ドラゴンカーニバル②
コミカライズ版第五巻の発売日は9月25日です。詳しくは活動報告にて
ドラゴンカーニバル当日、準備を終えてもまだ時間には余裕があったので、リリアさんと一緒にお茶を飲みながら、事前の予習ということで俺が会ったことがない四大魔竜に関してリリアさんに尋ねてみた。
ドラゴン好きのリリアさんなら知っているのではないかと思って、雑談がてらに尋ねて、多少の情報でも頭に入れられればと思っていたのだが……。
「まず、カイトさんが会ったことがない四大魔竜の方ですと、『大海に座す水竜』と呼ばれる『エインガナ』様ですね。蒼海の鱗と呼ばれる部隊の長であり、魔界の海を管理するお方でもあります。竜としては単一種なのか、特定の種族名はなく水竜と呼称されています。物静かで落ち着いたお方と伺いますが、魔界の海を荒らす者には一切容赦はないとか……その戦いは、荒れ狂う大海と呼ばれるほど大規模で、凄まじいとか。竜種としては超大型種に分類されていまして、全長は1kmを越えると言われています」
「……な、なるほど」
「藍色の鱗が美しい竜で、かなり美麗と言っていいと思います。私も遠目に見たことがあるだけですが、あの美しさは竜種の中でも上位と言っていいかと思います。惜しむらくは、海に住むという性質上、全身を見る機会がほぼ無いと言っていいことでしょうか……ただ、今回はもしかするとエインガナ様も陸に上がってくるかもしれませんので、全身が見れるかもと、少し期待しています」
思ったよりガッツリ、情報が来たな。いっつもより目がキラキラしてる気がするし、本当に好きなんだろう。
よくよく考えてみれば模型とか集めてるし、なかなかのドラゴンマニアと言っていいのかもしれない。まぁ、好きなものを語るときに多弁になる気持ちはよく分かるし、エデンさんとかみたいに狂気があるわけでもないので、どこか微笑ましく感じる。
「もう一体は、『不倒なる地竜』との異名を持つ、『グランディレアス』様ですね。こちらはヘルグラウンドドラゴンと呼ばれる、元々巨大な竜種なのですが、グランディレアス様はそのヘルグラウンドドラゴンの中でも飛びぬけて巨大であり、その体躯は竜王様に次いで、世界で二番目に巨大だと言われています。全長で言えば、先に上げたエインガナ様の十倍近いとも言われていますね」
「それはまた、凄いですね」
エインガナさんの全長が1km越えで、その十倍近いとなると10kmぐらい……それはとんでもないサイズだ。サイズ、なのだが……マグナウェルさんの全長はアリス曰くおよそ『30000m』……30kmであり、その桁違いのサイズであるグランディレアスさんのさらに三倍……マグナウェルさん、マジでデカすぎる。
「大地の尾と呼ばれる部隊の隊長であり、特に大型種以上の巨体の部下が多く、大地の尾が行進する時には文字通り大地が揺れると言われているほど、大迫力です。サイズがサイズ故、あまり一堂に会する姿を見れる機会というのは無いので、今日は本当に楽しみです!」
うん、まぁ、リリアさんが楽しそうでなによりである。そのまましばらく雑談を続けていると、丁度いい時間になったのでリリアさんと一緒に移動する。
今回の目的地に行ったことは無いのだが、フレアさんがゲートまで迎えに来てくれるということなので、指定されたゲートに向かった。
魔界南部にある指定されたゲートに辿り着くと、そこにはすでにフレアさんの姿があった。フレアさんは俺たちの姿を見ると、キセルを腰のホルダーにしまってから近づいてきた。
「よく来た戦友、そしてリリア公爵、竜王配下を代表して来訪を歓迎しよう」
「こんにちは、フレアさん。今日は招待、ありがとうございます」
「ご無沙汰しております、ニーズベルト様。本日は、よろしくお願いします」
俺とリリアさんの挨拶を聞いたフレアさんは、微笑みながら一度頷いたあとで再び口を開く。
「うむ。だが、そう畏まらなくても大丈夫だ。今回は竜王配下の内輪のみで行われる行事。仰々しくも堅苦しくもない。貴公らは気楽に楽しんでくれれば問題ない」
「はい……ところで、このドラゴンカーニバルってマグナウェルさんが若手の力を見る……みたいなイメージでいいんですか?」
「ああ、その認識で間違いはないが、我ら四大魔竜にとっては、後の分隊長候補などを見つける場でもあるな」
「分隊長、ですか?」
イメージとしては、部隊長である四大魔竜の下に、ある程度の部下を抱える隊長たちがいる感じだろうか? そんな風に考えていると、隣にいたリリアさんが説明をしてくれた。
「竜王陣営は総数おおよそ8800万と言われており、六王様の中でも幻王様に次いで配下が多いので、さすがに四体の幹部だけで指揮するのは難しく、四つの部隊をさらに分隊規模で分けているとのことです。ニーズベルト様の紅蓮の牙を例に挙げると、現時点で220体の分隊長が存在すると聞いています」
「その通りだ……リリア公爵は、ずいぶん我らのことに関して詳しいのだな」
「あっ、えっと……『月刊竜王』を定期購読していますので」
「ああ、たしかエインガナの部下が作っている雑誌だったか……」
……俺の居た日本とかで言うところの、アイドル特集の月刊誌みたいな感じだろうか……そんなものがあったのにも驚きだが、リリアさんが定期購読していたのにも驚きである。
やっぱり、相当ドラゴンが好きなんだろうなぁ……。




