているということだ。魔力を使っている、つまりは魔力を保有している。そっちの方が探す材料が増えるからな。
さて、と。なんやかんやで3回目の魔力放出だ。慣れてしまった、うん。俺、こんなに要領良かったんだ。知らなかった。
むっ! 見つかったぞ。俺の予想どおりグリモワール、あいつは魔力を帯びていた。もしかしたら俺が街にまで伸ばしたのは一方向だけだったのだろうか。挙句運悪く人がおらず、人間など魔力を持つ生物の魔力のつき方を覚えられなかったのか。はあ、なんということでしょう。
とにかくグリモワールは見つけた。そして他に感知できるものから場所を割り出した瞬間に俺はとてつもなくあいつをぶっ壊したくなった。
どういうことだよ、おい。ここ……めっちゃ近いやんけ! これはもう近いってもんじゃないぜ!? どうして気づかなかったんだろうレベルの近さだぜ。
どこだって? 聞いて驚け! ムーヤの手の中だぜ、ヒャッッホイーー!
あっ、はい。調子乗ってスンマセン。でもさ、今ものすごく自分が滑稽なんだよね。どうして気づかないんだろう、俺は。そういうわけでなんかもうおかしいくらいにテンションが高いんです、はい。
まあ、ムーヤがグリモワール持っていてくれたわけだ。なんというか今までの努力を返してくれとはまさにこのことである。俺は一体、今まで何をしていたんだ。はあ、とりあえずムーヤにグリモワールを受け取るか。
「あのさ、まだ怒ってます、ムーヤさん? 怒ってなかったらその持ってる本貸してもらってもいいですか?」
「うん……なんか本から声が聞こえたきがしたからからもってみたけどなんかこわいから別にいい」
「おお、ありがとうございます」
というわけで、グリモワールゲットだぜ!
さて、と。グリモワールはゲットできた。尋問じゃぁ!
えー、テンションが妙に高いことに関しましては暖かい目で見守っていただきたく思います。失礼いたしました。
「よし、グリさんや。どうしてムーヤの腕の中に収まってたんですか? 一応弁解の余地を与えてやる、10文字以内で述べろ」
『いや、あの、ちょっ』
「はーい、10文字超えたのでアウトー。そういうわけなのでお前を殺す」
『1日ぶりの理不尽をありがとうございます! でもやめてください。死にたくないです!』
「どうせ死ぬんだ。今死ななくていつ死ぬんだよ!」
『何を言わんとするのかは分かりましたが、とりあえず今ではないと思います! やめましょう!』
「一つだけ言わせてもらおう。……知らんな!」
言ってから『身体強化』をかけて、存分に地面とキスできるように思いっきり地面に投げつけてやった。
えっ? 渡してもらったムーヤに多少は気を遣えって? いや…ちょっと何を言っているのか分からないです。(笑)
さて、と。どうやら地面とのキスは満足したようだ。持ち上げてやる。
『ゴメンナサイ…絶対に、もう絶対にしないので』
「それでよし。じゃあ次はどうすればいい?」
『へっ?』
「いや、もう地面とのキスを試したりはしないから。でも、他にも色々したいんだけど」
『何あなた、狂ってらっしゃるの!?』
「狂っているとは何度か言われたことがあります。ので特に気になったりはしません。さあ、何がいいですか?」
営業スマイルで言ってやった。まあ、営業なんてしたことないからこれが営業スマイルに入るほどの笑みを浮かべているのかは知らないし、分からないんだけどさ。
まあ、他にも色々したいってのは冗談です。でも、狂っていると言われたのは本当です。小学校の頃に幾度となく言われました。特に何も思わなかったけど。その時にはもう孤児だって分かってたからなんか納得してしまった。はっはっは、特に笑えないが笑っておかないとガチめに狂ってしまうのでやめておきます。
ふーむ、というか俺は本当に何が起きてグリモワールを手放したんだろうか。別に危険もないだろうに。危険……ないよな?うるさいだけだろ?
