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共に在る幸せ



「そっか~、相変わらずリリアちゃんは厄介事を引き寄せるというか……まぁ、今回もカイトくんがやっちゃったわけだね」

「厳しく説教されたよ、今後は初対面の相手に関しては六王幹部かどうかを確認するようにって……」


 苦笑するクロに釣られて、俺も同じように苦笑を浮かべながら先日あったことを話す。クロは俺の話に相槌を打ちながら、七輪のようなものを取り出して火をつける。

 いま俺はクロに誘われて、月見をするためにかつてクロとバーベキューをした河原にやってきていた。今日は生憎とライトツリーが光る周期ではないみたいだが、目的は月見なのでその辺りは問題ない。


「う~ん……結果が変わるわけじゃないし、リリアちゃんにとって不意打ちになるのは変わらないと思うけど……まぁ、リリアちゃんもカイトくんに悪気が無いことは分かってるんだと思うよ。だからどうしても文句を言うなら、そういう確認とか連絡とかの話になるんだろうね」

「本当に、不思議なぐらいの遭遇率だよ」

「そうだね~普通そんな簡単に会えるもんじゃないんだけどね。六王幹部ってなると、ボクでも長いこと会ってない子とかもいるしね」


 七輪の上に小さな鍋のようなものを置いたクロは、そこに料理酒だろうか? ほのかに花と酒の香りがする液体を入れて温めながら、次の食材を取り出す。


「……クロ、それってチーズ?」

「うん、この前クリスに会った時に貰ったんだ。アルクレシア帝国の特産品として売り出そうとしている高級志向のチーズなんだって」

「へぇ、それを切って鍋に入れてるってことは……チーズフォンデュ?」

「そうそう! ベビーカステラつけて食べようと思ってね」

「それは普通に美味しそう」


 パンをチーズフォンデュするのと同じようなものだろうし、間違いなく美味しいと思う。クロはとんでもないベビーカステラの印象が強いが、実際不味いベビーカステラ……いわゆる失敗作の頻度はそれほど多いわけでは無い。

 まぁ、それでも3~5回に一回は悪ふざけの産物かと思うような奇抜なシロモノが出てくるが……割合で言えば美味しいベビーカステラの方が多い。

 とはいえ、今回も月見といえばベビーカステラということで、月見団子のように積まれているベビーカステラがあるので……クロの思い付き次第では、変な味付けをする可能性もあるのでそこは注意しておこう。


「……クロ、その七輪って他にもある?」

「うん? あるよ、はい」

「ありがと」

「なにか焼くの?」

「せっかくチーズフォンデュがあるんだし、他の食材も食べようかな~って」


 クロの言葉に答えつつ、用意してもらった七輪の上にマジックボックスから取り出した食材を置いていく。


「あっ、いいね! エビとか美味しそう!」

「フルーツもいいとは思うけど、それはある程度食べてからかなぁ……」

「あ、そうだ! カイトくん、これも焼こう」

「うん? それは、貝かな?」


 クロが取り出したのはホタテっぽい見た目の貝であり、クロはそれを網の上に乗せる。


「バターもあるからこれ使って……」

「それ絶対美味いやつだ」

「ね~」

「バター焼きなら、醤油もかけたいな……確かノインさんに貰ったものが」


 他愛のない言葉を交わしながら、あれやこれやと準備していく。う~ん、なんだろうか、この感じは……表現は難しいけど、なんかこういうのっていいな。

 特別なことをしてるわけじゃないのに満たされているというか……。


「……なんかさ、こういうのって、いいよね」

「え?」


 ポツリとクロが呟くように告げた言葉を思わず聞き返す。なにせ、俺が今考えていたこととまったく同じ内容だったから……。


「いや、お祭りとか海水浴とかイベントっぽいことしてるわけじゃなくて、なんとなく月が綺麗に見えたからこうして出てきて、他愛のない話をしながらそれぞれが好きにやってるけど、不思議と噛み合うような……なんていうのかな、特別なことはしてないのにすごく楽しい」

「……うん、分かる。というか、丁度俺も同じこと考えてた。特別なことしてるわけじゃないのに、なんか満たされてるなぁって」

「そっか、えへへ、じゃあ、一緒だね」


 俺の言葉を聞いて、嬉しそうに笑ったあとでクロは俺に甘えるようにもたれ掛かってくる。その仕草が可愛らしく、温かな気持ちを感じながら空に浮かぶ大きな月に視線を向けた。


「……表現するなら、幸せって言葉が一番しっくりきそうな気がする。他愛のない話を笑い合って、いろんなことを一緒に楽しめるってのは、本当にいいものだよな」

「うん……ボクも丁度いま、同じこと考えてた」

「じゃ、一緒だな」

「うん!」


 心底嬉しそうなクロの笑顔を見ながら、きっと俺もいまは同じような顔をしているのだろうと、そんな風に感じた。

 かけがえのない、確かな絆を感じつつ……月明かりの元で、導かれるように俺とクロの影は重なった。





シリアス先輩「アイエェェェ!? メインヒロイン? メインヒロインナンデ!? 唐突なデート回ナンデェェェ!?」

???「なんか、甘いもの食べたくなったらしいですよ」

シリアス先輩「勝手に食ってろよ! というか、意味が違うだろうが!! じゃあ、シリアスな味のものが食べたくなったらシリアスな話書くのかよ!!」

???「……いや、そもそも、シリアスな味ってなんすか……」

シリアス先輩「……さぁ?」

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― 新着の感想 ―
[一言] 甘い…( "´༥`" )
[良い点] 日常回な感じが良きです
[良い点] 甘い...... [一言] 唐突な甘さの暴力
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