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十八話 俺が何をした。

書くのが遅いせいで、一週間に一回のペースで投稿すると書溜めがどんどん減っていく。書溜めの残りがもう書溜めじゃなくなってきたら、投稿を………どのくらいだろう? 三週間くらい? お休みするかもです。

 ご了承ください。おなしゃす。

急に意識が覚めた。

 さっきまで眠っていたような感覚があったのだが、今は何でもないようだ。

 よーし、状況確認だ。すぐ近くにいるやつはいない。寝ていた間の記憶はもちろんだがない。体にも特に異常なし。クッソ、髪短くなってたりはしないか。髪が邪魔で仕方ないから短くなっていないかと期待したものの、そんな淡い期待は即座に砕かれるんですよね、知ってます。この世界の神は気持ち悪いくらいに俺に不親切だ。

 一体俺が何をしたんだっての。引きこもりして、修学旅行に行って、死んで、こっち来て初回イベントをどうしてか普通に撃退して、ここにきてるだけだぞ?

 一体どこに神がご機嫌斜めになる要素があった? 意味が分からないんだけど。

 そして辺りを見回せば、もう朝だ。多分。分からない、最近時間系列が分からないことが多々あるんだけど。どういうこと? 何? これも神がご機嫌斜めなせいなの? ふざけんなぁ!


「さて、と。ここがどこかくらいは把握しておきたいな。あたりに村のまわりに見たものはなしか。

 ん?なんか妙に尻のあたりが柔らかい」


下を見てみると、なぜか人の頭があった。

 うっお、気持ち悪。ビックリしたぁ。しかも割と恍惚とした顔をしてるんですが、それは?

 俺、何をしたんだ。挙句女の人って。もう変態でもとり憑いたんですか?

 まあ何が起きたかくらいは聞き出せるか。あと現在地も。


「おい、あんた。ここはどこだ? てか、あんた誰?」

「くっ! 話して欲しくば……………」

「話して欲しくば、なんだって? おい、早く言えや」

「私を踏め!」

「…………よし、死ね!」


今分かったぞ。こいつ…変態だ! 騎士様みたいな面して考えてることが変態すぎるぞ。

 お望み通りに踏んでやった。するとまた、バカみたいに恍惚とした顔をして息を荒くした。

 早く言えよ。こっちは急いでんだよ。


「はよ言え。情報を吐くだけ吐いてからさっさと失せろ。踏み潰すぞ、おい」

「ハヒイイイイィィ! いい、その見下すような目と痛みを与えつつも快楽を忘れないその力加減が、イイ!」

「もう一度言おう。よし、死ね! 快楽がどうのこうのいう余裕もなく死ね!」


気持ち悪すぎて、思考放棄して惜しげもなく『身体強化』を使ってしまった。

 まあ、どうせ力込めて踏む予定だったしいいか。


「ここは猫人族の村の近くの森林の中、そして私は王都の暗殺者だ! ああっ、その力加減はイイ!」

「なるほど、割と近かったのか。そしてどうしてそんな実力者がこんなところにいて挙句俺が座っているのかわからないんだけど。しかも変態なんだけど。

 よし、また気持ち悪い目でこっちを見るな死ね」


うわ、気持ち悪過ぎて言っちゃったけどさらに気持ち悪い顔してこっち見てるわ。

 うわ、普通に死んでほしい。いや、思っても言っちゃダメなんだよ。

 とりあえず帰りたいな。ミーヤさんたちも心配してるだろうし。見た感じなぜかグリモワールも持ってきてないし。ローブは来ているが。

 そういえばローブは今でも魔力を吸ってるんだっけか。ちょっとどうにかできないかな。へーんしん、てな感じで。

 ちょっとやってみるか。ムムムムムムム、あっ、なんかできそうだぞ。うーん、でも種族をちゃんと分かっていないとへーんしんできないみたいだな。とりあえず今できるのは猫人と人種、まあ、人か。多分おっさんとあの相棒って呼ばれてるちみっこの事だよな。

 まあ、今回は人種で行くか。髪短くならないかなぁ。


「よーし、へーんしん! おお、本当に種族の隠蔽できるんだな。しかも相手だけじゃなく自分にも違う姿に見えるんだな。あっ、これ言っちゃダメなやつか? まあ、いいや。おい、今のこと言ったらどこにいても絶対踏みつけに行くからな? 四肢をもいでから踏みつけるからな? 技能全行使で踏みつけるからな?」


