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九十九話 初授業2

結局あれはホームルームだった。


『そのまま続けて一時間目するからなぁ。イフリートは着替えてこい』


と言われ、そういうことなら着替えてこいって言えよ! と思ったのは心のうちにしまっておこう。

 急いで教室に運動着取りに戻った。

 ちなみに運動着も制服と同じように、着るとサイズが合うものだ。

 ローブと仮面はつけっぱなしで一時間目に向かう。

 特に問題はない。

 いや、あった。俺のステータスのせいで足が遅いことと、第二運動場まで遠いことだ。

 急げ俺、頑張れ。



   ↓



 な、なんとか間に合った、か?


「よーし、全員揃ったし始めるかぁ」


ぐっ、俺が待たせていたらしい。申し訳ない。


「二人一組になれ。んで、俺の相手はクラウス、お前だ」

「はい」

「迅速に組めよ」


俺の相手は………っと。

 ……………………………………まあ、いるわけないよね!


「イフリート組もうぜ!」


フィンレー、お前やっぱ良いやつだよ!

 と、組んだはいいが、二人一組で一体何するんだ?


「とりあえず全員組手な。知ってるよな? この国のやつだぞ。始め」


えっ、何それ俺知らないんだけど。

 く、組手? ど、どうしようか。

 俺は素早く周りを見回し、組手を観察。すぐに再現する。


「さすがにこれはお前でも知ってたか。一般常識だもんな」


あっぶねぇ。

 俺にしか被害が及ばないなら、喜んでレイ先生に聞くんだが、フィンレーにも迷惑がかかるかもとなると、そういうわけにもいかない。

 と思って安心したのも束の間。問題が発覚。

 と、届かない。俺の位置からフィンレーまで腕が届かない。

 迷惑バリバリかかってんじゃねぇか。くそ、体の小ささが邪魔する。


「だ、大丈夫かイフリート。お前、仮面の下の表情が必死なのが伝わってくるんだが」


も、問題ない。今から急激に成長するとか、腕だけ伸びるとか、そう言ったご都合展開を起こしてやる。

 伸ばしていた右腕に引き千切れんばかりの力を込める。

 何やら異変が。おっ、もしや腕が伸びたのか!


