新人冒険者と伝説の義賊⑤
【お知らせとお詫び】
Twitterにも記載しましたが、5月19日発売の十一巻においてルナマリアのエピソードが八巻のものと被っていました。
文字数が足りずに先回しにしたのをすっかり忘れていました。大変申し訳ありません。
今後は注意しますので、今回に関してはサッと6ページほど読み飛ばしてください
無事に依頼の受注を完了したあと、俺たちは引き続きハプティさんの説明を受けつつ街中を歩いて移動していた。
「ちなみに、当たり前ではあるけど基本的に魔物の生息場所ってのは、人里から離れた場所が多いから、準備はしっかりとしておかないと、途中で補充とかは難しいからね。なにより水は必ず多めに持っておいた方がいいね。まぁ、皆マジックボックス持ちみたいだから、そこにしっかり入れておけばいいさ」
「なるほど……ところで、いまどこに向かってるんですか? 転移屋でしょうか?」
葵ちゃんがハプティさんの言葉に頷いたあとで尋ねる。転移屋というのは、書いて字の如く転移を商売としている店のことだ。
というのも基本的に転移魔法の魔法具というのは、そもそも持っている人は少ない上に、それほど多くの地点を登録することはできない。
俺がクロに作ってもらったものが規格外すぎるだけで、実際は最新式の転移魔法具でも登録可能地点は最大十ヶ所、再使用時間は約一時間ぐらいらしい。
その上数ある魔法具の中でもトップクラスに高価であり、基本的に個人で所持している人はほとんどおらず、所持しているのはそこそこ大きめな商会や一部の大商人、あるいは貴族とのことだ。
商売人にとっては転移魔法というのは非常に有益なものだろうし、高いお金を払って購入するだけの価値があるが……すべての人が買えるわけでは無い。
では買えない人は転移するのは諦めて、馬車などで道を行かなければならないのかといえば、必ずしもそういうわけでは無い。
転移魔法の需要が高いのは言わずもがなであり、そうなれば当然それ自体を商売とする人も現れる。それが転移屋というわけだ。
まぁ、それでも馬車や飛竜便に比べたら桁外れに高い上、転移できる場所はある程度有名な観光地や大都市なので融通は効きにくいが、それでも転移魔法具を購入するよりははるかに安上がりなので需要は高い。
シンフォニア王都にも転移屋はあり、国内のいくつかの都市と、アルクレシア帝国、ハイドラ王国それぞれの首都への転移が可能だ。今後ふたりが冒険者として活動していくうえで、利用する機会も多いかもしれない。
「うん? カイトの家に戻ってる」
「え? 俺の家? なんで?」
「幻王様から聞いたんだけど……持ってるんでしょ?」
「なにをですか?」
「世界座標を術式登録さえすれば、どこへでも転移できて再使用制限も人数制限もないっていうとんでも性能のお宝……それ使っていこう。転移屋は高いし、転移した街から目的地まで移動しなくちゃいけないし」
……そういえばあったな、俺の部屋にそういうとんでも性能の門……世界座標の登録っていう作業が難しいので俺個人では追加はできないが、登録数の制限も距離の制限もまったく無い上、転移不可の結界も無視して転移可能な世界の神が作った逸品が……。
今後葵ちゃんと陽菜ちゃんが遠出する時は、別に転移屋行かなくても俺がアリスに頼んで主要都市とか登録してもらっておけば便利に使えそうだな。俺個人としては、あの門を使う必要があるのは神域に行く時ぐらいで、あとは今使ってる転移魔法具で事足りるわけだし、それもいいかもしれない。
「ふむ……ちょっとそれで思ったんですが、今回はいいとして今後ふたりだけで依頼をこなしに行って帰ってくる時用に、ふたりも転移魔法の魔法具を持っていた方がよさそうですね」
「……いや、カイト、転移魔法の魔法具ってめっちゃ高いんだよ。いや、君なら買えるだろうけど、それを渡したりしてもふたりが委縮しちゃうでしょ」
う、う~ん、たしかに買ってあげるというには高価すぎるか……お金的には問題ないにせよ、俺が逆の立場だったとしても心情的に申し訳なさ過ぎて受け取れないな。
なんか他にいい手があれば……。
(問題ありません。あの門を使用して転移した場合は、念じれば快人さんの屋敷の玄関に帰還できる……という風に『いま作り変えました』)
え? なにそれ、凄い……完璧な機能じゃないですか。それならふたりとも問題なく帰還もできる上に、戻ってくる場所は俺の部屋ではなく玄関なのでプライベート的な配慮もOKというわけだ。
シロさんすげぇ、完璧な配慮に手早い仕事……本当に頼りになるというか、いつも本当にありがとうございます。
(ふふふ、私は頼れて気遣いもできる恋人ですからね。もっと褒めてもいいのですよ?)
最近本当にお世話になる機会が多いですし、本当に助かってるので、是非今度またなにかお礼をさせてください。
素晴らしい対応をしてくれたシロさんに心の中で深く感謝したあとで、ハプティさんたちの方を向き、シロさんが調整してくれたので帰還に関しても問題なくなったことを告げた。
「……ねぇ、アオイ、ヒナ? カイトがなに言ってるか分かんないんだけど……い、いや、意味は分かるんだけど理解が追い付かないっていうか……ボクがおかしいのかな? それとも世界がおかしいのかな? あと気のせいかな? 空にクソでかい『ドヤァ』って文字が見えてるんだけど……」
「ハプティさん、諦めてください。快人さんはだいたいこんな感じです。リリアさんもよく言ってますが、快人さんなので仕方ないって精神じゃないと持ちません」
「まぁ、快人先輩ですからね……あと、空の文字は私にも見えてるので気のせいじゃないと思います」
シリアス先輩「あの門が凄いチートアイテムになったのは分かったけど……正直、アリスとかに頼めば送り迎えぐらいしてくれるんじゃない?」
???「というか、シャローヴァナル様にお願いしても聞いてくれそうですね。まぁ、毎回頼むっていう手間は省けるでしょうが……というか、本来は希少なはずの転移魔法ですが、カイトさんの周囲に使える奴がゴロゴロし過ぎてて、むしろ使えないやつの方が少数ですからね……」
 