なんとなく怖くて目を閉じていたが、目を開けると身体中にあった鱗は消えており、懐かしき人間の肌があった。しかも髪も黒くなっている! これは…日本人か。イメージに引っ張られたようだ。そして…やったぜ! 髪が短い! いや今に比べれば、だが。生前の時の髪の長さくらい。ステータスも見てみたが、そっちは残念ながらしっかりと『龍人』と書いてあった。

 だが、なんとなく言ってしまったことだが、真面目に聞いていたのか、顔を真っ青にしていた。


「イイ! と言いたいけどそれはさすがに………」

「分かったら返事しろよ、あ”ぁ”!?」

「わかりましたっ!」

「それでいいんだよ。どうして返事できないんだよ」


この世界の人はどうにも返事をするのが苦手らしい。理不尽? 知らんな。

 あれ? どうして特にそういう経験なかったはずなのにそう考えたんだろう。まあ、いっか。あれだ、デジャヴって奴だよ。経験したように感じたんだろう。

 さて、と。案内させようかな、この変態に。あっ、でもそれは嫌だな。ものすごく、それはもうグリモワールばりにうざい気がする。ただでさえチラチラ見てきてんのに。この時点ですでにうざい。


「あー、その暗殺者はほかにもいますか?」

「なぜ敬語!? でも踏んでもらっているので答えますね!」


もはや情報提供の基準が踏まれているか否かなんだけど。本当に死ね。でも言ってはいけない。

 答えが来るまで待つんだ。俺はもう少し忍耐力を身につけたほうがいいのかもしれない。うん、きっとそうだ。


「そこに一人とあなたの後ろに一人ですね! はい、教えたのでもっと踏んでください!」

「分かった、あれだな、ご褒美だな?」


ものすごい勢いで首を縦にふる。

 ものすごく死ねと言いたい。だが、何度も言うようだが言ってはいけないんだ。言ったらさらに気持ち悪くなる。


「ああ、うん。じゃあ、違う人に頼むか。きっとこの人以外にマトモな人いるだろうし」

「お願いします、私に頼んでください!」

「断ってもいいですか?」

「ダメって言ってもいいですか!?」

「ああ、じゃあいいや。頼んだよ?変なところに連れてったらぶっ潰すからね?」

「分かりましたっ!」

「じゃあ、お願いします。もう一回言うけど変なところに連れてったらぶっ潰すからね?」

「分かっておりますとも! 必ずお役に立ちます!」


あっ、そろそろ離れないとダメか。絶対言わないけどありがとうございます。

 頑張れば今日中には村に帰れると思うけどやっぱり案内があったほうが早く帰れるしな。はっ、そうだ! ヤッベェ、また爺さんが責任転嫁して自分を責めてしまう。絶対『探し出せなかった私の責任です』とか帰ったら言うよ。

 なんだろう、神はこんなとこでも俺を妨害するんだろうか。俺に爺さんから土地を譲れさせない気か! いいじゃないか、別に!


「よし、行きますか」

「あの、その姿はいつまで続けるんですか?」

「あっ、そういえば。忘れてた。どうやって戻すんだろう」


今までの経験則とも呼べない経験則に則ってやってみるか? そうするか。

 念じるんだ。多分どうにかなるだろう。ムムムムムムム! あっ、戻れそう。よし、できるぞ!

 戻った。すごい久しぶりな気がする鱗が見えた。髪も赤いし長い。異世界に染まったな、俺。龍人の姿を見たときにどうしてか安心してしまった。

 それにしてもこのマント、じゃなかった、ローブは高性能だな。ますます街に出ても龍人だとバレずに帰れる気がしてきたぞ。あっ、マルサさんかムルサさんに気配を消すだかなんだかしないとどうせ気づかれると言われていたんだった。どうやったら気配を抑えられるんだろうか?

 聞いてみるか? なんか暗殺者とか言ってたし気配の消し方は知っているだろうし。


「なあ、気配ってどうやって消すの?」

「ん? あっ、そういえばあなた龍人でしたね。気配の消し方ですか? そうですね、全て言わなくてもいいですか?」

「おお、いいね。ヒントはくれてやるから後は自分でどうにかしろっていうやつか!」

「いや、よく分からないですね」


チッ、知らないか。とりあえず異世界人ではないと。

 くそが、話は大して通じないか。はあ、異世界人いないかなぁ。漫画だのゲームだのの話をしてみたいな。でも確か転生者は赤ん坊に転生するんだっけか。じゃあ、俺は無理だな。赤ん坊も恐怖症の対象内です! まあ、そういうわけなので転生者は大人になるまでは無理です、話すことができません。

 てか、はよ気配の消し方教えろや! もったいぶりすぎなんだけど!