「なあ、俺昨日なんかしたか? 全っ然覚えてないんだけど」
『おお、全く覚えてないと? 割と気配がおかしかったぞ。挙句筆舌にしがたいことを数人に及んで行っていたぞ? なんかもう怖すぎて…怖かった』
「おお、すごいな。語彙力がなくなるほどのことを。きっと元の世界のストレスとグリモワールへのストレスが合わさった結果だろうな。まさか病気まで発症するとは思っていなかった」
『病気なんて発症したのか!? 大丈夫か!? 昨日無茶しすぎたとか!?』
「いや、急に心配しだすな。気持ち悪い!」
本心で心配されるのは久しぶりだったせいでどうにも拒否反応を起こしてしまった。やはりもう少し人との会話だったりなんだりに慣れる必要があるな。つうか、どうしてグリモワールがこんなに俺のことを心配するのか?
まあ、別にいいや。どうせ気持ち悪いだけだし。どうせグリモワールだし。気持ち悪いが。気持ち悪いが!
さて、これから何をすればいいんだろうか。はっきり言ってクッソ暇なんだけど。あっ、そういえば土地。爺さんにまた変な責任転嫁される気がする。あー、あれ嫌なんだよなぁ。
その話は置いておくとして……ん? あっ、いやこの話置いておいちゃダメだわ。どうしよう、本当に。
そういえばものすごくどうでもいいけど、俺ってさこの世界来てから本当に情緒不安定なんだよね。なんか怒ったり、泣きそうになったり、その他諸々だよ。ほら、めっちゃ情緒不安定。これはカウンセリングが必要ですね。地球にもう一度戻りたい。戻って一度でいいからAKIBAとか行ってみたい。外とか出たくなかったから行ったことなかった。買い物とかゲームのグッズとかはネットでどうにもなったんだもん。わざわざAKIBAに行く気になれなかった。まあ、今なら行けるだろっていう割と軽いノリで言ってるから本当に行けるかどうかは知らんけどね。
てかすることない。ちょっと色々とこの村を回ってみるか。どうせ家作るまではこの村に住むつもりだし、村の事情諸々を知っておかないと後々不便だからな。
おーし、今日の活動方針決定。じゃあ、行くか。できれば一人が望ましい。考える時間とか欲しいから。ムーヤとかついてこないといいんだけど。
そう思いつつ、俺は腰を上げてゆっくりと歩き出した。
さあ、やってきました。とりあえずは食料倉庫らしき場所に。
まあ、はっきり言って気になったのだ。今日帰ってきた村の外周を見る限り、家畜などを飼っているような様子はなかった。なのに今までの食事には多量の肉が使われていた。俺が、龍人がこの村に来たせいで浮かれているのか、それともこの世界では魔神がご丁寧に魔獣を食用にしてくれていてそれを狩って食料としているかのどちらかだ。
まあ、これはヒントなくても分かるよね。えっ、分かるよね? 今までの態度とかから分かるよね。そう、なんか知らんが舞い上がっているようだ。猫人の中では龍人はそこまで大切なもんなのか? いや、絶対違うだろう。『いのちだいじに』ぃ! を心がけたほうがいいと思います、はい。
念のために中を確認すると、案の定である。思いっきり食料が無い。大丈夫か、これ。まあ、やろうと思えば解決できなくも無い、とは思うけど、この解決方法は痛いので嫌です。痛いのは嫌なんです。
どうしよう、ほとんどスッカラカンだぜ。そういえばステータスの中には空腹になったりもあるのだろうか。それがあったら俺はあれだね、絶対に腹が減らないね。
………………チートやんけ! 何、俺に勇者になれ、とそういうのか! 俺はこの世界でほのぼのと生きたいだけなんだ! 絶対に勇者とかそんな大層なもんにはならんぞ、慣れる気もしないが。
まあ、話を戻すか。魔獣が食用ではないと推測可能な理由は簡単だ。歴史についての本を読んでみて、書いてあったが。
そう、多少要約はするもののつまりは種族を創造したことに対して、対抗して魔神が動物に魔力を注いで作ったのが魔獣である。まあ、言ってしまえば神が作った俺らは食用ではない。なのに対抗した魔神が魔獣を作ったのに、食用であるはずがない。加えて言えば、どうして魔神はわざわざ俺ら、種族に有利なように食料を与えるんだ。馬鹿なの死ぬの?
