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六王幹部に会おう・十魔編⑥



 心配してくれたパンドラさんには申し訳ないが、正直グラトニーさんが出してきた食べ物と飲み物は、思ったほどではなかった。

 いや、確かに不味いことは不味い。それは間違いないが……まだ『レベルが低い』と評価せざるを得ない。

 少なくとも母さんの手料理、そしてクロのベビーカステラの失敗作に鍛えられた俺の表情を崩すほどではなかった。


 そう、特にクロのベビーカステラの失敗作は全然レベルが違う。仮にクロの失敗作ベビーカステラをまずさのレベルで十段階に分けたとしたら、今回食べた怪獣のハムと重油みたいなお茶は……せいぜいレベル5くらいの中堅レベルといったところだ。

 だって別に『食べた瞬間口の中に焼けるような痛みを感じる』とか、『一噛みごとに意識が遠のく』とか、『体が拒否するように猛烈な吐き気がする』とか、『膝が震えて立っていられない』とか、そいうこともなく、ただ普通に不味いだけである。


 正直この程度の不味さであれば、俺は表面上は笑顔を浮かべたまま余裕で完食できる。『肉体にダメージが来ない』ので楽勝といっていいだろう。

 というかそう考えると、改めてあのベビーカステラの悪魔の作る失敗作が悪魔的すぎる。なにせアリスがダークマターとか呼ぶレベルなので、本当にレベルが違い過ぎる。

 そんなことを考えつつ、俺はグラトニーさんの方を向いて微笑みながら口を開いた。


「グラトニーさん、いろいろ用意してくださってありがとうございます。俺がお礼を言いに来たはずなのに、ここまでしてもらってすみません」

『いえ! ミヤマカイト様にお喜びいただけたのであれば、私にとっても至上の喜びです!』


 まぁもちろん不味いものは不味いので、作り笑いではある。よく顔に出ると言われる俺だが、今回に関してはソレが原因で作り笑いがバレることは無いだろう。

 いや、だって本当にマジなレベルで安堵してるし……。


 するとそのタイミングでふと、パンドラさんの様子が目に留まった。パンドラさんは俺が笑顔でお礼を言うのを見て、心底驚愕したといった表情を浮かべたあと、なにやら顎に手を当てて考え始めた。

 そして少しして、なにかに気付いたかのようにハッとしたあとで頭を抱え、ソレが終わるとドロッドロに濁った目で頬を染めながら恍惚の表情を浮かべた。


 う~ん、なんか凄い嫌な予感がするな……あくまで俺の想像でしかないんだけど、いまパンドラさんの頭の中で……。


(そんな!? アレを食べて笑顔だなんて、ま、まさかミヤマ様もグラトニーと同じで……いや、待て、ミヤマ様の味覚は普通だったはず。それはこれまでに集めたデータで分かっている――はっ!? そ、そうか!

 ミヤマ様は私より遥かに高き場所に立つお方……そもそも私の尺度で測ることなどが間違いだった! なんということだ! ミヤマ様を心配しるなど侮るのと同じ……なんと思い上がったことをしてしまったのだ……反省しなければ! そしていままでより一層大きな忠誠を!!)


 とか、そんな感じの思考があったような気がする。いや、あくまで俺の想像ではあるが……想像だよね? これ、ドンピシャじゃないよね? さっきまでより伝わってくる好意が大きくなってるとか、気のせいだよね?


 ちなみに余談ではあるが、狂信枠であろうグラトニーさんと比べてもパンドラさんの忠誠心と愛情は桁違いである。

 感応魔法で感じる感情……グラトニーさんの感情を鉄砲水のようだと例えるなら、パンドラさんは大津波……それぐらい規模が違う気がする。

 とにかく重いしデカいという、忠誠心も愛情も桁違いで……ヤンデレという言葉がありありと頭に浮かんでくる。

 ……え? エデンさん? あの人は『論外』。あの方の愛情は、『世界がすべて海に沈む』とか『宇宙が海に飲み込まれる』とか、そういうレベルだから、自然災害レベルでは表現しきれない。


 まぁ、それは置いておいていまは出されたものを食べてしまおう。


『ミヤマカイト様! よろしければ、おかわりも……』

「ああ、ありがとうございます」


 ……う、う~ん、いや、平気なだけで不味いものは不味いので、進んで食べたいわけじゃないんだけど……けど、なんかすごく断り辛い。

 なぜかというと、グラトニーさん、滅茶苦茶嬉しそうなんだよなぁ……「自分の嗜好を理解してもらえた!」感じて、かなりはしゃいでいるというか……目がキラッキラで断り辛いこと極まりない。


 ……仕方がない。今後の良好な関係のためにも、ここはしっかり厚意を受け取っておくことにしよう。

 まぁ、それはそれとして、さすがにその怪獣全部食べ切るのは量的な問題で無理なので、適当なところで打ち切ってもらいたい。

 ……あとお茶に関してはチェンジしてほしい。味はともかくとして、ドロドロしてるせいで喉が全然潤わない。





シリアス先輩「……息するようにフラグ建てるなコイツ」

???「いつも通りですね」

シリアス先輩「……まぁ、その通りなんだけど……というか、まだひとり目で⑥って……」

???「⑫までいったら中編①とかになりますよきっと……」

シリアス先輩「ひとり目ですでに結構濃いのに、まだもっとひどい変態どもが控えてるのか(戦慄」

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― 新着の感想 ―
[一言] まぁ、なんか微妙なとこで強キャラ感を出す主人公…結構好きだぜ…( -ω- `)
[一言] これでナターシャちゃんが懐くとか・・・ないかな?
[一言] もしかしたら味はまずいかもしれないけど… 体にはいいのかもしれない… ほら、良薬口に苦しってよく言うでしょ?
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