「ま、まあ気配の消し方、でしたね。

 そうですね、魔力の使い方に似ていると言いますかね。形容しがたいですが独特ですよ」

「ふーん、大して役に立たないや。まあ、あざっす」


そうして村に向けて移動を始める。

 そういえば他にも暗殺者の人いるんじゃなかったっけ?大丈夫なの、置いていっても?

 聞いてみたが自分たちでどうにか帰るだろう、とのこと。なんというか薄情なやつである。一応仲間じゃないんだろうか。

 いや、それは地球での考え方だろう。この世界は地球とは違うんだ。そういう価値観は捨てたほうがいいだろう。あっちの世界に戻って、あっちで住むつもりはさらさらないんだからな。こっちの価値観に慣れるんだ、俺。

 そう思いながらも、歩みを止めずに村へと急いだのだった。







そして村に着いた。正確には村が見える位置にまで、だ。

 そこまでで暗殺者の変態の女の人の案内は終わりだ。即座に切り捨てるように別れて、村に足を踏み入れた。

 ………………そこまでは良かったんだ。しっかりと気付かれずに村の中に入れたと思う。だが問題はそのあとだった。

 どうしてかは分からないがムーヤに勘付かれてしまい、村に入ってから約1分間しか自由がなかった。ものすごく自由が欲しいです。

 はあ、さっきまで変態がいたから、年下のことなど忘れていた。なんというか…これが日常と化しているのが、異常だな。どうすればいいんだろうか、こんな日常は嫌だ。

 どうにかして離れてもらいたい。ムーヤさん、どうして毎回俺にくっつくんでしょうか?俺が何をしたっていうんですか?


「離れてくれないですかね?」

「…………」


あっ、これは無理ですね。マジギレしてますわ。まあ、そうだよなぁ。何も言わずに村のどこにもいないんだからそりゃあな。

 それにしても一切覚えていないがどうして村の外に行ったのだろうか。特に目的なんてなかったと思うが。もしかして今まで感じていた視線って暗殺者の人たちだったのか? うーむ、だがそれを考えると、現在いる唯一の龍人に興味を感じないのもおかしいとは思うけども、どうして俺を狙う必要があるのだろうか。

 王都が背後にいるわけだし、やろうと思えば戦力を増やして、俺を捕まえるくらいできるだろうに。もったいぶりやがって。いや、様子見か? チッ、なめやがって。まあ、いいや。王都に行くことになったら大声で『この国の人は龍人一人も捕まえることができませんでした!』と言ってやろう。

 クフフ、はーっはっはっは! 想像しただけで楽しいな。絶対驚くぞ、王都の人たち。


「あっ、そういえばどうして俺が帰ってきたの分かったんだ?」

「……………」


あら、まあ。無視ですかそうですかゴメンなさい。

 あれかな、変態の暗殺者が言っていた気配の消し方みたいな感じで気配の感知の仕方があるのかもしれない。それを実質4歳ができるんだから猫人族ハンパないな。一体どれだけの厳しい訓練を! あっ、いや確かムーヤは天才だったんだか。魔法の天才らしいが、生憎と天才は割となんでもできるんだよ、そつなくこなすんだよ。ものすごくうざいが。

 その失礼な考えを読んだのか、ムーヤが俺を見つめてきた。スンマセンスンマセンスンマセン! いやいいじゃん! 心の中で思うくらい! 誰にだって心の中で失礼なこと思うくらいあるっての!

 まあ、そういうわけなんで許してください!

 暇なので周りをキョロキョロと見ていると爺さんとミーヤさんがこっちに向かってきた。

 どうしましょうか、また爺さんが責任転嫁とかしてきたらめんどくさいんだけどな。

 その予想はどうにも正しかったようで、すぐ目の前に来て息を整えてから自分に責任を押し付け始めた。


「も、申し訳ありませんでした。昨日、外に出るとは予想ができず、イフリート様を放置していまいました」

「あっ、いや大丈夫ですから。悪いの俺だから。いやー、あれですかね。夢遊病ってやつですかね?」


まあ、はっきり言うと覚えていない。あれです、寝ている最中に動き出すみたいな感じのやつです。

 夢遊病なのかな? 発症の理由も病名も下手したら病名もうろ覚えの状態で悪いけど。

 てか、やっぱり爺さんは責任転嫁がお好きなようで。どうしてそうなるのだろうか、俺が悪いのに。覚えがないとはいえ俺の体がしたことなんだから俺のせいだ。それをどうして爺さんが責任を感じる必要があるのだろうか。


