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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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閑話・シンフォニア王国~界王来訪~

 シンフォニア王国、謁見の間。
 本来ならシンフォニア王国の国王に対し謁見を行う場であるが、現在は平常時とは大きく違う様相が広がっていた。
 国王が玉座を降り、来賓に対して片膝を付き頭を垂れ、宰相を初めとした国の重鎮達も同様の姿勢を取ると言う、本来そうそう見る事が無い光景。
 それはひとえに、今この場に訪れている者が国王より遥かに強い権威を持っているからに他ならない。

『突然の来訪になり、申し訳ありません』
「いえ、こうしてご尊顔を拝見出来る事、光栄の至りに存じます。『界王・リリウッド。ユグドラシル』様」

 そう、現在王宮を訪れているのは……魔界の頂点たる六王の一角であり、1000年前からシンフォニア王国と繋がりの深い存在である界王・リリウッド・ユグドラシル。
 自然豊かなシンフォニア王国、その恵まれた豊穣をもたらしている存在であり、正にシンフォニア王国において最も重要な来賓と言え、万が一にも無礼があってはいけない。

『早速ではありますが、シンフォニア国王・ライズ・リア・シンフォニア18世』
「は、はい!」

 静かに響く声を受け、シンフォニア国王……ライズはビクッと肩を動かす。
 告げられた声は、非常に温厚であるリリウッドにしては珍しく、冷たく威圧感のあるものだった。

『異世界人、ミヤマ・カイトに対し、意図して夜会への招待を行わないと言う不平な扱いをしましたね』
「ッ!? そ、それは……」

 リリウッドの言葉を受け、ライズは顔を青く染めて冷や汗を流す。
 その一件に関してはライズも最近非常に頭を悩ましている問題……いや、過去の失態だった。
 彼は年の離れた妹であるリリアを非常に溺愛しており、リリアの家に男が滞在するのが嫌だった……しかし、相手は異世界人であり、無闇に脅し等をかける訳にはいかなかった。
 その為ささやかな嫌がらせとして招待状を送らなかったのだが、それが彼にとって予想外の事態を引き起こした。

 その一件以降、明らかに冥王・クロムエイナが王宮に敵意を持つようになり、どこから伝わったのか分からないが、王宮にも数多く存在する冥王の信奉者達がライズを毛嫌いするようになった。
 何とか弁明の機会をと思って冥王に使者を数度送ったが、全てメイドに半殺しにされて帰って来た。
 その影響もあり、王宮内でのライズの立場はかなり悪くなっていたのだが、ここに来て更にリリウッドからも追及されるとは思わなかった。

 ライズは何とか弁明の言葉を告げようとするが、それよりも早く、そして冷たくリリウッドが告げる。

『勘違いをしない様に……私は質問しているのではありません。眷族より話は全て聞いた上で、確信を持って告げています。それとも、私の眷族が私に対して偽りを告げたとでも?』
「……い、いえ、間違いありません」
『……その行いが、貴方個人によって行われたものか、国家の意思によって行われたものか、その経緯を問うつもりはありません』

 周囲に音は無い。王の家臣達も何も告げる事は出来ない。告げる事は即ち、界王に異を唱える行為であり、もしそんな事をすれば、その者の立場は失墜する。
 それほどまでに界王と言う存在は、シンフォニア王国にとって重要であり、彼女の怒りに触れてしまえば、シンフォニア王国には滅び以外の道は残されない。

『本題を告げましょう。私が求める事は一つ。異世界人、ミヤマ・カイトに対して『公式の場で、明確かつ誠意ある謝罪を行う事』、意味は分かりますね?』
「は、はい……し、しかし、それは……」

 リリウッドの要求は、即ち国王に公式の場で頭を下げろと言うものであり、体面という観点で見ればライズにとって凄まじい打撃となるものだった。
 返答を言い淀むライズに対し、リリウッドは冷たい目を向けながら更に言葉を続ける。

