宮間快人の長い一日⑪
俺はアリスと遊ぶときには、大体雑貨屋に足を運ぶ。基本護衛についてくれているので、別に俺の部屋で呼んだとしてもアリスは現れるが……なんとなく以前からの癖というか、アリスとゲームしたりする際には雑貨屋まで足を運ぶ。
ちなみに今回は、以前六王祭で遊んだ魔導ゴマの製品版が完成したらしく、それを一般発売前に一緒に遊びに来た。
六王祭の時よりいろいろ改良されており、低年齢でも遊びやすくなっている印象で、これは流行りそうな気がした。
その後はアリスと一緒にノードゲームで遊んでいた。といっても、俺が苦手とする将棋やチェスといったものではなく、前に遊んだ勇者すごろくの別バージョンである。
「……あの、カイトさん?」
「うん?」
「……いやね、私の気のせいかもしれねぇんすけど……」
すごろくを遊んでいた手を止めて、アリスがこちらを見て口を開くが……なんだか、アリスにしては歯切れが悪い言い回しというか、どういうべきか迷っているよう感じだった。
「……なんか今日のカイトさんの視線が、優しみに溢れてないですか?」
「……」
「いや、別に根拠とかあるわけじゃないんすけど、なんとなくむず痒いというか、ちょっと落ち着かないというか……」
「そう言われてみると……」
アリスに言われて考えてみると、なんとなく思い当たるふしはある……あるのだが、なぜだろうか、それを言葉で説明するのはとても難しい。
「いや、俺にもよく分からないんだけど……なんとなく、アリスを見てると微笑ましい気持ちになるというか……」
「え? なんすかそれ?」
「う~ん。本当になんでかは分からないんだけど……なんか微笑ましい」
「えぇぇ、情報一切ない答えじゃねぇっすか……というか、アリスちゃん若干居心地悪いんすけど! なんかソワソワするんすよ!!」
恥ずかしそうにクレームを入れてくるアリスだが、対応しようにも俺にも原因が分からないのである。本当になんとなく、アリスを見ていると微笑ましいという気持ちが湧き上がってくる。
なんだろうかこの感覚は、なんとなく以前イリスさんにアリスの過去の話を聞いた時の感覚に似ているかもしれない。
口ではどうこう言っててもなんだかんだで優しいアリスを微笑ましく感じてるみたいな、そんな気持ちに近い。
しかし、困ったことにその原因となる要因がサッパリだ。別にイリスさんから何か話を聞いたわけでもなく、どこかでアリスのさりげない優しさを新たに知ったわけでもない。
「……とはいっても、俺にも原因が分からないんだよな」
「う、う~ん……なんすかね。なんか私的には気恥ずかしさを感じる視線なんですけど……まぁ、原因が分からないなら仕方ないっすかね」
「うん。まぁ、なにか思い出したら言うよ」
釈然としないような顔を浮かべつつも、俺に心当たりがないという言葉は信じてくれたみたいで、アリスは少し気恥しそうな表情でボードゲームに視線を戻した。
う~ん、本当になんだこれ? でも別に悪い感じじゃないんだよなぁ……どっちかって言うと、アリスのことが前よりもさらに好印象になったとかそんな感じだ。
原因はわからないが、アリスがなんとなく恥ずかしそうという以外に実害も無いので、あまり気にするべきではないのかもしれない。
昨日とは打って変わって星空広がる無人島っぽい島……俺の前には機械の片翼を生やした女性。
「昨日振りだね、我が子! 昨日の我が子との話が楽しくって、今日もまた呼んじゃった!!」
「あ、あぁ……そういうことか」
「うん?」
「あ、いえ、なんでもないです。ちょっとひとつの疑問が解けただけです」
目の前の女性、マキナさんを見て日中にあったアリスとの不思議なやり取りの答えが出た。そっか、昨日夢の中で20分程度だがアリスの昔話を聞いて……そのこと自体は忘れていたが、アリスへの好印象だけは心に残っていたから、あんな感じになったのか。
「えっと、こんばんは、マキナさん……ここは?」
「こんばんは! ふふふ、ここはね昨日少し話したけど、アリスと人間だったころの私が初めて会った無人島の再現だよ」
「へぇ、ここが……」
「ちなみに、その時のアリスはこんな感じだったよ!」
マキナさんがそう告げると、目の前にアリス……のホログラムっぽい映像が現れた。ただそのアリスはセミショートヘアであり、ジーンズにジャケットという俺の居た世界っぽい服装だった。
「おぉ、アリスって短めの髪も結構似合いますね」
「うんうん、私も同感だよ。今日は昨日の話の続きをしよっか……えっと、昨日はどこまで話したっけ?」
ホログラム映像を消しながら笑顔で告げるマキナさんを見て、俺も軽く笑顔を浮かべる。エデンさんの時よりは少し子供っぽい印象ではあるが、なんとなくこれが彼女の素なのだろうと感じる。
以前から少し思っていたことだが、マキナさんは人と話をするのが好きなんだと思う。
「えっとたしか、日本に遊びに行ったところまでですね」
「あっ、そうだったね! その後はさ、普通近場に行くよね? なのに次に連れていかれたのはオーストラリアだよ? 日本に行った時は船だったからって、今度は飛行機でさ……」
楽しそうに話マキナさんを見て、なんとなく明日もアリスに落ち着かない顔をされるのかなぁなどと考えて、思わず笑みを零した。
シリアス先輩「……タイトルガレンバン……つまり、アリスとのデート回はまだ別にある……ツライ」
 




