海水浴中編⑦
照りつける太陽に白い砂浜、そして眼前に広がる海。夏というイメージを強烈に感じる景色の中、シロさんの祝福のおかげでキツイ暑さを感じることもなく、むしろアイシスさんの用意してくれた氷のパラソルのおかげで涼し気な空気を感じる。
そんな贅沢な空間の中で、美女ふたりと共にお洒落な工作……なんて贅沢な時間の使い方だろうか。そう、視線に映る全てが美しいと言っていい……たったひとつ、『自分が造った作品』を除く必要があるが……。
「……ねぇ、カイちゃん? それってさ、私がよく知らないだけで芸術的なやつとかそんな感じなの?」
「そう思います?」
「思わない」
「じゃあ、そういうことですよ。フェイトさんの方こそ……神界ではそういうのが流行りとか、そういうわけじゃないんですよね?」
「うん。作った私自身が『なにこの変なの』って思ってるからね」
さて、いい加減逃避はやめて現実……自分の作り上げた作品と向き合うことにしよう。現在俺とフェイトさんの前には、飾り付けの終わった砂時計が置いてある。まず先に結論を言ってしまうが……いい出来とは言えない。
いや、かといって、別にいちから作り上げたわけでもないので見るに堪えない出来というわけではない。そう、この、なんて言えばいいのか……一言で表現するなら、『微妙な完成度』である。
普通に飾り付けただけだから、そこまでおかしなことにはなってないのだが……なんだか『もっと上手くできたんじゃないだろうか?』という感想ばかり浮かんでくる。
作っている最中は結構いいかもと思っていたが、いざ完成してみたらなんか思ってたのと違うというか、そういう感じだ。
そしてそれは俺だけでなく、フェイトさんも同様で、自分の造った作品をなんか微妙な表情で見ていた。
「……ふたりとも……よくできてると……思うけど?」
優しいアイシスさんのフォローの言葉を聞き、俺とフェイトさんは一度顔を見合わせてから、ほぼ同時にアイシスさんの手元に視線を動かす。
「ねぇ、カイちゃん……アイちゃんの砂時計、綺麗だよね」
「えぇ、なんか全体的なバランスがいいんですよね。センスがあるというか」
「そう、それ! 全体的なバランスだよ! いや、確かにアイちゃんの言う通り、私のも悪くはないと思うんだけど……なんかこう、もっと綺麗にできたんじゃないかなぁって思うんだよ。ただ、具体的にどこをどう直せばいいのかは分からない」
「あっ、それ、俺もまったく同じ気持ちです。ちょっと手を加えればもっとよくなりそうなのに、具体的な方法が思い浮かばないというか……」
なんというか、美的センスの差が出てきたという感じかもしれない。実際、手先の器用さに関しては、俺たち三人にそこまでの差はないと思う。ただ、色合い的なバランスだとか、全体的な配置だとかは……アイシスさんが飾り付けた砂時計がぶっちぎりでクオリティが高い。
こう、お洒落な部屋に置いてあっても違和感がない出来である。対して俺とフェイトさんの作品は、悪くは無いのだが……『夏休みの工作感』が強い。
「まぁ、たしかにアイちゃんってそういう美的センスみたいなのあるよね。普段の服も、ちょっと変わってるけど凝った造りだし」
「うん? アイシスさんの服って……たしか魔力で作ってるんでしたっけ?」
「……うん……魔力の物質化で……作ってる」
たしか、クロも普段着ている服は魔力で作っているって言ってた覚えがある。そう考えると、普段からよく色合いやフリルの感じを変えているお洒落なアイシスさんは、それも全部自分で調整して服を買えていると考えると、フェイトさんの言う通り美的センスは高い。
「というか、私たち神族は創造された時に、シャローヴァナル様から法衣を下賜されて、ソレを着てるけど……爵位級の高位魔族とかは大抵、魔力を物質化して服を作ってるよ」
「そうなんですか?」
「うん。まぁ、そのぐらいのレベルになると、自分の魔力で作ったものじゃないと脆くて使いづらいだろうね」
「へぇ……なるほど」
「……けど……例外も……いる」
言われてみれば圧倒的な強者であるアイシスさんやクロの動きに、普通の服は耐えれないだろう。六王や最高神が基本武器を持たず素手なのも、それが理由なのだろう。アリスはナイフを武器にしてるけど……。
「あ~アレだね。シャルたんところの幹部の……名前は忘れたけどかなり珍しい種族、魔力自体に強い腐敗性があって魔力で服を作れないって子もいたね」
……カタストロさんかな? 手袋がよく腐敗するって言ってたし……なるほど、高位の実力者でも利便性の関係で服を作るのが難しい人もいるのか。まぁ、戦闘時だけは魔力で服を作ったりするのかもしれない……日常生活では不便でも、戦闘においては攻防一体で強力そうだし。
