表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/175

百四話 生徒会

「残念ながら今副会長に興味はないの、退いてくれないかしら?」

「と、言われているが?」


ダメです、ダメです!

 この人にもう一度捕まったら、本当に死ぬ!

 首を全力で横に振った。


「本人はこうだが?」

「そりゃこの子の意志は特に聞いてないもの」

「それはどうかと思うのだが」


俺は二人が言い争っている間に、こっそりと逃げようとする。

 が、もう一人いた委員会の人に捕まった。


「逃げちゃダメっすよ。あなたのために先輩頑張ってるんですから。まあ、あの王女様がおっかないのは分かるっすけど」


逃がしてください、お願いします。


「はいはい、とりあえずもう少し待ちましょう。噂の龍人君」


俺のこと知ってるのか。

 まあ、委員会の人だし不思議はないか。

 が、捕まえるのをやめてくれ。どうせステータスの差でまず間違いなく逃げ切れないから。


「それにしても龍人君、男の子だって話でしたけど、なんでそんな女みたいな格好してるっすか?」


これには深いわけがありまして。出来れば気にしないでいただけると。

 朝起きたら女になっていて、放課後エミリーに捕まってドレスに着替えさせられた、なんて言えない。


「ねー、イフリート君。この先輩、面倒臭いんだけど」

「お前は二年生、俺は三年生だ。上下関係をだな…」

「ほら、面倒くさいでしょ? 立場的には私の方が上なのよ」

「そこで王女としての立場を引き合いに出すな」


エミリーの方が面倒臭いと思います。言わないけども。

 俺は今すぐにでも着替えて、寮に戻りたいのだが。

 許してくれないのか、許してくれないんだな。


「あー、なんとなく龍人君がどういう経緯でそうなったのか分かったっす。せんぱーい!」

「ん? なんだ?」

「たぶん悪いのは王女様の方なんで、先輩、このまま王女様引き止めておいてください」

「なっ、おい待て! 俺を置いていくな!」

「失礼しまーす」


委員会の人が俺をどこかへ連れて行く。

 どこ行くんだ?

 少し歩いて、連れて来られたのはどこかの部屋だった。


「ここは委員会室っす。まあ、特にこれといってすることがあるわけじゃないっすけどね」


委員会室………俺とは関わり合いのない部屋だな。

 じゃあ、帰りますね。助けてもらってありがとうございました。

 とりあえず着替えて、寮に戻ろう。ふて寝……はさすがにできないか。


「あー、ちょっと待つっすよ。そんなあっさりと帰ろうとしないでくださいっす。もう少しで来るっすから」


来る? 誰が?

 まあ、助けてもらったし、少しは待つか。

 待っていると、メガネ先輩が来た。


「酷い目にあった。もうあいつ絡みで頼るのはやめてくれ」

「そっすねー」

「お前は何もしていないだろうが!」

「先輩、うるさいっすよ。じゃあ、そろそろ本題入るっすね」

「誰のせいで叫ばなきゃいけないと思っているんだ!」


本題…………なんだろうか。

 俺なんかにわざわざ話すことなんてないと思うんだが。


「龍人君、君には生徒会に入って欲しいんっすよ」


せーとかい?

 俺に学校の顔である組織に入れと? あなたたちは知らないかもしれませんけど、僕はそんなことをする人ではないんですよ。やめてください。


「断固拒否する、みたいな顔してるっすね」

「だな。だが、あまり譲れないところではある」


なんでですか……とも聞けない。

 そろそろ、この話せない設定にも不便さを感じるようになってきたな。

 今の所変えないつもりではあるけど。


「理由としては、トーナメントでのお前の活躍を見られているからな。他の部から勧誘はいくらでも来るだろう。その前に生徒会に入れてイメージアップを図ろう、という話だ」


イメージアップ…………そんな物扱いされるのが一番嫌だな。

 というか、どんな理由であれ俺は生徒会には入れないですので。

 とにかく断ってしまおう。


「あれー、どしたのその可愛い子? もしかして……サウス、誘拐してきた?」

「そんなわけないだろうが!」


出入り口の方から明るめの女の声が聞こえてきた。

 メガネ先輩、サウスって名前してたんだ、なんてどうでもいいこと考えながら、声のした方を見る。

 すると、活発そうな顔した、目が痛くならない赤髪の年上っぽい女子がいた。

 これ……どう考えてもあれだよな。


「どうも、生徒会の会長やってます、メリアって言います。よろしく、龍人君。というかサウス、まだ勧誘しきれてないの? 使えないなー」

「勧誘しきれていないのは認めるが、使えないとはなんだ! お前が唐突にやれと言ってきたから急遽予定変えてやってやったんだろうが!」

「あー、サウスうるさーい。エリット、黙らせて」

「了解っす。はーい、先輩ちょっと黙るっすよ」

「離せエリット!」


サウス先輩、苦労しそうな性格というか、扱われ方してるな。

 俺には関係ないけど。


「というわけで龍人君。生徒会に入ってくれない?」


嫌です。

 俺はそういうの無理なので今回はご縁がなかったということで。


「入ってくれないの?」


上目遣いで見れてないぞ。

 俺の身長が低いと言っているのか。言っているんだな。

 なんと言われようとダメなものはダメなので。


「…………ダメかー」


長い沈黙はあったが、諦めてくれたようだ。良かった。


「じゃあ、最終手段だね」


ん? 待って、今最終手段って言った?