そして魔獣は食用ではないはずだ。ならば魔神は馬鹿ではないようだ。
よし、解決策は後で猫人の皆さんにお土産的なの持って行きつつ、言っておくか。
さて、と次はどこに行くか。
あっ、そうだ。あそこ行きたいな。鍛冶屋。振り回したりはできないだろうが、マイ武器とか持ってみたい。絶対かっこいいって。男はロマンと、後なんかの塊なんだよ!
よし、とりあえず鍛冶屋行って、遊ぼう。どうせあの人暇だろうし。あの男勝りさん。
と、いうわけでやってきました。ええ、そうです。鍛冶屋です。
まあ、ちゃんと目的があってここにきたよ? 遊びに来たわけじゃないって。
最近意識してなかったけど、あれなんだよ。俺、髪をまとめるための紐がないんだよ。赤い長髪がたまに目に入ってうざったいんだよ。
鍛冶屋だけど、紐くらい作ってもらってもいいよね?
「というわけで、遊びに来ましたぁ! なんというかですね、髪を結ぶための紐を作ってもらいたいんですけどぉ! いいですか…うっっぉお!」
「何、お前ふざけてんのか、あ“ぁ“!?」
「アッハッハ、最初は怖かったけど、さすがに二度目は怖くねぇや、ハハハハ!」
「チッ、まあ、いいか。それで何だって? 髪を結ぶための紐か? んなもん鍛冶屋に頼むんじゃねぇよ、そういうもんをつくる場所に頼め、俺には作れん」
「むぅ、そうですか。じゃあ、違うところに頼むか…」
マーヤさんの店なら作ってもらえるかな? 最悪作ってもらえなくても作ってもらえる店は教えてもらえるかもしれない。
とりあえずマーサさんの店に行くか。そういえば誰かが紐についてなんか言ってた気がしたけど、まあいいか。
「よし、だいたい決まったか。ありがとうございました。、ちょっと行ってきます……ん? あれ、あなたは昨日の…」
小太りの人だ。なんでそんなに怖い人を見る目で見るんだ?
ふーむ、昨日なぜか村の外に出てしまったのと関係があるのだろうか?ちょっと聞いてみるか。異様に怖がってるけど平気だろ、多分。
「あの…昨日俺なんかしてました? あんまり記憶がなくて…ちょっと。昨日何があったか知ってたら教えてもらってもいいですか?」
「い……」
「…い?」
「いやだぁぁぁぁ! 僕はもう何もしていませんからぁ! あれだけはぁ! お願いしますからあれだけはあぁぁっ!」
「お前、何したんだ?」
「いいや、特に何もしていないと思うんだけど。というか昨日の夜の記憶が風呂入って以降の記憶がなくって全然分からないんですけど」
ただ一つだけ分かった。これは何があっても言わないパターンだわ。
何だろう、口止めされてるのだろうか。まあ、別にいっか。
そういうわけで嬉し懐かし…………ん? ちょっと待て、別に嬉しくはないぞ。まあ、あれだな。言葉の綾だな。
やってきたぜ、マーヤさんの服屋。
とりあえず入ってみる。あらまぁ、お久しぶりです、マーヤさん!
まあ、感動の再会した時のようなテンションでこの状況を乗り越えてみたい今日この頃です。よし、行ってみよう!