「そういえば、シャルたんも服は魔力で作ってないんだったね」
「……そうなの? ……知らなかった……シャルティアも……魔力で服作ってると……思ってた」
「いや、私も詳しく聞いたわけじゃないんだけど……なんかシャルたんの服は、七星魔獣とかっていう『星が生み出した魔獣?』とかいうのの素材から作ったもので、あの服自体に七つの特性が宿ってて便利なんだってさ」
あ~そういえば、なんかアリスが言ってた覚えがある。ワンダフルな化け物だったっけ? 星が生み出した魔獣とかって言うと、強ボス感満載だし、それで作った装備ってのもカッコいい。
しかし、なんというか、以前よりはかなり知っているつもりではあるが……やっぱり相変わらず、アリスっていろいろ謎が多いな。まぁ、たぶん聞けば教えてくれるんだろうし……今度またじっくり、その辺の話も聞いてみたいものだ。
~おまけ・六王幹部仲の良さランキング~
ツイッターで書いた情報です。もしかしたらこっちでも書いてたかもしれませんが……
第六位 幻王配下幹部『十魔』
ハッキリ言って仲は良くない。というか、大半のメンバーは『自分こそは十魔で唯一マトモ』であり『他は変態ばかり』と、自分のことは全力で棚に上げてる感じである。
そもそも、それぞれが各地に配属されているので、顔を合わせること自体あまり多くは無い。
第五位 戦王配下幹部『戦王五将』
こちらは決して仲が悪いわけではないが、五人の関係は基本的に「強敵」と書いて「とも」と呼ぶ的な関係であり、仲間であると同時にライバル同士。
唯一オズマだけは少し立ち位置が特殊で、他の四人からは明確に上に見られて慕われている。兄貴的なポジション?
第四位 竜王配下幹部『四大魔竜』
こちらも決して仲が悪いわけではないが、それぞれ非常に巨大な体躯をほこる為、あまり同じ場所に集まることは少ない。
それぞれが抱える配下の数も多く、なかなか幹部同士で会話をする機会は少ない。
第三位 界王配下幹部『七姫』
基本的に仲は良く、ティルタニアなどのムードメーカーも存在しているため、幹部間の関係は非常に良好。ただし、リリウッド自体が六王の中ではかなり多忙なため、その補佐として動く七姫もそれなりに忙しく、やはり全員が集まる機会というのは少ない。仲の良いペアやトリオで固まっているイメージ。
第二位 冥王家族
仲は非常に良く、仲間というよりは友や家族といった関係ではある。年末などの行事には家族で大集合することも多く、王たるクロムエイナ自体の人柄もあってアットホームな陣営。
ただし、数がかなり多く、ツヴァイを始めとした忙しくてあまり家に帰れないメンバーもいるため、第二位という形になった。
第一位 死王配下幹部『六連星』(未来)
ぶっちぎりで仲がいい。イリスとウルペクラ以外は、長らく他の六王や国などの勧誘を突っぱねていたこともあり、地位だとか名声だとかにサッパリ興味はない。
というか、基本的に全員『アイシスの人柄』に惚れ込み『自ら望んで配下になった者たち』なので、端的に言えばアイシス大好きな仲良し集団である。
王であるアイシスの意向もあって、他の予定があるもの以外は全員朝食と夕食を一緒に食べており、会議とかをする時も全員分の紅茶とお菓子を用意してワイワイ会議してる。(あくまで食事は嗜好の範囲なので、昼食は食べないことが多い、おやつは食べる)
ちなみに個別の話だと……
イリス:朝夕の食事を作ってる皆のオカン、夜は快人の家でバーテンダーをしている
ポラリス:まったりしているのが好きだが、結構綺麗好きなため暇なときは箒片手に城の中を掃除してる
ウルペクラ:仲の良いスピカを手伝っていることが多いが、それ以外だと飾り付けなどが好きで、居城の中をたびたび模様替えしていたりする
スピカ:ブルークリスタルフラワーの花畑をのほほんと管理してる。よく手伝ってくれるウルペクラと共に、お茶しながらシリウスとラサルの喧嘩を見学してたりもする
シリウス:剣の修行やラサルと喧嘩をする以外では、廃棄の決まった鉱山を物理的に解体したり、道の整備をしたりと力仕事を担当することが多い
ラサル:シリウスとの喧嘩以外では基本的に与えられた研究室に籠っている。とはいっても、死霊術系の研究はもはや究極と呼べるレベルの理論を完成させているため、現在は他のメンバーから依頼を受け、『新しい洗剤や石鹸』といった家庭内の便利グッズを開発してる。本人は研究すること自体が好きなので、研究対象はなんでもいい模様。
つまるところ、ただの仲良し家族である
 