「そういえばムーヤに離してもらいたいんですけど、どうにかできますかね?」


俺としては切実に願ったつもりなのだが、爺さんはともかくミーヤさんはそうは捉えなかったようだ。顔に怒りが現れている、気がする。

 どうにかして機嫌を直したいんだが、できるはずないか。今は俺がどう言ったところで逆効果というものだろう。

 まあ、話し合いをしようにも俺はムーヤがくっついているのでうまく話せいないんだけどね。


「それを…頼める立場にあると思いますか?」

「アッハッハ、そうっすね。いやー、申し訳ないです。分をわきまえるってのをなかなかできないもんでね」


とりあえず軽口を叩きながら、思った。

 俺、どうしてこう自分から修羅場に突っ込むんだろうか。これもう狙ってるよね? くらいのレベルで。

 うーむ、どうしてこんなになるのかはまた後で考えるとして、今はこの修羅場を切り抜けることだけ考えよう。まあ、分をわきまえるってのはできないのは事実だけどね! 俺は基本空気読まないから! だって読んでも読まなくても色々言われるし。なにを言ったところで無駄だ。

 あ、そういうことを考える時間じゃない。さて、と。うーん、ムーヤを放り投げる?いや、アウトだろ。さらに雰囲気が悪くなるだけだろう。


「えぇと…俺、逃げていいですか?」

「それも許すとでも?」

「いやぁ、頑張りますよ?」


なんだ、これ。なに、最終決戦?

 いや、絶対違うだろうが。こんなんで最終決戦だったら、俺泣くぞ。家族がどうたらこうたら言ってたんだ。身内と最終決戦とかテンプレですか? 親父と戦闘しなくちゃいけないんですか? いや、親父じゃないけどさ。

 鬼ごっこするか。割とガチな、だけどさ。よーし、『自己再生』発動! これ、技能って重ね掛けしてもいいのかな? 技能の効果が変に半減するとかないよね? 答えはどうせ出ないし、いいか。

 残り5分。さーて、やってみますか。


「ほい!」

「……」


おお、即座に反応してきた。さすが猫人、異世界の人は強いなぁ。さすがですな。俺の世界もこの世界みたいに魔法と技能みたいなものがある世界に生まれたかったものです。この世界に生まれたら、いじめはあっても引きこもったりはしなかったと思うなぁ。例え種族が龍人だったとしても。あっ、龍人が絶滅したのは30年前だっけ? じゃあ、龍人が絶滅したのは15年前にまで戻るぞ! 俺、歴史改変したぜぇ! って笑えたかな?

 いやいや、感傷に浸っている場合ではない。考えてる最中も鬼ごっこしていたが、逃げ切れる気がまるでしない。どうしてか腰に違和感があるが、気のせいだろう。


「それにしてもミーヤさん強いっすね。ムーヤが強いのはミーヤさんのおかげじゃないですか?」

「……そんなことはありません。元からムーヤには才能があったんです」

「いいっすね、妹って。俺にもいましたけど生意気で生意気で」


まあ、義妹だから仕方ないんだけどね。今更どうにもできないけどね。できるとしても異世界に行く方法なんてそうあるもんじゃないだろうさ。改善のしようがない。あんな皮肉だの何だの言ってくるやつにわざわざなんか言ってやるつもりもないけど。

 さてと。どうしましょう。はっきり言って『血への渇望』を発動させる余裕はない。勝てる気しねぇ。いや、種族的に勝てるはずなんてないんだけどさ。何度でも嘆こう、どうして俺は龍人になったのだろうか。というか、どうして龍人は序列最下位の最弱の種族なんだろうか。

 意味が分からない。理屈がおかしいだろうが。あれだよ、半人半神とかあんじゃん。デミゴッドだよ。序列2位の『龍種』だよ? 人種との掛け合わせだよ? 弱くなる要素がどこにある! この世界はどこまでも俺に理不尽だ!

 まあ、とにかくどうにかしてこの状況を打開したいのだが、打開策が浮かばない。


「うーん、どうしようかな…………ってぇ! うおおおおおおおおおおおっぉ!」


ミーヤさんが目前にまで迫ってきていることは視認できた。しかし、そのすぐ後に目の前が真っ暗になったため、状況を把握できないのだ。

 だが、この感触。割と最近、そう割と最近、体験した気がする。

 あっ、そうだ。家族がどうのこうの言っていた時になぜか抱きしめられたんだ。その時の感触に似ている。てか、思いっきりそれじゃないか。何? ミーヤさんは俺を止める時には必ず抱きしめないと気が済まないんですか? そうなんですかありがとうございました? いや、違うな。すいませんでした、だな。

 この人はどうしてこうも、自分が結婚するという事実を忘れるのだろうか。もうこれがミーヤさんの必殺技なんだじゃないだろうか。

 それにしても本当に世の中の胸の小さい人(巨乳に比べて、そうあくまで巨乳に比べて、である)を小馬鹿にしているようにしか見えない必殺技だ。何度でも言うよ? ミーヤさん、あんた結婚すんだよね? そうなんだよね? そうだよね! じゃあやめようぜ! そういう行動は控えようぜチクショー!

