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閑話・大地の華①

次話に苦戦中、困った時の閑話というわけで数話程度閑話です。時期的には建築パーティ~海水浴の間の出来事です




 森林都市ユグフレシス、リリウッドさんが治めるこの都市はメギドさんが治める都市と並んで魔界でも最大の規模だという話を聞いた。

 全体的な広さとしては、シンフォニアの王都より少し大きいぐらいだろうか? 俺もリリウッドさんに会いに来た帰りに少し観光したりしたこともあるが、まだまだ回っていない場所は多い。

 そんなユグフレシスで一番多く足を運んでいるのは中央にある巨大な樹……世界樹の麓にあるリリウッドさんの職場兼住居だ。

 六王であるリリウッドさんが住む場所だから、居城でもいい気がするが……イメージとしては大きな木をくり貫いて作った職場のような感じで、かなり大きいのだが城という雰囲気ではない。


 今回なぜリリウッドさんの元を訪ねてきたかというと、以前六王祭で記念品としてもらった世界樹の苗について相談したいことがあったからだ。

 というのも六王祭で苗を貰ってからは大きめの鉢植えを買って部屋の中で育てていたのだが……世界樹は成長が早いのか、地球に戻っていた二年ほどでかなり成長しておりそろそろ室内に置いておくのは厳しいサイズになってきた。

 そして今回俺も自分の家を建てたこともあり、世界樹を部屋から庭に移そうかと考えているのだが……特殊な樹なのでなにか注意することがあるかどうかと、最終的にどのぐらいのサイズになるのかという辺りをリリウッドさんに一度聞いておこうと考えた。


 リリウッドさんには世界樹の果実を沢山もらったりといつもお世話になっているので、今回は手土産も持ってきた。なにがいいだろうかとアリスに相談したところ、美味しい水がいいのじゃないかと言われ店も紹介してもらったのでそこで買ってきた。

 ……ちなみにこの水、500mlぐらいのサイズで日本円にして『5000円』ほどである。いったいどんな秘境から汲んできたら、水が500mlで5000円になるのだろうか? しかも、商品として存在してるってことは買っている人もいるということだ。

 まぁ、リリウッドさんみたいに食事等をせず水だけを飲む方も居るわけだし、需要はあるのかもしれないな。


 そんなことを考えているとリリウッドさんの職場兼住居もとい居城の入り口が見えてきた。そして同時に見知った人物を発見した。

 これはとても運がいいというか、ありがたい。何度も会っている方だし、正直俺が知っているリリウッドさんの配下の方の中では一番話しかけやすい相手でもある。

 するとちょうどそのタイミングでその人も俺に気付いたのか、掃除をしていた手を止めて俺に顔を向けて微笑んだ。


「こんにちは、カイトさん。リリウッド様に御用ですか?」

「こんにちは、『カミリアさん』。ええ、一応ハミングバードで連絡はしたんですが……」

「なるほど、それでは客室にどうぞ、すぐに取り次ぎますよ」

「ありがとうございます。すみません、掃除の途中に」

「いえいえ、気にしないでください。ただの趣味ですから」


 優しく対応してくれた女性はカミリアさんといって、リリウッドさんの配下の方だ。150~160cmくらいの身長で茶色のセミロングヘアを緩く大き目の三つ編みで編んで肩から前に流しており、髪型は少しライフさんに似ている。

 勝手なイメージだがどことなくスウェーデンとか、そういう地域の伝統衣装っぽいイメージが湧くこげ茶とクリーム色の落ち着いた色合いの服を着ていて……なんというか、こういうと失礼かもしれないが、パッと一目見た感じ『ザ・村娘』といった雰囲気の方である。


 いや、決して馬鹿にしているわけではないのだがカミリアさんの見た目については、本当に言葉で説明するのが難しい。目の眩むようなというわけではないが、可愛らしく整った顔立ちで間違いなく美人ではあるし、優し気な微笑みがとても似合う方ではあるし、一目見て優しい方だというのが伝わってくる感じだ。

