従者と食べる夜食②
八巻の発売まで一週間ほど……活動報告にキャラウェイのキャララフを公開しました。
アニマに一緒に夜食を食べていいかと尋ねると、二つ返事で了承の言葉が返ってきた。アニマはいま魚の切り身を焼いている。
夜食ということだしあまりガッツリと食べる気はないが、それでも気分的に汁物が欲しいところだ。味噌汁でも作ろうかな。
「しゃあ、アニマ。俺は味噌汁……えっと、スープを作るね」
「え? い、いえそんな、ご主人様の手を煩わせるわけには……」
「気にしない気にしない、元々自分で作るつもりでここに来たんだしね」
予想通りといえば予想通りのアニマの反応に苦笑しつつ、サッと必要なものを用意して調理を始めてしまう。アニマ相手には、少し強引なぐらいが丁度いい。
そして味噌汁を作りながら、隣で魚を焼いているアニマに声をかける。
「……アニマは、よく料理をするの?」
「頻繁にというわけではありませんが、食事の時間がズレた際には自分で作っています。といっても、自分にできるのは焼いたり炒めたりといった程度ですが……」
「そっか、俺も同じぐらいだなぁ……揚げ物とかは、まだできないしね」
ジークさんや料理長、時々イルネスさんに教わりながら料理をすることはあるが、まだあまりレパートリーは多くない。
まぁ、趣味と言えるほど頻繁にやっているわけでもないので、作れるのは簡単なものばかりだ。
「アニマは今日遅くまで仕事してたんだよね? 疲れてない?」
「ご心配いただきありがとうございます。キャラがいろいろと気を回してくれますので、よく休憩は取っております……自分としては、もう少し働きたいところではありますが」
「あはは、アニマらしいね」
本当に他愛のない雑談だが、不思議と落ち着くような気持になる。その原因はたぶん、アニマの纏う雰囲気だろう。
感応魔法も影響しているのだろうが、こちらを純粋に慕ってくれているというか、こちらが話しかけると嬉しそうな感情が返ってくるアニマと過ごす時間は、なんだか心地がいい。
「キャラウェイさんとは、よく遊びに行ったりするの?」
「……キャラに連れていかれるという表現が合う気がします。基本的に補佐であるキャラは、自分と同じ日程で休みがありますので、共に出かける機会は多いです。先日は、釣りに連れていかれました」
「へえ、釣りかぁ……数えるぐらいしかやったことはないけど、俺も結構好きだよ」
「そ、そうですか! で、では今度……あ、い、いえ、失礼しました。なんでもありません」
俺も釣りが好きというと、アニマはパァッと嬉しそうな表情を浮かべてこちらをみたが、直後に慌てた様子で料理に戻ってしまった。
前々からそうではあったが、アニマは基本的に自分から俺をなにかに誘うということはしない。主である俺の時間を使わせてしまっては申し訳ないと、そんな考えが真っ先に浮かぶみたいだ。
だからこそ、俺は苦笑しながらこちらから提案することにした。
「……今度一緒に行こうか、俺は殆ど素人同然だからいろいろ教えてくれると助かるよ」
「……ご主人様……は、はい! 不肖アニマ、その際には全霊でご主人様のサポートをして見せます!」
尻尾を振る子犬が幻視できそうなほど嬉しそうな顔をするアニマを見て、俺は再び苦笑した。なんというか、本当に可愛らしい。
程なくして料理は完成し、アニマと共に食堂に移動して一緒に食事を始める。
「そういえば、ご主人様。五日後から、アカリ殿とカズヤ殿がセーディッチ魔法具商会で魔法具作りを学び始めると聞きましたが、なにか事前に用意するものはありますか? あれば早急に手配しますが?」
「う~ん、どうだろ? 基本的なものは商会の方で用意してくれるみたいだから、筆記用具ぐらいかなぁ」
「なるほど、であれば慌てる必要もないでしょうね。ただ、当人であるおふたりは緊張されているでしょうし、なにかあった際にこちらでフォローできる体制は整えておいた方がよさそうですね」
「うん、そうしてくれるとありがたい。アニマはいろいろ母さんと父さんのことに気を回してくれてるみたいで、すごく助かってるよ」
「い、いえ!? ご主人様のご家族をサポートするのは、従者として当然の務めであります!」
ふいに褒められて慌てたような、それでいてやっぱり嬉しそうな表情を浮かべるアニマ……この二年で頼りがいのある存在に成長したけど、やっぱりこういう根っこの部分は変わってなくて安心する。
