リスティア・アスモデウス①
幻王配下幹部十魔のひとりであり、クリスさんの母親だというリリムさんに会うためにやってきたアルクレシア帝国。
クリスさんには事前に連絡を取っており、都合のいい日を確認している。そして今回はクリスさんが紹介してくれるとのことなので、パンドラさんは来ていない。
パンドラさんはかなり本気で俺のことを心配しているみたいだったが、アリスが自信をもって大丈夫であると告げたことで、とりあえずリリムさんに関してはクリスさんに任せるということに納得してくれた。
事前に連絡を取っていたこともあり、城に到着したらすぐにクリスさんに取り次いでもらえて、クリスさんと共にリリムさんがいるらしい場所に向かって移動する。
ちなみにリリムさんという名はコードネームで、アルクレシア帝国では本名である『リスティア・アスモデウス』という名前を使っているらしいので、周囲に人がいる状態ではそちらで呼ぶようにとアリスから注意を受けている。
「……あれ? 城から一度外に出るってことは、城の中に住んでるわけでは無いんですね」
「ええ、母上は後宮……前皇妃や前皇帝の側室が住む場所に住んでいます。前皇帝は側室が非常に多く、かなり大きな予算で後宮を作りました」
「後宮ですか……」
「ええ、とはいえ前皇帝は死去していますし、後宮の者たちも本来は他へ移すべきなのかもしれませんが……現皇帝である私が後宮を使用する気が無く、撤去するにしても側室たちの受け入れ先を世話する分まで考えると費用がかさみますし、なにより本人たちが後宮から離れることを固辞していて説得するのも手間なので、そのまま残しています」
「な、なるほど……」
「まぁ、いまはそれほど予算は回してませんし、使用人も最低限しか配置してないのでそれほど負担になっているわけではありませんがね」
苦笑しながら話すクリスさんの言葉を聞いて、少し疑問に感じる部分があった。あまり予算を回していないような言い回しだったが、それならなんで側室たちは後宮から離れることを固辞しているのだろうか?
贅沢な暮らしをしているというのであれば、それを手放したくないという気持ちも分からなくはないが……そういうわけではなさそうだ。
そんな俺の疑問を察したのか、クリスさんは苦笑を浮かべる。
「疑問はなんとなく察しますが、すぐに分かりますよ……さぁ、到着です」
クリスさんに案内されてたどり着いた場所には、リリアさんの屋敷と比べても遜色ないほどの立派な造りの建物があった。
入り口には簡素なドレスを着た女性が立っており、俺たちを見て深く礼をした。一瞬リリムさんかと思ったが、どうやらそういうわけでは無いみたいだ。
「お待ちしておりました、皇帝陛下、ミヤマカイト様」
「母上は?」
「リスティ様はいつもの部屋に……」
「分かりました。案内は私がしますので大丈夫です」
クリスさんは短くやり取りをしたあとで、屋敷の扉を開けて俺に中に入るように促す。それに従って屋敷に入り、広い廊下を歩いているとクリスさんが苦笑を浮かべながら口を開く。
「……ちなみに、先ほどの女性は『前皇妃』です」
「は? え?」
「なぜ、前皇妃が地味なドレスを着て使用人のようなことをしているのか……その答えは単純です。本人が望んでやっているからですね」
「……う、ううん?」
どういうことだろう、さっぱり分からない。カミリアさんみたいに家事が趣味とかそういうことだろうか?
「混乱していますね。無理もないと思います……もう、先に答えを言ってしまいますね。そもそも、なぜ前皇妃や側室がこの後宮から離れたがらないかといいますと……その原因は私の母にあります」
「えっと、リスティアさんに、ですか?」
「母上は掛け値なしに淫魔として最強と言っていい存在です。異性はおろか同性すら虜にしてしまうのですよ……つまり、前皇妃や側室は母上に心酔していて、母上に尽くしたいからこそ自ら使用人のようなこともしていますし、後宮を離れたがらないのですよ」
「……そ、それはまた、凄まじいですね」
「幸い母上は同性に興味は無いみたいで、本当に使用人としてだけ使ってるみたいですが……本人たちは母上の役に立てるなら、それで満足のようです」
なるほど……同性をも魅了するほどの力を持つ淫魔の頂点。それがリリムさんという存在か……その上、パンドラさんの話では男癖も悪いらしい。
パンドラさんが心配していた理由もなんとなくわかったが……逆にアリスがあれだけ自信満々に問題ないと言っていたのはなんでだろう?
う、う~ん、よく分からないが、これから会うわけだし……会ってみればわかるのだろうか?
シリアス先輩「ついにリリムの登場……いや、登場自体はしてたけど快人とは初対面か……シリアスな展開……無いよね……いつもどおりだよね……知ってる」




