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十四話 賑やかな飲み会

さーせん、投稿が遅れました。

 夏バテですかね。うん、夏バテですね。ずっと家でダラダラしてるだけですけどね!

さっき、あんなことを思った矢先だが、さっきも言った通り、居場所を作るための場所がない。

 爺さんと話し合わないといけないんだが、丁度いい機会が巡ってきたのだ。そう、マルサさんとムルサさん主催の飲み会だ。


現在、思いっきり飲み会が始まる直前なのだ。

 マルサさんとムルサさんが、店に配置した台の上で叫んだ。


「これより! 結婚を祝う会を開催しまーす!」

「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ‼︎‼︎」」」


うるせえ、もう夜だよ。帰って寝たいのに。男全員強制参加とかふざけてるって。

 店には言った通り、村にいるすべての男がいる。人口密度がここだけエグいことになって、チビの俺は揉みくちゃにされる他ない。


「痛い、痛! イタタタタタタタタ! 待って、俺いるよ!? 我ここにあり、ですよ!? 生かして! 俺を生かして! オビュ! オバババブブ!」


奇声をあげながら、押し潰された。

 本当にね、さっきちょっとね、ブチュって音がね、したんだ、うん。ガチで死ぬかと思いました。いや、下手したら本当に死んでいたかもしれない。

 まあ、いいだろ。どうせ『自己再生』で治るわけだし。てか、死んでたら生き返ったから不死身なのか?いいや、不死身ってことにしておこう。

 おっしゃい、不死身だぜ。なーはっはっはっは!

 はあ、やっぱり虚しい。

 さてと、爺さんは何処に。あっ、いた。マルサさんとムルサさんが率いている集団が飲んでいる机に座っている。

 よくあんな場所でしっかりと話せるな。俺には不可能だ。

 まあ、俺もあそこに行かないといけない状況なのだが。

 こっそりと近寄って、机にチョコンと座る。


「ああ、イフリート様。一昨日はすいませんでした。私の教育がなっていないばかりに」

「大丈夫ですよ。俺も鬱憤溜まってたんで、いい発散ができました。ありがとうございます」

「村長! こちらのかわいこちゃんはどなたですか!? 女性は入れていないはずですけど? ですけど!?」


誰この人、うう、口が酒臭い。俺は酔っ払ったりはしない、と思うけど。

 そんなことよりも肩を掴まれて動けない。どうしよう。

 というか、今でも俺のことを女だと思う人っているんだな。


「こちらは龍人のイフリート様だ。なぜ気づかない。まあ、女のような顔であることは否定できないが」

「うぅー、この顔をどうにかしたい。生前では可もなく不可もなくの顔だったのに、なんでこんな女とも取れる顔に」


普通が良いんだ。普通万歳! だから許して! 私に罪はないの! だから顔を戻して。お願い、新しい顔よー! とか言って顔を投げて、回転して顔交換するから!

 フゥー、フゥー、疲れた。いやー、テンパって国民的なアレを考えてしまった。


「可愛いから大丈夫ですよ。それよりも龍人様、俺と良いことしませんか?」

「良いこと、ですか?なんですか、それ? もしかして俺でも魔法が使えるようになる儀式とかですか!?」

「そうそう、そんな感じなんですよ。ですから、ね?」


なーんだ、嘘か。俺に嘘は通用しない! というわけで遠慮させていただく。


「やめておきます。そういえば俺、村長に話があってここに来たんですよ」

「チッ。まあ、いいか。それではまた今度」

「話ですか? 一体なんでしょうか。金を払え、などでしたらまた後日、払わせていただきます」

「あっ、そういうのじゃないです。いやですね、なんと言いますか…土地が欲しいんですよ。村長の権限で与えられる大きさでいいんですけど。というか無理なら無理と言っていただけるとありがたいです」

「土地…ですか。それはまた急ですね。理由をお聞きしても?」

「えぇと、簡単に言えば帰ることのできる場所が欲しいんですよ。俺、生前ではずっと家の自分の部屋に引きこもってたんですよ。引きこもるなんてここ3年は帰るなんてしたことなかったんですよ。でも、この世界ではそんなことしたくないんです。だから帰る場所が欲しいんです。帰れる場所が欲しいんです。

