夢人
夢の中に友達は居るだろうか。
夢の中でよく会う、夢の中だけの友達。
同じ夢を見たりはしないだろうか。
それでいて、少しずつ進むようなリアルな夢。
「やぁ、待ってたんだよ。今日も遊ぼう」
「うん!えーと、ごめん。名前なんだっけ」
「それは君が決めてよ」
「変な奴だな、今日は何しようか」
夢は覚めれば全てが消える。
夢を見た事すら忘れてしまうだろう。
では、忘れられた夢の住人はどうなるのだろうか。
夢の主が夢を覚えている限りは脳に記録されている。
もう一度夢に出てくる事も出来る。
何度も出てくれば不思議な夢としてまた記憶に残るだろう。
それを繰り返すと何が起こるのか。
夢の住人が自我を形成する。
「やぁ、本当に待ってたんだよ!僕を忘れないでくれ!友達だろう?」
「・・・えーと、誰だっけ、見た気はするんだけど」
「・・・遊ぼうよ。楽しもう・・・忘れられないくらい」
「う、・・・うん」
しかし人は忘れる生き物だ。
更に楽しい物を見つけ、昔楽しかった事を忘れる。
昔一緒に遊んだ友人の顔も。
・・・夢の中にしかいないのなら尚更だ。
「なんだよ!最近全然僕と遊んでくれないじゃないか!」
「わぁ!・・・なんだよ、怖いなぁ、誰だよおまえ」
「誰?誰だって?君が思い出さないと僕は消えてしまうんだぞ!」
「しらねぇよ、勝手に消えろよ」
「・・・この!」
「わー、なんだよ。殴るなよ」
「うるさい!待て!」
「うわー、来るなー!」
繰り返すと、夢の住人も気づいてくる。
楽しい夢よりも、怖い夢の方が記憶に残るのだと。
自我が芽生えた夢の住人、夢人。
君の夢にもいるかもしれない。
今にも消えそうな脆弱な住人が。