「イフリート、お前、それ、大丈夫じゃないだろ」


その通りだった。

 力の入れすぎか、右腕の肘関節が脱臼していた。腕がダラーンと垂れている。

 ちょっと引き際を誤ったか。


「せ、先生! イフリートが!」

「あぁ、何だよ。もう問題起こしたのか? ってうわ」


俺のブランブランしている右腕を見てレイ先生がちょっと引いたような反応をする。


「うえぇ、何したら肘脱臼するんだよ。ま、ほっといてもいいか」

「ちょっ! 先生、ほっとかないでくださいよ!」

「お前、イフリートが何者か忘れたのか?」

「あっ」

「再生者だぞ。医務室に連れて行くまでもなく勝手に治ってる」


もう再生は始まっている。ほとんど治ってるんじゃないかな。

 というわけなので、俺はこうして元どおりである。


「そうだった………忘れてたぁ」


そこまで心配させていたとなると申し訳ない。俺、自滅しただけなんだけどな。

 これからはこういうことがないように気をつけたいと思います。

 まあ、組手に関しては未だできないだけわけだけど。


「イフリートは体が他の奴らに比べて小さいから組手できないのか」

「まあ、そうですね。今の怪我もその辺りをどうにかしようとした結果です」

「馬鹿かよ。チッ、どうしたもんか」

「先生、それなら俺がフィンレー君と組みましょうか?」

「とりあえずそうしとくか。よし、イフリートは俺とな」


マジか、先生とかよ。

 指導者だからいい感じに相手してくれるんだろうけど、俺はフィンレーとやったほうが気が楽だったなぁ。迷惑はかかってたけど。

 そんなわけでレイ先生とすることになったわけだが。


「うーん、お前とりあえず一回組手やってみ」


なんか意図の分からないことを言われた。

 大体できてたと思うが。

 まあいいか。とりあえずやってみる。

 すると、すぐにレイ先生が止めた。


「ダメだわ、それじゃあ。本当にド素人だったんだな」


はい、その通りです。

 余すところなく全て真摯に受け止めたいと思います。

 ド素人であることを否定できないからな。


「お前どうせ組手も本当は知らなかったんだろ? んで、即興で他のやつ見て覚えた、ってところか?」


すげぇ、この人よく分かるな。


「よく分かるな、なんて思ってんだろ。はぁ、いいか? お前、できてる気になってそうだが、正直ほとんどできてない。形だけだ。本質も見抜けないような間抜けだったとは。チッ、俺の目も腐ったか」


ど、どういうことだ?

 形だけ? 本質?

 決まった動作すること以外になんか目的があるのか?


「全く分からん、って顔してんだろ。とりあえずその形だけの組手一人でやりながら、他の奴らのこと見てろ」


そう言って、レイ先生は他の生徒の方へ行ってしまった。

 えっ、俺放置!? 嘘だろ!?

 他の生徒を見てろ、と言われたが、どういった意味が…………えぇい、仕方ない。ここはもしかしたら『考えるな、感じろ』っていうところなのかもしれん。

 とりあえず観察だ。



   ↓



 特に何も分からないまま一時間目終了。

 何の成果も得られなかった。レイ先生もそれを察したのか、ダメな奴を見る目で俺を見てきていた。

 今は着替え終わって、一度教室に戻ってきたところだ。

 後で貼っとくと言われていた序列はまだ貼り出されていない。

 となるともう二時間目の準備するか。今回も他の奴らについていけば大丈夫だろ。


「あなたはここではないでしょう。シッシ!」


追い出された。

 おかしいな、他の奴らについていけばなんとかなると思ってたんだが。

 二時間目は確か魔法学……………ああ、なるほど。俺魔法使えなかったな。

 どうするんだよ。魔法学の授業で魔法使えない奴がいても意味ないだろと追い出されたら、俺はこの二時間目をどうやって過ごせばいいんだよ。


「あ? お前、イフリート。何してんだよ。もう二時間目始まるぞ」


レイ先生が偶然通りかかった。

 ナイスタイミングだよ、先生。それがさ、二時間目の魔法学の授業追い出されたんだよ!

 と口で言えたらどんなに楽か。俺は身振り手振りで伝える他ない。

 すぐに伝えられる方法はないかと考えて、俺は時間割を見せた。


「なんだよ急に。二時間目は魔法学だろ、それくらい分かってる……ってなるほど。そういや言ってなかったな、ホームルーム中に。悪い悪い。お前は魔術学の方だ。隣の教室空いてるだろ、そっち」


言い忘れてたのかよ!

 あんたのせいで魔法学の先生にすごい顔されたんだぞ!

 俺は先ほど追い出された魔法学の教室の隣の教室へ向かう。

 そして扉を開けると、そこには…………………そこには………………教師以外、誰一人いない光景が広がっていた。


「ちなみに魔術学はお前以外受けてないから。良かったな、先生独り占めだぞ。この幸せ者め」


えぇ、うっそぉ。

 レイ先生はもう遠くへ行ってしまっている。

 俺は覚悟を決めて、教室の中へ入った。


「あっ、どうも。魔術学を担当しています、レイラ・アトソンです。ど、どうぞよろしく」


なんだろう、とっても失礼なんだけど、すごい暗そう。髪は長い上にボサボサで、正直顔がよく見えない。色もよく分からないが、多分暗めの茶色。髪の隙間から覗く黒っぽい色した目はちょっと怖い。

 俺はファッションとかよく分からないが、よく分からない俺でもその服装はどうなんだろうっていうくらいに暗い服ばっかり着ている。

 俺はお辞儀で返しながら、内心困っていた。

 うーん、ここは俺も喋るべきなんだろうか。人がたくさんいるならいざ知らず、一対一の状況でコミュニケーションとらないのは……………気が引けるっていうより授業が成り立たなくなる気が。


「ひ、久しぶりの授業で気分は上がってます」


それで?

