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第一章 プロローグ 死んだ

後先考えずに書いてるので、投稿が遅くなる、話が食い違うことがあるかもしれません。出来るだけ気をつけますが、もしそういうことがあったら指摘していただけると嬉しいです。

修学旅行。それは学生なら一度は行く学校行事だ。そして、あそこにその行事をしている学校が一つ。


つまらない。久しぶりに学校に来てみれば、次の日、修学旅行とかふざけてんだろ。

あーあ、これなら家でゲームしてる方が良かった。

俺の名前は、風見司。中学三年生。俗に言う引きこもりというやつだ。あっ、彼女?いるわけねえだろ!自己紹介聞いてたか?引きこもりだぞ?昨日、なぜか気が向いたのでなんとなく行ってみた学校で、先生に、にこやかに

『風見くんも来てくださいね?修学旅行』

とか言われた。自分でも気圧されて「はい」なんて言っちゃたのが不思議だ。

班行動で動いているため、俺にも振り分けられた班番号に基づいて班の後ろについているのだが、少し、というより結構離れてた場所を歩いている。京都の町並みに他の班のやつが見とれている中、バスの中で渡されたしおりを見ながらだったが、よくこんなところを歩き回れるもんだな。景色が変わりゃしねぇ。


「えーと、次は一旦集合すんのか。ったく、早く帰りてぇのに何でこんなことすんだよ」


そう言うと、前にいた班員がニヤニヤしている。何なんだ、こいつら?ウザいったらありゃしねぇ。俺はテメェラのこと誰もしらねぇよ。目つきを鋭くして、他の班員を睨むと一人の女子が俺のすぐ近くに来る。長髪、黒髪の美少女だった。他から逆に睨まれているようだ。視線は痛いが、もとより、そういうのには慣れている。とりあえず、この女をどうにかしないとな。


「なんだよ?邪魔なら置いていっていいぞ?俺は別に構わないぞ」

「えっと、そういうわけじゃなくて。風見くん、そんなに楽しそうじゃないから…」

「綾っち、そこまで関わらなくていいと思うよ。どうせ、引きこもりじゃない。相手にしない方が気が楽よ」

「そんなこと言われても…」


そこまで言ったところで、俺は女子に近づく影に気づく。

マスク、帽子、サングラス。完璧に不審者だ。手元を見ると、ナイフ。

サングラスで、目を隠していて瞳はどこを向いているかは分からないが、確実に向かっている方向は俺だ。このまま、いけば刺殺される。殺される。えっ!なんで、俺が殺されなきゃいけないんだよ?

おもむろに女子の方に視線を向けると、恐怖の表情に満ちていた。知っている奴のようだ。あれだな、ストーカーというやつだな。

もうすぐ殺されるというのに、そんなことを考えていた俺だが、前に向きなおすと変わっていた。

ストーカーの動いている向きが。女子の方向に動いていた。

あれ?なんで俺動いてるんだ?どこに?なんのために?そう自分に聞くと、返ってきたのは、軽い答えだった。

(あの名前も知らない女子を助けるためだろ?そんなことも分かんないのか?俺のくせに?)

ああ、なるほど。少年漫画の体が勝手に動いたってやつか。そういう面白い死に方が出来るならいいか。こう考えられたのは、動いた俺のわき腹にナイフが刺さる直前だった。


衝撃、というより激痛。わき腹に痛みが走った。ナイフがわき腹に深々と刺さっていた。

ああー、戦闘シーンであるような口から血を吐くみたいなのはないんだな。とりあえず、ナイフで刺している方の右腕を、左手で押さえると右腕でマスクとサングラスを引っぺがす。

「グッ、くそ!お前がいなければ、あの子をずっと見ていられたんだ。なのに…なのになのになのになのになのになのに!」

「知らねえよ、お前が何をしてようと知ったこっちゃないしな。とりあえず、帰ってくれ」

「チキショー!絶対、復讐してやる!」


そう言って、去っていくストーカーに、わき腹を押さえながら叫ぶ。


「おい、もうしてるようなもんだぞー」


呑気な声を出した。すると、さっきまで話していた女子が、まだ何が起きたか理解しきれていない顔をしていた。


「えっと、何が起きたの?大丈夫、だよね?」

「ああ、掠ってもないしな」


本当は、激痛に襲われてるけどな。痛すぎだろ。でも、よかった。着てきた服が赤っぽくて。違う色だったら、まず間違いなく出血してるってバレてたわ。そんなことに気づく様子もなく、ホッと胸をなでおろす女子を見てこう切り出す。