 …………聞き間違いかな。うん、きっとそうだ。


「エリット、サウス離して。サウス、今すぐ手配して」

「はいっす」

「任せろ」


手配ってなんだよ!

 一体何する気だ!


「じゃあ、今から生徒全員集めて、あなたが生徒会に入るって公言するから、その格好で出てきてね」


あなたは鬼ですか?

 いやいや、別に普段の装備だったら、まあ許容できる範囲内ではあるけど、いくらなんでもこの格好でってのは無理です。

 えっ、何? 生徒会ってこんなに怖い組織だったの?

 生徒の代表でもなんでもないんだけど! ただのど畜生なんだけど!

 まずい、マジでやる人の目だ。

 こ、こういう時は交渉で、少しでも負担を減らさなくては!

 紙はないのか!?


「おっと、龍人君がようやくやる気になったようだ。サウス、今すぐ紙を!」

「承知した」


なんだこの人たち……。

 まさかここまで予想していたのか!

 嘘だろ。俺としたことが、まさか嵌められるなんて!

 すぐにサウス先輩が紙を持ってきた。用意がいい。


『やめてください、何をしてでも学園に来なくなりますよ』

「えー、でもあなたが生徒会に入ってくれないから……」

『そもそもこっちは生徒会になんて入りたくないんですよ!』

「入って欲しい理由はもう言ってあるでしょ?」

『理由は分かりましたけど、俺には無理です』

「そんな可愛い服着た子が俺っていう一人称使ってるの面白いわね」

『茶化さないでください!』


俺は今すぐにでもやめたいよ、この服装!

 頑張って平静を保ってるけど、穴があったら今すぐにでも入りたいです。


『生徒会に入るのは確定事項なんですか?』

「そうね、そこだけは譲れないわ。絶対にね」

『そういうことでしたら、俺は生徒会に入るのは認めます』


正直すごく不服ではあるけれども。まあ、仕方ないことだ。

 生徒会を頼って時点で、こうなることを予想できなかった俺がダメなんだ。

 ここは諦めることにしよう。

 ただ、さすがに条件はつけさせてもらおう。


『なので公言がどうこうはやめてください。公言はどうぞ勝手にしてもらっていいんですけど、この格好では本当に嫌なので』

「もちろん! 生徒会に入ってくれるようなら、そんなことしないわ!」

『あと、もう一つ。できれば今すぐにでも僕の制服持ってきてください』

「サウス」

「…………はぁ、分かったよ、生徒会長」


はー、ありがとうサウス先輩。

 俺、生徒会にいるとき、先輩のことを頼りにし続けるよ!

 ん? 何やら生徒会長がサウス先輩に耳打ちで言っているが大丈夫だろ。心配はないな。


「ちょっと待っててね。すぐにサウスが戻ってくるから」


お願いします。早く戻ってきてください。

 少し待っていると、サウスが戻ってきた。しっかりと制服を持っている。良かった。


「持ってきたぞ」

「それじゃあ私たちは外に出てるから、着替えてね」

「失礼するっすー」


そうして、三人が生徒会室から出て行った。

 よーし、着替えるか。



   ↓



「着替え終わった?」


俺はそう言われて、扉の隙間から文を書いた紙を出す。

 内容は………


『着替え終わりましたけど、これはどうかと思うんです』

「どうかって……どういうこと?」

「着替えは終わったのだろう? なら入っていいだろう」


そう言ってサウスが生徒会室に入ってくる。

 おっ、おい、ちょっと待て!


「…………何!?」


俺は身を隠そうとしたが、間に合わなかった。

 そう、サウスが持ってきた制服は女子のだった。


『これは、嫌がらせですか?』

「ち、違!」

「サウスったら、そういう趣味だったの?」

「お前が指定したんだろうが!」


なるほど、生徒会長の仕業か。

 やってくれたな、この人。

 どうして今日はこんなに厄日なんだ。

 女になり、それがエミリーにバレてまた服着せられるし、しかも生徒会に半強制的に入れさせられ、しかも女子の制服を着させられるとは。

 もう今日より不幸な日はないかもしれない。


「まっ、大丈夫でしょう」

『全く大丈夫じゃないので、今すぐにでも男子用の制服を持ってきていただけないでしょうか』

「じゃあ、今度はエリットが持ってきなさい」

「了解っす」


よし、これでなんとかなりそうだな。

 女子の服を着るのはもうこりごりだ。これからはエミリーとの接し方にも細心の注意を払っていかねば。


「ねえ、それにしてもどうして喋ってくれないの? 会話ができないのって不便じゃない?」

『確かにそうですけど、別に会話するほど仲良い人いないですし』

「今まではそうだったかもしれないけど、これからは私たちがいるでしょう? 喋ってくれないかしら」


あなたたちを信用することはできないのですが。

 というか、今までのこと全部考慮してその結論なら頭おかしいんじゃないのか?