 ま、まあ、感情の表現の仕方は人それぞれだしな。


「な、なんとなく事情も聞いています。信頼できるまでは話さなくても大丈夫、です。一対一ですし、筆談で構いません。それじゃあ、始めましょう」


情報源は魔王様か。

 あの人見てるのか知らないが、俺が喋らないことを知ってるのか。

 まあ、筆談でもいいとの許可も得たし、甘えさせてもらおう。


「さあ、ここに座ってください」


えぇ、教卓挟んで先生の向かい側ですか。

 まあ、仮面してるし大丈夫か。


「まず魔術がどういうものか、説明できますか?」

『魔法と違い適正属性、適正率に関係なく使えるもの。代わりに使う魔術を細部まで細かく考える必要がある。考えるほど威力は上がる。使ってる人は少なめ』

「最後の一言が刺さりますが、その通りです。魔法に比べ、あまりに細かく考えないといけないことを除けば、魔法より使いやすいんですけどね。適正属性とか適正率とか関係ありませんし」


イメージする辺りを除いちゃダメだろ。魔術が使われてない理由の9割を省いてるんだが。


「イフリート君は魔法が使えないから魔術を使っているんですよね」

『そうです』

「私は魔法より魔術の方が面白そうだったからです」


そんな理由かよ。

 というか今の感じからして、この人魔法使えるじゃねぇか。


「魔法に比べ謎が多いんですよ、魔術は。なぜ魔法と違い考える必要があるのか。だというのに考えるほど威力が上がるのが共通なのは何故なのか。他にもいろんな謎があるんですよ、魔術には。私はそこに惹かれました」

