表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/175

百九話 能力検査

すいません、完璧に忘れてました。

元クラスの奴らが来て1日が経った。

 今日はとりあえず魔王様にこいつらのことを相談する。

 というわけで俺の学校もあるので、少し早めに朝食をとっているわけなのだが………女子はともかく男子から生気を感じねぇ。

 なにやら昨日男子が一人を除いで、問題を起こしたらしく女子たちに叱られたらしいのだ。そのせいだということは分かるのだが、いくらなんでもそんな死んでそうな顔をしないでほしい。


「なあリル。あいつら、大丈夫か?」

「大丈夫じゃないでしょうね。私でもやりすぎだと思うくらい叱ってましたので」

「それはお気の毒に……」

「今日はこの国のトップの方に会って、学校に入れないかイフリートさんが相談してくれます」

「えー、異世界来てまで学校に行かないと行けないのー? だるー」


中村とか呼ばれていた女子がそう言った。

 それは俺も思ったが、どうか諦めてくれ。


「はい、そんなこと言わないの。それが今のところ最善なんだから」

「はーい」


渋々とはいえ了承は得た。


「朝食を食べたら各自準備してください。と言っても、そこまで準備するものなどないと思いますが」


俺はそう言って席を立った。もう既に食べ終わっていたからだ。

 こいつらに素顔を見せるわけにもいかないので、来る前に食べておいた。

 さて、着替えるか。



   ↓



 というわけで街に着いた。

 時間が早いので、人はいない。あの行列もできていない。

 よし、狙い通りだ。この大人数で、あの行列を避けて移動するのはいくらなんでもちょっとな。


「ついてきてください」


歩いて魔王城に向かう。


「うわー、すごーい」


そんな声が聞こえてきた。

 まあ、そうだろうな。現代にはないTHE異世界って感じの街並みだからな。驚くのも無理はない。


「ねっ、犬耳だよ、あれ! 触りたーい」

「やめときなよ。怒られるよ」

「ちぇっ」


俺も転生して最初の頃は物珍しさから触りたかったが、今はもう慣れてしまった。


「こうしてみると、本当に異世界に来たんだなって実感しますね、先生」

「そうですね。人にはない特徴を持った人たちもいますし……」


ただの観光みたいになっていた。

 いや、正直その通りなんだけどさ。楽しそうならいいか。

 俺が無駄に気を遣う必要も、変なルールでこいつらにストレスを与える必要もないわけだしな。

 なんて考えているうちに王城に着いた。


「ここです、ちょっと待っててください」

「分かりました」


魔王様に相談してみよう、っていう話ではあったが、魔王様に連絡はしていない。

 完全アポなしである。

 俺は内心ドキドキしながら、門番の人に話しかけた。


「すいません、龍人のイフリートなんですけど………魔王様いますか?」

「魔王様ならいらっしゃいますよ。どうぞ」

「えぇと、それが………連れが30人ほどいるんですけど、大丈夫ですか?」

「30人? 別に構いませんよ」


寛大だった。

 俺は先生たちのところに行くと、大丈夫だったと説明して、王城の中に入った。

 そして誰かに魔王様のいる場所を聞こうと思ったところで、魔王様と会った。


「待っていたぞ、イフリート君」

「どうも」

「私に話があるのだろう? 良いだろう、と言いたいところだが、事情が事情だ。まずは王に挨拶だな」


うわー、王様にかぁ。

 絶対緊張するぞ、こいつら。特に先生。

 大丈夫かなぁ。


「ついて来い、異世界人よ」


もうこいつらが異世界から来たってこと知ってるし。

 情報網がすごいな。

 すぐに王様のところに連れて行かれる。

 あいつらも戸惑ってはいたが、ちゃんとついてきてくれた。


「よく来てくれた。異世界人たちよ。余はこの国の国王、エイス・グリードルである」


場が凍りついた。

 俺も初めて会った時は緊張したよ。伝えてないからあなたたちはもっと緊張してるだろうけど。


「お、おおおおおお………王様…」


先生、そんなに取り乱さなくても大丈夫ですよ、多分優しい人ですから。

 他の奴らもすごい困惑している。


「そして私がこの国を治める魔王だ」

「ま、魔王!?」


男子一人が叫んだ。

 まあ、そうなるよね。


「そうだが」

「な、何やってんだよ王様! 魔王だろ、倒さないと!」

「…………」


キョトンとした顔をする王様。


「イフリートよ。発言を許す」

「はい、なんでしょうか」

「この者たちは魔王のことを知らないのか?」

「そうですね、予備知識などはない状態でこちらの世界に来たようでして」

「なるほど……………くくく、なるほどなるほど……!」

「お、王様?」


なんでそんなに思いっきり笑ってるんだ?