 ただ、全体的な雰囲気というか色合いというか……本当に失礼な言い方で申し訳ないのだが、村娘という印象が頭に浮かんできてしまう。

 これは、なんでだろう? コレっていう目立つ特徴がないからだろうか? 強いてあげるなら草が二本絡み合うようなデザインの髪留めぐらいだからだろうか……。


 ともあれそんなカミリアさんとは、いままで何度か会って話をしている知人というよりは友人と言っていい間柄だと思う。

 というのもカミリアさんは家事全般が趣味らしく、よくリリウッドさんの居城の清掃をしていたりするので今日のように偶然会う機会が多い。というか、実は俺は最初メイド服を着ていないだけでリリウッドさんに仕えるメイドなんだと勘違いしてしまい、掃除していたカミリアさんにリリウッドさんに取り次いでもらえるようお願いしてしまった。

 それが切っ掛けで知り合い、リリウッドさんの仕事が忙しくて客室で待つ時とかなんかにお茶を用意してくれたり、話し相手になってくれたりして仲良くなった感じだ。


 カミリアさんの案内で客室に着くと、カミリアさんは俺を中に通したあとで少し待ってくださいと言って部屋から出ていった。

 そして少しすると、なにやら申し訳なさそうな表情を浮かべて部屋に戻ってきた。


「……申し訳ありません。リリウッド様は仕事中のようで、あと15分程度かかるみたいです」

「全然大丈夫ですよ。急に訪ねたのはこちらですし」


 これは余談ではあるが、リリウッドさんは仕事を途中辞めにしてでも俺が訪ねてくれば俺を優先してくれていたが、さすがにそれは申し訳なかったので以前俺の方から仕事を優先してほしいとお願いした。

 今回も今朝急にハミングバードを送っての急な訪問だし、まったく問題ない。というかむしろ、もっと待つことになっても大丈夫である。

 そんなことを考えていると、俺の前に木のコップが置かれた。


「よろしければ、お茶をどうぞ」

「いつもありがとうございます」


 カミリアさんがよく淹れてくれるお茶は、緑茶っぽい味わいで個人的にはかなり好きだ。実は内心カミリアさんに会った時点で少し期待していたりもしたので、これは本当に嬉しい。

 カミリアさんは俺にお茶を出したあとで、対面の席に座りながら微笑みを浮かべて口を開く。


「……では、今回もご迷惑でなければ少しの間、私が話し相手になりますね」

「はい、ありがとうございます」

「ああ、そういえば先日はパーティに招待していただいてありがとうございました。凄い方ばかりで緊張しましたが、とても楽しかったです」


 リリウッドさんを待つ時、今回のようにカミリアさんが話し相手になってくれることがよくある。カミリアさんは親しみやすい雰囲気で話しやすく、こちらが話しやすい話題をいい感じに振ってくれる。

 今回もカミリアさんが切り出してくれた話から、どんどん会話は弾んでいった。


「……そういえば、俺の見間違いかもしれませんが……カミリアさん、パーティの後半給仕みたいなことしてませんでした?」

「あ、あはは。アレはその……アイン様に言われてですね」

「え? アインさんとお知り合いなんですか?」

「し、知り合い……であることは間違いないですね。ただ、その……どうもアイン様は、私のことをメイドであると勘違いしているようでして……『こんなことろで偶然会えるとは、ありがたい。少し手伝ってもらえませんか? 一流のメイドである貴女になら安心して任せられます』と言われて……」

「それで、給仕みたいなことを……」

「どうも昔からああいう押しに弱くて、つい反射的に『はい、わかりました』と……」


 そう言って苦笑するカミリアさんを見て、俺も思わず笑みを零した。





シリアス先輩「……なっ……すでに知り合い……だと……こ、これが、リリアが普段味わっている気持ちか……」

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― 新着の感想 ―
[良い点] シリアス先輩とまったく同じ感想を抱いてしまった……
[一言] 更新お疲れ様です!今回はカミリアさんの回でしたが、快人さん既に知る仲になっていた! 改めて確認したら実はみたいな事になってるだろうなぁw カミリアの仕事ぶりがアインさんに認められるって凄い事…
[良い点] 恋人いがいでは、リリウッドが一二を争うくらい接点が多いだろうから当然眷族も知り合いだわな [一言] メイドは職業ではなく振る舞い、生き方、立ち位置とすれば メイドな騎士、メイドな教師、メ…
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