五人目 ニ十歳 タケル
ニ十歳、男、タケル。
タケルは村の中にいた。
木で作られた家、土の地面。平凡な田舎の風景。
タケルは目を閉じ、念じた。
●死亡履歴
一人目、キノコの胞子を吸い込み死亡。
二人目、ダンゴムシに食べられ死亡。
三人目、村人に槍で突かれて死亡。
四人目、村人に鍋で煮込まれて死亡。
●魂「2」
目を開けたタケルは自分の立っている場所を理解し、冷や汗をかいた。
「ここ村じゃねぇか、おいおい、連続で村人に殺されてんぞ」
周りを警戒し、腰を低くする、いつでも走れるポーズをとった。
さながら盗塁を狙う野球選手の様に慎重に構える。
明らかに不審者だ。
・・・コツン。・・・コロコロ。
石、石が転がってきた。どこから?
周りを見渡す、視界の端に男の子が見えた。
男の子はタケルが気付いた事に気付くと手招きを始めた。
右腕には包帯を巻いている。
村人は警戒するべきだがタケルにはその男の子が真剣なように感じ、近づいていく。
声が聞こえるとこまで近づくと十歳くらいの男の子だということが分かった。
「早く!村から出て!奴が気付く前に!」
タケルは人を見る目には自信があった、この男の子はきっと味方だ、そう感じとる。
男の子の所へと駆け足で向かった。
たどり着くと男の子はタケルの手を引いて更に遠く、村の死角に入るまで移動した。
「良かった、先に見つけれた。お兄さん違う世界から来た人だよね?」
「お、おお。タケルと呼んでくれ。君は?」
「俺はキール。タケルの前の人、コノカの、知り合いだよ・・・、ぅぅぅ」
キールはコノカの名前を出した途端に涙目になる。
「落ち着け。何があったか教えてくれ。あ、すぐじゃなくて良い、落ち着こう、な」
キールは、コノカと出会ったこと、ダンゴムシを食べたこと、祭司との会話で得た情報。
そして祭司が村人を操っていること、全てを時間をかけてゆっくりと説明した。
「そうか、キールも辛かったな、ありがとう。俺に伝えるために村を見張ってたんだな」
「コノカがいなくなった後も、村人達・・・俺もだけど、記憶が飛ぶ事がちょくちょくあって、祭司が俺たちを操って村を探索させてるんだって気付いて、村を出て見張ってたんだ」
「ぞっとする話だな、キールが見つけてくれて本当に感謝だ。俺の恩人だな!」
「・・・きっとコノカなら、それを望むと思ったんだ」
「コノカさんにも・・・感謝だな」
そうなると村には居られない、一刻も早く次の場所へ向かうべきだ。
「さて、俺はもう村を去ろうと思うんだが、キールはどうするんだ?」
「同じさ、もう村には居られないよ。タケルに付いて行く」
「ありがたいが。別れを言う相手は?」
「もう・・・済ませた」
子供には辛い決断だっただろう、それほどコノカの影響は大きかったのだ。
残された魂の中にコノカがいる。
タケルは私欲では魂を使わない事を、己の心に強く誓った。
そして次の問題が浮上する。
「次どこ行けば良いんだろうな・・・」
「コノカは大きな町に行きたいみたいだったよ」
「・・・情報収集の為かな。町は近いのか?」
「遠いね、俺も方角しか分からねぇ」
「いや、十分だ。本当にありがたい」
何も分からない世界で案内人が居る、タケルにはキールが神様の様に感じた。
村から離れる際に視線を感じ、ふと振り返る。
村の敷地ギリギリに村人達が並列しており、全員が全く同じタイミングで手招いていた。
その異様な光景にタケルは身震いする。
「ふおおおお!こえぇぇ!危なかったーぁ。まじキール様神だわぁぁ」
「ははは、俺としてもタケルが良い奴っぽくて良かったよ。実は俺の腕、コノカの前の奴にやられたんだ。すっごい痛かった」
「・・・ごめんな」
「タケルが謝らないでよ」