そこでふとアニマがなにやら考えるような表情に変わり、少し申し訳なさそうな表情で口を開いた。
「……あの、ご主人様、少し話は戻るのですが……キャラの件でご相談が……」
「キャラウェイさんの? うん、どうしたの?」
「……いえ、実はキャラは己だけいまだにご主人様にさん付けで呼ばれているを気にしているみたいで……」
「え? そうなの!?」
そう言われてみれば、初めに会ったときの印象のままでキャラウェイさんって呼んでたけど……いまの彼女の立場は、アニマ、イータ、シータと同じということになるわけだし、ひとりだけ他と違うように感じているのかもしれない。
「えぇ、自分が勝手に雇い入れたわけですし、このようなお願いをするのは無礼かと思いますが……可能であれば、自分やイータシータと同じように接してあげてくださればと……」
「う、うん。わかった……けど、そっか、俺の前でそういう態度は見せてなかったけど、気にしてたのか……教えてくれてありがとう、早いうちに知れてよかったよ」
「ありがとうございます。寛大なお心に感謝を……奔放に見えてキャラはいろいろ気にするところがあるみたいで、従者の中で自分だけご主人様と年齢が遠く離れているのも少し気にしているみたいです」
なるほど、アニマはブラックベアー時代を入れるかどうかによって変わるが、入れたとしても俺とそう変わらない年齢。イータとシータはどちらも72歳……うん、72歳でも知り合いの中で若い方っていうのは、なんか凄いけど、魔族的にはかなり若いみたいだ。
「そういう部分も知れてよかった……というか、せっかくの機会だし、他にもいろいろ聞いてもいいかな? イータやシータの事とか、立場的に俺に直接は言いにくいこととかもあるだろうし……」
「はい、自分の分かる範囲であれば……」
本人たちは従者と言っているが、俺はアニマのこともイータのこともシータのことも家族みたいな存在だと思っているし、できればもっといろいろ知っておきたい。
キャラウェイさんのことも、本人に許可を取ってアニマたちと同じような口調で話すとして……それ以外にも、機会があれば親睦を深めるために皆でどこかに出かけるのもいいかもしれない。
皆にはいろいろ助けてもらってるわけだし、その恩返しも兼ねて……なにか考えておくことにしよう。
シリアス先輩「……よし、では質問に答えていこう!」
???「え? なんすか急に?」
シリアス先輩「いや、毎回私がその時の話について分かりやすく解説するだけじゃマンネリだから、この辺で変化を付けようと思ってね」
???「寝言は寝て言えよ、エセシリアス(ついに起きたまま寝言言い始めましたよ、このエセシリアス)」
シリアス先輩「本音と建前が逆……と見せかけて、どっちも同じこと言ってる!?」
???「まぁ、とりあえず続けてください」
シリアス先輩「……じゃあ気を取り直して、ひとつ目の質問『侯爵級が無いのはなんで?』……はい、答えて」
???「……まぁ、これは再編成の話でも触れる予定ですが、わた……アリスちゃんの居た世界では、侯爵ってなかった……いえ、なくなってたんですよ」
シリアス先輩「そうなの? なんで?]
???[一回目に絶望の大邪神の封印を解いたのが有名な侯爵だったんですよ。二回目の時はアリスちゃんが倒しましたが、一回目は結局復活が不完全で消えるまでどうにもできず、相当の被害が出たみたいです。それが原因で侯爵に悪いイメージがついて、そこから長い年数をかけて侯爵って地位自体が無くなったみたいです。で、アリスちゃんも爵位級ってシステム造った時に、ついつい自分の基準で作っちゃったわけです」
シリアス先輩「なるほど……じゃ次の質問『侯爵級は作らないの?』」
???「それも案のひとつとしては考えましたが、もう今の形で2万年近くたってますし、伯爵級の多くは『公爵級』を目指して研鑽を詰んでるわけです。そこに『公爵級には劣るけど伯爵級より上作ったよ』ってなると、不満も出るでしょうし、実質七番目の王というポジションのアインさんを上にあげる方向で調整してるわけです」
シリアス先輩「ふむふむ……じゃ、今回の質問はここまで! また次回!」
???「結局シリアス先輩、質問に答えてなくねぇっすか!?」