 俺はいつか一度生前の世界に行こうと思っています。ないと思いますが、あっちの世界に行って、帰りたくないと思うかもしれません。そんな時に帰る場所があれば、帰りたくないと思っても帰れると思うんですよ。なので居場所が欲しいんです。自分で作って、自分で住む。そんな場所が」


まとめようとしたが、長くなっちゃったな。まあ、こんなところだ。

 言いたいことは分かるだろう。俺が何をしたいかは分かるだろう。

 そう、俺は。


「まあ、言っちゃえば家が欲しいんです。作るのは自分でするので土地が欲しいんです。村長、そのための土地をいただきたいんです」

「クァー! いい話だ! 村長、彼女に土地をあげてください!」

「女じゃないですって。村長、拒否してもいいです。返事をください」


爺さんは、難しそうに顔をしかめた。

 難しい話なのは分かっている。拒否でいいさ。そっちの方が気が楽だ。変に言葉を濁されても、俺が嫌だ。


「……分かりました。明日、土地を一緒に観に行きましょう」

「…ありがとう、ございます!」


ここまで快く了承してくれるとは思わなかった。ありがてぇ。

 よし。よし! 今になって嬉しさがこみ上げてきた。

 これで俺は、居場所ができる。追い出されなくて済むんだ。きっと友達だってできる。もしかしたら学校にだって行けるかもしれない。調子が良くなって、年下に恐怖心を抱かなくなるかもしれない。失敗しても大丈夫だろう。家に帰って寝れば、次の日にはまた挑戦できる。

 おっと、浮かれすぎかもしれない。気持ちを落ち着かせろ。まだ土地をもらえるだけだ。家が出来るまでには時間がかかるはずだ。


「それではこの話については明日。今日はマルサとムルサを祝うための会です。飲みましょう、きっとその方が祝えますよ。ほら、イフリート様。どうぞ」

「あっ、大丈夫なんですか、未成年がお酒飲んでも?」

「みせいねん? なんですか、それは。この世界では12歳から酒飲めますよ?」

「そうなのか、この世界に未成年という概念はないのか? でも、12歳までは飲んじゃいけないという縛りがあるから未成年とは呼ばなくてもそういう決まりはある?」


なんか爺さんたちが変なものを見る目で俺を見ている。

 ああ、ブツブツ言ってたかからか。

 急に今座っている場所より離れた場所から、バタンッ! という音がした。

 何事かと、そこに注目が集まる。耳をすますと、足音が二つ聞こえた。一つはすぐそこ、もう一つは遠くだな。

 うーん、なんか二つだけなのがヒントになって誰なのか分かってしまう。


「いちゅりーとー!」

「おうふぉあ! ユルフワァ!」


またもや奇声を発して、今度は倒れる。

 こんな呼び方するのは、ムーヤしかいないです。

 死ぬ、死んじゃう。おうふ、もうこれ以上はだめだ。俺はもうだめだ。あとは頼んだぞ、いや誰か知らないけど。ガクッ。


「またいちゅりーと、しんだフリしてる。おきて!」

「ああ、申し訳ないです。いやー、まだ年下を相手にするのは無理なんですよね。てか、どうしてここにいるんですか、ムーヤ殿? ここは男しかいちゃいけねぇはず」

「どのー? なにそれー? えぇとね、おねえちゃんからにげてここ来た」

「なんか最後だけ発音がマシになった。成長を垣間見た気がする。よし、もっと成長なさい!」


というか、降りてください。俺につかまらないでください。死ぬよ? 俺、冗談抜きで死ぬよ? 嘘ついてないよ!? ミーヤさん、助けに来て! 角でも鱗でもなんでもあげるから!


「なんでムーヤちゃんがかわいこちゃんにくっついてるの?」

「ああ、おじさん! 助けて、お願い、本当に死期が早まるから助けてください! 様付けしますからぁ!」

「………はぁ、ムーヤ。イフリート様を困らせるな。私のところに来い」

「いやー! いちゅりーとと一緒がいい!」

「また発音が良くなったな。でもね、ムーヤ。村長の言うことは絶対だよ? 逆らったらダメなんだよ?」

「それでもいやー!」


なんでだよ。あのぉー、ミーヤさんはよ。本当に早く来てくれないと俺、酒飲んでないのに倒れるよ?

 よし、ヒーローを登場させやすいように心の中でだが、色々言ってやろう。

 ヒーロー登場。ヒーロー登場! そうすりゃあいつがやってくる! あ、あの人だった。訂正します。そうすりゃあの人がやってくる!


