魔界の都市で⑤
食事を終えたあとはジークさんと共に、ショッピングを楽しんでいた。さすがにいろいろな店があり、見覚えのない品も多くてかなり新鮮だ。
「どうですか?」
「スカート姿は初めて見ましたけど、とてもよく似合ってると思います」
「たしかに、滅多に履かないので……少し恥ずかしいですね」
立ち寄った服屋で、服を試着したジークさん。基本的にズボンを履いているジークさんにしては珍しく、ロングスカートの服装である。
俺が色合いとかデザインとかがジークさんに似合いそうだと言って、それを聞いたジークさんが試着してくれたという経緯だが、慣れない服装に少し恥ずかし気なジークさんは大変可愛らしかった。
まぁ、実際ジークさんは恋人としての贔屓目無しでも凄い美女だと思うし、大抵の服はバッチリ似合う印象だ。ただやはり、物腰柔らかな性格の印象が強いので、大人っぽく落ち着いた感じの服が特に似合う。
その後は俺もジークさんが選んでくれた服を着たりして、二人合わせて何着かの服を購入して外に出る。
すると、店を出てすぐの道に見覚えのある方が見えた。
「……見つからない……本当に、どこに行ったの? 早くトーレ姉様を見つけないと……」
赤紫の髪の右サイドテール……えっと、チェントさんの方だったかな? って、あれ?
「ジークさん、アレって確かチェントさんって方でしたよね」
「ええ、そのはずです」
「……口振り的に、まだトーレさんを探してる感じですよね?」
「みたいですね……でも、レストランで会ってから、もう2時間近く経過してますよ」
そう、俺がトーレさんにふたりが探していたことを伝えて、それから俺たちが食事をしてショッピングを楽しんで……もう2時間は経過してる。
なのにいまだに会えてないということは……ハミングバードのような連絡手段がないということだろうか? いや、それにしたって他に方法もありそうな気がするが……。
なんとなく気になったこともあり、俺とジークさんは一度顔を見合わせて頷き合ったあとで、チェントさんに声をかける。
「……あの、すみません」
「え? 貴方は……確か、魔法具店の前で会った」
「はい。ちょっとお伝えしたいことがありまして、実は……」
そのまま俺はチェントさんにレストランでトーレさんと会ったこと、ふたりが探していることを伝えると、トーレさんはお礼を言って店を出ていったことを伝えた。
「……そうでしたか、わざわざ姉様に声をかけてくださったとは、気を使わせてしまったようで申し訳ありません」
「たまたま覚えていただけなので……それより、2時間も合流できてないとなると行き違いとかになってる可能性があるんじゃないかと思って……」
「い、いえ、せっかくのご厚意を無にしてしまうようではあるのですが……おそらくトーレ姉様は、私たちを探してすらいないかと思います」
「……え?」
チェントさんは非常に申し訳なさそうな表情を浮かべながら告げ、その言葉の意味がよく分からなかった俺は首を傾げる。
「トーレ姉様は、なんといいますか……大変お気楽な性格でして、おそらく『やりたいことが全部終わって家に帰ったら連絡しよう』とかそんなことを考えて後回しにして遊んでいるのだと思います」
「……えぇぇ」
「ともかくいろいろ楽観的な結論に達することが多いんです」
「……な、なるほど、そう言えば合流するとも連絡するとも言ってませんでした。ちゃんと連絡するように伝えておけばよかったですね」
「いえ、レストランにいたことを教えていただけただけでも、本当に助かりました。おそらく街の外に出たりはしていないと思うので、また探してみることにします」
チェントさんは丁重な口調で告げたあと、俺とジークさんに深く頭を下げたあとで、申し訳なさそうな表情で告げる。
「……もし、可能であればなのですが……」
そして、俺たちにひとつのお願い事をしてから去っていった。なんというか、苦労してそうな感じだった……無事に合流できるといいんだけど。
チェントさんと別れたあとで、ジークさんとデートを続けていると、なにやら大きめの建物というか施設のようなものを発見した。
入り口の看板を読んでみると……どうやらここには体を動かすタイプのアトラクションがいろいろと入っており、入場券を購入することで一定時間自由に遊ぶことができるらしい。
遊園地というか、日本にもあった複合アミューズメント施設に近いものという印象だ。
「……面白そうですし、入ってみます?」
「ええ、私もこういう施設は初めてですが……六王祭の一日目のような、アトラクションをイメージすればいいんですかね?」
「あっ、確かにそれっぽいですね。俺は六王祭ではあまりスポーツ系ので遊べなかったので、楽しみです」
たしかに六王祭でのメギドさんの祭りのアトラクションが近いのだろうが……俺は本当に数えるほどしか遊べず、戦王五将のところを回っていたので、本当に楽しみだ。
ワクワクしながら入場券を購入して中に入ると……。
「「……あっ」」
「……びっくりだよ。三回目の遭遇だよ、やっぱり運命では? 恋しとく?」
「遠慮しておきます」
「これもびっくり、短時間で三回振られた。白星ゼロの私の恋愛戦績に黒星ばっかり積みあがってく、勝利を知りたい」
……まさかまさかの、トーレさんと三度目の遭遇であった。
シリアス先輩「黒い三連敗か……」
???「完全に滑ってると思います。言ってて恥ずかしくないですか? 躊躇する気持ちとかないんすか?」
シリアス先輩「……やめろ、その言葉は私に効く……えげつないほど効く……」




