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新人冒険者と伝説の義賊⑫



 アリスの武器屋での買い物では、葵ちゃんは1mほどの杖、陽菜ちゃんは足甲を武器として、特殊な糸で作られた軽いながら防御力に優れる服を防具として購入していた。

 それぞれ武器は店で一番安い、アリス曰く初心者向けの品で、防具はアリスやハプティさんのアドバイス通り武器に比べてかなり高めのものを購入していた。

 そしてふたりの支払いを確認したあとで、俺の後方から本体のアリスが出現してふたりに声をかける。


「さておふたりさん、装備も手に入れて初仕事という名目の現地研修も終わりました。それでは今後の活躍に期待します……と言って締めくくってもいいんですが、まぁ、そこそこ真面目に頑張ってるみたいですし、カイトさんの関係者でもあるので……特別サービスです」


 そう前置きをするアリスに、葵ちゃんと陽菜ちゃんはもちろん俺も首を傾げた。もう支払いは終わっているので、アリスの言う特別サービスは割引とかではないだろう。

 ふたりはもう武器も防具も揃えているし、装備をプレゼントというわけでもない……となると、便利な道具とかそんな感じだろうか?

 そんな予想をしていたが、アリスが告げた言葉はまったくの予想外のものだった。


「……貴女たちに『心具』を与えようと思います」


 その言葉に俺は驚愕するが、葵ちゃんと陽菜ちゃんは不思議そうな顔をしていた。まぁ、ふたりは心具がなにかというのを知らないだろうし、この反応も当然のものだ。

 そんなふたりにアリスは、以前俺にしたのと同じ説明をふたりに行った。


「……とまぁ、そういう力です。ふたりも人間なので宿らせることはできるでしょう……まぁ、私からの好感度が足りなくて宿らないかもしれませんけどね」


 そんなことを言ってはいるが、少し前の呟きから考えるに宿らせることができるだろうと判断して話を切り出したのだろう。


「ただし、心具は異世界の力ですし……なにより、迂闊にこの力が広まると世界のパワーバランスにも影響が出ますし、機械製品もそうですが異世界の技術をやたら広めるとシャローヴァナル様からも文句が出る可能性があります。まぁ、今回はカイトさん関連なのでスルーしてくれるでしょうけど……ともかく、そんなわけでおふたりに関しては『新しい心具術者を増やせない』という制限をかけた上で、心具を宿らせることにします」

「……アリスって、そんなこともできるのか」

「私は大抵のことはできますよ。一般人から見たら全能に見えるぐらいです」

「俺にはその処置みたいなのは、しなくても大丈夫なのか?」


 俺もまだ目覚めていない……一向に目覚める気配もないけれど、心具を宿してはいる。シロさんの祝福があるから、魔法で制限をかけることは難しいのだろうが、その辺りはシロさんに頼めば問題は無いはずだ。


「いや、カイトさんの心具は実体のないタイプなので問題ないです」

「そっか、それなら……うん? アリスは俺の心具がどんなものか分かってるのか?」

「ええ、カイトさんが心具に目覚めてなくても、宿ってさえいるなら私のヘカトンケイルで使えますしね……どんな心具かはここで私が言っても面白くないでしょうし、目覚めた時のお楽しみにしておいてください」

「……ふむ、いまのところ一向に目覚める気配はないんだけど……」

「まぁ、本当に個人差が大きいので……極端な言い方ですが、私は生まれてすぐ心具に触れていますが、目覚めたのは12歳の時ですし、いつか目覚めたら便利だなぁぐらいの感覚で待っておくのがいいですよ」


 そう言って苦笑しながら、アリスは葵ちゃんと陽菜ちゃんに心具を触れさせる。


「どうです?」

「あ、はい。なんとなく宿ったような気が……」

「ストンってなにかが入ってきたような感覚がありました」


 無事にふたりにも心具は宿ったらしい。必ずしも戦闘向きの能力であるとは限らないらしいのだが、それでも目覚めれば今後のふたりの冒険者活動の大きな助けになるだろう。

 アリスにお礼を言ったあと、自分たちに宿った心具はどんなものだろうと話すふたりをどこか微笑ましく思いながら眺めていると、アリスが話しかけてきた。


「そういえば、カイトさんの身近で純粋な人間となると、他にはリリアさんがいますね」

「……リリアさんにも心具を宿らせるの?」

「……宿らせられないとは言いませんが、あの人の場合は戦闘力に関してはこれ以上なにかをする必要もないでしょう。それに……」

「それに?」

「心具ってのは本人の才能や戦闘力が高ければ強力な能力が宿るわけでもないですし、戦闘向きじゃない能力だってあります。けど、なんですかね? なんとなく、あの人に心具宿しちゃうと……どえらい強能力の心具が目覚めそうな気がするんですよね。なので、保留で」


 ……なんとなく、その気持ちは分かる。




~おまけ・各キャラ心具~


【アキレウス】(術者:柚木陽菜)

足甲型の心具であり、壁でも空中でも自在に走ることができる能力。攻撃能力はないが、元々スピード型の陽菜との相性が極めてよく、汎用性は極めて高い。

また、あくまで心具の名称はあくまで名称であり、別にカカトが弱点だとかそういうことは無い。



【アースガルド】(術者:楠葵)

巨大な杖型の心具であり、本人が『土属性』と認識している魔法であれば『あらゆる制限を無視して発動可能』という能力を持つ。

葵が土属性と認識してさえいれば、本人の魔力や技術では発動できない魔法でも行使できる極めて強力な能力ではあるが、一度の発動につき最大魔力の25%を消費し、消費した魔力は一定時間回復しないという制限があるため、汎用性の高い陽菜の心具とは異なり切り札の側面が強い。



【オートクレール】(術者:リリア)

大剣型の心具。この心具を持って放つ攻撃を『本人の才覚で到達できる理論上最高の威力』にする効果があり『限定的な運命の臨界点』ともいえるアリスが予想した通りのどえらい強能力。

ただし効果は『一撃のみ有効』であり『一度使えば再使用まで1時間』というクールタイムによる制限があるが……このクールタイムは『時間を加速させることで短縮可能』であるため、仮にリリアがこの心具を手に入れたら彼女は攻撃面のみは六王級になる。

保留にして正解だった。


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― 新着の感想 ―
[一言] つまり、ラストバトル(運命の臨界点発動状態)では、常に六王級の攻撃で蹂躙してたわけか そりゃ、上級神含めてやられるわなぁ
[気になる点] 『本人の才覚で到達できる理論上最高の威力』 この文言によれば、理論上最高とはいえ必ず急所に当たるとか防御に失敗するとか受ける側への影響が出るわけじゃないっぽい? 登場した心具に比べると…
[一言] 心具ってアリスちゃん専用装備みたいな所があったから、大してなんも思ってなかったけど…普通に考えたらめちゃくちゃロマンあるやん…(((o(*゜▽゜*)o)))
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