「コラァー! ムーヤ、どこまで行ってるの!」

「うおっっしゃああああああい! 来たぁぁぁぁぁ!」

「いちゅりーと、うるさい!」

「ごめんなさぁい!」


やったぞ、よく耐えた俺。

 ミーヤさん、早く連れてって! ムーヤを連れて行って! いやー、俺も邪魔者扱いするのは心苦しいけどね。でも仕方ない。無理なものは無理だから。克服しようと頑張ったことあるけど、どうしても治せないものってあるんだよ。あれだよ、不治の病って奴だよ。

 と、いうわけでお帰り願いまーす!


「ムーヤ、また今度な。また今度、遊…べる時があるかもしれないからその時はよろしくお願いします」

「うううー!」

「ほら、行くよ!」

「また明日ですー」


危険は去った。危機も去った。

 さあ、皆の者、もっと楽しもうではないか! あ、スンマセン、調子乗ってました。

 ミーヤさんがムーヤを引っ張って、俺から引き剥がしている。それでも、ムーヤの力が強いのか、それともミーヤさんが加減しているのか知らんが、全然離れない。

 つーか、危険去ってねぇ。夜更かしはダメだよ、背大きくならないよ? それでいいのか!? いいや、ダメだね!

 なんで俺はこんなにテンション高くなってんだよ。これが飲み会の空気か。ものすごいな。

 なあ、俺の体が死にそうなんだけどどうしてくれるの? 腰を掴むな! もげるよ、二つに!? 上半身と下半身の二つに真っ二つ直行だぜ!? もう無理だ。もう限界だ、死ぬね!


「離れてください! 俺の体が二つにもげるからぁ! あ、ああああああ! あああああぁぁぁぁぁぁぁ……」

「いやー! おねえちゃんが放して!」

「な、何を言いますか! ムーヤ、イフリートさんを困らせちゃいけないと昨日から口を酸っぱくして言ったでしょうが!」

「いいつけは守らないとダメでしょうがぁ! ムーヤ様、放してくださいぃぃぃぃ!」


もう無理だ。死にそう。というよりもう死ぬ。

 と思ったところで、ようやくミーヤさんがムーヤを俺から引き剥がすことに成功した。

 おまっ! やめろ、なんで俺の腕に掴まるんだよ! だから言ってんじゃんか! もげるって!

 皆さんの視線が痛いです。喚くなって? 無理だ。俺に年下に恐怖を抱くな、という方が無理な話だ。それは察しているはずなのにも関わらず、なぜにムーヤ様は俺にくっつくのでしょう。疑問で仕方ないです。

 腕が死ぬ。死んだ。もう感覚がない。

 あっ、ムーヤが持ち直した。あの腕に掴まっているだけの状態からよく持ち直したものだ。

 分かった。そのことに関しては褒めよう。賞賛に値する。しかしだ、なんで俺の膝に座るかなぁ!?


「ねえ、どかない? 俺、そろそろ限界だよ? 人間にはね、限界っていうものがあるんだ。分かってください!」


俺の話を聞いてくださぁい! 聞かずにミーヤさんがちょくちょく出してくる腕を俺の腕で払うな! 俺の腕を武器にするな!

 はあ、こいつ。まるで俺を相手にしていない。あっ、やめろ。どうして俺の腕を関節がないかのごとく、鞭のように扱う! 使わせてやっているんだ、もっと丁寧に扱え! いや、使わせるのがダメなんだろうけど。


「もう帰らせてくれ。俺はもう疲れた」


そう言ってだらりと腕の力を抜くと、なんか変な方向へ腕が曲がった。おい、折れたぞ。絶対に折れたぞ?いや、折れた。

 …………痛ってぇぇぇ! 何、これ、冗談でしょ!? 遠心力ぱねぇ!

