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従者として、家族として、恋人として……



 本当に強い想い……ブラックベアーから獣人に転生して、これまでに得たものをすべて含んだかのような告白の言葉。

 それに俺が言葉を返すより早く、アニマは再び口を開き言葉を紡いだ。


「……自分の自惚れでなければ、ご主人様は自分がしっかりと理解できぬままでいたこの気持ちに、以前より気付かれていたのではないかと思います。気づいたうえで、自分がそれに気付くまで待っていてくださったと……」

「……」


 あぁ、本当に彼女は大きく成長したのだろう。自分だけでなく、相手の気持ちを考えられるぐらいに。

 アニマの言葉は正解だ。彼女が俺に対して主従を越えた、さりとて家族に対する親愛とも違う感情……言うなれば淡い恋心のようなものを抱いていたのは、感応魔法のおかげもあって六王祭の少し前ぐらいから気付いていた。

 そしてそれを……嬉しいと、感じていた。


「自分は……自分自身の気持ちが一番よく分かりませんでした。従者としてのご主人様への尊敬……異性として恋慕。どこまでが尊敬で、どこからが恋慕なのか答えが出せないままでした……けれど、出せないままでいいのだと、そう思えるようになりました」

「……アニマ」

「ワガママ、なのかもしれません。優柔不断だと叱咤されるべきなのかもしれません……ですが、そんな曖昧な気持ちも、なにより『自分らしい』のではないかと思います。従者としてご主人様を尊敬する自分も、異性として恋焦がれる自分も……どちらも、間違いなく存在しています」


 一言一言噛みしめるように告げる言葉には、アニマ自身の成長の軌跡とも呼べるものが感じられる気がした。思えば彼女は多くのことに悩み、ひとつずつ答えを得て成長してきた。

 ブラックベアーから獣人へとなったことによる価値観の違い。

部下を持ったことによる立ち位置の変化に、他者に抱いてしまった劣等感との折り合い。主と呼ぶ相手に対して抱いた気持ち……。


「……長くお待ちいただいておきながら、曖昧なままというのは恥ずべきことなのかもしれません。ですが、どうか……愚かでワガママな自分の願いを口にさせてください」


 言葉にしてみれば短いものだが、アニマはきっとたくさん考え、ソレと同じかそれ以上に学んできたのだろう。

 そしてこれから告げられる言葉こそ……悩みながら成長してきた彼女の……答えだ。


「ご主人様……自分は、従者であり続けながら、同時に……異性として貴方を愛しても……よろしいでしょうか?」


 そんなアニマの強い想いの籠った言葉を聞いて、自然と俺の口元には笑みが浮かんだ。

 そして俺はゆっくりとソファーから立ち上がり、不安げにこちらを見るアニマの体を優しく抱きしめた。


「ふぁっ!? ご、ごご、ご主人様!?」

「……ワガママなんかじゃないよ」

「……え?」

「従者として俺を助けてくれる君も、家族としていろいろ気を配ってくれる君も、ひとりの女の子として可愛らしい姿を見せてくれる君も……どれかが偽物で、どれかが本物ってわけじゃない。全部、俺の大好きなアニマだよ」

「ッ!?!?」


 腕の中で驚いたような表情を浮かべるアニマにもう一度微笑んだあと、俺は片方の手でアニマの頭を撫でながら言葉を続けた。


「……正直に言うとさ、俺は初めアニマの扱いに困ってた。従者なんて必要ないって思ってたし、いろいろ頭を悩ませてた」

「も、申し訳――「だけど」――え?」

「それは本当に初めだけだった。いつも真っすぐで、一生懸命なアニマの姿に何度も勇気づけられた。心から俺を気遣ってくれるアニマに何度も癒された……いつのまにかアニマが傍に居てくれるのが当たり前で、一緒にいると心が落ち着くようになった」


 アニマが成長していくのと比例するかのように、俺の中での彼女の存在も大きくなっていったように思える。最初は困った従者で、次は頼りになる家族で、次は可愛らしく一緒にいると癒される女の子で……いまはもう、居ないことなんて考えられないほどに、かけがえのない存在になっている。


「……ってまぁ、アレコレ説明臭いことを言っても仕方ないな。シンプルに言うね……俺も、好きだよアニマ」

「あっ……」


 抱きしめる力を強めながら気持ちを伝えると、アニマの目に涙が浮かぶのが見えた。ただそれは、決して悲しいものでは無かった。

 思えば答えなんてとうの昔に出ていたんだ……彼女をかけがえのない存在だと思い、『アニマが答えを出すのを待つと決めた時』にはすでに、俺の気持ちは決まっていたのだろう。


「これからも傍に居て欲しい。従者として、家族として、そして……恋人として……」

「……はぃ……」

「……っと、えっと、まぁなんていうか……改めて、これからもよろしく、アニマ」

「……はい! 自分のこの身も、心も、すべてご主人様のために存在します!」


 それは力強く……そしてなにより懐かしい言葉だった。

 たしか、初めて会ったときもアニマは同じ言葉を口にした。その時に湧き上がった気持ちは、戸惑いだった。だけど、いまは違う。


 胸に湧き上がるのは……嬉しさと……どうしようもないほどの愛おしさだった。






シリアス先輩「……なんかアニマ相手だと快人のイケメン度が上がるよね。しかも何気にアニマがいいヒロインしてるし、本当に初登場の時からは想像もできないヒロイン力上昇だ……うぇぇ、胸焼けしてきた」

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― 新着の感想 ―
久しぶりに読み返してるけどこれってアインがなれなかった存在にアニマはなってるんだよなぁ...このふたりの絡みがちょっと気になる
[一言] 幸せ空間が眩しい(*´つ_⊂`)
[良い点] キタァぁぁぁぁっっ!!! アニマぁぁぁ!かぁーーわいぃーなぁぁぁ!! 好きだぁぁぁ 好きだぁぁぁ ぁぁぁぁぁぁああっっぁぁあ!!! [気になる点] ↑という、歓喜です。 連載頑張ってくださ…
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