 気味悪いからやめません?


「おい魔王よ、説明してやれ。余は笑いすぎて説明できん……くく」

「了解した。先ほども言った通り、私はこの国を治めている。もちろん独断ではなくこちらの国王と協力して、だ。これで分かるな?」

「じゃあ………魔王は悪い奴ではない、と?」

「その通り、此奴は国の統治に欠かせない存在である」

「お褒めに預かり光栄です」


今度は叫んでいた男子の方がキョトンとした。


「…………………………す、すいませんでした!」

「こ、この子も悪気があったわけじゃないので、どうか命だけはぁ!」

「構わぬ。余は寛大だ。その程度水に流そう」

「ありがとうございます!」


どうやらなんとかなったようだ。

 リルもいるし、いざとなれば逃すくらいのことはしようかと思ってたが、まあいざこざがない方が良いに決まってるか。


「さて、話を戻そう。イフリート君から話は聞いている」


いえ、言ってないです。

 というかこいつら以外に言った覚えないです。どうして知ってるんですか?

 気になるが、今は置いておくとしよう。


「学園に入りたいそうじゃないか」

「は、はい!」

「こちらとしては大歓迎だ! 異世界人が入れば、生徒にも良い刺激になるだろう!」

「そ、それでは…!」

「だが、一つ条件がある……」


あれ、今の流れはすんなり入れてくれる感じでは?

 ほら、先生が、話が違くない? っていう感じでこっちを見てくるぞ。

 そもそも魔王様に言ってないので俺は正直関係ないと言って差し支えないと思います。


「君たちの力を見せてもらいたい」

「魔王様、それはどういうことですか?」

「何、どんなことができるのか、それを把握できていた方がこちらとしても動きやすい」


どうせそれも知ってんだろぉ?

 そう思いつつも、俺はあいつらを見た。

 案外やる気だった。

 何やら能力を貰ったっていう話は聞いてたしな。試したかったのを我慢してたんだろう。俺も多分『自己再生』のような常時発動型の技能じゃなかったら、試したくてウズウズしていただろう。いや、別に『自己再生』じゃ嫌だ! というわけではない。そんなことは全くない。俺には勿体無いないくらい。


「………分かりました。彼らも乗り気のようですし。ただ、それを悪用しようものならこちらとしても考えがあります」

「ほう、君自身が動くのかい?」

「もちろんですが、それだけではすぐに対処されてしまうでしょう。リプロにも動いてもらいます」

「なるほど………分かった。悪用はしないと誓おう」


嘘はついていない。大丈夫、かな。

 というか俺今権力者みたいなことができた気がする。

 まあいいや。


「話はまとまったな。ではこの城の庭を貸そう。魔王、ついて行ってやれ」

「承知した。それではついてきてくれ」



   ↓



 庭に着いた。

 一人ずつ何ができるのかを見せてもらうことになった。

 トップバッターは……えっと、やばい。名前忘れた。頑張れ、思い出せ俺!


「網代 花凛、行きます!」


そうそう、それ。

 何やら格闘技か何かをやっていたようで、構えを取り、そして近くにあった手頃な木に正拳突きを放つ。

 先生には言われなかったが、どうせ異世界転移ボーナスで身体能力は向上しているだろう。

 だが、人間の力なわけだし木が折れるなんてことはないはず。

 そう思っていた俺の予想が粉々に打ち砕かれる。


「う、嘘……」


なんか本人も予想してなかったらしい。

 木が粉々になった。すごい音したぞ。


「えっと………別に言わなくてもいいですけど、どういう効果なんですか?」


気になったので聞いてみた。

 ただ殴ったようにしか見えなかったけど。


「『武を極める者』っていう固有技能? なんですけど………自分の肉体での攻撃は威力が10倍になって、攻撃の瞬間、衝撃波が出るそうです……………なんで無事だったんですか?」