 そして、変な方向に曲がった、もとい折れた腕がどこに向かったかというと、これまたおかしい方向へ。ムーヤの頭の上に乗った。叫びたくなった。

 俺は知っていた。年下に触られた方が症状としては控えめであることに。自分から触ったと自覚するや否や、狂気に支配され、挙句失神する。今回は狂気に支配されるまででどうにか抑えられたが、ここで叫んだりしたら俺の評価がガタ落ちだ。下手したら村から追放されたりするかもしれない。土地もらえることになったんぞ、そんなことには死んでもなりたくない。というわけで叫びそうになるだけだ。そういうことにしておこう。異世界だから、というのが症状を軽くしている可能性が無きにしも非ずだが。

 だが、これはチャンスだ。恐る恐るムーヤの方を向いてみる。俺の方を不思議そうに見ているだけだ。腕を上手く動かして、ムーヤの頭を撫でてみることにする。狂気感は痛みがどうにかしている。

 あ、動かすの意外に難しい。『自己再生』、まだ耐えろ。まだ治しちゃいけない。まだその時じゃない。


「うう……ううぅぅ」

「なんだ、その声は!?」

「いや、リラックスしている時の声ですね。これは…相当ですよ」

「あっ、そうなのか。なんか紛らわしいというかなんというか」


リラックスねぇ。頭撫でただけでそんな風になるとは。

 じゃあ、あれか。この声は、猫が喉鳴らした時のような声か。嫌だなー、俺、猫も嫌いだったし。今はそんなにだけど。

 あ、そろそろ無理だ。お、俺の中の『自己再生』が荒ぶる! ああー、治った。腕が治った。てか、ものすごく治り方が気持ち悪い。なんだろう、めっちゃ変な方向に曲がったりして、荒ぶりながら治っていった。蛇みたいで吐き気がした。俺は基本的に動物が嫌いだ。俺が好意的に接しようとしても、2メートルぐらいまで近づいたら、即座に逃げられる。

 治ったし、もう撫でなくてもいいか。治ったことで頭から腕、離れてるわけだし。


「ふにゅー」

「お、うおおおい! くっつくな、さらにくっつくな!」


撫で終わってもくっつくんじゃない! これ以上くっつかれたら、俺の限界は限界を越えるぞ!

 ほらぁ、冗談抜きで変なこと言い出してるじゃんか! 抱きつくんじゃない! 俺は限界を超えた限界を超越し、限界を越えるぞ!?

 はっ、さらに悪化しとるじゃんか! しかもそこはかとなく厨二病が混じってるよ! 俺はもう中三じゃい!

 もう帰りたい。おい、なんか寝息立てだしたぞ。もう一度言おうか? もう一度言おう! 寝息、立てだしたぞ!? スースーと寝息を立てていらっしゃいますぜ!


「お、おおおおおおおおおおぉ助けを! 誰か、ムーヤをどかしてください! お願いします、なんでもしますので!」

「分かりました。私が、どうにかします」


ミーヤさん、さすが! 俺、もうあんたのこと尊敬するわ。いえ、あなた様のことを尊敬いたします! 裏切ったりなどは絶対に致しません!

 ようやく…地獄から抜け出せる。そう思うと、一気に眠くなってきた。あれ? 俺、この世界に来て眠気なんて襲ってきたことなかったのに…なんで?

 答えを出す間もなく、意識が落ちた。







「ふうううぅぃぃ。こう言う強引な方法はあまり取りたくないのだが、今、この瞬間は運命が変わる可能性がある。そんなタイミングを逃すわけにはいかないからね。さて、と。猫人族の諸君、知りたいことはないかい? できる限りの情報を与えよう。君たちの中から、この体の主であるイフリートを守ってくれる人材ができることを祈るばかりだ。ん? なんだ、全員揃っていないじゃないか。村長は君かい?」

「は、はい!」

「では、村にいるすべての猫人を集めてくれ。5分後に…そうだな。少し待ちたまえ。……………そうだね、三日前に夕食を食べた場所で集合かな。それでは頼むよ」


そう言い放つと、イフリートの体を借りた何か、というよりも街での戦闘において顕現した序列1位『神種』は酒場から出て行こうとした直前に気付いた。ムーヤがひっついているせいで動けないことに。

 ムーヤは寝ている時、安心感を求めているせいか力を強める。そのせいで、イフリートは現在動けない。もがくがその努力は意味をなさない。

 その無様な姿を見たことを機に、ほとんどの猫人が安堵を混ぜた息を吐いた。

 『神種』は残虐である者もいるため、得体の知れない『神種』の出す空気、気配を察知した瞬間、ほとんどの猫人は息を詰めた。

 残虐、という評価は主に魔神のせいなのだが、しかし普通の『神種』でもそういう行動をとる者がいないわけではない。ゆえに息を詰めた。だが、二度目になるが無様な姿を晒したため、警戒心が失せた。

