表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/175

百話 迫り来る魔の手

学園に入学してから10日程が経った。

 毎日リルファーへの報告も欠かしていないし、ちゃんと授業も出てる。

 いたって普通の学園生活を送れていた。

 ついさっきまでは。

 現在授業も全て終わり、寮に戻ろうかと思っていた放課後。

 危惧していたことが起こった。


「おい、俺と戦えよ、『龍人』。入学した時から気に食わなかったんだ、お前」


えぇと、急になんなんだ。

 目の前にいるのは、俺とほぼ同じ特徴、ただし身長が低いとか髪が長いとか、そういうのはない。そしてもう少し龍に寄った体をしていた。そんな人だった。

 この人も龍人なのか? でも龍人は俺一人って話だし。俺が嘘吐かれてる可能性もあるけど。


「俺は『竜人』。デビット・ドラグルだ」


りゅう………じん?

 え、それは『龍人』でいいのか?

 俺が自己紹介のせいで困惑しているとデビットが、


「序列2位の『龍種』ではない。『竜種』の方だ」


いやいや、丁寧に説明されても口で言われたんなら分かんねぇよ。

 それでも理解できない俺に、デビットは、


「チッ! 頭の悪いやつだなぁ! ついてこい」


いや、本当に申し訳ない。

 ただ、マジで何言ってるのか分かんないから。

 デビットとは違うクラスで、連れてこられた場所はおそらくデビットのクラスの教室だろう。


「いいか、お前はこっち! 『龍人』! 俺はこっち! 『竜人』!」


あぁ、なるほど。

 俺としては最初からそうやって黒板に書いてもらいたかったね。

 よし、これでまずは一つ疑問解消。

 そしてついでだ。この黒板使って他の疑問を聞いてみよう。


『戦うってどういうことですか?』

「お前、この学園の画期的なシステムを知らないのか!?」

『知りません』

「チッ! 本当にダメな野郎だな! 仕方ない、説明してやろう。この学園では決闘ができるんだよ、指名した相手と。双方の同意があって、だがな」

『じゃあ、できないじゃないですか』

「断るなよ!」

『できるなら戦いたくないんですが』

「戦え!」


なんだろうこいつ。

 いじりがいのあるやつだな。

 おそらくその決闘を申し込むための受付に連れて行かれた。強引にしないと俺が話に応じないと察したようだ。


「ほら、同意してもらうからな」

「ああ、決闘の申し込みですか? 今は無理なんですよ、調整中で」

「は?」


係の人も生徒だったが、あんまり事情を聞いていないようで、困ったような顔をしていた。

 よし、とりあえず決闘するという話は無くなったわけだ。


「ど、どうにかならないのか!?」

「どうにも。すいませんが、違う日にお願いします」

「………分かった」


どう頑張っても無理らしい。

 ふっ、どうやら俺は今日運がいいようだ。

 このままデビットには諦めてもらおう。

 と言っても、俺は今思ってることを言う手段がないから教室にでも戻った時に。


「運が良かったな。今日のところは見逃してやる。次決闘ができるとなったら今度こそ俺と戦え」


確かに運は良かった。

 でも次はない方がいいかな。

 さっきの言葉は本当だったみたいで、デビットは去って行った。

 嵐のようなやつだった。もう二度と上陸しないでもらいたい。

 とりあえずこれでもうこの校舎でするべきことはない。俺は早い事帰ろう。

 そう思って、出された課題とか取りに教室に戻ると、ルナとリエルがいた。

 どうしたんだ。なんか困ったことでもあったのか。


「あぁ、イフリートさん。お久しぶりです」

「ちょっと話が」


話? 一体何の?

 お前ら二年生だろ。俺を頼るようなことにならないだろう。


「イフリートを話題に挙げてくる同級生がいる」

「毎日のように話しかけてきて大変なんです!」

「イフリートに会わせて欲しいとか、そんなことずっと言ってくる」


誰だ? 俺のこと知ってる二年生っていないと思うけどな。


「王女様らしいんです!」


あー、なるほど。

 あの王女様か。面倒臭いな。

 俺は教室に入るように手招きすると、黒板に文字を書く。


『俺とは無関係とか言って大丈夫』

「うるさくてイフリートさんと関係してるってことは言っちゃいました」

『言っちゃったのかぁ』

「すいません」

『いや、別に大丈夫。俺との関係性も多少なり言っちゃったとなると仕方ないか。明日内容を聞いてきて。内容によっては俺が行くよ』

「ありがとうございます」

「ありがとう」


はぁ、確実に明日が楽しくなくなった。

 今日はとぼとぼ寮に戻った。



   ↓



 あー、今日はもう学校行きたくないなぁ。

 わざわざ俺の名前出すくらいだし、絶対内容も俺に関係することだよ。

 嫌な気持ちのまま昼休みになると、ルナとリエルがやってきた。


「イフリートさーん!」


そんなでかい声出すな!