 そういうわけなんで離していただけないでしょうか、そうですかゴメンなさいすいませんでした。そして感触は大して気にしないんですけど、本当に気にしないんですけど! またもや身動きが取れませんねはい。


「んんんんん…んんんんんんんん?」


ああ、翻訳します。『どうしよう…ここから何をしろと?』ですねはい。実際俺、現在進行形で動けませんし。発動中の『身体強化』で太刀打ちできないなら他の強化系の技能を発動させるしかない。が、俺、他に自分の意志のみで発動させられる技能ないから無理か。ミーヤさんが許してくれるまでこの状態のままですか。

 ………………………どうしましょうか、今になって気付きました。ものすごく息苦しいです。息ができません! あっ、やばいやばいやばいっ! 死にそうなんだけど! このままでは本当に死んでしまうぞ! おっ、あぐっ、いぎおっ! ビュ、あ…………………………あれ? 大丈夫だな。どういうこと?

 ちょっと状況整理的なのをするか。……………………これは、もしや『自己再生』のおかげなのか?

 いやいや、さすがにそれはないだろう。俺は少し『自己再生』様に頼りすぎだな。そこまで高性能なら、冗談抜きで勇者とかそういうめっちゃ強い存在が持ったほうがいい固有技能だぞ。

 でも他に思い当たる技能がない。いやダメだろ。俺はこのままでは『自己再生』様に頼り切ってしまうではないか。まあ、どちらにしろ技能に頼り切りなのは確かだけどな。はーっはっはっは! いや、なんか虚しい。

 そしてぶっちゃけ認めたくないが、『自己再生』様の効果であることは確からしい。息苦しい中、どうにか集中してステータスを開いてみてみたが、『自己再生』様以外に修復、再生系の技能は見当たらなかった。

 やっぱり『自己再生』様パないっすわ! もう本当に僕持っていて良かったんですかね?

 さーてとぉ? 俺はこれからどうすればいいのだろうか。なんか息苦しいのは『自己再生』様でどうにかできるんだが、それでも息苦しいのは息苦しいからさ。このまま待つのは辛いんですよね、はい。

 もうギブしようかな? しても別にいいよね? きっと大丈夫だろうさ。

 すぐそこにあるであろう地面を探り、パンパンと叩こうとした。

 んだけど、どうしてかまたもや地面ではない何かに触れてしまった。しかもなんかサラサラしてるんだけど。あと何か耳みたいなのがあるんだけど。

      

「んんんん…んんんんんんんんんんんんん!」

「くすぐったいです、やめてください」


どうしてそんなに声音が冷たいのでしょうか。僕が何をしたのでしょうか? いや、してますね。色々してますね。色々しすぎちゃってますね! そうですね、スンマセンでした!

 あっ、翻訳するのを忘れていた。『おい待て…なんか想像ついたんだけど!』です。そう、俺はもう想像がついているんですよ俺には。

 その正体はぁ! はい、ムーヤです。先ほどからあった腰の違和感は未だにくっついていたムーヤのものだったわけだ。ムーヤは確かに力が強いとは思っていたがまさかこれほどまでだったとは! という茶番をしておきつつ、またもや息が苦しいです。

 どうして今まで激しく動いていたのに俺から腕を放さなかったのだろうか。割と速かったはずなんだけど。ムーヤがどうなっているのか気になるのだがミーヤさんのせいでまるで見えない。視界が良好ではありません!

 師匠! 師匠? まあ、いいや。どうしてかこの状況でムーヤの頭を撫でているように見えるんですが。断じて違いますのですぐに離してくださいミーヤさん。あっ? ダメですか? そうですか分かりましたすいませんでした。

 いや、本当に気になるんだがムーヤ今どうなってんの?現在進行形で俺のこと掴んでるだけど。

 考えていると、多少こもってはいるが声が聞こえた。


「ふみゅ、みゅへ〜〜」

「ん? んんんんんんんんんんんんんんんんん?」

「だからくすぐったいです。やめてください」


ミーヤさん、どうしてそんなに冷たいんですか? もう少し態度を軟化させても良くないですか? ダメなんですか。

 ん? ちょっと待て。脳内再生してから思ったのだが、少し、ほんの少しだが態度が軟化した気がする! おお、これなら離してくれるかもしれない。さらには話を聞いてくれるかもしれない! よしよし、いいぞぉ!


