3の名を持つ太陽①
ジークさんと共にちょっとしたトラブルがあったものの、それ以後は特になにかトラブルが起こるわけでもなくデートを楽しんであとで帰宅すると、アリスからチェントさんとシエンさんが俺に会いたがっているという話を聞いた。
トーレさん、チェントさん、シエンさんはクロの家族らしく、迷惑をかけた謝罪とバタバタしていてちゃんとできなかった自己紹介をしたいとのことだった。
そう言えば、俺の方も名乗ってなかった気がする……これといって迷惑をかけられた覚えはないのだが、トーレさんの捜索に結果的に協力することになったのでそれについてだろう。
別に断る理由もなく、アリスを通じて連絡をして……早い展開だが翌日に三人が俺の家を訪ねてくることになった。
事前に聞いた時間に玄関の外に出て待っていると、門の前に三人が転移で姿を現しこちらに向かって歩いてきた。
先頭はトーレさん、後ろに続くのがチェントさんとシエンさんといった形であり、トーレさんを俺を見ると満面の笑顔で手を振ってきた。
「やっほ~カイト、遊びにきたよ!」
「……え? あ、えっと……昨日振りですね、トーレさん」
「昨日はありがとうね。あっ、これお土産だよ。なかなか変わった食感のお菓子で、面白いよ。おっと、もちろん味もいいから――うぉぅっ!?」
初手からどえらいフレンドリーというか、何度も遊びに来てると持ちのような感じで話すトーレさんを見て、思わず一瞬硬直したが、直後にチェントさんとシエンさんが慌てた表情でトーレさんの肩を掴み、後方に勢いよく引っ張った。
「なにしてるんですか、トーレ姉様!? 相手が誰だか分かってるんですか!?」
「……昨日、私とチェントがあれだけ説明したのに……」
「うん?」
焦った様子で話すふたりに対して、トーレさんはまったく分かってないのかコテンと首を傾げる。
そんなトーレさんに対して、頭痛を堪えるような仕草で頭に手を当てたチェントさんが話しかける。
「相手が、ミヤマカイト様だって……クロム様の恋人だって、分かってますよね?」
「もちろん分かってるよ! つまりアレだね」
「アレ?」
トーレさんは楽し気な笑顔を浮かべてグッとサムズアップをする。
「つまり、クロム様だけじゃなくて私にとっても運命に人だったってことだね! 来てるね、流れが……というわけで、とりあえずカイト、デートでも一発決めない?」
「遠慮しておきます」
「……もう四回振られたよ。でも、私の知り合いは一日一回プロポーズして振られるってを、数万年繰り返してるし、問題はなさそうだね!」
……ポ、ポジティブ……とてつもなくポジティブな方である。あとその正気の沙汰とは思えない回数プロポーズしてるのって、アグニさんだよね? 六王祭の時に『また翌日告白します』とか宣言してたし……なんというか、オズマさんも大変そうである。
それよりも、トーレさんの言葉に真っ青な顔になっているチェントさんとシエンさんの方が心配である。
「トーレ姉様、ミヤマカイト様に対して不敬ですよ!!」
「大丈夫、気にしないから」
「トーレ姉様が気にしなくても――」
「いや、私じゃなくて、カイトが気にしないから大丈夫だよ!」
慌てて叱ろうとしたシエンさんに対し、トーレさんは笑顔のままでそう答えた。
確信に満ちたその言葉はストンと俺の心の中に入ってきたというか、妙に納得できるものだった。なんと言えばいいのか、トーレさんという人物がどういう人なのかが少し理解できたような気がした。
トーレさんはたしかにチェントさんとシエンさんの言う通りに、お気楽な性格ではあると思うが……無神経というわけでは無い。
実際昨日も、それほど多く話したわけでは無いが、強引なように見えてトーレさんと話したり遊ぶ際に不快感はなく、むしろ結構楽しかった覚えがある。
この人……トーレさんは、考えなしに見えて相手の本質はちゃんと掴んでいるというか、相手を不快にはさせない、人に好かれるタイプの人だと思う。
おそらくではあるのだが、実際に俺が気安く接されることを嫌うタイプだったりしたら、トーレさんは適切な距離を保ったままで話してきたと思う。
俺の知り合いの中では……ラズさんに近いタイプだと思う。計算ではなく感覚でやっており、初対面の相手でもすぐに仲良くなってしまうような、そんなコミュ力強者の香りがする。
「トーレさんの言う通り、そんなに畏まらず気楽に接してもらって大丈夫ですよ」
「そ、そうなんですか?」
「そ、そう仰られるなら……」
「うんうん、やっぱり自然体が一番だよ! せっかくの機会なんだし、細かなことは気にせず楽しくいこう!!」
「「トーレ姉様はもう少しいろいろ気にしてください!!」」
「ぇぇ……めっちゃ叱られた……なぜ?」
チェントさんとシエンさんに言われて、分かりやすく表情を変えるトーレさんを見て、思わず笑みがこぼれた。やっぱり性格こそ違えど、ラズさんに似ているタイプだと思う。
話していると肩に入っていたはずの力が自然と抜けるというか、会話していて楽しいタイプの人だ。
~おまけ・快人が変人と認識しているTOP3~
第一位 エデン
ぶっちぎり過ぎて殿堂入りでいいんじゃないかと思うレベル。エデンに対して迂闊に感応魔法を使うと他の情報がすべて塗りつぶされるレベルの特大の愛情が押し寄せてきて、気を失うレベル。
ともかく、能力、性格、狂気ともにまったく隙が無いヤベェ奴筆頭。
第二位 パンドラ
最近仕事モードに関しては少し見直したが、やっぱりヤバい変態であるのは間違いない。唯一エデンに若干対抗できるのではないかと思うレベル。
ともかく貞操の危機を感じるというか、すぐに発情した目で見てくるのが大変恐ろしいと感じている。
第三位 フェニックス
最近現れたヤヴェ超新星……性癖のヤバさもそうだが、顔合わせ以降は『我が神』とかいって、どちゃくそ慕ってくるようになったので、さらに厄介。
まだまだ未知数の部分も多い、期待の変態である。
シリアス先輩「……トップはまぁ、ヤバさが全身から滲み出てる桁違いのやつだから置いとくとして……三人中二人が幻王配下じゃねぇか……」
???「ちなみに、このトップ3だけは桁違いで『カイトさんでもドン引きするレベル』が基準となっています。その後に差をつけて四位はティアマトってところですかね」
シリアス先輩「……そいつも幻王配下じゃねぇか!?」
 