 今ではただの可愛らしい最弱、龍人だ。中身が最強であるだけで。




 それから五分、村長は説得に説得を重ね、家の中にいた女性陣を連れ出すことに成功した。しかし偉そうに座っているイフリートを見て、女性陣までもが絶句した。

 だが、微笑ましい光景を見たため、絶句の時間はそこまで長くなかった。ムーヤは未だにイフリートにくっついている。どんなに引っ張っても決して引きはがせなかった。


「さて。村長くん、これで全員かい?」

「は、はい! これでこの村にいる全ての猫人が揃いました」

「よし、それでは質問を受け付けよう。あわよくば君たちの中から彼を守る者が現れることを願いながらね」

「じ、じゃあ、俺からいいですか?」

「構わないよ。君は確かー、ああ、ムルサさん、だっけ?」


最初に名乗りを上げたのは新婚さんが一人、ムルサ・キャルトだ。

 人が知りたいことなどたかが知れていると思っていたイフリートだが、出て来た質問は予想を超えて、まともだった。


「先ほど言っていたイフリート様を守ってくれる人材、という発言。一人でも自分の身は自分で守れることを見ていたはずですよね?イフリート様が冒険者を退けていた、その瞬間を」

「ああ、確かに見ていたよ」

「ありがとうございます。それでもその言葉を言う、ということはイフリート様だけでは自分を守ることができない、ということですよね。その、イフリート様だけでは守れない『何か』というのは何なのでしょうか?」

「ほう、なかなか勘がいい。答えるが、その前に他の奴らの質問を聞いておいてもいいか? 長話になりそうだからな」

「構いません」


その言葉を聞いて、イフリートは他の猫人の質問に答えていった。しかし、質問としては他愛ないものばかりでイフリートは聞くたびに顔をしかめていた。

 例えば、「どうやったら結婚できますか?」や「神になることはできますか?」など。

 エトセトラエトセトラ。

 人が欲望の塊という『神種』の中の言い伝えはあながち間違いではないではないか、と思ったイフリートだった。人の運命を弄ることは『神種』の中では特殊な事例以外では禁止事項になっている。曖昧に返すことしか出来なかった。

 ようやくほとんどの質問が終了した。質問攻めにあったためか顔は心なしかやつれているように見えた。まあ、『自己再生』があるため、再生だの修復だのは瞬時に終了させるのだから、やつれているのはおかしいことだが。


「ふぅー、ようやく最初の質問のことを答えられる。さて、と。イフリート一人だけでは守れない『何か』の正体、だったかな? そうだねぇ、あまり多くは語れないのが、難点だね。彼の過去にも踏み込む行為になるしね。まあ、言ってしまえば彼には協力して欲しいんだよね、私たち『神種』に、ね」

「協力…ですか。『神種』に、龍人が協力、まるで想像がつきませんね。全貌を教えていただくこともできますか? 後、なぜ我々猫人からイフリート様を守る人材が生まれるのかも」

「楽しいくらいに、的を得て、しかも奥に踏み込んでくるね。君には言っておこうかな、ありふれた言葉だけども勇気と無謀は違うよ。私たちが君たちを一瞬で形も残さず消滅させられることを忘れないほうがいいだろう」


その言葉に警戒を強めた猫人だが、その後にイフリートが情けなく笑ったことで九死に一生を得た。

 そのまま攻撃を仕掛けようものなら、イフリートに先ほどの宣言通りに消滅されていたことだろう。


「協力の全貌か。まあ、文字通りの意味でしかないけどね。僕らの戦力として、戦場に出てもらいたいだけさ。いつになるかはわからないけどね。次に、猫人からイフリートの守護者が生まれる理由だね。これも、まあ…彼の過去が関係しているのだけど。

