海水浴後編④
【お知らせ】第十巻特装版の予約締め切りは11月16日(月)までとなりますので、予約忘れのないようにご注意ください。
くじ引きで対戦順を決めた結果、最初はクロとジークさんのペア対俺とアリスのペアの勝負になった。ルール的には基本的なバレーボールと同じで、3タッチ以内に相手のコートに返せばいい。
今回はあくまで遊ぶのが目的なので勝負は5点先取という、一試合が短めの形式でサーブに関しては直前の得点に関係なく対戦する計4人で順番に行う。
俺が参加する試合に関しては、他の3人は俺の身体能力に合わせて加減する。少しでもオーバーしたら失格とかそんな厳しいものでは無く、各自調整はある程度でOK……とまぁ、大まかなルールはこんな感じである。
「さて快人さん……身体能力を快人さんに合わせるとはいえ、反射神経や動体視力はそうもいかないので、身体能力的にはどうしても快人さんに少しハンデがありますね」
「なるほど……なんかいい作戦はあるか?」
試合前にアリスと軽く作戦会議……なんか皆水着の中に着ぐるみがいると、なかなかに違和感が凄いが……まぁ、アリスだし仕方ないか、深く考えたら負けだ。
「ええ、もちろん。というより、この反射神経や動体視力の差ってのは、必ずしもクロさんたちの有利に働くわけではありません。特に今回は、全員快人さんの身体能力に合わせるわけですから『反応できているのに体がついていかない』というパターンもあるでしょうし、その辺りが狙い目ですね」
「ふむふむ」
「あと、身体能力の調整は各自がそれぞれ行うので、快人さんと対戦するチームは際どいボールが来ると……『快人さんならこのボールに届くのか?』っていう疑問によって若干のタイムラグも生まれるでしょうし、必ずしもこのルール上であれば快人さんが不利というわけではないんですよ」
さすがというべきか、こういった状況分析をすらすらと行える辺り、本当に頼りになるやつである。真面目な話を着ぐるみが台無しにしてるとか、そんなのは些細な問題……と思いたい。
「……まぁ、アレコレ難しく言いましたが、付け入る隙はあるってことです。その辺りの隙を突くのは私に任せて、快人さんは来たボールに全力で対応してください」
「ふむ……それってつまり」
「ええ、勝ち負けなんて気にせずビーチバレーを楽しみましょうってことっすね」
「なるほど、分かりやすい」
まぁ、たしかになにかしら賞品があるわけでもないミニゲームみたいなものだし、あれこれ考えるよりは楽しむのが一番だ。
そんな感じで作戦会議を終えた俺たちは、シロさんがちゃっちゃと用意してくれたコートに向かった。
それぞれが準備運動などを行っている光景を眺めていたシャローヴァナルの隣に、アリスが自然な動きで近付きシャローヴァナルにだけ聞こえる声で話しかけた。
「……アレ、私じゃねぇんすけど……というか、アレ完全にあの人じゃないですか……」
「……今回ばかりは素直に謝罪します。申し訳ありません」
「いや、まぁ、状況見れば無茶言ってきたのはあっちなんですけど……どういうやり取りがあったら、あの状態になるんすか?」
アリスの問いかけに対し、シャローヴァナルは一瞬疲れたような表情を浮かべたあと……快人とペアになっている着ぐるみ……を動かしているエデンについて話し始めた。
「どうやらこちらの様子を見ていたみたいで、快人さんのペアが居ないという状況で参加したいと言ってきたんです。拒否するというのも考えましたが、彼女にはいままでもたびたびこちらの要求を受け入れてもらっていた……我慢を強いる機会が多かったので、これ以上不満を貯めるのは悪手だと判断しました」
「あ~まぁ、たしかに新築パーティとの時とか不満げでしたもんね」
「はい。それと、今回の要求は『快人さんのペアとしてビーチバレーに参加したい』という……まぁ、彼女にしてみれば軽めの要求だったので……」
「拒否して後日また無茶な要求を言われるより、いざ暴走しても止められるメンバーが揃っているここに参加させた方がマシってわけですか……なるほど」
エデンがビーチバレーに参加する経緯を聞いて、アリスは納得した様子で頷いたあと、それでもまだ解決していない疑問を尋ねるべくシャローヴァナルに視線を送る。
その視線だけで、アリスがなにを聞きたいかを察したシャローヴァナルは、表情を変えずに軽く溜息を吐いてから説明を続ける。
「……いつもの姿のまま参加されては、萎縮するものも多いでしょうし、正体がばれないように着ぐるみを着用してアリスの振りをすることを参加条件にしました」
「だから、あんな格好で現れたってわけですか……」
「ただ、不思議だったのは、彼女がやけにアッサリその要求を飲んだことですね。文句を言ってくるかと思いましたが、ふたつ返事で了承しました。彼女はアレでいいんでしょうか?」
「まぁ、本人が納得してるなら……いいんじゃねぇっすか」
不思議そうに首をかしげるシャローヴァナルの横で、アリスは素知らぬ顔でコートに視線を向けた。
シリアス先輩「……見てたな全部、あとがきから……まぁ、それはそれとして、ふたつ返事で了承した? アリスの真似をするのを? なんでまた……あっ、そうか! 普通の人にしてみればアリスの真似なんて罰ゲームだけど、アイツにとっては『憧れのヒーローの真似』になるわけか……」
マキナ「改めて言われちゃうと恥ずかしいけど、そういうことだね!」
シリアス先輩「うぉぉ!? いつの間に……」
マキナ「ちょっと用事があって戻ってきたよ」
シリアス先輩「……用事?」
マキナ「そう! 活動報告に十巻のキャララフ公開の第二弾として、ついに私のキャララフが公開されたよ! 全世界の我が子たちお待たせ! 母だよ!!」
マキナ「どう? 大人の魅力あふれる姿でしょ! 我が子たち、母にいっぱい甘えていいからね!」
シリアス先輩「……この見た目であの地雷要素は……詐欺のレベルだろ……っていうかコイツやりやがった!? 過去他のキャラは誰もやってない、あとがきへのキャラデザ掲載をいともアッサリとやりやがった!?!?」