『もし、迅速にソレが行われなければ……私は今後一切、シンフォニア王国との繋がりを断ちます』
「ッ!?!?」

 その言葉にライズだけでなく、周囲全ての人間が目を見開く。
 リリウッドは、シンフォニア王国の豊穣を司る存在と言っても過言ではなく、エルフ族は勿論の事、農民の多くもリリウッドを神の様に信仰している。
 そのリリウッドがシンフォニア王国を見限ったとなれば、エルフ族、妖精族、精霊族、農民の多くが一斉に王宮へ矛を向ける事になる。
 いわばこの言葉は、シンフォニア王国に対しての滅亡宣告とすら言える程に重いものだった。

『良いですね? シンフォニア国王』
「は、はい。迅速に対応致します」
『よろしい……ただ、これで話を終わらせるのも酷でしょう。なので、貴方達にとって有益と言える内容も伝えておく事にします』
「有益な情報、ですか?」

 もはや要求を了承する以外に道は無く、ライズは力なく項垂れながらリリウッドの言葉に従うと返答する。
 するとリリウッドは先程までの鋭い気配を和らげ、微笑みを浮かべながら追加の情報を与える。

『異世界人、ミヤマ・カイトと交流を深める事は、貴方達にとって有益であると言えます。なぜなら彼は、冥王、更には死王と非常に友好的な関係を築いています』
「なっ!? 冥王様だけでなく、死王様とまで!?」
『ええ、なので貴方達が彼と敵対すれば、同時にその二方も敵となります。しかし、彼がこの国に好意的な印象を抱いてくれれば、それは同時に冥王と死王にとってもこの国の価値が高くなる事を意味します。友好的に接しておいて損は無い相手ですよ』

 快人と友好的に接する事の利点を説いた後、リリウッドは少しの間沈黙する。
 リリウッドから伝えられた衝撃の事実に、謁見の間に居る者達がざわつき、それが収まるのを見計らって再び言葉を発する。

『……必要な用件は伝え終わりました。私はこの後リグフォレシアへ赴きますので、ここで失礼させていただきます。シンフォニア国王……先程の件、迅速な対応を望みます』
「はい。必ず、誠意ある謝罪を行います」
『よろしい。では、失礼致します』

 その言葉と共に、リリウッドの姿は謁見の間から消える。





















 王宮を出たリリウッドは、リグフォレシアに向かう予定を考えながら、先程の事を頭に思い浮かべる。

『……(アレで良いでしょう。ただ謝罪を強要しただけでは、ミヤマ・カイトさんに対し下らぬ恨みを持つ者も出る。頭を下げてでも友好に接するべき相手と認識させるのが一番良い)』

 これで一先ず、クロムエイナとアイシスが王宮を襲撃する様な事態にはならないだろうと、安堵するリリウッドの下に一人の眷族が近付く。

「界王様、お耳に入れたい事が……」
『何でしょう?』
「実は、つい先ほど、リグフォレシアに住む界王様の眷族より伝達がありまして……エルフの森に生息するブラックベアーが……絶滅したそうです」
『……は?』

 眷族が静かに告げた言葉、その信じられない内容にリリウッドは硬直する。

『な、なぜ? 宝樹祭の参加者に爵位級高位魔族でも混じっていたのですか?』
「いえ、それが……死王様によって絶滅したそうです」
『アイシスが!?』
「はい。まだ詳細は不明なのですが、どうも宝樹祭に参加していた異世界人と思われる男性がブラックベアーに襲われ、その後死王様が現れて一瞬でブラックベアーを絶滅させたと……」
『……』

 続けられた報告を聞き、リリウッドは頭を抱える。
 アイシスの手によって絶滅させられたブラックベアー、襲われた異世界人の男性……状況は何となく想像できたが、これからの事を考えると目眩を覚えた。

『……予定よりやや早いですが、私はすぐにリグフォレシアに向かいます。そしてまずは、森に死の魔力の影響が出ていないかを調べる事にします。あちらにはその様に』
「はい!」

 リリウッドの想定通りの展開であれば、アイシスは間違いなく凄まじい怒りと共に死の魔力を放った筈であり、その余波はエルフの森の木々にも影響を及ぼしている事が想像できた。
 厄介事を一つ解決したと思ったら、更に厄介な出来事が降りかかってくる。
 リリウッドは大きく肩を落とし、転移魔法を使ってリグフォレシアへと移動していった。




















暴れる死王、事後処理するのは界王……界王まじ苦労人。
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