恋人たちとの海水浴⑤
続いて砂浜に現れたのは、リリアさんとジークさんだった。
リリアさんの水着は、白色のビキニでありシンプルながらスタイルのいいリリアさんにはよく似合っていると思った。金髪碧眼で白いビキニを着た美女……ものすごく正統派な感じがする。
しかしそれ以上に目についたのが、リリアさんの髪型だった。リリアさんは長い髪を首の後ろで大きな三つ編みに纏めており、これがまたすごく可愛らしい。
「……こ、これは、想像以上に恥ずかしいですね。その、変じゃないでしょうか?」
「全然変じゃないですよ。水着はもちろんですけど、その髪型もすごく似合ってます」
「あ、ありがとうございます」
少し恥ずかしそうな表情を浮かべるリリアさんはとても可愛らしく、普段とは違う露出の多い姿は眩しささえ感じる。
「……リリはスタイルがいいので羨ましいですね」
「ジークさんの水着もよく似合ってますよ。ジークさんは背も高くてスラッとしてるので、すごく綺麗です」
「そう言ってもらえると嬉しいですね。ありがとうございます」
ジークさんの水着は少し露出が多目な薄緑色のワンピースタイプ……たしか、モノキニだったかな? スレンダーなジークさんにはワンピースタイプの水着がすごく似合うというか、凛としててカッコいい。
そんなことを考えていると、少し慌てた様子でこちらに駆けてくるアニマの姿が見えた。
「お待たせして申し訳ありません! どうにも、慣れぬ衣装に手間取りまして……」
「気にしなくても大丈夫。それよりその水着、少し変わったデザインだけどよく似合ってて可愛いよ」
「ありがとうございます……その、自分には尻尾がありますので」
「あぁ、なるほど」
アニマの来ている水着は、上半身は普通のビキニだが下がホットパンツのような形になっている茶と白のストライプの水着だった。
なるほど、尻尾を出すための穴をあける必要があるから、あんまり布面積の少ない水着は難しいのか……けどこれはこれで、可愛らしくてすごくいいと思う。
これで八人中七人……残るはアリスだけだ。アリスはああ見えてかなりの恥ずかしがり屋であり、露出の高い服を着ることは殆どない。
それに六王祭での混浴の時もそうだったが、そういったイベントがあった際に一番ガチガチに防御を固めてくるのは彼女である。
……まさかと着ぐるみ着てこないよな? さすがにいくらアリスでも、そんなことはしないと思うけど……。
「……お、お待たせしました」
「うぉっ!? いつの間に……って、あれ?」
「な、なんですか?」
「あ、いや……それって水着なの?」
いつの間にか現れていたアリスは……なんというか予想通りではあるが、かなり露出を抑えた格好をしていた。
オレンジと赤のチェック柄の……水着? というか、タンクトップとスカートに身を包んでおり、その上からフード付きのパーカーを着ていた。
「いちおうタンキニって呼ばれる水着です。というか、冗談抜きでアリスちゃんこういうの苦手なんですよ。これでも結構頑張ってますから……」
「そ、そっか……その、普段の服装が暗めの色合いだけど、そういう明るめの色の服もよく似合うな。うん、可愛いよ」
「ぁぅ……」
「……あと髪型も……というか、髪、短くなってない?」
アリスはいつも付けている仮面を外して素顔を晒しており、そのせいもあってかかなり恥ずかしそうに見える。そしてなにより、かなり長い筈のアリスの髪がセミショート……クロよりやや短いぐらいの長さに変わっていた。
「あぁ、さすがに邪魔なので短くしました。って言っても切ったわけじゃなくて、魔法で長さを変えたんですけどね」
「へぇ、普段とはかなり印象が違って見えるけど……なんか妙にしっくりくる感じというか、表現は難しいけどすごく似合ってる感じだな」
「あ~いちおう、昔はこの長さだったんですよ。というか、通算で考えるとロングだった期間より、この髪型の期間の方がかなり長いですね」
アリスの説明に俺が頷くと、ちょうどそのタイミングでクロとシロさんが戻ってきた。険悪な空気は無くなっているので、無事? 喧嘩は終わったみたいだ。