「この事は誰にも言うな。もう一度言うぞ、誰にも言うな。理由は二つ、あんたらと俺で一つずつだ。

 一つ目、あんたらは、普通に修学旅行を楽しみたい。そこに事件や事故はいらない。

 二つ目、俺は何事も無く、家に帰りたい。

 だから、こんな事態はお前らにも俺にもいらないんだよ。だから、言うな」

「わ、分かった。言わない」

「それでいい」


俺の目つきにでも、気圧されたのか思ったよりあっさりと認めた。俺は、心の中で安堵のため息を盛大につく。

はあああああー、よかった。さすがに反論されると、めんどくさかったろうからな。

とりあえず、止血…は無理でも応急処置くらいはしたいな。


「ちょっと、トイレ行ってくる。お前ら、先に行っといて」


そう言い残して、さっき通った場所にあったトイレに向かう。



トイレの個室で、上に着ていたものを脱ぐと


「おいおい、マジかよ」


予想以上に、出血がおかしい。今までにバレなかったのが奇跡だな。さすがに赤い服でもバレるだろ。リュックの中から適当な布を取り出すとそれを腹に巻いて止血する。これで少しは持つだろ。血は足りない、けど行くしかない。


「遅いですよ、風見くん」

「あっ、ちょっと長引きました。色々と」


他の生徒は笑っていた。気にかけようとも思わないんだけど。


「はい、これで全員揃ったので予定を確認してから、また班行動になります。それでは…」


そこらへんまで聞いたところで、後ろにいた俺は違うことが気になった。他の団体が俺らの集団に接触しようとしていたのだ。

へぇー、他にも団体さんはいるんだな。すげぇ人の数だ。人が多すぎて、中に何人いるのかも分からない。

接触した。そのうちの何人かが俺にも当たった。

最後の一人、人間が通り過ぎる時に刺されたわき腹とは反対、つまり右のわき腹に再び激痛が走る。


「えっ?あが?ああ、がふっ!」


前回より早くに襲ってきた痛みに耐えられず、地面に倒れこむ。先ほど通った人混みをうずくまりながら見ると、俺を刺したストーカーがこっちを睨んできた。あんのヤロォー!本当に復讐しにきやがった。いやー、痛いな。ただでさえ痛かったのに傷二つは無理だって。


「お、おい、大丈夫か、お前?てか、腹の辺りから血、出てねぇか?な、なんかの冗談だよな?そうだよな?」

「大丈夫、って言いたいんだけど無理だ」


俺、このまま死ぬのか?まあ、この出血量だったらそろそろ致死量。未練とかは…特に無いし、死んでもいいか。


俺はこの時、無意識に手を伸ばしていた。家の方角に。別にどうしてもゲームやらなんやらがしたかったわけじゃ無い。家を出て行く時に行ったんだ。行ってきます、って。妹は嫌な顔一つせずに言ってくれたんだ。行ってらっしゃい、って。唐突に明日は修学旅行らしいから弁当作って、そう言ったのに次の日には作ってくれたんだよ。引きこもりでなんとなく学校に行ったこんなダメな兄に行ってらっしゃい、って言ってくれたんだ。死ねない。あいつに、妹に家に帰ってただいま、って言うまでは死ねない。いや、死なない!

あれ、俺、動いてるのか?でも、感覚ないのに。動く気力も残ってないはずなのにな。ああ、誰かに動かされてんのか。誰が動かしてんのか知らないけど、目も霞んできたからよく見えない。あれ?顔になんか落ちたな。冷たい。

そこまで考えたところで、俺は自分の意識を手放す他なくなった。


…………………。

目を開けるが、そこには暗闇しかなかった。

『死なないで』

誰かの声が聞こえた。女の声だ。そんなこと言われても、

「俺、もう死んだし」

『でも、妹さんにただいま、って言うまでは死なないんでしょ?』

「ああー、そんなこと思ったな。でも、死んだし」

『死なない体だったら妹さんに会おうと思う?』

「んなふざけた体ならどんな目にあっても会いに行くわ」


誰の声とも分からない声が言った質問に苦笑しつつ、本心を言った。


『そう、なら良かった』

「へっ?なに言ってんの?」


いきなり声の調子が変わったのでびっくりしたが、そんなことより気になった。すると、


『あなたをこれから死なない体に転生させる。妹さんに会えるように努力して』

「あっ?何言ってんだ、あんた?転生?どこかの女神さんか?」

『その通りって言っておくよ。さあ、世界を超えて妹に会いに行け。

 健闘を祈る。我が眷属、風見司。いや、イフリート!』


不意に、今まで足に確かにあった「何かを踏んでいる」という感触が消えて、代わりに今度は「落ちている」という感触だけが足に伝わる。


「おわ、ああ、うわあああ!」


いつの間にか暗闇の空間は純白の空間となっていた。

チキショー、未練ないとか言ってたけど、いざ死んだとなるとないわけじゃないな。まだ終わらせてないゲーム、いっぱいあったのにな。つい最近までやってたゲームは、今は龍人を仲間にするところか。もうちょっと進めておきたかったなぁ。

そういえばあの声の奴は一体誰なんだろう?転生させるだのなんだの言ってたな。転生したら考えればいいか。

この時の俺は、そいつの言っていることを鵜呑みにして後のことなんて考えずにただ待っていた。

これが風見司が死後、最後に思ったことだった。

我ながら情けない。そう後で思った。

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