『楽しそうですね』

「はっ、すいません! 一人で話してしまいました」

『でも確かに、どうして考えないと使えないのかは気になります』

「そうですよね!」

『魔術しか使えない自分からすると面倒極まりないので。仕組みを解いて魔法のようにできるのならそうしたいです』

「な、なるほど。そういう意見もあるのですか。今まで魔術しか使えない人に会ったことはなかったので、その方向からの意見は新鮮です」


この人、魔術について話が始まった瞬間に、会った時と印象がガラッと変わったな。

 暗いなんて思ったのが消し飛びそう。


「………………すいません。授業は一旦置いておいて質問をしてもいいでしょうか。その観点からの意見をもっと取り入れたくなりました」


あぁ、熱心な研究者ってこんな感じなんだろうな。


『別にいいですけど、授業しなくていいんですか?』

「どうせ魔術学の進みなんて誰も気にしてません」


そりゃそうか。生徒俺一人だもんな。


「じゃ、じゃあ一つ目です。魔術はどのくらい正確に想像していますか?」


こ、答えにくい。

 自分の思考を上手いこと相手に伝えるのってとんでもなくハードル高いと思うんだが。

 仕方ない。分かりやすい方法を取らせてもらおう。


『ちょっと待っててください』

「待ちます待ちます」


俺はその言葉を聞いて、すぐに魔術を構築し出す。

 イメージするのは、限りなく精巧な彫刻。鳳凰みたいな感じの。あれくらい羽とか鱗みたいなのがありそうな生き物なら分かりやすいだろ。

 数分経って、ようやく魔術の構築が終わった。さすがに直列思考使わずに、しかも今まで一回も使ったことない魔法を構築するのは時間かかったな。

 属性は炎。

 『炎像・鳥』っと。

 魔術が発動し、炎でできた精巧な鳥(俺がイメージしたかっこよさげな)が宙に現れる。


「わっ! な、なんですかこれ!」

『これを完璧に想像するくらいは』

「す、すごい。これだけの精度なら攻撃魔術は一体どれだけの威力に……………ふ、二つ目です! 毎回これくらいの正確さで想像しているのですか!?」

『他の人がどうかは知りませんが……………』

「いえいえ、イフリート君の意見を教えてください」

『自分は一回使えれば想像した時の感覚を大体覚えてるので、毎回ここまで正確にしてるわけではありません』

「と、いうと?」

『覚えてる感覚のおかげで、なんというか鋳造みたいに、魔力っていう金属を覚えてる感覚の鋳型に流し込むだけで済みます。細かいところはちゃんと想像しますが』

「なるほど、イフリート君はそうやっていると」


こんなん聞いて何か面白いのだろうか。

 まあ、俺としても今まで感覚でやってたことを多少言語化できて嬉しくはあるが。

 なるほど、筆談とはいえ人と話すとこう言う副産物があるのか。


「まだまだ行きます! 三つ目……………!」



    ↓



「あっ、鐘が。今日はこのくらいにしておきましょうか。明日も聞かせてください」

『こんな話でよければ』

「是非! ありがとうございました」

『ありがとうございました』


そんな会話をしたのが随分前に感じる。

 いや、実際だいぶ時間は経ってるんだが。

 相当な数の質問をされたから印象に残ってるな。

 今はもう昼で、授業も一旦休みで昼食を食べに学園の校舎の方の食堂に行く時間である。

 と言っても、俺は『自己再生』のおかげで腹も減らないし、別に昼食食べる必要もないんだけどな。


「イフリート! 飯食べに行こうぜ!」


フィンレーにそう言われると拒否できないんだよなぁ。こいつのおかげで今まで何度相手がいないという状況を回避できたことか。

 つまり、俺はこいつに割と恩を感じてるわけだ。


「二時間目さ、お前だけ魔術学だったじゃん。どうだったんだ?」


んー、まあ普通に楽しかった、かなぁ?


「大丈夫みたいだな。魔術学の先生、暗くてあんまり評判良くないみたいだけど」


そうだったのか。

 まあ、確かにあの見た目とか色々考慮すると評判悪くはなりそうではあるな。

 実際はそうでもなかったけど。ただ単に俺の魔術の話に興味を惹かれただけかもしれないが。

 そう考えていると、食堂についた。

 食堂は校舎の方でも賑わってるんだなぁ。この人の数でも密集していないと思わせるだけの広さを確保しようとは思わなかったんだろうか。

 適当に食べ物を頼むと、俺はフィンレーと同じ机に座った。


「今日はあと二時間で終わりかぁ。思ってたより早かったなぁ」


俺はもう寮ではなく家に帰りたいよ。

 そういうわけにもいかないんだろうけど。

 昼食を食べながら、フィンレーは、


「そういや序列っていつ貼り出されるんだろうな。昼食終わっても貼り出されなかったけど」

「忘れてたんだよ。悪かったな」

「うわっ、レイ先生! びっくりしたぁ」


俺も知らないうちに座っていたレイ先生にびびった。

 いつ座ったんだよ。


「このくらいの気配遮断には気づいて欲しいもんだがな。まあいい。とりあえず今日の授業が全部終わるまでには貼り出しとくから。ごちそうさん」


食うの早!


「あの先生、変わってんな」


俺もそう思う。

 まあ、びっくりはしたものの普通に昼食を食べて、授業に戻るのだった。



   ↓



 言っていた通り、授業が全て終わるまでには序列は貼り出されていた。

 結果はこうだ。


 クラス内序列

 一位 クラウス・エドガー。

 二位 フィンレー・ホワード。

 三位 エレノア・アリエ。

 四位 

 ……

 ……

 ……

 ……

 ……

 ……

 四十一位 イフリート。


 あれ、三位のエレノアさんって確か俺のこと女子だと言ってきた人か。悪気があったわけじゃないけど。同じクラスだったのか。

 まあ、おおよそ予想通りの順位だな。俺も最下位だし。

 えっ、ちょっと待って。何で先生の指示で外れたのに最下位にされなきゃならんのだ。せめて除外とかにしてくれよ。


「イフリート、お前は本来の序列でもああだし、ちょうど良いだろ。頑張れよ」


レイ先生はそう言って去って行った。

 どうやら前途多難らしい。

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