ともあれこれで無事全員集合となり、いよいよ決めたペア同士に分かれて遊ぶことになる。しかしその前に相談しておかなければならないことがあったので、それを確認しておくことにした。
「さてそれじゃあさっそく遊びにと言いたいところですけど……その前に、お昼ご飯はどうします? 一応マジックボックスにいろいろ用意してきましたし、ラグナさんに言えば料理人も手配してくれるらしいですけど……」
そう、昼食の相談だ。現在の時刻が十時過ぎなので、少し遊んだらお昼時になる。皆の意見を聞いてから決めようと、マジックボックスには食材や簡単な調理器具、それに露店などで買った料理も用意してきた。
「でしたら私が――」
「おっと、ちょっと待ってもらいましょう!」
「――む?」
俺の言葉を聞いて最初になにかを言いかけたシロさんの言葉をアリスが遮る。
「シャローヴァナル様の創造で料理を用意するってのは味気ないですし、せっかくのレジャーなんですからバーベキューにしましょう! ちなみに、事前にラグナさんには許可貰ってます」
「あっ、いいね! 楽しそう!」
アリスの言葉にクロが笑顔で賛成の意を示す。たしかにこの青空の下でバーベキューは楽しそうだし、皆でワイワイ食べれるから最善と言えるかもしれない。
というか、すでにラグナさんに許可貰ってるって……相も変わらず準備がいいな。
一応他の人たちにも意見を聞いてみたが、皆バーベキューに賛成みたいで、お昼はバーベキューを行うことで決定した。
「……では、食材は――」
「おっと、再び待ってもらいましょう!」
「――むむ?」
バーベキューを行うことに決まったあとで、シロさんが口を開きかけたが、再びアリスによって遮られた。シロさんは若干不満げである。
「今回、食材は私、アリスちゃんがすでに用意してます!」
「え? お前が食材を用意……大丈夫? 熱とかない?」
「ちょっと、カイトさん!?」
なんとアリスはバーベキューの食材をすでに用意しているとのことだが……いったいどういうことだろうか? 非常に珍しいというか、むしろアリスなら率先してシロさんに食材を出させようとすると思うんだけど……。
俺が少し怪訝そうな表情を浮かべていると、アリスは軽く咳払いをしたあと、シロさんに対して不敵な笑みを浮かべた。
「……いえ、前回の新築パーティーではちょっと出し抜かれましたので、今回はその意趣返しってやつですね。というわけで、今日の昼食に関しては私に任せてください!」
「う、うん。まぁ、アリスがそれでいいなら、よろしく頼む」
「了解です! 最高の食材を用意したので、バッチリ期待してていいですからね」
実際アリスの料理の腕は超一流だし、安心して任せられる……まぁ、シロさんはちょっと不満そうではあるが、せっかくアリスがいろいろ用意してくれたのだから、ここはアリスに任せよう。
ただう~ん……アリスのあの自信満々な顔はなんだろう? 料理でふざけるような奴じゃないから、変なものが出るってことはないだろうけど……。
シリアス先輩「馬鹿な……アリスが食材を用意するだと!? これは、事件の香りが……」
マキナ「……私が作らされました」
シリアス先輩「……あっ、アリスの懐はまったく痛んでないのか……」
~おまけ・ヘコんでるマキナちゃん②~
アリスちゃん「……ほら、マキナ。プリンですよ~」
マキナちゃん「……アリス、私のこと馬鹿にしてるでしょ? とりあえず甘いものでも食べさせとけば元気になるだろうって、酷いよ……もっとちゃんと慰めて……プリン、美味しい」
アリスちゃん「バッチリ食ってるじゃねぇっすか。しかもちょっと元気になってますし……えっと、じゃあアレです、ハグしてあげますよ。さぁ、ど~んと私の胸に飛び込んできてください」
マキナちゃん「……慰め方が雑、すごく雑」
アリスちゃん「一切の躊躇なく私の腕の中に納まっておきながら、いう台詞じゃないですね」
マキナちゃん「……頭も撫でて」
アリスちゃん「注文が多いですねぇ……はいはい」
マキナちゃん「えへへ」
アリスちゃん「……もう元気になってますよ。相変わらずと言うかなんというか……」