「んん…んんんんんんん」

「……………………………」


あ、こりゃダメかな? やっぱり話を聞いてくれるところまでに入っていなかったか。

 タイミングは難しいな。もう無理、今すぐ帰りたい! えっ? どこにって? 知らないよ! 俺、今どこが居場所か分かんないもん! クッソ、早く家作りたいなぁ! 俺だって別に今日村の外に出るつもりなかったし! 一体どうして俺は外に出たんだこんちくしょーがぁ!

 家ができたらすぐにでもくつろぐんだ! 数日間は引きこもってやるぞ! あっ、まずいまずい。俺の生きがいが引きこもることになってしまっている。禁断症状が出始めている。危ない危ない。

 うぐっ! 息がっ! まずい、また苦しくなってきた。どうしようか、また元に戻ると思うがそれでも元に戻るまでは苦しんだよ。

 よしよし、戻った。これでまたしばらくは大丈夫だろう。ただそろそろ息苦しいのも終わりにしたい。『身体強化』も切れる頃だろう。ならば全力でぇ!


「んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!!」

「うわ! ちょ、ちょっと!」


よし、多少はどかせたぞ! このままぁ! やってやるぜぇぇ!

 引きこもり歴=生きてる時間−12の俺をなめるんじゃねょ! いや、ここまで本気で力を出したのは初めてだけどさ! 引きこもりナメるな! 火事場の馬鹿力を見せてくれるわぁ! ふんぬおおおおおおおぉぉぉ!

 心の中で相当でかい雄叫びをあげたにも関わらずミーヤさんは大して動いていないのだ! 俺が馬鹿みたいじゃないか! 確か龍人が出現したのが50年前! そして絶滅させられたのが30年前のはずだ! どうしてこんな馬鹿みたいな力で20年も生きていられたのが不思議で仕方ないよ!

 まあ、それは俺にも適応するけどさ、残念ながら。俺も不思議である。どうして今日まで生きていられたのかが分からない。おっさんも冒険者の中では相当強かったはずだ。なのにどうしてこうなるのだろうか。俺、別に戦闘してみたいわけじゃないのに。

 いいよ、もう鱗でも角でもなんでもあげるから俺に構わないでほしいぜ。(キリッ)

 そして頑張って頑張って頑張った結果、もう少しでシャバの空気が吸えそうである。フレーー! フレーー! おーーれーーーー! 頑張れーー! 頑張れーー! おーーれーーーー! あとちょっとなんだ! できればミーヤさん、力を少しでもいいから抑えてもらいたい。そしたらシャバの空気が吸えるから!

 急ではあるがやはり俺は神に見放されているのだろう。残りほんの少しというところで、無慈悲に頭の中に声が聞こえた。


『技能『身体強化』の効果時間が終了しました』


嘘やろ? もう一回言ってもいい、現実逃避のために。嘘やろ? ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょう! ウソダドンドコドーン!

 一気に今までの力が消え失せ、上に押し上げていたミーヤさんがのしかかるという表現はあれだが、そう表現していいほどに勢いよく俺にのっかった。

 げふ。痛い。あー、やばいわー。これは内出血したかもしれないわー。ひ弱な俺にのしかかるとかないわー。まあ、この喋り方は置いておいてとにかく言わせてくれ。どうにも先ほどまでのはミーヤさんが加減してくれていたようで息苦しいだけでそこまで重くはなかったが、今回はやばいです。もうなにこれ息できないんですけど。しかも異様に重いんですけど。俺はもう無理だ。


「んんんんんんんんん」

「あっ、あの、すいませんでした。でもこれはイフリートさんのせいですよね?」

「んんんんんんん」


いや本当に知らんがな。これは俺のせいなのだろうか?いや違うだろ。絶対俺のせいじゃないって。

 せめて胸どかしてよ。息ができないんだけど。まあさ、『自己再生』でどうにかなるはなるけどさ。それでも何度も言うようだけど辛くないのが一番じゃんか。はあ、普通に呼吸したい。どうしてこうも呼吸ができないのだろうか。俺が何をしたのだろうか。いいや、何もしていない。

 何気にこの言葉を言うのも数回目な気がするのだが、まあ別に気にしない。俺のせいじゃない。俺に理不尽を強いるこの世界が悪いのだ。そう、きっと俺のせいじゃないんだ。そういうわけなんで何度も言うようだけどもミーヤさん、どいてちょ。俺のことなんて置いていくんだ!