 俺は急いでルナとリエルのところに行く。


「イフリート。王女様が呼んでる」


そうだろうな。

 仕方ない、行くか。

 と思っていると、


「あっ、おーい! イフリート君!」


げっ、最悪だ。

 って逃げちゃダメなのか。危ない危ない。


「イフリート君! 君に幾つか報告があって。何度も会おうとしたんだけど、中々会えなくて」


まあ、そりゃ急に俺の名前出したら、ルナもリエルも警戒するわな。

 そして、そうまくし立てられても俺は今話せない設定だから、ここで答えられないんだが。

 紙とかないかな。


「イフリート君、とりあえずこっち来て!」


あー、こういう状況にはこの前にもなったな。

 手を掴まれて引っ張って連れて行かれる。


「到着よ。あら、残りの二人もついてきちゃったの」

「イフリートの護衛役、だから」

「気になったので」

「まあいいわ。入って」


言われるがままに入ってみると、服が大量に飾られた空間が広がっていた。

 おい、これもしかして。


「ここは私が所属している部活、手芸部よ。といっても私服以外作ってないけど」

「ここ、服しかない」

「他にも手芸部用な部屋はあって、ここは服専用の部屋よ」


他にも専用の部屋あるのか。すごいな、この学園。

 というかこんなところに連れてきて、一体何をさせるつもりなんだ?


「さて、イフリート君に幾つか報告をしなくちゃね」


別にいいけど、わざわざここまで来てするような話でもないだろ。

 ということはここに連れてきた理由は他にあるということだ。

 うわー、嫌な予感しかしない。


「まず、私友達できたわ!」


はぁ、それは良かったですね。

 といっても俺が素直に祝福すると思っているなら大間違いだがな。

 チッ、もうできたのか。


「あなたの助言を活かして頑張ったら、案外なんとかなったわ。簡単だったわね、思ったより」


助言しなきゃ良かった。


「ふふん、あなたの言った通り、私だからできたわ」


それは良かったですね。

 はぁ、やっぱり助言するんじゃなかった。うざい、この人。


「あともう一つ、今からあなたに私の作った服を着てもらいます」


俺は一旦エミリー王女を止めると、辺りを見回し、他の人がいないことを確認した上で、俺は叫んだ。


「それは報告とは言わねぇ!」

「確かにそうね。まあ、とりあえず着て頂戴。この前みたいに」

「うお、お前バカ!」


こいつ、サラッと言いやがった。

 今ルナとリエルがいるんだよ。そして、この二人には俺がお前に女物の服着せられたって話はしてない。

 つまり、今お前がそれを言ったから、この二人には秘密がバレたということだ!

 最悪だ………本当に。


「イフリート、前みたいにって?」

「あー、それは…………その」

「もしかしてイフリートさん。お城に行った時にこの王女様に服着せられたんですか?」

「い、いや、そんなことは……」

「そうよ、私が着させたの」

「ねぇ、王女様。お願いなんだけど、ちょっと黙ってくれません?」


今俺が必死にごまかそうとしてましたよね?