「あ、あはははー」



『自己再生』は気持ち悪がられるかもしれないので、今は伏せておくことにしよう。

 固有技能だったのか、そりゃ強力だな。

 というかこの感じだと、全員固有技能を持ってそうだな。



   ↓



 予想は的中した。

 言ってくれない人もいたが、今までやってくれた人たちは皆、見た感じ強力な効果だったので固有技能だと思う。

 ただ、それステータスじゃない? という感じのを見せてくる人もいた。まあ、無理にとは言いませんので。


「綾っちー、頑張れー!」


おっ、綾っちさんだ。

 未だに名前は分からないけど、クラスの奴らの中で唯一知ってる人だから、ちょっと気になる。


「い、行きます……えっ、と…えい!」


ん? 特に何もしてないように見えるけど……。


「えっ、あ、違います! だ、誰か近づいてみてください!」

「は、はい」


試しに近づいてみる。

 あれ、これ以上進めない。見えない壁でもあるのか?

 『身体硬化』と『血への渇望』を発動させた状態で殴ってみるが、損傷の様子もない。どうやら相当硬いらしい。


「こういう能力です」

「なるほど…」


魔王様が何やら楽しそうな顔をしてそう言った。

 怖いんだが。


「とりあえず能力は分かったので、解除して大丈夫ですよ」

「は、はい………あ、あれ?」

「どうかしましたか?」

「か、解除できないです…」

「できない?」


発動はできたのに?

 どういうことだ、それじゃ使えないのと一緒だろ。


「ま、待っててください………え、えい!」


瞬間、何かが破裂した。

 え……?

 すぐそこにいた俺は破裂した何かの衝撃を直接浴びる。

 そして後ろへ吹っ飛んだ。


「がっはっ!」


最近吹っ飛ぶのが多い気がする。絶対気のせいじゃない。


「ご、ごめんなさい! 大丈夫ですか!?」

「お、お気になさらず」


どうせすぐ『自己再生』で治るので。


「何で? ちゃんと解除できるはずなのに……」

「まだ制御がうまく出来ないのかもしれないな。急に与えられた力、もう扱えている彼らは才能があった、ということだろう」


才能とかあったのか。

 俺の『自己再生』はそういうのないから、分からなかった。

 まあ、言われてみればそうだよな。急に腕がもう一本生えた、みたいな感覚かもしれない。戸惑うのも無理はない。


「い、イフリートさん、すいませんでした!」

「さっきも言いましたけど、お気になさらず。引かないで欲しいんですけど、私こういう能力を持ってまして。リル」

「いいんですか?」

「大丈夫」


リルに頼んで俺の腕を切断してもらう。

 もちろんクラスの奴らからは悲鳴とかが聞こえる。俺はもう慣れちゃったけど、普通はこうだよな。


「ちょっ、あれ! 生えてきてる!」

「さすがに嘘だろ………って本当だ、まじかよ!?」


まじなんです。

 クラスの奴らは、俺の腕が新しく生えてくるまで、グロかっただろうにちゃんと見てくれた。まあ多分好奇心とかあったんだと思う。


「と、まあこんな感じで」

「だから私の打撃も大丈夫だったんですか!?」

「そうですね。私、そこまで硬くないので…」


『自己再生』なかったら絶対死んでる。


「そうだったんですか………えっと、その」

「まあ気持ち悪いですよね。すいません、こんなの見せて」

「い、いえそういうわけでは!」

「大丈夫ですよ。さ、続きをどうぞ」


変な空気にして申し訳ない。

 とりあえず俺が続きを促したので、続きが始まった。


「ねえねえ、イフリートさん」

「うひゃぁ!」


急に知らない声が後ろから聞こえてきたので、俺は変な声が出た。

 くっ、恥ずかしい。気づかなかった、魔力感知しておけばよかった。

 というか誰だ?