 まあまあそんな目で見ないでくれ。君たちにだってそういう場合はあるんだよ。『神種』以外は過去に何かしら関係があるんだって。現在には過去が伴うんだよ。

 でも、君たちが近くにいたから、というのも大きいかな?」

「……ありがとう、ございました」

「うんうん、礼儀は必要だね。さあ、私の今回の役目は終わりかな。じゃあ、猫人の皆さん、頑張ってね」


手をフレンドリーに振って、ガクンと俯いた。

 意識が薄れゆく中、『神種』は意識の中で眠るイフリートに小声で語りかけた。聞こえないと分かっていても。


『無理をさせてすまなかったね。この機会を逃すわけにはいかなかったんだ。お返しをしたくてね。次はいつになるかな? 楽しみだよ。さて、と』


頭に直接語りかけてくるような感覚に襲われた猫人は多くいた中の二人のみだった。ムルサとルナだ。

 まずはムルサに、


『君に話しかけたのは、いい質問をしたからとでも思ってくれ。君に教えたいことは一つだ。イフリート、私が先ほど憑依した彼の実力の程だよ。彼は神を殺すことができるんだ。それを知った上で生活することをお勧めするよ』


『ルナだったかな? 君に教えたいことはいくつかあるかな。まず一つ目、君が一番、守護者である可能性が高いことだ。だからと言ってかまけることはお勧めしないね。二つ目に君は『神の加護』を受けられる可能性がある。それもまたかまけることはお勧めしないよ。この助言は君が守護者になる可能性が一番高い、というだけだから、勘違いしないこと。これでもう本当に伝えることはなくなったかな。それでは、さようなら」






……何か、夢のような何かを見た気がした。

 湯を見ている間はとても温かかった。懐かしい感覚に襲われた。なんだったかな、小学生ぐらいの時に味わった感覚のような気がするんだけど、どうだったかなぁ。

 あんまり覚えてないや。寝てた時の感じと似てるかも。

 起きたら、ムーヤが目の前で不思議そうに首をかしげていた。


「………オッビャァァ!」

「ふにゃぁ!」


怖い怖い怖い。もう無理だって。

 夢を見ていたような気がしなくもないが、内容をほとんど覚えていないな。まあ、別にどうでもいいような内容だった気がするのだが。じゃあ、いっか!


「と、いうわけで離れていただくことはできませんか?」

「何が『というわけで』なのでなんですか?」

「ワオ! どこにいらっしゃいますか、ミーヤさん!? 気配を消すのはやめていただけませんか!?」

「悪いですが、無理です。ああ、ここです」

「ああ、そこでいらっしゃいましたか」


すぐそこにいた。

 起きよう。これ以上ここにいても死期が早まるだけだ。

 放してください、本当に死にますので。今日は起きた瞬間から、調子が少し悪いんですよ。

 昨日、何があった。ムーヤをミーヤさんが引き剥がしてくれるあたりまでは覚えてるんだけど。

 布団から抜け出して、階段を降りる。

 てか、ここ、ミーヤさんの家だったのか。今まで気づかなかった。寝ぼけてたのか。異世界来てから寝起きが悪いとかなかったんだけどな。

 階段を降りてから、外に出る。朝飯の匂いがなかったので、それまでの時間の暇つぶしに何かないかと思ったのだが、ミーヤさん宅から出てから、猫人の皆さんの視線が痛いんだが。

 俺、何かしたか? 酒で酔って変なことしたのか? でも酒飲んでないしな。ん? 酒飲んだのか?

 ムルサさん(多分)が近づいてきた。どうしたんだろうか、俺の奇行を教えてくれるのだろうか、本当に身に覚えがないのだが。


「どうかしましたか。ムルサ、さん?」

「あっ、はい。ムルサです。イフリート様に、失礼ながらお聞きしたいことがあるのです」

「なんでしょうか?」


良かった、俺は飲み会では奇行を行ったわけではないようだ。

 それ以外で何か聞かれるようなことをしたのだろうか?

 いや、していないはずだ。しているはずがない。


「イフリート様は現在、何レベルなのでしょうか?」

「はい? ああ、申し訳ない。最近難聴でしてね。もう一度行ってもらっても構いませんでしょうか?」

「難聴、ですか。それは大変ですね」

「いや、真面目に受けないでください。冗談です、現状を受け入れられないんです」

「はあ、ではもう一度言いましょう。イフリート様は現在、何レベルなのでしょうが?」

「れ、レレレェ………レベェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!?」


俺は聞いていないぞ!?

 オイオイ、おいおいおい! 知らなかったぞ。いや誰もそんなこと言ってくれなかったぞ!

 まさか、まさかまさかまさか………


「この世界は…レベル制、なのか?」


答えは出てこず、俺の疑問の言葉が虚しく四散した、気がした。

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