 またもや茶番をしてしまったが、とにかくどいて欲しいのだ、切実に。

 と思っていたらなぜかミーヤさんに退かれた。え、なして?


「だが、まあ、シャバの空気だぁ! めっちゃ久しぶりだぜぇ! あ、久しぶりに喋ったせいでちょっとむせた。ゲッホゲッホ!」

「あ、大丈夫ですか?」

「いや、あんたのせいだ。いや、本当にシャバの空気は最高だぜ。ちょっと後でヒャッハーしようかな。怒られないよね多分」

「懲りてないんですかそうですか、じゃあもう一回しますか?」

「丁重にお断りいたします! もうこんな経験はいらないです!」


え? 展開が美味しいって? お前! 『自己再生』様なかったら俺、死んでたぞ! 人の命を軽んじるんじゃないよ!

 そういえば話は変わるがムーヤどこいったよ。さっきまで腰にくっついてた気がしたんだが、見た感じいないな。とりあえず辺りを見回すがムーヤはもちろんの事、ムーヤに酷似する物体も発見できなかった。言い方がひどいのはちょっと多めに見て。一度言ってみたかっただけだから。

 今度は地面に足をつけて立って、見回してみたが特に見当たらなかった。

 辺りを見回していたせいでミーヤさんが勘付いたようで指でチョイチョイと下をさした。えっ、下? どゆこと?

 信じていないわけではないがさすがにバカじゃないの? と思いつつ思わず下を見た。

 すると、地面に落ちていた。まあ、違うんだけどそう表現したほうがいいだろうと思えるほどに見事に横たわっているムーヤがいた。見た感じではあるが寝ているようだ。

 感想を言ってもいいですか、いいですよね。えっ、そこで? なして? ここ砂あるぞ? 砂食ってないよね? 大丈夫だよね?


「あのぉー、ムーヤ大丈夫ですか、これは?」

「なんと言いますか幸せそうにしていたので。あとイフリートさんとも色々あったので終わるまでは大丈夫だと思いまして」

「うわー、はくじょー。これが妹に対する態度かー。参考にしよーっと」


棒読みは別にいいでしょうが。仕方ないです、はい。

 これは…ムーヤは大丈夫なのだろうか。一応家に寝かしておいた方がいいのではないだろうか。この地面、硬いし。

 どうにかするか?いや、どうにかしてもらうか! 他力本願とはいい言葉だ。人間楽した方がいいだろうが!

 そういうわけなので…


「あの…ムーヤどうにかしませんか?」

「いや、イフリートさんがどうにかしてください。寝てしまったのもイフリートさんがムーヤの頭を撫でたせいですからね?」

「え? そこを攻められても見えなかったせいで状況も把握できなかったので痛くも痒くもないんですが」

「うぐっ! でも原因はイフリートさんですから! イフリートさんが移動させてください!」

「はあ、了解です。あの…無理をしますので限界になったら呼ぶのでその時はお願いしますね?」


念のために釘を刺しておいたが、当然だと言わんばかりに勢い良く首肯された。なんというか、信用できん。この人何やかんやで途中でドジると思うのでやめておいてください。

 あっ、そうそう。そろそろ言っておいてもいいだろう。いつまでも居座られても迷惑だろうし。

 ビクビクしながら、座ってムーヤの頭を膝の上に乗せてから、ミーヤさんに聞いてみる。


「そういえば……ミーヤさん…」

「はい? なんですか?」

「ちょこーっと言いにくいんですけど……マルサさん、ムルサさんとのイチャイチャは終わりましたか?」

「ブフゥ! ゲッホゲホ! ゲホ! ゲフゲホ!」

「おお、めっちゃむせますね。大丈夫ですか?」

「ゲホゲホゲホ! あ、もう大丈夫です。それで? 一体どうしてそんなことを?」

「いや、そろそろマルサさんとムルサさんにこの前の冒険者の人を街に連れて戻ってもらわないと困るでしょ、猫人の人たちも」


周りを見てみると、なぜか見られた端から猫人の皆さんがコクコクと首を縦に振った。ふむ、急に話を振られて驚いたのだろうか、それとも守るべき対象に話しかけられて緊張したのだろうか?