「あらまあ、お久しぶりです、イフリートさん。ムーヤに好かれていらっしゃるようですね。あの子、ほとんどの人に懐かないのに珍しいこともあるんですね」
「どうして好かれいるのか、俺にも分かりません。どうしてなのでしょうか、そして嫌われる方法ってありません? 俺、子供苦手なんですけど」
「いやぁ、絶対嫌われるとくるものがありますよ?」
「あら、それは怖いですね。でもなぁ、俺、本当に子供苦手なんだよなぁ。どうして精霊なんて大層なもんに好かれてるムーヤ、いやもうムーヤ様に好かれるのかまるで分からないんですけど」
「……もう、ムーヤが精霊に好かれていると聞いているんですね」
む? あ、そうか。さすがにマーヤさんも知ってるよね。親子、だったしな。仲睦まじくて結構です。頑張れ。
これ以上そういう過ごすの見せたら爆発しろと思ってしまいそうです。
………はっ! ヤベェ、忘れてた。今、我を忘れてた。あと、ここにきた目的も忘れてた。
どうにも仲良い家族を見ると、なんか我を忘れる。
まあ、いいや。とりあえず紐を作ってもらおうっと。
「あの、ちょっとあるものを作ってもらいたくてここにきたんですけど」
「は、はい。何を作ればいいんでしょうか?」
「いやー、髪を結ぶための紐が消失したと言いますか、何と言いますか。なので新しいのを作ってもらいたいんですよねー」
「ああ、そういえば結んではいないですね。はい、作れますよ。そこまで難しいものでなければ、ですけどね」
「それでも大丈夫ですよ。ありがとうございます! 髪が赤なので、赤い色でも目立つような紐がいいです。柄とかは特に気にしないのでなんでもいいです。ああ、できれば男物がいいんですけど」
「いや、そもそも紐を使う男の人がほとんどいないんですけど」
「あっ、なるほど。そういうことか。じゃあ、やっぱなんでもいいや! よろしくお願いします!」
そういうことがあって、とりあえずは紐を注文できたのだが、問題はその後だった。
「私と、一度でいい。戦ってほしい。あなたの本当に実力を知りたい。あなたを監視する、監視者として」
「……………」
俺は聞きたい、ものすごく。
それはもう声を張り上げて言いたいのだ。
とてもとても、本当に不思議で仕方がないのだ。だからこそ言ってやりたいのだ。この理不尽な状況に向かって声を張り上げて言いたいのだ。
「一体どうしてそうなった!」
大声で思いっきり言う。
状況を説明しよう。
あの後、マーヤさんの店から出てきてから、ボケーっとしながら適当に歩いていたのだ。どれくらい歩いただろうが。すると現れたのは、待ってましたと言わんばかりのルナがそこにいたのだ。
そして何を言うのかと思って、待っていた直後に言ったのが、何をトチ狂ったのか、先ほどのセリフである。
本当に何をトチ狂っているのだろうか。どうして実力なんて知りたいと思ったのか。あんたらの方が知っているはずである。俺の場合、『自己再生』さまのおかげで今までまるでできなかったことができるようになっているだけであって、地球で俺の奥の手なんて使ったら、負担が頭おかしいことになって、実際頭おかしいことになるのである。挙句失神するので本当にめんどくさい。しかも『自己再生』様があっても割とキツイので本当に奥の手はしたくないのだ。
もういい? そういうわけなので、もう絶対に戦闘したくないのよ! もういい? 何度でも言うよ? もういい!?
ものすごく簡潔に言おう。めんどくさいからやめようぜ!
それを余すことなくルナに伝えると、スッゲェ〜、嫌そうな顔をしていた。いや、嫌そうな顔をしたいのは俺だし。あんたは別にいいだろ!
その思考を読んだのか、ルナが小声で一言言った。
「だが断る」
……どうしてそれを知っているのかは、置いておいてもいいだろうか。別にいいだろう。
とにかく何事もなかったかのようにスルーすることはできないようだ。
なにそれ、もう帰りたい。




