アニマと釣りに行こう③
釣りを始めてからそれなりの時間が経ち、夕方とまではいかなくてもそこそこいい時間になってきた。ちょうど小腹も空いてきたので、この辺りで一度釣りはやめて釣った魚を調理することにした。アニマがいい感じにリバーフィッシュを多く釣ってくれたので、結構お腹いっぱいに食べられそうである。
なお、俺の釣果はクリスタルフィッシュ22匹、ゴールドテール9匹……大漁ではある。金銭的価値は相当にある……が、食用魚はゼロである。
特にお金が必要なわけでもないのでリリースするつもりではあるが、いまリリースすると食後にもう少しだけ釣りをと再開したらまた釣れてしまいそうなので、帰る間際にリリースすることにした。
幸い時空間魔法を応用した拡張機能搭載の高性能魔法具のいけすに入れているので、魚が大きなストレスを感じたりすることもないらしい。
まぁ、若干釈然としない部分はありつつも、楽しみにしていた塩焼きである。マジックボックスから調理台を取り出し、アニマと手分けしてぬめり取りと下処理を行っていく。
鮎っぽいリバーフィッシュは内臓も食べられるらしいが、俺はあの独特の苦みがちょっと苦手なので取り除くことにした。
それが終わったら串に刺し、塩を振――待てよ。これ、味噌塗って田楽風にしても美味しいのでは? いいな、味噌田楽……よし、半分ぐらいは味噌田楽にしよう。
「……ご主人様、火の準備をしても構いませんか?」
「うん、大丈夫。たしか魔法具を使うんだっけ?」
「はい」
俺の言葉に頷きながらアニマが取り出したのは、独楽がふたつくっ付いたような魔法具。なんでも冒険者とかが野営する時に焚火に使う魔法具で、魔水晶が付いている方の独楽を地面に刺し、もう片方の独楽のボタンを押すと火が付くらしい。
イメージとしては携帯ガスコンロかな? 火をつけるのも消すのも簡単で、冒険者には必須と言っていい魔法具とのことだ。
アニマは手早く場所を決めて魔法具を点火、その後は周囲に折り畳み式の椅子などを用意してくれた。う~ん本当に手馴れているというか、頼りになる。
「えっと、あとはこの焚火の周辺に刺せばいいのかな?」
「ええ、火を小さくしますのでこの辺りに……」
「よし……このぐらいでいいかな?」
「大丈夫だと思います。では、火の大きさを戻しますね」
これで準備は整い、アニマと並び合って椅子に座りながらリバーフィッシュが焼けていくのを眺める。う~ん、ものすごく美味しそうだ。生まれも育ちも都会だったし、キャンプとかもしたことはなかったので、こういうシチュエーションは本当にワクワクする。
ある程度焼けたら味噌田楽にする方には味噌を塗って、もう少し焼く。
「う~ん、香ばしいいい匂い……やっぱこういうのっていいなぁ。いい天気だし、景色もいいし」
「この辺りは、夜は星がとても綺麗に見えるらしいですよ」
「へぇ、それはいいな……日帰りはもったいなかったかな?」
「……で、でしたら……せっかくですし、一泊して……帰りは明日にしますか?」
「え? 俺は大丈夫だけど……アニマは大丈夫なの?」
意外な提案に少し驚きながら聞き返す。アニマの提案自体は、俺としては嬉しい。こういうのんびりリラックスできる機会は貴重だし……『六王祭が終わったあとに購入したまま使ってない超高級魔法具』を使えるまたとない機会でもある。
ただアニマの方の予定は大丈夫だろうか? たぶんというか、間違いなく彼女はなにか予定があったとしても俺の方を優先してくれるだろうが、さすがにそれは気が引ける。
なので質問に質問で返す形で尋ねると、アニマは苦笑を浮かべた。
「……実はキャラのやつが、自分は働き過ぎだからと、一日だったはずの休みを二日に強引に変更しまして、明日は特にコレといった予定もありません」
「そっか、じゃあ大丈夫だね……けど、ちょっと驚いたかな。アニマからそんな提案が出るとは思わなか……うん? もしかしてアニマ、俺が『あの魔法具』を使いたがってること知ってて気を使ってくれた?」
「あっ、はい。その通りです……と、胸を張って言えたらよかったのですが……」
「うん?」
アニマも俺がいまの状況で最適ともいえる魔法具を購入して、使う機会がないままでいるのを知っている。だからこそソレを気遣ってくれたのだろうと、そう思ったが……なにやらアニマは困ったような表情を浮かべた。
そのまま言葉を探すように視線を彷徨わせたあと、ポツリと呟くように小さな声で告げた。
「……その……自分がもっと……ご主人様と一緒に居たかったのが……9割以上の理由です」
「……あはは、なるほど、それは俺としては嬉しい理由だね」
「あぅ……あっ、ご、ご主人様!? そろそろ、いい焼け具合のようです!!」
よっぽど恥ずかしかったのか、ワタワタと慌てた様子で話題を逸らすアニマを見て、自然と顔がほころんだ。
ワガママとは言えないほどささやかなものではあったが、あのアニマがこうして己の希望を口にしてくれるのは、どうしようもなく嬉しいものがあった。本当に彼女といるとホッコリするというか、すごく穏やかな気持ちになれる気がする。
そんなことを考えつつ、俺は串焼きへと手を伸ばした。
アニマ編はほのぼのスローライフ風。
~おまけ、もうすぐ出番なマキナちゃん(本体)スペック~
髪:錆色でウェーブがかったクセの強いロングヘア
瞳:極彩色(人間だったころは灰色)
身長:152cm
体重:???
バストサイズ:ギリギリB、BといったらB、あきらかにB、絶対にB、むしろCに限りなく近いと言えなくもない気がするB、全知である私が言うのだから間違いなくB
好きな食べ物:ハンバーガー(アリシアと一緒に食べた思い出の食べ物)
エデンとの差異:エデンの時は、【本人的には】神らしく振舞っており、本来の性格とは違う(快人へ愛情は変わらない)、公私を分けるように、エデンの時とマキナの時は分けている
弱点:なんだかんだでアリス(アリシア)に甘く、頼みを断れない。
『マキナ(本体)としての好感度』
1位、快人(最愛の我が子)
同率1位、アリス(恩人であり、親友であり、彼女にとっての英雄)
3位、快人以外の我が子全員
4位、シャローヴァナル(友人だとは思っている)
5位、『クロムエイナ』(忌々しいとはいっても、嫌いだと言った覚えはない。最初にかわした約束もちゃんと守ってるし、普段戦うときは手加減してる)
6位、ノイン(我が子と認定するか、我が子じゃないと認定するか、悩みどころ)
7位、ルナマリア(最近急上昇した)
8位、他の肉塊
色々隠された秘密や、え?っと思う部分はマキナ編で判明する予定。




