六王幹部に会おう・十魔編③
俺が先行きに不安を感じている間にも、パンドラさんによる十魔の説明は続いていく。
「続けて序列五位は『アスタロト』。他者の能力を数値化して見ることができるという特異な能力を持ち、その能力を生かして爵位級認定の最高責任者を務めております」
「カイトさんに分かりやすく言えば、ゲームのステータスみたいに相手の能力を見ることができる力を持ってるんですよ。まぁ、格上相手には通用しなかったりとかもありますが……ちなみに六王祭でメギドさん主催の祭りの時に使ってた、魔力を数値で測る魔法具もアスタロトが開発したものです」
「なるほど、分かりやすい」
たしかにソレは爵位級認定には最適の力と言えるだろう。格上相手には通用しないとはいえ、アスタロトさんが伯爵級最上位であるならそこまでは正確に能力を測れるわけだし、最高責任者という役職にも納得がいく。
「序列六位は『モロク』。アルクレシア帝国の情報統括で、デーモン種のまとめ役でもありますね」
「……パンドラ、あの『串刺しマニア』にはちゃんと事前にカイトさんに変なもの渡さないように伝えておいてください」
「く、串刺しマニア?」
「モロクは忠誠心などは目を見張るものがあるのですが、性癖なのかはわかりませんが、なにかと串刺しを好みまして……よく動物や魔物を串刺しにして飾っています。しかも、本人はソレを芸術だと思い込んでいるふしがあるので、ミヤマ様への友好の証と言って渡してくる可能性がありますので、事前に注意しておきます」
「……よろしくお願いします」
串刺しが性癖って、それはまた濃い方である。確かに尋ねて、友好の証として動物の串刺しなんて渡されても、どうリアクションをとっていいか分からないし、事前に注意してくれているのは本当にありがたい。
「気を取り直して序列七位は『リリム』。淫魔の頂点に立つサキュバスで……最近はある程度マシになったとはいえ特に異性であるミヤマ様が会う場合は注意が……」
「あ~いや、リリムは大丈夫です。ほぼ確実に、カイトさん相手なら妙なことにはなりません」
「そうなのですか?」
「ええ、まぁ、実際に会えばわかりますよ」
なんとも気になる言い回しではあったが、アリスが大丈夫だというのならたぶん大丈夫なのだろう。
「続けて序列八位は『カタストロ』。こちらはミヤマ様とはすでに知り合いであるため、今回の顔合わせからは省かせていただきます」
パンドラさんの言葉通り、カタストロさんに関してはすでにお礼は伝えてある。
「序列九位は『フェニックス』……クソ鳥です。あまり記憶に留めておかなくて大丈夫です。場合によっては挨拶が終わるより先に封印して海に沈めることになりますので」
「……」
とんでもない言いようである。というか、さっきアリスもクソ鳥とクソ蛇とかって言ってたし、もしかしてそのフェニックスさんとやらは、十魔の中でもトップクラスにヤバい奴ということだろうか?
ついでに不安要素として、ここまでの話の中でクソ蛇という単語に該当しそうな方も出てきていない。となると残るのが……。
「そして最後が序列十位の『ティアマト』。クソ蛇です。こちらも場合によっては顔合わせ数秒で地中に埋める展開になるかもしれませんので、あまり記憶に留めておかなくても大丈夫です」
「……そ、そうですか」
なるほどなぁ、序列順に挨拶をするということはつまり、言い回し的に最大級の問題児であろうふたりが一番最後に連続してくるというわけか……気を引き締めておかなければならないかもしれない。
「……とりあえず、最初はグラトニーさんに会いに行くんですね?」
「ええ、そうなります。ミヤマ様さえ問題ないのであれば、いまからでも可能です」
「あっ、じゃあ、ちょうど今日は予定も無いのでお願いしてもいいですか?」
「かしこまりました」
急な展開ではあるが、元々準備はしていたわけだし、相手の都合が問題ないのであれば早いに越したことはないだろう。
簡単に身支度だけしようと思って座っていたソファーから立ち上がると、丁度そのタイミングでパンドラさんが口を開いた。
「……グラトニーは性格的にはマトモな部類なので、挨拶に関しては問題はありませんが、一点だけ注意点を」
「注意点、ですか?」
「ええ、もしグラトニーがなにか食べ物を出してきたり、お茶を用意したとしても……『口にしないこと』をお勧めします」
「……え?」
「あ~グラトニーはちょっと味覚がおかしいんすよ。偏食家というか、大抵の人が不味いっていうようなものを好んで食べるんです。本人は本気で美味しいと思ってるみたいなので、歓迎の意味で毒々しい色合いのお茶とか出してくるかもしれないので注意してくださいってことです」
神妙な表情で告げられた予想外の内容に首を傾げると、パンドラさんの言葉をアリスが細くして説明してくれた。
それはまたなんとも……本人に悪気が無いだけ性質が悪いともいえるが……う~ん、でも実際に出されたとしたら別に食べても問題は無いかもしれない。
ただ不味いだけで毒とか入ってないなら大丈夫……なにせ、俺は日々クロのベビーカステラで鍛えられているので、食べたら気絶するとかそんなレベルじゃない限り食べられると思うので、わざわざ厚意を無下にする必要もないだろう。
まぁ、あくまでなにか出てきたらの話ではあるが……。
※前話のあとがきに、なぜイルネスが快人と会わないかの理由を追記しました。
???「そういえばそうっすよね。カイトさんって、私が固定ダメージ受けるような激マズベビーカステラも、一応一度は食べてるんですよね……」
シリアス先輩「胃袋めっちゃ鍛えられてそう」