 いや、さすがに後者はないだろう。俺はそこまで自惚れたりはしていない。前者なのだろうさ。

 おっと話がずれてしまった。とにかくミーヤさんからの返事を待った。ちなみに俺が言ったイチャイチャとは

 待った……のだがなぜかミーヤさんは顔を赤くするだけで返事が出ないのだ。負担がえぐいので今すぐにでもムーヤをどうにかしたいから、早く返事をしてほしんだが。

 困ったこの状態を壊すのはやはりこの人、ムーヤさん。


「うみゅ? ふみゃーー」

「うおっぐは! ビックルしたわー。起きたか、ミーヤ」

「にゅ!? お姉ちゃん!?」


目をこすりながら俺の膝から勢い良く飛び上がった。そしてなぜか知らんが、ムーヤは起きた直後にミーヤさんに何かを聞こうとしている。一体何を聞こうとしているのだろうか。

 はっ! まさか『ここまで近くにいるから殺してもいいよね』的な!?

 まずい、寒気が。どうしよう震えが止まりません。このままだとまずいと思い、ミーヤさんの方を向き思いなおせ! という熱い視線を送ろうとするが、時すでに遅し。ミーヤさんはムーヤのあの一言の問いに答えるように、実際そうだと思うがこくりと首肯した。

 ちょっと待ってくれよぉ! 俺が何したってんだよぉ! てか何する気?

 ミーヤさんの首肯を見ると、ムーヤは顔を明るくして俺の方を向いた。

 え? 何よ、俺の顔に何か付いてますか?

 確かめるために顔を触ろうとすると、その前にどうしてか知らないがムーヤが抱きついてきた。一瞬(多分)意識が飛んだがどうにか持ち直した。

 なぜ急に抱きついてきたんだ。少し心の準備をさせて欲しかったんだが。


「あの、どうして抱きつくんですか?」

「………このまま連れてって?」

「……いや、上目遣いでもダメですから。俺が子供苦手だって知ってるでしょうが! 離れて! とりあえず離れて!」


ふぅー、ブーたれながらも退いてくれた。とりあえず危機は去った。あのままではショック死するところだった。今までで一番近かったから一番焦ったぜ。どうしてこんなに近くまで来たのかは後で聞くとして……今は疲れたので寝たいです。いいですよね?

 あっ、そういえばグリモワールはどこに行ったのだろうか。はあ、探すか。面倒くさいけど。どうしてあいついなくなったんだよ。俺の夢遊病はそこまでひどいのか。後々めんどくさいんだからそういうことはしなくていんだけど。

 あっ、この際だ。気配の消し方とやらを試してみようじゃないか。魔力に似ているとか言ってたな。確か魔力の放出の仕方が押し出す、そして戻すときには引きずり込むイメージだったか。この世界での魔力と気配の扱いが同じならば魔力と同じように引きずり込むイメージをすれば龍人特有の垂れ流しになっている気配を多少は消すことができるだろう。魔力の扱いも多少は上手くなっておきたいしな。実験的な感じでするので猫人の方たちを驚かせてしまうかもしれない。一応今から魔力を使うと言っておこう。俺の身の安全のために大人しくしていてくれ。


「あの、ちょいと今から試したいことがあるので魔力使うかもしれませんけど驚かないでくださいね?」

「何する気ですか?」

「ちょっと起きた時に近くにいたやつにいろいろ聞いたんですよ。それを試してみようかと思いまして」

「まあ、大丈夫ですよ。皆さん、聞きましたね? 驚かないでくださいよー?」

「てかミーヤさん、返事してくださいよ。あとで情報吐くまでずっと聞き続けますからね? 分かってますか、聞き続けますからね?」

「はいはい、分かりましたから早くしてください」


チッ、上手く切り抜けやがった。あとで嫌になる程聞いてやるから覚悟しておいたほうがいいぞ! 悪役の捨て台詞みたいだな。今度もう一回言ってから『一度言ってみたかったんだー』とか言ってみようかな。さすがに多少はアレンジすると思うけど。

 とにかく今は集中だ。引きずり込むイメージだ。あの時と同じだ。猫人の村に初めて来た時に間違って魔力を全放出してしまった時を思い出せ。あの時もちゃんと魔力は元に戻せたじゃないか。引きずり込む引きずり込む引きずり込む引きずり込む。

 ………………どうにも実感がないが、気配は消えたのだろうか? 周りを見てみるが表情を見る限り変化はないようだ。

 ふーむ、やっぱり難しいな。地球という魔法や魔力の概念がない星で生きていた俺にはどうにも魔力の使い方が慣れない。どうにかしてイメージくらいは掴みたいものだ。

 まあ、そんな簡単にできるんなら転生者とかもうチーターすらも超えてるよね、うん。

 そんなことを考えつつ、もう一度気配を消そうと努力する、今日この頃だったりした。

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