 振り向くと、そこにはクラスの奴らの一人であろう女子がいた。まあ、名前も顔も覚えてないわけだが。


「質問してもいい?」

「別にいいですけど」

「合わせても、いい?」

「合わせる、ってなんですか?」

「んー、まあ私があなたを知る上でとても重要な事」

「そうなんですかー」


何言ってんだこいつ。

 よく分からないが、話は合わせておくか。


「私に害はないんですか?」

「もちろん」

「ならいいですよ」

「ありがとうございます」

「それで具体的には何をすればいいんですか?」

「そのまま立っててくれれば大丈夫だよ」

「じゃあどうぞ。私は他の人のを見てるので」


別に攻撃されても治るって、さっきので伝えてるし、なんか無茶するようなことはないだろ。

 そう思った直後、話しかけてきた女子が倒れた。

 視線は当然こっちに集まる。


「ちょっ、大丈夫ですか!?」

「大丈夫………」

「あ、合わせるってそんな危ないことだったんですか!?」

「ううん………多分あなたと私、そんなに相性が良くないんだと思う」


そんなストレートに言われても…………。

 ショックだ。

 話しかけられた段階で相当緊張しながら、それを表に出さないように頑張ったのに。


「イフリートさんって、凄いね」

「それは皮肉ですか?」

「違うよ。そうじゃなくて…………………………って意味」

「こら、矢羽々さん! イフリートさんに迷惑かけないの!」

「わー、委員長。やめてよー」

「すいませんでした!」

「あっ、いえいえ」

「またね。私、矢羽々 愛」


網代さんに引きずられながら連れて行かれた。

 不思議な人だったな、矢羽々さん。

 最近の地球の女子って全員あんな感じなんだろうか。


「これで全員の能力はだいたい分かった。さて、約束だ。君たちには我が国が誇るグリードル学園高等部に編入してもらおう」


不満の声が上がる。

 そりゃ異世界に来てまで学校なんて来たくないよな。


「おや、いいのかい? 特に男子諸君。この世界には魔法というものが存在する」


そう言って魔王様は実演してみせる。

 それに男子たちは見事に釣られていた。腐っても男子なんだなと実感した。俺もそうだったし。


「学園に入ればそう言った技術も教えられる」


その一言でほとんどの男子が誘惑に負けた。

 さすがは魔王様。


「そして女子諸君、君たちにはできれば男子たちが暴走しないようにする監視をしてもらいたい」

「えー、だる〜い」

「分かりました、任せてください!」

「ちょっ、委員長!?」

「うちのクラスの男子たちは何するか分かったもんじゃないもの! この世界の人たちに迷惑をかけるわけにはいかないわ!」

「委員長の悪い癖が出ちゃったー」

「こうなるともうどうしようもないよねー」


という感じで、女子たちも渋々引き受けた。


「それでは君たちに学園に入るにあたって必要なものを一式支給しよう」


こうしてクラスの奴らの編入が決まった。

 ふぅ、なんとかなったー。


「イフリートさん、本当にありがとうございました。子供達を保護してくれて」

「別に気にしなくで大丈夫ですよ。たまたま私の真上に落ちてきたところから始まった気まぐれみたいなものですから。というかお礼は言わないでください。彼らが学園に通う間、オノさんはどうするのかはまだ決まってないんですから」


むしろ学園にあいつらが入ると決まった以上、今一番の問題はそれだ。

 教師として働くのは無理だろう。多分教えられるのは地球の方のことだけだからな。


「そ、そうですね、どうしましょうか…………」

「そういえばオノさんにも技能は渡されてないんですか?」

「はっ、そういえば忘れてました! えぇっと……………確か……『慈愛之母』っていう固有技能ですけど…」

「『慈愛之母』? 今『慈愛之母』と言ったのか?」


魔王様が急にこっちに来た。

 どうしたんだ。


「そ、そうですけど、どうしたんですか?」

「『慈愛之母』は聖女が有する固有技能だ。どういうことだ………となれば今の聖女はどうなっている! 至急調べるんだ!」


せ、先生が聖女?

 冗談、のはずがないか。嘘をついてはいなかった。


「悪いがここで待っていてくれ。君の教え子たちはしっかりと学園に送り届ける」

「わ、分かりました」

「………なんか働き口見つかりそうですね」

「聖女とかいう大層な名前さえなければ喜びたいんですけど……」

「心中お察しします」


聖女様が出てくるとは……まさか先生が、なぁ。

 最後に波乱はあったものの、俺はクラスの奴らを学園に入れることには成功したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