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夏番外編「一泊二日! 海の星への旅(エデン付き)」①

何でこんな話を書いたのか……たぶん私、暑さで体調が悪かったんだと思います。


というわけでエデンメイン回です(別に次回の恋人がエデンというわけではない)




 異世界トリニィアに来てから、俺は様々なものを得た。本当にこの世界に来れてよかったと思っているし、この世界のことも大好きではある。

 ただ唯一不満を口にするのなら、毎年秋ごろに解禁されるワインの如く、毎年『人生最大の危機』が更新されていることだろうか……。

 まぁ、その人生最大の危機は大抵同じ人に更新される上、その方は別の世界の神であるためこの世界への不満というのもちょっと違うかもしれない。

 ともあれ、そういうことで……男、宮間快人……人生最大の危機である。


「目障りな肉塊もいない、忌々しい神の半身もいない……やっと『ふたりっきり』になれましたね。愛しい我が子……」

「ひゃ、ひゃい……」


 ドロドロに濁った眼で狂気の笑みを浮かべながらこちらを見るエデンさんに、俺は体が震えてまともに返事もできない。

 ちなみに俺とエデンさんが居るのは、エデンさんが俺にプレゼントしてくれた『惑星』である。うん、自分で言ってても意味わからないし、冗談じゃないかと思うが……残念なことに事実である。

 そしてエデンさんが言った通り、この場には俺とエデンさんしかいない……クロもアリスもシロさんも……いざというときに俺を助けてくれそうな人はひとりもいない。


「あぁ、この時をどれだけ待ち望んだことでしょう! 私はいま幸福の絶頂と言っていいかもしれません。そう、そうです。ここに居るのは私と愛しき我が子だけ……誰も、誰も私たちの逢瀬を邪魔することはない! あぁ、愛しき我が子も随分と待たせてしまいましたね。貴方も母でたっぷりと甘えたかったでしょう。しかしいままでは、あの忌々しき神の半身に邪魔をされていました。えぇ、もちろん我が子の言いたいことは理解しています。私が神の半身を打倒してさえいれば、愛しき我が子は誰に阻まれるでもなく母に思う存分甘えることができました。あぁ、貴方とふたりきりになるまで長い時間を有してしまったふがいない母を許してください。そしてどうか、安心してください。いままで愛しい我が子に我慢を強いた分、この『一泊二日の旅行』では、とろけるほどに母の愛を注いであげましょう! いままでは神の半身への警戒から『抑え気味』だった私の愛を、すべて解放し、愛しき我が子に天上の幸福を!!」

「……」


 誰かぁぁぁぁ!? 助けてぇぇぇぇ!! やべぇよこれ、エデンさん完全に目が逝っちゃってるよ……というか、信じられないんだけど、いままで抑え気味だったってどういうこと!? まだ上があるの!!

 本当にいまだかつてここまでの危機を味わったことはない。果たして俺は無事に帰れるのだろうか……。


 そもそもなんでこんな事態になったかというと……『俺との一泊二日の旅行』を賭けた『能力すべて使用禁止のチェス大会』が行われたのが原因である。

 なぜか俺の知らないところで俺が賞品になってるんだけど、それはまぁいつものことなのでそこまで気にはならなかった。


 問題はその大会で優勝を手にしたのがエデンさんだったということだ。エデンさんも思考加速や未来視などの能力はすべて使えず、一手にかけていいのは10秒という条件だった。

 しかしエデンさんは本気で対策をしてきたみたいで、本人曰く『あらゆる過去の対局を暗記し、能力を一切使わない状態で数十万局練習した』らしい。

 そしてエデンさんは組み合わせには恵まれなかったにもかかわらず、クロにシロさんという強敵を次々打ち破り……俺が優勝すると予想していたアリスすら、激戦の末に下してしまった。


 とまぁ、言ってみればエデンさんは正当な手順? で俺との旅行を勝ち取ったわけで、コレに関してはクロやアリスも邪魔するわけにはいかないらしい。出発前にとんでもない勢いで謝られた。

 というわけで俺の全然知らないところで、人生最大の危機といえる旅行が企画されてしまったわけだ。


 正直言って断りたかった。しかし、もうMAXテンションなエデンさんを見ると、断ったらそれはそれで恐ろしい事態になりそうで、結局受け入れざるを得なかった。

 そんなわけで、こうしてエデンさんが作った『海と砂浜とコテージだけの惑星』にやってきているわけである。


 ただ俺もなんの手もなくこの場に来たわけではない。上手くいくかどうかは五分五分ではあるが、ひとつの手段を用意してきている。


「さっそく海で遊ぶのもいいですが、なによりまずは愛しき我が子との逢瀬を心行くまで全身で――おや? どうしました? 愛しき我が子?」


 再びすさまじい長い台詞を言いかけていたエデンさんに対し、俺はしがみつくように抱き着くという行動をとった。これが俺が用意してきた秘策である。


「お、俺もこうしてエデンさんとふたりっきりになれて嬉しいです。失礼なことかもしれませんか、せっかくの機会なので甘えさせてください」


 エデンさんとそれなりに長い付き合いになって分かったことだが、エデンさんには時折顔を出す『謎のモード』が存在する。

 ハッキリした条件はまだ分からないけど、俺の方から積極的にコミュニケーションをとると時々その状態に変わる。

 とはいっても確実ではない。成功すれば今回の旅行におけるエデンさんの危険度は皆無になるが……失敗すると、エデンさんのテンションがいま以上にヤバくなるという諸刃の剣である。


 さ、さぁ……どうなる……。


 こうして俺の人生最大の危機に挑む、人生最大の賭けが始まった。





素(昔)の性格がある(快人の前でそうなるとは言ってない)


シリアス先輩「……なんだ、この謎のシリアス感……」

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― 新着の感想 ―
[良い点] ママンが登場して、愛しい快人さんとデートしている
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