 心開けねぇよ、普通。


『無理です』

「そう、まあこれから少しずつ喋っていってもらうから、よろしくね」

「持ってきたっすよー」


エリット先輩……先輩だよな?

 この学園のほとんどの人が俺より背高いから、判別のしようがないんだけど。


「また外出てるから、早く着替えてね」


俺はそう言われて、技能も使って、即座に着替えた。


「終わったぽいわね。それじゃあ入るわよ」


今度はちゃんと男子用の制服だった。

 今度は変なこと企んでなくてよかった。

 体以外は普通に戻った……………いや、違うか。ローブもないし、仮面もつけてない。

 仮面とローブはなんとかなるとして、問題はやっぱり体が女になることか。月一であるって話だし、こればっかりは慣れていくしかないか。


「と、いうわけで。正式には明日になるけど、とりあえず言っておくわね。生徒会にようこそ、『龍人』イフリート君」


流されに流されて、俺は生徒会に入ることになった。



  →



場所は王城。

 相対するのは、『再現神』リプロと『強欲』の魔王。


「お初にお目にかかりますね、『神種』、それも『司神』が一柱、『再現神』リプロ様」

「仰々しい言葉遣いはいいよ、『強欲』の魔王」

「では、そのように。さて『再現神』、何を目的に顕現した?」

「イフリートを守るためだよ、君のように悪用しようとする下等な者がいるからね」


リプロから強烈な殺気が発せられる。

 が、それに怖気付く様子もなく『強欲』の魔王が続ける。


「それは失敬。こちらとしても彼を守ろうとした結果の行動なのだがね」

「嘘が下手だね。他国に存在を知らしめた時点で、それは危険に晒すのと一緒だよ。それが分からないほど頭が残念ではないでしょ?」

「だからこそ学園に入学してもらったのですが?」

「君なら分かっているでしょう? あの子はああいった場が嫌いなんだよ」

「過保護なものだ」

「私はあの子のためなら死んでもいい」


『強欲』の魔王はそれが聞きたかったと言わんばかりに、口角を吊り上げた。


「なるほど、『司神』にそう言わせるだけの力が彼にはあると。それを聞けただけでも今日は大収穫だ」

「ねえ『強欲』の魔王。まさか、あの子を操る、とかそんなこと考えている?」

「さあ、どうだろうな?」

「たかが序列3位が、今序列1位『神種』全てを敵に回す発言をした、とそう取っていいのかな?」

「………………」

「沈黙は肯定とみなす」


さらに圧倒的な威圧感。

 いくら『魔王種』でもこれを受けて、平成を保てるものなどいない。


「…………ぬ、っぐ! もちろん…考えては、いない。というか、そもそも通用しないのだろう?」

「もちろん。君のような無駄に頭のキレる面倒臭い奴への対策はちゃんとしているさ」

「知っている。だからこそ、ああしたのだ」

「そうね、それじゃあこっちの質問にも答えてもらおうかしら」

「………何なりと」

「あの子を使って何をしようとしているの?」

「何…………不死である『神種』には及ばないまでも、我々『魔王種』は不老。長い時を生きる上での暇つぶしだ」


リプロは即座に『強欲』の魔王の思考を再現。

 嘘ではないと分かると、威圧を解いた。


「っは! 分かっていただけたようで何よりだ」

「まだ信用したわけじゃない。せいぜい調子に乗りすぎないようね。あなたなんてその気になれば今すぐにでも殺せるってこと、忘れないで」

「肝に銘じよう」


そうしてリプロは王城を去っていった。

 張り詰めた空気は一瞬で消え失せる。


「ま、魔王様!」


秘書が心配して駆け寄るが、『強欲』の魔王はその心配をよそに笑い出した。


「ははは…………はははははははははははははははは!」

「魔王、様?」

「やはり一筋縄でいかないか。いや、分かっていたことだ」


『強欲』の魔王が考えるのはこれからのこと。

 自らが望む目的のため、必要なことを。


「『神種』への牽制、いやこれでは立場が逆か。だが、まあ良い。目的は達成できた。イフリート君の重要度も聞き出せた。推測通り、彼は『神種』にとって絶対に必要な鍵だ。それを確保できたのは大きいな」

「魔王様、大丈夫ですか?」

「気にするな。だが、これからは忙しくなる。気を引き締めて職務に臨め」


『強欲』の魔王が、間違いなく地上において一、二を争う動いてはいけない者が動き出す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