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六王幹部に会おう・十魔編Ⅱ①



 シロさんから貰ったピコピコハンマーだが、実際にどの程度痛いのかというと、正直よく分からない。まず、このピコピコハンマーは俺には効かないみたいなので、自分を叩いてみたところで効果は無い。

 俺自身誰かに使ったこともないのだが、以前アリスとフェイトさんが悪ふざけしている際に、シロさんに促される形で『シロさん助けて』と滅びの呪文を口にしたところ、ふたりに振り下ろされたのがこのピコピコハンマーである。

 世界トップレベルの強者と言っていいふたりが本気で痛がっていたので、相当なのだと思う。


 その後、シロさんの気まぐれで俺の手に渡ることになり、たまにアリスを諫めるのに見せて威嚇したりはしたが、実際に使ったことは無い。

 そんなシロモノを初対面の、しかもこれからお礼を言おうとしている相手に使うのは気が引けるし、正直リスティさんの言葉も半信半疑であった。

 いくらなんでもそんなことをしなくても挨拶ぐらいは済むだろうと……そう思っていた……実際にフェニックスさんに会うまでは……。


 フェニックスさんは全長1mちょっと程の鳥の姿だったが、その体すべてが緑色の炎で形成されていた。炎が鳥の形になっているといった感じだが、特殊な炎なのか近づいても熱さを感じることは無かった。

 そんなフェニックスさんを見て、真っ先に頭をよぎったのは「あっ、駄目だこれ」という感想だった。


 というのも、感応魔法で読み取ったフェニックスさんの俺に対する感情は……無である。好意も敵意も一切ない、路傍の石ころぐらいにしか思ってない感じであり、この場に居るのも上司に言われて渋々といった感じだった。

 好きの反対は無関心とはよく言ったもので、フェニックスさんからはこちらと交流する気は一切感じない。たぶん二言目には「帰る」と口にし、名乗ったとしてもこちらの名前を憶えてくれることすらない気がする。それほどまでに冷め切った感情だった。


「……フェニックス、なんだその顔は?」

『はぁ、気が乗りません。こうして目の前にするとよく分かります。そちらの方に私を《殺せる力》があるとも思えません。本当に、これっぽっちも興味がわかないのです。正直こうして説明することすら億劫です。私に用件があるなら、今後はシャルティア様を通してください』

「……」


 本当に駄目だこれ、なにが駄目かって……パンドラさんの額に青筋が浮かんでいて、もうキレる寸前みたいな雰囲気がした。

 お礼を言うどころの話ではない。やはりここは、リスティさんのアドバイス通りにするしかない。


「フェニックスさん! ちょっと、失礼します!」

『は? なんですかそのおもちゃは……ふざけているようなら怒りますよ? いくら貴方の周りの者が強大であったとしても、当人に魅力を感じないのであれば、私は――んあぁぁぁぁぁぁぁ!?』


 ピコピコハンマーを取り出した俺を見てなんだコイツみたいな……至極真っ当な反応をしたフェニックスさんは、呆れた様子ながら俺が振り下ろしたハンマーを避けることはなかった。

 そしてハンマーがその体に触れると、悲鳴を上げて地面を転が……いや、悲鳴?


『……はぁぁぁっ……んふっ……はぁ……なんというっ……あぁ……なんというっ!?』


 地面に転がりクネクネしながら妙に艶めかしい声を上げてる……なんだろうこれ、酷いものを見ている気がする。

 痛い思いをさせてすみませんと謝りかけていた俺の心配を返して欲しい。


『……そ、そんな、馬鹿な……殺すことなく、私に、こ、これほどの痛み(快感)を与えるなんて……』


 言ったなぁ……いまこの方確実に快感って言ったよなぁ。なるほど、酷いレベルのドMらしい。もうさっそく挨拶を止めて帰りたくなってきた。

 そんなことを考えていると、フェニックスさんは体を起こし……翼の先を地面に突くという大変器用な形で項垂れる。


『あぁぁぁ……わ、私、はなんと……なんと愚かだったのでしょうか……死に至る痛みこそ《至高の快楽》であるとそう思っていました。いや、そう思い込んでいたっ……私の視野は狭かった! この目は数万年単位で曇っていました!!』


 ハッキリ言ってまったく理解できない。理解したいとも思わない嘆きの言葉を真顔で聞いていると、突如フェニックスさんはこちらに顔を向け……瞬間『立ち眩み』がした。

 いや正確には、一瞬思考が塗りつぶされる勢いで凄まじい感情が襲ってきたというべきだろう。先ほどまでの無の感情はなんだったのかというほど、濁流のように様々な感情がこちらに向けて押し寄せてきた。


『……私は信仰心などというものは持ち合わせていませんでした。神を崇めたりする気も……しかし、私の神は……ここに居たのですね』


 また、眩暈がした。全身炎で構成されており、当然その目も緑の炎が目の形になっているだけのはずなのに……狂気のようなものが宿ったように見えた。

 リスティさんのアドバイス通りに行動したつもりだったが……俺はもしかして、とんでもない過ちを犯してしまったのではなかろうか?

 本当に勘弁してほしいとそう思いながらチラリと隣にいるパンドラさんに目を向け……即座に目を逸らした。


 こっちもヤバかった……頬を高揚させ物欲しそうな目でよだれを垂らしながらこちらを見てる姿はちょっとトラウマになりそうだったので、見なかったことにした。

 やはり俺は、とんでもない過ちを犯してしまったみたいだ。





Q、どうしてこうなった?


A、リリムの想定では快人がフェニックスに大ダメージを与える⇒フェニックスが快人を見直して言うことを聞くようになるという感じだったが……リリムの想定より遥かにピコハンの痛みは強烈であり、ドMにとって『未体験のご褒美』となってしまったため、一撃で『無関心⇒狂信』まで好感度が振り切れた。

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― 新着の感想 ―
[一言] シロさん。振るう相手によってピコピコの威力調整してそうだから、今回ちょっと怒ってたのでは?と思ったりしましたw
[一言] パンドラさんにもご褒美ピコハンいつかやって欲しいな…|ू•ω•)チラッ
[一言] 無関心の反対は好きを通り過ぎた
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