 なんでそこで、何事もなく事実ぶち込んでくるの? あんた鬼なの? 鬼だよね。


「お断りよ! まずは制服から脱がせましょうか!」

「嫌だぁ!」

「この前と同じようなこと言わないの!」


そんなこと言われても嫌なものは嫌だから。俺は男だから。

 が、抵抗あえなく俺は制服を脱がされた。うぅ、俺の男としての尊厳はないのか? ないんだろうな。


「さて、じゃあ最初はこれから着てもらいましょうか」


俺は全力で首を横に振る。

 いやだ、そんなフリフリいっぱいついてるやつなんて。男が着る服じゃない。

 ルナもリエルもなんか言ってやってくれ。


「楽しそう」

「え!? ちょっと!?」

「確かに楽しそうです、私も協力します王女様!」

「待って! 一回落ち着こう!?」

「イフリート君、そういうことだから。諦めて」

「うわあああああっ!」


着せられた。

 ああ、もうやめてくれ。


「ふーむ、ねぇイフリート君。その仮面外してくれない?」

「これだけは嫌だ! 絶対に嫌だ!」

「でもその仮面、服と合ってないのよ」

「あなた、俺に恩を感じてるならやめろよ!」

「それとこれは話が別よ」

「別じゃないだろ!」


エミリーは俺が被っている仮面に手をかけ、強引に外そうとしてくる。

 残念だったな、この仮面は簡単には外れないし、壊れない。諦めるんだな。


「は、外れない!? どうなってるの、この仮面!」

「特別製だ! 外れるものか!」

「無理やりにでも!」

「やめろ、放送できなくなるだろうが!」

「ほーそー、ってなによ!」


俺の顔から仮面を取ろうとしたら、皮膚が千切れてすごいグロい絵が完成する。

 が、特に構わずに俺から仮面を取った。嘘だろこの王女。馬鹿力すぎるだろ、ゴリラか何かか?


「よし取れた! ってキャア! なんでそんな血出てるのよ!?」

「あのね、あなたが強引に仮面取ったからだよ?」

「グロいわね。まあいいわ。すぐ治るんでしょう?」

「まあ治りますけど……」


今までよりも再生速度は遅いんだよ。

 ルナとリエルは何も言わずに傍観してるし。


「よし、傷も治ったし立って頂戴。似合ってるか確認しなくちゃ」

「はあぁ、分かりました。もう諦めますよ」


俺は立ち上がった。

 はぁ、全く。どうしてこんな格好を俺がしているのか…………もうこれで三回目だぞ。


「ふむふむ、やっぱり似合ってるわね。正直何でも合うんじゃない?」

「そんなわけないでしょ」

「もっと過激なのも着させた方が良いかしら?」

「それだけは本当に嫌だ!」

「うん! その恥ずかしがる顔が一番ね!」


くぅぅ、どうしてこの人は俺にこうも羞恥で襲うのか!

 俺はなんとか仮面を取り返そうとするが、エミリーは仮面を素早くルナに渡し、まず間違いなく取られないようにした。

 チッ、これじゃどうしようもないな。


「それじゃあこの格好のまま校舎内を歩いてみましょうか」

「さすがにそれは嫌だわ!」


こんな格好で、しかも仮面もつけずに校舎内歩くような肝の据わった奴じゃないから、俺。

 本当にそれだけは拒否させてもらおう!


「悪いけど………俺はそういう趣味ないから!」


『血への渇望』と『身体強化』を使って、全力で逃亡を図る。まあ、部屋からは出ないんだが。

 頼む、ルナもリエルも阻止しようとしないでくれ。


「残念ながら………私からは逃げられないわよ!」

「うおっとぉ!」


もう追いつかれるとは! 俺は方向転換を試みて、上手くいかずエミリーの胸に飛び込んだ。


「ちょっと! どうしたの急に」


あ…………………やばい。

 女子への耐性が無さすぎて動けない。


「イフリート君!? 大丈夫!?」

「だ、大丈夫……ご、ごめんなさい」


そう言って、なんとか力を振り絞ってエミリーから離れると、そのまま床に倒れようとして、今度はリエルにぶつかった。

 見れば、胸らしい。

 あ、あぁぁぁ………あ。


「ちょっ、イフリートさん!? 大丈夫ですか!?」


ごめん、答える力も残ってない。

 俺は意識を手放した。



   ↓



 目覚めると、リエルの顔があった。


「えっ、なにどうなってるの!?」

「あ痛っ!」


勢いよく体を起こしたら、リエルと顔ぶつけた。

 思いっきり頭を抱えて悶絶する。

 痛みが収まってから、周りを見ると少し見覚えがある部屋にいた。

 ここは……寮か?


「ここどこ?」

「女子寮ですけど」

「帰ります」

「まあまあ、倒れてから着替えさせてここに連れてきて今に至るのでもう少しありがたがってくれても………ってなんで項垂れてるんですか?」


嘘だろ、着替えさせてもらったのか?

 もう完璧に俺の男としての尊厳は消え失せた。全くもってなしだ。

 俺はこれからどう生きていけばいいんだ……?

ついに百話です! まあ、内容がアレですが。

 とりあえずこれからも宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