フレアベル・ニーズベルト⑧
フレアさんが望んだリリアさんへの挨拶の場は早急に準備され、現在応接室でフレアさんとリリアさんが向かい合っている。
リリアさんからは強い緊張が伝わってくるものの、それ以上に今回は歓喜の感情も伝わってくる。ルナさん曰くリリアさんはフレアさんのファンらしいので、初対面とはいえ相手のことをよく知っているのも心の余裕に繋がっているのかもしれない。
ある程度簡単な自己紹介が終わってしまえば、雰囲気は徐々に穏やかに、会話しやすいものへと変化していった。
「……といったわけで、我の部下たちが世話になる。事前によく言い聞かせているので、リリア公爵に迷惑をかけるようなことは無いと思うが……なにか問題があれば、我に一報いただけると助かる」
「分かりました。あまり大きいとは言えない飛竜便でご不便をおかけする部分もあるかと思いますが、どうかよろしくお願いします」
うん、いままでようなテンパっている感じはまったく無い。緊張も解けてきたのか、フレアさんと話すリリアさんはどこか楽しそうに見えた。
そのまましばらく穏やかに雑談を交わしたあと、話がひと段落したタイミングでリリアさんがなにやら遠慮がちに告げた。
「……あ、あの、ニーズベルト様。もし、可能であればで結構なのですが……」
「うん?」
「えっと、その、サ、サインを……いただけませんか?」
申し訳なさそうな表情でサインが欲しいと色紙を取り出したリリアさんを見て、フレアさんは優し気な笑みを浮かべてから色紙を受け取った。
「ああ、もちろん構わない。リリア公爵の名前も入れたほうがいいか?」
「あ、はい!」
子供のようにはしゃぐリリアさんとは対照的に、フレアさんはどこか慣れた様子で色紙にサインを描き込んでいく。なんというか、率直に言って少しだけ意外だった。
いや、意外というのは失礼かもしれないが、フレアさんはなんというか硬派なイメージだったのでサインに慣れている様子に少し驚いた。
しかし、よくよく考えてみればフレアさんは世界的にも有名であろう六王幹部のひとり、実際今日も騎士の人たちを含めそこそこの人が人化したフレアさんを知っている様子だった。
そして大半の六王幹部は十年に一度の勇者祭はもちろん、それ以外にも祭りや行事に招かれることもあるみたいなので、そういった場などでサインを求められる機会も多いのかもしれない。
聞いた話だと唯一例外なのは幻王配下幹部の十魔で、基本的に勇者祭であってもパンドラさん以外は表に出てこないらしい。六王幹部のなかでも謎の多い者たちって感じらしい。
そんなことを考えているとサインを書き終わったみたいでフレアさんが色紙を返し、リリアさんが何度も頭を下げてお礼を言っていた。
そのあとは再び雑談がとなり、ふとフレアさんが思い出したような表情で告げる。
「……そういえば、リリア公爵はまだ歳は20代という話だったな?」
「え? あ、はい」
「なるほど……いや、貴公の噂はたびたび我の耳にも届いていたが、こうして目の前で見るとよく分かる。素晴らしいものだ、実に洗練された強者といえる」
「お褒めにあずかり、光栄です」
「神界での戦いの際にはあまり見る余裕がなかったのだが、大剣を武器としているのであったな? 流派などはあるのだろうか?」
なんだろう? 気のせいかフレアさんが少しウキウキしてるみたいに見える。なんとなく「一回戦ってみたいなぁ」とかそんなことを考えているであろうことが伝わってきた。
まぁ、とはいえ、ソレをちゃんと内に抑えている時点でメギドさんとかよりはだいぶマシではあるが……。
「いえ、特に流派はありませんが、基礎は騎士である友人に教わりましたので……強いていうのであれば騎士団流、ですかね?」
「なるほど……雰囲気を見えればわかる、相当洗練しているのであろうな。機会があれば一度手合わせをしてみたいものだ」
「私では力不足かとは思いますが、そうですね、機会があればぜひ」
リリアさんの言葉を聞いてフレアさんは、本当に満足そうな笑みを浮かべて頷いたあと、ふたたび口を開く。
「……これは戦王配下の者の方が詳しいであろうが、魔界にも新旧さまざまな武術が存在している。我は竜なので己に適しているものは限られるが、それでも学ぶことは多……む?」
「……フレアさん? どうしました?」
「そうか――思い出した!?」
「はい?」
楽しげに話していたフレアさんが突然顎に手を当てて考え込み、気になって尋ねてみると……直後にフレアさんは目を見開いた。
「っと、すまぬ。急に大きな声を出してしまったな」
「いえ、お気になさらず……それで、フレアさん、なにを思い出したんですか?」
「ああ、戦友の家にメイドのイルネスという方が居たはずだ。先ほど少し話す機会があったのだが、どうにも以前どこかで会ったことがあるような気がしたのだ」
「イルネスさんとですか?」
「ああ、しかし明らかに伯爵級レベルの強者であるというのに、どこであったか思い出せなかった」
……たしかに、イルネスさんは伯爵級高位魔族って話だし、たぶん元々は魔界に住んでいたのだろう。だから、どこかでフレアさんと会ったことがあると言われても、そこまで違和感はない。
しかし、そういえばイルネスさんの過去ってほとんど聞いたことがないし、正直かなり興味がある。そしてそれはリリアさんも同じらしく興味深そうな表情でフレアさんの言葉を待っていた。
「それで……イルネスさんとどこであったか思い出したんですか?」
「ああ……といっても、直接顔を合わせたことは無かった。だが、噂は聞いたことがある。そう、アレは魔界に六王や爵位級という言葉が生まれる以前の話だ。『救済者』と……そう呼ばれた武人の話だ」
シリアス先輩「邪魔ものどもは……よし、いないな! なら今日こそ私が質問に答えてやろう!」
Q、死王配下の数などが本編より大百科の方に先に書いてあったのはなぜ?
シリアス先輩「これは作者が以前Twitterで呟いてたのを、フォロワーが記事にしてくれたみたいで作者は一切記事の編集には関わっていない。ただどうも、ジェ●ンニ並に仕事の早い人がいるらしく、作者が呟いた翌日にはもう記事に追加されてたりする。チェントとシエンの項目も即出来てたしな……」
Qブルークリスタルフラワーはスピカが訪れた場所にしか咲かない?
シリアス先輩「知らない、次」
???「いやいや……質問への解答で『知らない』とかは駄目でしょ……えっとこれはですね。一輪だとか少数咲いてる場合は普通に咲いた場合が多いですが、群生している場所に関しては99%ぐらいスピカさんが訪れた場所です。ブルークリスタルフラワーは極めて咲きにくい花なので、大量に同じ場所に咲いているのはスピカさんが原因ですね」
Qスピカはそれだけ大きな魔力を持ちながら、なぜ存在が把握されていないの?
???「これは精霊族の特徴ですが、精霊族ってのは精霊体として出現しない限りは本体である花や木の外に魔力が出ないので、普通の植物程度の微弱な魔力しかないんですよ。ただし、リリウッドさんの本体である世界樹のように、精霊が宿らなかったとしても樹自体が強力な魔力を有している植物もありますので、すべてというわけではないですがね」
シリアス先輩「といわけだ! また質問があれば、このシリアスオブシリアスこと私が、気まぐれに分かりやすく教えてあげよう!」
???「……よくもまぁ、そんなやり切った顔できますね?」
 




